北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望① 防衛産業への理解の現状

2012-08-12 23:18:46 | 防衛・安全保障

◆はじめに

 今回から“防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望”特集を開始します。この背景は我が国防衛産業の立ち位置が余りに誤解されているからにほかなりません。

Gimg_9961 もう十年ほど前になりますが、一回生対象の学部を挙げての金一封が出るプレゼンテーション大会にて、優勝したのが“81式短SAMは東芝製”という内容でした。いや、東芝がミサイルを開発しているのは何か不思議なの?、と当方は素朴に思ったのですが、装備年鑑に目を通したことの無い方は意外と多く、東芝と言えばエネルギーとエレクトロニクスにサザエさん、日本でも民生品を開発する企業がミサイルを造っていたなんて!、とヴェトナム戦争では第一線に立たれていた教授を含め教授方からも評価が高く優勝、この事実は案外知られていないのか、と驚いた次第です。

Gimg_2725 さて、我が国は装備品の多くを国産により充当、これ以外のものは極力ライセンス生産により取得する方式を採っています。装備を国内で調達することへの批判、というものがあるようです。実はこれは稼働率や地形制約、予算方式に運用特性といった様々な理由から導き出された方式なのですが、批判する方々の支線からは、日本の軍産複合体だ、とか、不当に高い装備を交わされている、とか、アメリカに重要な部分を握られているので独立した軍事作戦が採れない、という分かったようなわからないような誤解に基づく批判にも曝されているのです。

Gimg_0197 一頃には、自衛隊装備は高すぎる、という内容を叩くマスメディアの論調がもてはやされたことがあり、新聞社の週刊誌と記憶しますが湾岸戦争の頃に出されたもので、空母ミッドウェー9億円:護衛艦しらね427億円、こんなに高い護衛艦!、という内容があったように記憶します。そんなこと言ったら戦艦榛名は5000万円だぞ、と比較軸が間違っているものもありましたし、株主優待以上に有利な自国向け価格と輸出用価格の相違が無視されているものもあり、しかし知らないとそのまま高いという印象だけ残るのだろうなあ、と思ったことも。

Gimg_1402 最近いつもお世話になっている方から教えていただいたのですが、自衛隊装備の批判は方式があり、先端装備はガラパゴス化装備で基本に忠実な装備は時代遅れ装備、安価な装備はわけありで高価な装備は海外製に劣る、新型装備導入へは旧式を改修すべきと批判し導入が遅れれば海外から最新型を導入すべき、装備体系では企業一社が生産を担うものは独占的で複数社が担うものは合理化へ一社化すべき、単年度少数長期調達へは一括調達で安くする必要性を説く一方で多年度一括調達へは調達柔軟性への影響、と批判するのだとか。

Gimg_1272 これらの問題はいくつかの誤解に基づくものなのですが、まず、常に装備品とは希望すれば売ってもらうことが可能なのか、その装備品は確実に使いこなせる保証があるのか、いつまでその装備を補修し使うことが出来るのか、海外の最新装備は果たして我が国での運用に合致するものなのか、という、ざっと思いつくだけでもこれだけの疑問符、もしくは不確定要素、というべきでしょうか、問題があり、一概に海外製を買うということの利点を強調することはできません。

Gimg_7354 また、日本の装備は高価である、という、これは一昔では常識のように語られ、曰く競争が無いのだから高くなる、曰く生産数が少なく量産効果が出ないのは輸出しないのだから仕方ない、曰く海外から直接購入すればライセンス生産の装備と直輸入の装備ではこれだけ値段が違う、というような点を強調し、やはり無駄だ、出費がおかしい、というような視点は、全て方向違いとは言い切りませんが、輸入してか同数を揃えた場合安くなるのかという点を軸に反論してみますと、その再反論は概ね全般的に片手落ちの議論です。

Gimg_3747 また、我が国が防衛産業を有している、という点が海外装備の対日供与における障壁を取り払う事例、海外の同等品装備を安く取得する転機として作用することがありますし、もう一つ、我が国が防衛装備品を自力で開発し整備し補給体系を構築できる、ということが、我が国の防衛力の一要素、継戦能力を高めることになり、ひいては抑止力としての作用を以て、我が国の安全保障全般を担っている一要素足り得ているのだ、という視点も含めて考えてみる必要もあるでしょう。

Gimg_0822 さてさて、昨日の護衛艦あきづき型五隻建造の誤報、失礼いたしました。八回に渡り特集した『海上自衛隊地方隊への一考察』の際もそうでしたが、やはり当方も知識の限界、理解の間違い、などなど誤字脱字以上の根源的な誤りというものはあり、コメント欄における訂正コメントにより助けられました。Weblogは双方向、恐らくどう意識して注意を払っても、限られた時間で限られた知識を上限以上に示そうとするのですから、間違いや誤解も出てくると思います。その際は、またコメント欄での指摘や、ひいては討議で記事を深めることが出来れば幸い。

Gimg_9929 防衛産業の立ち位置があまりに誤解されている、と冒頭に記したものの、それは当方が誤解しているからでは?、と思われる方もいるやもしれませんが、最大限の努力を行います。現在のところ、どの程度の連載記事とするかは決めていません。それでは北大路機関記事カテゴリー“防衛安全保障”の特集記事“防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望”をよろしくお願いいたします。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (9)
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