■難民二〇万!東アジア狙うISIL
我が国ではテロ等準備罪法案国会審議が大詰めとなっていますが、テロは迫っています。南の隣国フィリピンではイスラム過激派ISILが中東から長躯展開、戦闘は二週間目に入りました。
フィリピンにおいてISILが大規模な攻勢に出ています。フィリピンと云えば日本の南の隣国、遠い国の話ではありません。既に四月にはフィリピンミンダナオ島においてISILの活動が活性化し、ドゥテルテ大統領は先月、ミンダナオ島当該地域に戒厳令を発令しISIL掃討作戦を展開しています。しかし、当初は短期間で掃討できるとされた治安作戦はISILが対戦車火器や迫撃砲を装備しており、鎮圧作戦は難航しています。
ISILとのミンダナオ島での戦闘の発端はマラウィ市の刑務所を先月、数十名のISIL戦闘員が襲撃し、服役者を逃亡させた事に端を発します。その後数時間で数百名のISIL戦闘員がマラウィ市の大半を武力掌握し、警察署を攻撃し治安機能を麻痺させた。続いてマラウィ市周辺の主要道路を封鎖、百数十名が死亡、事態を重く見たフィリピン政府が戒厳令を発令しました。
戒厳令から二週間、フィリピンでは国内難民20万が発生しています。正直此れほど長期化するとは思いませんでした。フィリピン南部の都市マラウィでは9日にフィリピン海兵隊部隊が待伏せ攻撃を受け、13名の戦死者が出ています。これに対しフィリピン軍は空軍の軽対地攻撃機を展開させ航空攻撃を実施すると共に、現在フィリピン国内においてフィリピン軍支援のため、一定規模のアメリカ軍特殊部隊が行動中である事が在比アメリカ大使館の声明により判明しました。フィリピンには過去にアルカイダの武装勢力が浸透した事はありましたがこれほどの攻勢に出た事は無く、アメリカが動いたかたち。
自衛隊が将来的にフィリピン国内での対テロ戦闘に参加する可能性は現時点でほぼありませんが、このまま戦闘員が定着し、ISILの拠点が構築されたならば、日本や中国でのISILに対するテロ活動の危険性が高まります。特に中国政府は国内のイスラム教への厳しい政策を継続しており、イスラム系少数民族への抑圧政策を経て、フィリピンと中国のイスラム過激派の連携が脅威となる可能性はある。
日本国内でのISILによるテロの可能性は現時点でこそ、高くはありませんが、”直ちに危険ではない”という水準で放置すれば将来的に脅威となります。特に海洋安全保障など幾つかの政策でフィリピン政府との協力を強化する日本はISILの攻撃目標となり得ます。また、テロに反対する国際協調に参加している日本は過去に何度もISILの攻撃対象であると名指しされており、東京五輪の開催が2020年に迫り、この他に在日米軍基地等もISILの攻撃の口実となり得ます。
中東の出来事であったISIL、しかし日本も対岸の火事ではなくなりつつある。ISILは中東地域での活動拠点の大半を失い、イラクとシリアの一部都市部に立てこもり最後の戦闘を展開しています。一方で欧州地域での無差別テロを乱発し、イスラム国家建設という当初の民衆支持を得るための試みは自爆テロによる存在の誇示に転落しつつあります。しかしこうした中で東南アジアのフィリピンにおいて最大規模の策源地を構成中です。逆の視点からは基盤が既に構築されたからこそ、市街地を広く占領し二週間以上も戦闘を展開できているのでしょう。
何故フィリピンにISILが拠点を構築しているのか。元々フィリピンには多数のイスラム教徒が定着しており、これはフィリピン独立前のアメリカ保護領時代から度々摩擦を起こしており、第二次世界大戦中では日本軍との接触もありました。戦後もゲリラ活動を展開しており、2002年からは対テロ戦争の一環として米軍との合同治安任務を展開していました、が、現在のドゥテルテ政権成立後に米軍との訓練が中断し、この軍事的空隙を突かれたかたち。
サウジアラビア、パキスタン、チェチェン、モロッコ今回の襲撃には遠方からの外国人戦闘員も今回の襲撃に加わっていたとの事で、ISILの東南アジアコネクションが確立されたことを物語ります。フィリピンと共にマレーシアとインドネシア島嶼部は錯綜地形と多島海域が続き、海賊も出没するため、海洋法執行機関の真空地帯ともなっています。しかしフィリピン、過去にはアメリカ軍を退去させた軍事的空白を突いて中国がフィリピン領ミスチーフ環礁を占領された歴史があり、今回のフィリピン政府は軍事的空白を作らないよう国防努力を行う大原則をまたしても忘れた事が要因の一つといえましょう。
ミンダナオ島での騒擾に併せ、アメリカは特殊部隊による支援を開始すると共にフィリピン軍への対テロ任務用の武器援助を開始しています。これは今月5日に在比アメリカ大使館が発表したもので、過去に無償供与を計画したところ、ドゥテルテ大統領に中古品は不要であるとして拒否したものです。供与品は小銃300と拳銃200に機関銃4丁、軽装備の2個中隊を編成できる規模の装備です。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
