◆ゴラン国際平和協力業務とウガンダ輸送調整業務
自衛隊は現在、世界でのPKO任務に当たっていますが、この任務と安全性確保へ気になる事案が二つほど出てきました。
ウガンダでエボラ出血熱。ウガンダには現在、南スーダンPKOへ活動を行う部隊への補給へ、輸送調整業務部隊としてウガンダのエンデべへ支援部隊が派遣中です。このウガンダでは奥地においてエボラ出血熱患者の確認事例が報告されていましたが世界保健機関WHO,米疾病対策センターCDCの7月30日の発表によれば首都カンパラにおいてエボラ出血熱の罹患者が確認され、隔離措置などが採られているということですが、既に死者が出ているとのこと。
エボラ出血熱は、最初に確認されたのがザイール(現コンゴ民主共和国)のエボラ川流域であったことに起因し、宿主などは確認されていません。感染し発症した場合は39度の高熱を発し、消化器系の出血を伴うと共に末期状態では体内から出血を伴い死亡するという病状に特色があり、罹患者の血液に触れた場合、血液を介して感染するとされているほか、罹患者の致死率は50~90%と非常に高いのに加え、現在でも治療法やワクチンは確認されていません。
WHO,CDCによれば現在、ウガンダ国内西部と首都カンパラでの感染状況は渡航に影響を与える程度ではないとされますが、ウガンダのオンドア保健相によれば、今回のエボラ出血熱は初期症状での典型症状を伴わないため発見が遅れ、罹患し保菌者が発症するまでの潜伏期間中に移動したことが感染拡大に繋がった、とのことです。ウガンダ保健当局によればこれまで確認された発症患者は30日までに20名、うち死者は14名で、致死率は70%ということになり、警戒が必要でしょう。
シリア内戦。連日激戦が伝えられますが、シリア国内ではイスラエルとシリアの戦力引き離し任務へのPKOとして国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)が展開中です。イスラエルとシリアの中東戦争停戦合意履行監視へのPKO派遣なのですが、この地域においてシリア反体制派武装勢力とシリア軍との間で戦闘が発生したとのこと。同地では、シリア内戦激化に伴いシリア軍駐留部隊の首都防衛への転進が伝えられ、この戦力移動が内戦戦闘地域拡大を招いたといえるやもしれません。
ゴラン高原PKOは自衛隊が1996年より継続している任務で、自衛隊の任務はシリアのファウアール駐屯地UNDOF司令部への司令部要員派遣3名と、イスラエル側ジウアニ駐屯地を拠点とする43名の輸送支援任務で、UNDOFの活動に必要な物資輸送及び物資保管、更には輸送路の補修任務を担っています。このほか、内閣府から連絡調整要員がイスラエルとシリアへ1~2名づつ派遣されており、司令部との連絡業務に当たっています。シリア内戦と共に安全確保は野党自民党が強く要請しましたが、与党民主党に必要な措置を採りませんでした。
ゴラン高原PKOでは、シリア側からの武装勢力のロケット弾攻撃にイスラエル軍が反撃し、場合によっては越境反撃が行われるという事案がたびたび繰り返されてきましたが、現時点ではゴラン高原へのシリア内戦波及が直接イスラエルとの戦闘に波及する危険は低いとされているものの、最悪の状況に展開した場合、どのようにPKO要員の安全を確保するのか、貴重な時間を空費してしまった果てにゴラン高原へ内戦は拡大しましたが、情報収集を慎重に行い、安全確保に必要なあらゆる措置が採られるべきです。
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