北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

大宮駐屯地創設55周年記念 化学学校創設記念行事 PowerShotG-12撮影速報

2012-06-12 22:24:25 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆大宮駐屯地祭2012速報
 日曜日、大宮駐屯地創設記念行事へ足を運びました。化学学校、中央特殊武器防護隊、第32普通科連隊の駐屯地です。
Oimg_4861 万一、我が国が再度核兵器の攻撃に曝されたら、そしてあの日のように地下鉄などに対し化学兵器による無差別テロが行われたならば、そしてアメリカで展開されたような生物兵器によるテロが大都市を襲ったらば、そうしたあり得るかもしれない、しかし非日常では決してない非日常に備えるのが大宮化学学校であり、我が国NBC事案への最後の砦でもあります。
Oimg_4864 大宮駐屯地祭、僅か数年前までは化学学校本校前の限られた駐車場を用いて、学校長挨拶と巡閲、訓示を行うだけの小規模なものでした。しかし、観閲行進も訓練展示も行われないものの装備品展示が、この駐屯地でしか見られない装備があり注目を集めていたとのこと、そして除染作業などの簡単な展示が行われることとなり、一昨年頃から式典会場をグラウンドとし、大規模に行われるようになったとのこと。
Oimg_4873 本年大宮駐屯地祭の最大の目玉は化学学校に配備開始となり、中央特殊武器防護隊へ今年から配備が開始となたNBC偵察車です。手前には中央特殊武器防護隊の82式指揮通信車、化学防護車と車体の共通のものが停車しており、その奥に見える一回り大きな装甲車両がNBC偵察車です。G-12で撮影したものですが、車体規模の相違が一目瞭然ですね。
Oimg_4875 式典へ整列する中央特殊武器防護隊幹部。地下鉄サリン事件という未曽有の都市部無差別テロへの派遣とそれに続くオウム真理教強制捜査支援や化学プラントへの警察捜査協力という、化学戦部隊としては世界的に稀有な実戦経験を持ち、イラク化学兵器解体作業では実際に神経ガスの砲弾の解体監視要員を派遣、世界的にここまでの実戦経験を積んでおり、実任務にも対応している部隊は少ないのではないでしょうか。
Oimg_4879 化学学校長川上幸則陸将補の部隊巡閲。巡閲を受ける第32普通科連隊も市ヶ谷駐屯部隊として地下鉄サリン事件対処に当たり、駐屯地こそ市ヶ谷駐屯地から大宮駐屯地へと移駐はしていますが、化学学校と当時除染に当たった第101化学防護隊の後身である中央特殊武器防護隊とともに、もしも、の許されざる想定への準備を怠らず首都防衛を履行した伝統ある部隊、精鋭を巡閲しました。
Oimg_4892 観閲行進。第32普通科連隊が先頭となり式典を務めます。祝辞では枝野大臣が実績から説得力を欠く祝辞を行ったのち、地元さいたま市長、埼玉県知事の祝辞に続いて、ここ化学学校出身で自民党国防部会長である佐藤代議士が祝辞を以て部隊を激励、福島県出身ということもあり、許されざる想定の最たる自体、原子力発電所事故対処に当たった部隊への祝辞と転換点を必要とする実情の視点へ、会場を沸かせました。
Oimg_4932 第32普通科連隊隊員の徒歩行進。連隊長芝伸彦1佐以下連隊本部、本部管理中隊、五個普通科中隊と重迫撃砲中隊を以て編成されています。前述の通り第32普通科連隊は市ヶ谷駐屯地に駐屯し、新宿という首都中枢部唯一の連隊として首都防衛を担ってきましたが、1999年、市ヶ谷駐屯地への防衛庁本庁舎移転に伴い、大宮駐屯地へ移駐したという歴史があります。
Oimg_4985 第4中隊の軽装甲機動車。機関銃座を防盾が奥の車両については国際協力任務仕様である点に注意。首都圏を防衛する以上、市街地での戦闘は不可避であり、小回りが利き、火力拠点ともなり、必要に応じて盾ともなる装甲車は重要です。これは、後日震災記事として大宮での写真と共に記事とする予定ですが、大規模災害やテロ事案へ、やはり大きな部隊を市ヶ谷から移したことは失策だ多のではないでしょうか。
Oimg_5034 重迫撃砲中隊の120mm重迫撃砲RT,2002年に第一師団の首都防衛編成への改編に伴い、重装備の重要性は低いとして廃止された重迫撃砲中隊ですが、翌2003年からのイラク戦争により錯綜地形の最たる市街地では迫撃砲の弾道は重要であり、直接掩護には不可欠な装備であると米軍が戦訓を経て編成に反映させました。我が陸上自衛隊でもこの点を受け、昨年2011年に重迫撃砲中隊を再編し、今に至ります。
Oimg_5044 中央特殊武器防護隊の82式指揮通信車、何故か観閲行進の経路が変更されました。さて、じつは中央特殊武器防護隊といえば化学防護車という印象がったのですが、82式指揮通信車が装備されていました。化学防護車はマスト部分などに装備年度により若干の相違があるのですが、82式指揮通信車との根本的な相違は12.7mm重機関銃にあります。化学防護車は汚染地域での任務を念頭に置いているため自衛火器は車内から操作する73式装甲車と同等の銃架に搭載されていますが、指揮通信車は違うのです。この点が正面から見た場合、最大の識別点と言えるかもしれません。
