◆8500t大型駆逐艦のPower Shot G-12撮影速報
本日、海上自衛隊舞鶴基地において同基地を親善訪問中のロシア海軍太平洋艦隊駆逐艦アドミラルパンテレーエフが一般公開されました。
アドミラルパンテレーエフはウダロイⅠ型駆逐艦の最終艦で1991年に就役、対潜用SS-N-14誘導弾四連装発射器二基と対潜用Ka-27哨戒ヘリコプター二機を搭載する対潜駆逐艦で、米海軍のスプルーアンス級駆逐艦に対抗するもの、とされていました。満載排水量は8500t、しらね型の7200tよりも大きく、こんごう型の9500tに迫る大型艦です。手前からSA-N-9短射程対空誘導弾用垂直発射装置二基、100mm単装砲二基、巨大なSS-N-14対潜誘導弾四連装発射装置二基、そして艦橋上に並ぶ物凄い数の電装品、これがロシアの艦というものか。
舞鶴基地に停泊するアドミラルパンテレーエフ、艦容はもとより艦番号の位置まで護衛艦とは全く異なる駆逐艦の威容を見上げます。入港を観たかったのですが、そう何度も行くことはできません。そこd、一般公開が今回は行われるという事でしたので、焦点を併せます、そういいますのも昨年はミサイル巡洋艦ワリャーグが舞鶴を親善訪問しましたが、一般公開は無く、今回は一般公開が行われることとなり何とかお仕事にひと区切りをつけ朝一に鉄路を北へ。
背負い式の艦砲二基を搭載し、対潜誘導弾を搭載したうえで対潜ヘリコプター運用を重視している、スプルーアンス級では無く、はるな型の延長上にあるような素朴な印象があったのですが、別物でした。ウダロイ級はウダロイⅠ級が1980年から12隻が建造され現在9隻が現役、ウダロイⅡ型は一隻のみ建造、運用されています。ソ連崩壊後には、最新のウダロイⅠ型駆逐艦12隻と、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦17隻が長期的に残る、とみられていたのですが、ウダロイ級は各型9隻、蒸気タービン方式のソブレメンヌイ級は7隻となってしまいました。
対潜兵装と艦砲で城郭を構成すればこんな天守閣となるのでは、そんな一隻花火大会対応艦のウダロイ級で一際目立つのは艦橋基部に四連装発射器二基が搭載される巨大なSS-N-14サイレックス発射器で、これは射程50kmの亜音速魚雷運搬無人機、プログラム誘導のほかヘリコプターからの誘導も可能なもので、海上自衛隊が多用する魚雷をロケットにより投射するアスロックを更に進めたもの。このほか、533mm魚雷発射管にRBU-6000十二連装対潜ロケット発射器を搭載し、潜水艦に備えています。
533mm四連装魚雷発射管。一般公開されている上甲板、一礼して乗艦するといきなり巨大な魚雷が待ち構えています。大きいのも当然というべきでしょう、護衛艦では324mm短魚雷三連装発射管を舷側へ搭載するのですが、ロシア艦では533mmを搭載します。射程8km雷速41ノットのUMGT-1を搭載するのですが、ロシア海軍はTEST-96航跡追尾魚雷などを開発しており、対水上戦闘にも用いることが出来るようです。こんな大きなものを搭載するのか、正直な驚きでしたね。
軍艦は国家の延長、その上でウダロイ級は抑止力を発揮するにうってつけの一隻なのですが、要目を見てみます。満載排水量8500t、全長163.5m、ガスタービン四基二軸推進、機関出力69100hp、速力29ノット、乗員249名、ソ連時代の艦とあって威容というのはかなり強い印象です。こういうのも、冒頭に記したように城郭のような武装の塊なのですから。軍艦にとり、同盟国以外においても親善訪問を行うことはプレゼンスを示すと共に友好関係を構築する、そういう意味で今回のような平日の一般公開も重要なのでしょう。
100mm59口径単装砲、有人砲で水冷砲身により16kgの砲弾を毎分60発の射撃が可能です。射程は15km、マウント重量は40tあるのですが、実物を見ますとそこまで大きくなく、しらね型や、はるな型の5インチ砲背負式配置とは大分印象が異なりました。もっとも、乾舷が高い、という事もあるのかもしれませんが。このほか、対艦ミサイルに備え給弾装置を艦内に収めたコンパクトな30mmCIWSが四基搭載です。そしてこの写真ですが、床が黒っぽいのはコールタールを塗っているのか、服が汚れる危険があり、ロシア艦の脅威でした。
