◆防衛大臣の民間人登用は防衛庁時代含め初
本日、田中防衛大臣が更迭され、森本敏氏へ野田総理より防衛大臣就任の要請があり新防衛大臣に就任することとなりました。本日は予定を変更して掲載します。
森本氏は防衛大学校出身で幹部候補生学校を経て航空自衛官に着任、3等空佐の時代に外務省北米局へ出向、その後航空自衛隊を除隊し外務省入省、外務省情報調査局企画課安全保障政策室、大臣官房領事移住部領事移住政策課長を経て退職、現在は拓殖大学国際学部教授。防衛省発足後に新設された防衛大臣補佐官に着任、麻生政権までその職に当たりました。
防衛大臣へ民間人登用ということで適任者を選び就任を説得させることが出来るのか、非常な難題ではありましたが、元航空自衛隊幹部自衛官で外交官、防衛大臣補佐官経験のある大学教授、非常に稀有な人材で、防衛大臣の民間人登用は防衛庁時代含め初ということになるのですが、元外交官の岡崎久彦氏や元統幕長の先崎一氏と並び民間人では防衛大臣へ適任の方と言えるでしょう。
防衛に関する識者は一般に広く知られる方が多いのですが、装備品の個々の能力や軍事制度もしくは戦史に詳しい人物というのは正直適任ではありません。必要なのは防衛政策を把握し代表し運用を司る人材で、この点、過去に防衛通と言われる人材ながら兵器の知識に偏り防衛政策に混乱を来した政治家もいたわけです。他方で、素人ではないかと言われつつ調整型の人材であれば知識量が能力を図るものではないという証明のような大臣もいました。
正直な感想としては自民党時代の防衛大臣補佐官経験者を民主党政権が登用したということ、、元航空自衛隊幹部自衛官で外交官という元役人を脱官僚を掲げる民主党が登用したということ、特に元3等空佐をかつて元幹部自衛官の長官就任に反発した民主党が大臣就任をお願いしたということ、以上三点が防衛大臣への民間人登用以上に驚いたことです。
更迭された田中防衛大臣ですが、防衛に関する知識は内部部局や統幕が補佐するものであり、決して不十分を以て更迭の要因とはならないのですが、そのほかの部分での失言と、防衛大臣は防衛政策の責任を以て内閣と政府の責務に当たるうえでの必要なものが欠けていました。この点、民間人登用以外の選択肢では北澤防衛大臣の再任、という可能性もあったのかもしれません。
しかし、森本新大臣であれば、人材としては的確で問責決議を出されるような失策はなかなか考えられません。例えば民主党政権が総選挙に展開した場合であっても選挙行動とは無関係に大臣の責務に全うすることが出来、特に政局がただでさえ頻繁に交代する防衛大臣という安全保障上の問題をさらに混乱させる可能性がある実情を背景としては、一つの選択肢と言えるのでしょうか。
まさか野田総理が掲げている消費税増税への党内工作の一環として、民主党部内での反野田派を説得する要件に、特に解散総選挙となれば確実に政権を失うという本末転倒な現状を念頭に、党内の同意と合意を得る手段で解散総選挙を掲げる布石の一つとは考えませんが、仮に総選挙が行われ自民党政権となった場合でも防衛大臣として留任させることが出来るでしょう。
森本新大臣の政権交代後の可能性ですが、アメリカではロバートゲーツ国防長官がブッシュ政権とオバマ政権と国防長官を務めています。共和党政権から民主党政権へ連続しての国防長官、オバマ政権発足は2009年でしたが、後任のパネッタ国防長官へ引き継いだのは2011年になります。ロバートマクナマラ国防長官もケネディ政権とジョンソン政権で国防長官を務めており、アメリカでは実例があるわけです。
ともあれ、新大臣に森本大臣の就任は、北澤防衛大臣の東日本大震災への対応が高く評価される一方で、続く二人の防衛大臣が更迭されることとなった中での、民間人登用ですけれども例外と言えるほどの朗報でしょう。対照的に南西諸島への軍事的圧力増大や北朝鮮ミサイル事案、南海トラフ地震の危険性指摘に加え脱原子力政策に伴う化石燃料需要増大を背景とした安全保障要件の変化、非常に危機的な状況であることに変わりはありません。
こうした中で、我が国は財政再建が非常に大きな課題であり、東日本大震災からの復興は政府の無策が影響し今なお停滞、自衛隊を取り巻く国際関係は非常に緊迫化していると同時に、財政面での大きな課題を抱えているのが現状です。防衛大臣は、防衛省の最高責任者であると同時に内閣の一員としての責任を求められることでもあり、その職務へこれまでの手腕を最大限発揮することが求められているのです。
本日、田中防衛大臣が更迭され、森本敏氏へ野田総理より防衛大臣就任の要請があり新防衛大臣に就任することとなりました。本日は予定を変更して掲載します。










北大路機関:はるな
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