北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海上自衛隊地方隊への一考察⑤ 地方隊隷下部隊での海外派遣部隊支援任務の可能性

2012-06-26 22:03:50 | 防衛・安全保障

◆海外任務増大、在外基地隊創設も検討課題
 地方隊の任務として、基地機能の維持による自衛艦隊所属艦艇への支援があります。この視点からの海外の任務について、少し考えてみましょう。
Timg_3653 海上自衛隊は将来的に艦艇の基地を遠隔地に配置しなければならない可能性はどの程度あるのか。海賊対処任務は、艦艇部隊、航空部隊という海上自衛隊を主体に、航空基地警備の陸上自衛隊、そして補給支援の航空自衛隊が任務を実施しています。可能ならば海上自衛隊アデン地方隊を創設して、アデン地方総監隷下に統合任務部隊司令部を置き、陸海空自衛隊を統合運用すると共に、補給整備体系と後方支援体制を一本化することが望ましいのでは、あります、が、まあ、これは、現実的には、もう一つ地方隊というのは難しいところ。
Timg_2816 地方隊の支援任務。これは基地における補給と整備を筆頭に、艦艇の出入港支援任務があり、曳船による作業などを行うためにかなりの数の支援船を保有しています。その上での一視点なのですが、今後海上自衛隊の海外派遣任務が増大し、航空部隊におけるジブチ航空拠点のような海上部隊拠点を有する可能性はどの程度あるのでしょうか。現在派遣されている規模はソマリア沖海賊対処任務では護衛艦二隻、この規模であれば長期的は補給設備を必要としません、整備前に交代するという前提なのですから。
Timg_7602 しかし、今後、例えばソマリア沖での任務に加え、ホルムズ海峡での緊張が高まる場合、更には南スーダン地域への支援を行う観点から隣国エリトリア近海に当たる紅海海上に艦艇を展開させなければならない場合など、一応は考えておかねばなりません。実はこの視点を考えますと、曳船等や交通船等の派遣、という可能性は、一応考えなければならないのですが、加えて補給と休養のための人員を派遣しなければなりません。しかし、自衛艦隊には該当する部隊が無く、民間会社の支援を受けるか、地方隊より人員を抽出し派遣するか、ということになります。
Timg_6973 これは可能性です。可能性を強く強調するのは、今後我が国が脱原子力政策を掲げるのであれば、化石燃料への依存度がどうしても高くならざるを得ないというもの。現段階ではその可能性は、まだ、低いですし、我が国の海上自衛隊は南西諸島における防衛警備と北方からの脅威へ対応する観点から護衛艦数を文字通りぎりぎりのラインから遣り繰りを行っている状況ですので、これ以上の派遣というのは考えにくいところです。他方で、ホルムズ海峡への掃海艇派遣の必要性が出る、という可能性は考慮しておかなければなりませんし、数は少ないものの輸送艦を、例えば一隻、アフリカ沖の海域へ展開させなければならなくなる可能性は充分あることを忘れてはなりません。
Timg_2379 曳船、交通船派遣。理論上は、現地の民間会社の支援を受けられることになるのですが、情勢が悪化した場合、民間会社が契約を拒否する可能性があり、この点は考慮に入れておかなければ成らないように考えます。また、過去には海外へ寄港先の曳船の能力、特に技量が著しく悪く、停止している護衛艦をさらに曳船が押したことで前方に停泊しているほかの護衛艦に衝突したことも、これを避けるために派遣、という可能性、これは同一港湾を長期間使用する場合、もちろん、これもどの程度派遣受け入れ国のインフラに依存でkルカによるのですが、必要性の可否は検討されるべき。
Img_3619 航続距離の面から不安な印象は否めませんが輸送方法はあります。曳航船の場合は、交通船と共に大型貨物船により輸送するほかないでしょう。例えばミサイル艇を数隻同時に輸送できる専用船や、キロ級潜水艦を輸送可能な貨物輸送船が存在しますので、技術的には航続距離が小さい場合であっても輸送することは可能で、今後、危険な地域であっても海上自衛隊が能力を維持しなければならない場合というもの、この場合に必要な基地機能は自前で維持できるのか、という視点からこれまで派遣が検討されてこなかった装備の派遣、その輸送方法など考えておくべきでしょう。
Timg_6430 このほかには、陸上施設、特に政情不安地域では休養へ市街地を利用することはできません。ショッピングモールのようなものを移設することはできませんが、非常な緊張の続く地域において休養できる施設はどのように提供するのか、特に海上自衛隊の護衛艦はアメリカ海軍の水上戦闘艦と同程度の居住性ではありますが、個人用空間が極限まで狭く、戦闘第一の設計というべき状況で、水上戦闘艦である以上仕方ないのですが、欧州海軍の水上戦闘艦と比較しますとどうしても居住性に限界があります。