Ka-27ヘリコプター、機内は一般公開されており、対潜器材が搭載されず捜索レーダーとホイストのみ装備されていましたので救難型の模様、機体は一見大きく見えるのですが機内はUH-60と比べるとかなり狭い印象、天井も低かった。驚いたのはコパイロット席の位置に操縦桿が無く、レーダーコンソールが配置されていた事です。着艦拘束装置等は無く、網を甲板に轢いて着艦するという事で、搭乗員の技量が求められます。こののち、コックピットに入ることが出来、束の間のパイロット気分です。
格納庫はスロープ式で機体は艦内に搭載、するのですが、それにしても格納庫が小さかった。ヘリコプター二機搭載、ウダロイ級はソ連駆逐艦として初めて複数のヘリコプターを搭載しました。駆逐艦として、という記載ですが、クレスタ級巡洋艦やカーラ級巡洋艦は一機搭載、三機搭載のキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦就役はウダロイ級就役と同年就役ですから、モスクワ級ヘリコプター巡洋艦とキエフ級航空巡洋艦を除けばソ連初の複数機搭載、というところ。
兎に角重武装、ゴジラにも対抗できそうなほど火力の塊でした。ロシア海軍は、ウダロイⅡ型として、本型のSS-N-14を対艦攻撃用のSS-N-22サンバーン超音速艦対艦ミサイルへ改めたものを建造しました、が、量産開始前に冷戦が終わってしまいました。今後ロシア海軍はステルス性を重視した満載排水量4500tのアドミラルゴルシコフ級フリゲイト、空母と同じ名前のフリゲイトへと転換するようです。来年から就役開始が見込まれ、20隻程度量産される、ようなのですが、この勇ましい艦容も今後減ってゆくのでしょうか。
一通り艦上の一般公開を見学し終え、基地を出ました。北吸桟橋なのですが、一緒に入港した補給艦ボリスブトマは埠頭の途中に立ち入り禁止の表示があり、断念しました。せめて艦尾だけでも、と撮ろうとすると、なんと艦上から警備犬二匹が見下ろしているのが見えました。ワンコ搭載艦、初めて見ました。埠頭には、みょうこう、しらね、そしてホストシップみねゆき、が停泊していたのですが、みねゆき、は奥に停泊しておりこちらも立ち入り禁止でした。面白いのは立ち入り禁止の表示が日本語とロシア語で書かれていた事。写真は奥に練習艦から護衛艦に復帰した護衛艦あさぎり、が奥に見えます。
前島埠頭から眺めたアドミラルパンテレーエフ、しらね、みょうこう。今回の親善訪問は、太平洋艦隊艦艇団司令ソボカイセルゲイペトローヴィッチ大佐が指揮を執り、アドミラルパンテレーエフ艦長のポドコパイロピョートルアレクサンドロヴィッチ大佐以下が寄港、我が国からは第14護衛隊司令桑野弘道1大佐、護衛艦みねゆき艦長鈴木拓哉2佐がホストシップとして参加しています。一般公開は本日の身なのですが、帰国行事が土曜日に行われ、0900時に舞鶴を出港するとのこと。お時間がある方は出港を見に行かれてはどうでしょうか。
やはりロシア艦は違うなあ、と思いつつ、何か違和感が、少し考えてみますと、そう、天気です。前島埠頭から東舞鶴駅まで徒歩25分ほど、アーケード街までも10分以上かかるのですが、明らかに舞鶴基地で青空の下ロシア艦を撮影していた時と比べますと、この写真はかなり空が灰色になっているのがみえるのですが、見えないものも。何が見えないのか、と言われれば背景の山が見えなくなっている、今話題のゲリラ豪雨がベールのように迫ってきているのです。そして何か違う印象、そう、一つ上の写真、しらね、みょうこう、離れているようにみえませんかね。
しらね出港!、おお、これが同型艦くらま、なら特集記事が組まれるほどのもの、運よく出港を見ることが出来ました。が、明らかにゲリラ豪雨勢力も接近中、西舞鶴市街地と東舞鶴駅の方は既に降っている模様、勇壮な護衛艦しらね出港を撮影しつつ、一瞬考えたのち最寄りの新日本海フェリーターミナルへ一時雨宿り、その後雷雨と叩きつける雨が襲ってきました。一時間ほど雨宿りをしたのちに、基地から市街地へ上陸したロシアの水兵さんと共に駅の方へ向かい、昼食とロシアさんに釣られてこちらもビールを注文したのち、東舞鶴から帰路につきました。
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