我が国ではテロ等準備罪法案国会審議が大詰めとなっていますが、テロは迫っています。南の隣国フィリピンではイスラム過激派ISILが中東から長躯展開、戦闘は二週間目に入りました。
フィリピンにおいてISILが大規模な攻勢に出ています。フィリピンと云えば日本の南の隣国、遠い国の話ではありません。既に四月にはフィリピンミンダナオ島においてISILの活動が活性化し、ドゥテルテ大統領は先月、ミンダナオ島当該地域に戒厳令を発令しISIL掃討作戦を展開しています。しかし、当初は短期間で掃討できるとされた治安作戦はISILが対戦車火器や迫撃砲を装備しており、鎮圧作戦は難航しています。
ISILとのミンダナオ島での戦闘の発端はマラウィ市の刑務所を先月、数十名のISIL戦闘員が襲撃し、服役者を逃亡させた事に端を発します。その後数時間で数百名のISIL戦闘員がマラウィ市の大半を武力掌握し、警察署を攻撃し治安機能を麻痺させた。続いてマラウィ市周辺の主要道路を封鎖、百数十名が死亡、事態を重く見たフィリピン政府が戒厳令を発令しました。
戒厳令から二週間、フィリピンでは国内難民20万が発生しています。正直此れほど長期化するとは思いませんでした。フィリピン南部の都市マラウィでは9日にフィリピン海兵隊部隊が待伏せ攻撃を受け、13名の戦死者が出ています。これに対しフィリピン軍は空軍の軽対地攻撃機を展開させ航空攻撃を実施すると共に、現在フィリピン国内においてフィリピン軍支援のため、一定規模のアメリカ軍特殊部隊が行動中である事が在比アメリカ大使館の声明により判明しました。フィリピンには過去にアルカイダの武装勢力が浸透した事はありましたがこれほどの攻勢に出た事は無く、アメリカが動いたかたち。
自衛隊が将来的にフィリピン国内での対テロ戦闘に参加する可能性は現時点でほぼありませんが、このまま戦闘員が定着し、ISILの拠点が構築されたならば、日本や中国でのISILに対するテロ活動の危険性が高まります。特に中国政府は国内のイスラム教への厳しい政策を継続しており、イスラム系少数民族への抑圧政策を経て、フィリピンと中国のイスラム過激派の連携が脅威となる可能性はある。
日本国内でのISILによるテロの可能性は現時点でこそ、高くはありませんが、”直ちに危険ではない”という水準で放置すれば将来的に脅威となります。特に海洋安全保障など幾つかの政策でフィリピン政府との協力を強化する日本はISILの攻撃目標となり得ます。また、テロに反対する国際協調に参加している日本は過去に何度もISILの攻撃対象であると名指しされており、東京五輪の開催が2020年に迫り、この他に在日米軍基地等もISILの攻撃の口実となり得ます。
中東の出来事であったISIL、しかし日本も対岸の火事ではなくなりつつある。ISILは中東地域での活動拠点の大半を失い、イラクとシリアの一部都市部に立てこもり最後の戦闘を展開しています。一方で欧州地域での無差別テロを乱発し、イスラム国家建設という当初の民衆支持を得るための試みは自爆テロによる存在の誇示に転落しつつあります。しかしこうした中で東南アジアのフィリピンにおいて最大規模の策源地を構成中です。逆の視点からは基盤が既に構築されたからこそ、市街地を広く占領し二週間以上も戦闘を展開できているのでしょう。
何故フィリピンにISILが拠点を構築しているのか。元々フィリピンには多数のイスラム教徒が定着しており、これはフィリピン独立前のアメリカ保護領時代から度々摩擦を起こしており、第二次世界大戦中では日本軍との接触もありました。戦後もゲリラ活動を展開しており、2002年からは対テロ戦争の一環として米軍との合同治安任務を展開していました、が、現在のドゥテルテ政権成立後に米軍との訓練が中断し、この軍事的空隙を突かれたかたち。
サウジアラビア、パキスタン、チェチェン、モロッコ今回の襲撃には遠方からの外国人戦闘員も今回の襲撃に加わっていたとの事で、ISILの東南アジアコネクションが確立されたことを物語ります。フィリピンと共にマレーシアとインドネシア島嶼部は錯綜地形と多島海域が続き、海賊も出没するため、海洋法執行機関の真空地帯ともなっています。しかしフィリピン、過去にはアメリカ軍を退去させた軍事的空白を突いて中国がフィリピン領ミスチーフ環礁を占領された歴史があり、今回のフィリピン政府は軍事的空白を作らないよう国防努力を行う大原則をまたしても忘れた事が要因の一つといえましょう。
ミンダナオ島での騒擾に併せ、アメリカは特殊部隊による支援を開始すると共にフィリピン軍への対テロ任務用の武器援助を開始しています。これは今月5日に在比アメリカ大使館が発表したもので、過去に無償供与を計画したところ、ドゥテルテ大統領に中古品は不要であるとして拒否したものです。供与品は小銃300と拳銃200に機関銃4丁、軽装備の2個中隊を編成できる規模の装備です。
北大路機関:はるな くらま
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