■国際協調阻む手段の平和主義
平和を目的では無く手段と取り違える事で日本は平和憲法により結果的に国際社会から孤立する、アジア安全保障会議での印象です。
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シンガポールで開かれているアジア安全保障会議、2日から3日間の日程で開催されましたが、北朝鮮核開発問題での関係国の一致はありましたが、中国による南シナ海海洋占領問題については、アメリカの関与自制措置と共に諦観の動きが顕著となりつつあります。そして諦観とは、現在の異常な海洋占有の状況が日米豪の主導権を日米が敢えて積極姿勢に出ない事から
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日本は平和憲法により結果的に国際社会から孤立する、という可能性は主権者の望むところなのか、今回考えてみたいのはこの点についてです。安全保障協力において我が国は友好国との関係を一線を越えない範囲において完全に断ち切っています、具体的には防衛協力という部分で国家の存亡を左右する状況では日本は平和憲法により関与できない、という姿勢を堅持しているわけです。
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国家の命運を左右する状況では協力できないが、それ以外の分野では協力関係を深める、という姿勢は明らかに安全保障への施策として不安要素を持ち、結果的に地域的安全保障枠組みなどの展開を制限してしまう形にほかなりません。憲法は98条に国際協調主義を掲げていますが、例えば日米間の安全保障条約に準じる水準の包括安全保障協力協定などを諸外国と締結する場合、その一歩進んだ安全保障協力へ防衛協力を盛り込む施策が憲法9条により制約されてしまうわけです。
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憲法判例では憲法は最高法規という位置づけですが、条約の優位性が先んじる場合があるとした内閣法制局解釈が現在、最高裁判所から統治行為論として政治問題の授権を受けた解釈となっています。平和憲法と国際協調主義の対立、そもそも1956年に事実上の集団安全保障機関である国連へ日本が加盟した時点で解決すべき命題でしたが、国連加盟から51年を経てまだこの問題について我が国は明確な姿勢を示していません。
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憲法が憲法9条の平和主義を教条主義的に固守した場合、有事の際にはどうなるのか、これは古く新しい議論です。しかしそもそも憲法とは国家の構造を示すと共に人権を提示している訳で、平和的生存権を享受する権利はあっても平和政策の犠牲を国民が受任する義務ではない訳です。平和主義と不戦の誓い、それでは有事の際の国民の生存権はどうなるのか、有事の際に攻撃され破壊される財産権はどうなるのか、有事の際には憲法が事実上機能しない、という状況を醸成しているといわざるを得ないでしょう。
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ただし、この部分については司法府は統治行為論、として政治問題であることは司法が判断することではない、と行政府に判断の権限を授権していますので、平和主義の範疇でも行えることはあります。現行憲法では軍隊ではないが自衛隊は保持できていますし、長沼ナイキ訴訟地裁判決の一回をのぞき、地裁高裁最高裁は自衛隊違憲の判決を出していません。
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それでも、周辺国との安全保障協力を進める際に、その線引きが毎回日本の司法府にゆだねられる、という状況では防衛協力を進めたとしても一定以上の深化は望めません、それは土壇場になって日本からの支援が遮断される可能性があるためです。除籍の余剰航空機供与、中古艦船の貸与、将来的には用途廃止となる陸上防衛装備の第三国貸与という選択肢も開拓される可能性はありますが、これだけでは不十分です。
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自衛隊法改正により中古装備の貸与が可能となりますが、捨てている装備は貴重なものが多い、ゆうしお型潜水艦に潜水艦はるしお型の除籍、はつゆき型護衛艦等は外洋航行可能な水上戦闘艦や比較的新しい潜水艦として今なお大きなポテンシャルを持ち続けつつ除籍されています。L-90機関砲などは170セット導入し、陸上防空の主力を担いましたが自衛隊ではミサイルへの転換によりあっさりと用途廃止されました、レーダー管制方式の近代的な戦術防空システムで、この廃棄は諸外国からは勿体ない、の一言に尽きるでしょう。