Oimg_5074 液体散布車。存在は知っていましたが始めて見る装備です。この写真だけでも大宮まで足を運んだ甲斐があるというもの。実はこの装備、除染車よりも早い時期、まだ化学防護車が60式装甲車の派生型を運用している時代から運用されている装備です。化学学校と化学教導隊、中央特殊武器防護隊にしか装備されていない装備で、昔の写真で見たことがあるのですが、観閲行進に参加するのですね。
Oimg_5087 液体散布車は化学消防車としての能力を有し、汚染地域での化学消防車としての任務のほか、広範囲に中和剤を散布する任務にも用いられるもの。例えば通常の車両で接近できないNBC汚染地域での化学火災への対応が可能であるほか、地下鉄サリン事件が路上に大量散布されるような事態であった場合、広範囲の汚染へ、除染車では対応できない場合などに出動するものです。ン福島第一原発ですが、遠距離放水ではなく広範囲中和剤散布が任務の車両で、化学剤ではなく放射性物質は中和剤が存在しないため、用いられることはありませんでした。
Oimg_5095 第102特殊武器防護隊の車列。NBC偵察車、化学剤監視装置、生物偵察車。どれもここ数年間で装備が開始された化学科部隊の最新装備です。一番の注目はNBC偵察車、全長8m、重量20t、最高速度95km/h以上、乗員4名。化学剤監視装置と生物偵察車のセンサーを搭載しているのがわかるでしょうか。また、比較的大柄な車体、と前述したNBC偵察車ですが、この車列からも大型の車両である、ということがわかるでしょう。
Oimg_5098 NBC偵察車。車体前部に並列式操縦席を有し、その背後に機関部を、車体部分は容積重視の構造となっており、車高は犠牲になっているという設計。この上には各種検知器材を搭載、車体側面は若干の傾斜を持っている形状で、道路交通法の規制乗車幅を大きく撮ることが出来ず、この中で第一線でのNBC偵察任務へ、生存性を重視しようとした部分が足回り周辺から見てとれます。銃身は重そうですが、従来の化学防護車と比較しても安定しており、他方で車内からの死角が多いのが難点とのこと。
Oimg_5118 94式除染装置と除染車3型。94式除染装置は小型で、化学防護隊や特殊武器防護隊のほか、普通科連隊などの本部管理中隊にも装備されており、毎時4両の車両や人員約50名を除染することが可能。後方は除染車3型、補給路などの地域除染に用いる装備で、勿論車両や人員の除染支援も行う装備です。化学兵器でもサリンのような神経剤は殺傷力が強くとも速やかに分解してしまうもの。
Oimg_5133 このように神経剤は攻撃用の化学兵器ですが対照的に、神経剤と比較すれば殺傷度合い、これも致死量がナノミリグラムかミリグラム単位化ということですが病院で点滴するわけでもなく、意味は少ないのですが、マスタードガスのような糜爛剤は数週間単位の長期間地域を汚染し、通行した車両の車輪や靴に付着し拡散するほか、皮膚に付着すれば爛れ、肺に吸い込めば気道を破壊、目に入れば失明するという厄介な装備で、除染により中和し無力化しなければなりません。
Oimg_5156 第103特殊武器防護隊の車列。先頭を進むのは化学防護車。元来化学防護車はNBC兵器の中でNuclearとBioとChemicalのなかで、Chemical即ち化学兵器の汚染地域へ進出し、汚染状況を把握、除染作業に先立ち重点的な任務実施地域の画定を行うための車両でした。しかし、東海村臨界事故や福島第一原発事故など原子力災害への派遣が多く、特に前者の事件を契機に中性子防護板の追加取得を実施、万一という許されざる想定への備えが、福島第一原発により発揮されることとなったのです。
Oimg_5164 化学剤監視装置。化学剤監視統治が正し呼称で、化学時検知装置というのは誤りでした。従来の化学剤感知装置は、装置内に化学剤が浸透した際に警報を発するもので、言い換えれば警報が鳴った時点で七秒以内に防護体制を採らなければ被害に遭うというものでした。しかし、米軍では湾岸戦争などの戦訓から万一化学兵器が使用された場合を警戒する遠隔監視装置の研究を実施してきました。
Oimg_5170 化学剤の遠隔監視、米軍の研究開始、これをもとに陸上自衛隊でもレーザーの反射特性と化学剤の反射特性を研究し、遠隔地での汚染分布に対し化学剤が浸透する以前に警報を発する装備として完成させたものです。装備は大型トラック搭載の評定処理装置と高機動車車載の監視装置三基、そしてヘリコプター搭載用監視装置一基から構成されます。観閲行進の写真は以上、こののち訓練展示となりますが、訓練展示は動きが早く距離も大きく、G-12の出る場面はありません。EOS-7Dの写真はいずれ紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

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