Timg_7999 イギリス海軍の45型駆逐艦などは士官は全員個室、下士官は二人部屋と高い居住性を誇っていますが、そこまで行かずとも飲酒のための設備がある艦が欧州では基本で、海外での任務を考える場合、福利厚生施設をどうするかは考えなければなりません。海上自衛隊は既にP-3Cをジブチ航空拠点に基地要員を派遣しているのですが、航空集団と基地隊から派遣部隊を編成したとのこと。正直なところ、地方隊の任務ではないのだろうとは考えるのですが、自衛艦隊に福利厚生施設を統括する機構は無く、消去法で、地方隊の任務となるのではないか、ということ。
Timg_7675 横須賀地方隊の隷下部隊としてアデン基地隊を新編し、もちろんほかの地方隊でもいいのですが、そこから人員を抽出し、陸上での休養設備と、個室に当たる宿泊施設や、酒類をも含めた飲食設備、陸上自衛隊の駐屯地などでは遊興施設がある事例が散見できますが、こうした設備を緊張状態においても維持できる民間業者の選定を含め実施する、という方向性は考えられないでしょうか。これは防衛というマクロの面から考えた場合、更に広い視野で考えられる我が国のエネルギー政策と外地での実任務増大の可能性とを併せて考えた場合、ということですので、先走り過ぎといえるのですが、現段階で海外任務の上限が示されないまま、その必要性のみ高まるよう国内政策が進展する以上、どうしても考えられない、というのが信念です。
Timg_8116 そして何よりも重要なのは基地警備です。海外では、航空基地の警備については陸上自衛隊が実施しているのですが、基地警備を陸上自衛隊だけ位に存出来るのか、という点で、港湾部の警備となりますと難しいやも。勿論海上自衛隊の護衛艦には機関銃が増設され、海賊に対する臨検を行う際の準備としていまして、これは自動的に港内でのテロ対策にも寄与しますが、水中からのコマンドー接近、これに対して対応する能力は考えられなければなりません、即ち警備隊に当たる部隊を派遣する必要はあるだろう、というのが結論の一つ。
Timg_8545 特に海上自衛隊の護衛艦はテロリストの標的として一定の価値を有しています。外国艦船、というだけでも高付加価値目標となり得るわけで、国際イニシアティヴという意味合いで参加するところに意義を見出し派遣するのであれば、これに対する攻撃目標としての価値も国際性を持ってしまう、という構図で、同時に近年は各国の港湾におけるテロ対策が強化されていることから相対的に従来の警備を一定程度の強化を行うという範疇では差異が生じてしまい、やはり港湾哨戒艇、これがなければ交通船に軽機関銃を搭載して対応する方式でもよいのですが、実施されるべきです。
Timg_9046 地方隊の警備隊は人員規模が基地の規模と比較し、不十分である、ということはこの地方隊に関する連続記事の中でも指摘していますので、現状のまま派遣してしまっては、逆に本土の基地が手薄となってしまいます。人員不足は自衛隊の永遠の課題ではないか、という点は改めて提示することではないのですけれども、防衛計画の大綱において自衛官定数削減の潮流は緊張緩和に短所を見出し、これが奔流となり緊張増大の今日において、任務が増えるのと反面継続という実情。ですから、これはある意味最も難しいことではあるのですが、人員を増勢してもらうしかない、ということにはなるのですが。
Timg_9264_1 護衛艦から手空き要員を抽出し、特別陸戦隊を編成して、というのは、少し考えることはあるのですけれども、そもそも海外派遣艦は辛うじて人員を充足させたものですから、余分な人員はありません。・・・、こう考えますとやはりここまでの提案を翻して、統合任務部隊を編成して、警備任務については陸上自衛隊へ依存し、海上自衛隊基地警備意外に需要施設警備として原子力発電所警備等にも応用できるという点を強調したうえで、訓練施設を、どの部署かが負担し、水中コマンドー対処訓練を重要施設警備訓練の一環としてお願いということも考えるべきなのでしょうか。
Timg_9056 とはいえ、これは地方隊の任務から離れてしまうものでもあり、言い換えれば海外任務が増大し、自衛隊が編成上想定しなかったアフリカ地域での海外派遣任務の長期間の実施、海上自衛隊の同時多発テロ以降のアラビア海海上阻止行動給油支援、続いて海賊対処任務が開始され、海上阻止行動給油支援は終了していますが、結果的に自衛隊の中東アフリカ地域での任務は既に十年以上継続しているのです。国内の任務も緊張増大という現状のなか、人員増勢が出来ない、これはおかしいのではないか、という話に帰結するのですが、不利益を被るのは最終的に国民、自己責任という一言ではすまさ無いようにせねばなりません。

北大路機関:はるな

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