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勿体ない、とは。FH-70榴弾砲も自走砲並に高性能だが自走砲並に高価であったとして開発された欧州では普及しませんでしたが自衛隊は479門も調達しました、これとて廃止していますが第二次大戦型火砲さえ残る諸外国からは沿岸防衛に喉から手がでるほど欲しい装備でしょう。陸上装備は74式戦車は古すぎますが、10式戦車の配備と共に90式戦車の除籍が遠からず始ります、これとて第二世代戦車しか持たない諸国からは切望する装備の一つ。
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防衛協力は現在の水準を多少進めても不十分、こういいますのも、我が国内における日米安全保障条約不信論に繋がる視点で、この論点はアメリカは万一の際に日本を見捨てるのではないか、という同盟国への不信論が日本には少なからずありますが、一方、相手国の立場となれば戦争をせず軍隊を持たない国が防衛協力を持ちかけ、最大限の信頼を日本へ託すことができるか、という視点です。
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日本の世論でさえアメリカの有事の協力を万全の信頼が出来ないという声があるのですから、日本が防衛協力を進めつつ、軍事力を背景とした現状変更を許さない有志連合の醸成を試みたとしても、日本の協力に万全の信頼を寄せるという選択肢には無理があります。東南アジア諸国が中国の軍事圧力と経済的牽制を背景に主権を維持する事と衛星国への転落の選択肢を限られた場合、妥協の結果は様々な施策があり得る、ということ。
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日本国憲法により日本は世界から、特にアジア太平洋地域から孤立する可能性はあるのですが、主権者としての我々は、名誉ある孤立として周りの国からの孤立をこれからも強く支持してゆくのでしょうか。安全保障環境が緊迫度を増すなか、考えねばならない視点の一つです。勿論、周辺国と強調し友好関係を維持する事は重要ですが、軍事力の大きな国による現状変更を看過しては誤った外交意志と相手国に取られかねません。
北大路機関:はるな くらま
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平和を目的では無く手段と取り違える事で日本は平和憲法により結果的に国際社会から孤立する、アジア安全保障会議での印象です。
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シンガポールで開かれているアジア安全保障会議、2日から3日間の日程で開催されましたが、北朝鮮核開発問題での関係国の一致はありましたが、中国による南シナ海海洋占領問題については、アメリカの関与自制措置と共に諦観の動きが顕著となりつつあります。そして諦観とは、現在の異常な海洋占有の状況が日米豪の主導権を日米が敢えて積極姿勢に出ない事から
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日本は平和憲法により結果的に国際社会から孤立する、という可能性は主権者の望むところなのか、今回考えてみたいのはこの点についてです。安全保障協力において我が国は友好国との関係を一線を越えない範囲において完全に断ち切っています、具体的には防衛協力という部分で国家の存亡を左右する状況では日本は平和憲法により関与できない、という姿勢を堅持しているわけです。
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国家の命運を左右する状況では協力できないが、それ以外の分野では協力関係を深める、という姿勢は明らかに安全保障への施策として不安要素を持ち、結果的に地域的安全保障枠組みなどの展開を制限してしまう形にほかなりません。憲法は98条に国際協調主義を掲げていますが、例えば日米間の安全保障条約に準じる水準の包括安全保障協力協定などを諸外国と締結する場合、その一歩進んだ安全保障協力へ防衛協力を盛り込む施策が憲法9条により制約されてしまうわけです。
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憲法判例では憲法は最高法規という位置づけですが、条約の優位性が先んじる場合があるとした内閣法制局解釈が現在、最高裁判所から統治行為論として政治問題の授権を受けた解釈となっています。平和憲法と国際協調主義の対立、そもそも1956年に事実上の集団安全保障機関である国連へ日本が加盟した時点で解決すべき命題でしたが、国連加盟から51年を経てまだこの問題について我が国は明確な姿勢を示していません。
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憲法が憲法9条の平和主義を教条主義的に固守した場合、有事の際にはどうなるのか、これは古く新しい議論です。しかしそもそも憲法とは国家の構造を示すと共に人権を提示している訳で、平和的生存権を享受する権利はあっても平和政策の犠牲を国民が受任する義務ではない訳です。平和主義と不戦の誓い、それでは有事の際の国民の生存権はどうなるのか、有事の際に攻撃され破壊される財産権はどうなるのか、有事の際には憲法が事実上機能しない、という状況を醸成しているといわざるを得ないでしょう。
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ただし、この部分については司法府は統治行為論、として政治問題であることは司法が判断することではない、と行政府に判断の権限を授権していますので、平和主義の範疇でも行えることはあります。現行憲法では軍隊ではないが自衛隊は保持できていますし、長沼ナイキ訴訟地裁判決の一回をのぞき、地裁高裁最高裁は自衛隊違憲の判決を出していません。
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それでも、周辺国との安全保障協力を進める際に、その線引きが毎回日本の司法府にゆだねられる、という状況では防衛協力を進めたとしても一定以上の深化は望めません、それは土壇場になって日本からの支援が遮断される可能性があるためです。除籍の余剰航空機供与、中古艦船の貸与、将来的には用途廃止となる陸上防衛装備の第三国貸与という選択肢も開拓される可能性はありますが、これだけでは不十分です。
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自衛隊法改正により中古装備の貸与が可能となりますが、捨てている装備は貴重なものが多い、ゆうしお型潜水艦に潜水艦はるしお型の除籍、はつゆき型護衛艦等は外洋航行可能な水上戦闘艦や比較的新しい潜水艦として今なお大きなポテンシャルを持ち続けつつ除籍されています。L-90機関砲などは170セット導入し、陸上防空の主力を担いましたが自衛隊ではミサイルへの転換によりあっさりと用途廃止されました、レーダー管制方式の近代的な戦術防空システムで、この廃棄は諸外国からは勿体ない、の一言に尽きるでしょう。
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勿体ない、とは。FH-70榴弾砲も自走砲並に高性能だが自走砲並に高価であったとして開発された欧州では普及しませんでしたが自衛隊は479門も調達しました、これとて廃止していますが第二次大戦型火砲さえ残る諸外国からは沿岸防衛に喉から手がでるほど欲しい装備でしょう。陸上装備は74式戦車は古すぎますが、10式戦車の配備と共に90式戦車の除籍が遠からず始ります、これとて第二世代戦車しか持たない諸国からは切望する装備の一つ。
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防衛協力は現在の水準を多少進めても不十分、こういいますのも、我が国内における日米安全保障条約不信論に繋がる視点で、この論点はアメリカは万一の際に日本を見捨てるのではないか、という同盟国への不信論が日本には少なからずありますが、一方、相手国の立場となれば戦争をせず軍隊を持たない国が防衛協力を持ちかけ、最大限の信頼を日本へ託すことができるか、という視点です。
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日本の世論でさえアメリカの有事の協力を万全の信頼が出来ないという声があるのですから、日本が防衛協力を進めつつ、軍事力を背景とした現状変更を許さない有志連合の醸成を試みたとしても、日本の協力に万全の信頼を寄せるという選択肢には無理があります。東南アジア諸国が中国の軍事圧力と経済的牽制を背景に主権を維持する事と衛星国への転落の選択肢を限られた場合、妥協の結果は様々な施策があり得る、ということ。
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日本国憲法により日本は世界から、特にアジア太平洋地域から孤立する可能性はあるのですが、主権者としての我々は、名誉ある孤立として周りの国からの孤立をこれからも強く支持してゆくのでしょうか。安全保障環境が緊迫度を増すなか、考えねばならない視点の一つです。勿論、周辺国と強調し友好関係を維持する事は重要ですが、軍事力の大きな国による現状変更を看過しては誤った外交意志と相手国に取られかねません。
北大路機関:はるな くらま
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