北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

F-35Aと重なる航空自衛隊調達計画,X-2試験とC-2&E-2D調達にF-15J&T-4後継機選定

2017-06-19 21:25:47 | 先端軍事テクノロジー
■防衛予算確保課題の十年
 F-35が日本の空を飛びましたが、様々な航空機の後継機計画が多様な理由で遅れ、更に新しい装備の調達が決定、これから10年間は予算確保が課題となります。

 X-2に初飛行の翌年に当たる今年、F-35戦闘機の日本FACO初飛行、いよいよ第五世代戦闘機の次代が日本にも到来しましたが、これによりようやくF-4EJ改戦闘機を置き換える事が可能となります。F-4EJ改は改修を重ねていますが原型は1959年にアメリカ海軍空母艦載機として初飛行した機体であり、優秀な機体ではありますが現代航空戦闘には古すぎる事は否めません、漸く置き換わる。

 しかし、航空自衛隊は様々な航空機後継機を必要とする時期が重なっています。これはX-2vsF-35という構図が成立するかもしれません、予算的な意味で。従来はここまで重なる事は航空自衛隊創設以来無かったのですが、元々はF-4EJ改後継機は本命であったF-22戦闘機導入が難航し、導入不可を経て正式に選定し、F-35戦闘機へ次期主力戦闘機が決定するまで時間を要しすぎました。今回はこの点について考えてみましょう。

 X-2実験機、航空自衛隊ではF-2支援戦闘機後継機として将来のF-3戦闘機へ、必要とされる第五世代機以降の戦闘機技術、第六世代戦闘機への構成要素を研究すべく各種将来戦闘機構成要素を技術開発し蓄積しましたが、先端技術実証機として包括技術試験を航空機形状の試験器材により実飛行を経て研究すべく昨年よりX-2実験機による試験を実施中です。

 F-2支援戦闘機後継機の研究が進む最中ですが、航空自衛隊ではF-2支援戦闘機の改修と、将来対艦戦闘へ対応させるべく各種試験を継続中で、この目玉事業としてXASM-3対艦ミサイルの開発を進めています。超音速で航空母艦などによる新しい脅威へ対応し得る優秀装備を期していますが、大型でありF-35には搭載出来ずF-3の開発を加速させるでしょう。

 F-15戦闘機後継機、こちらについても進めなければなりません。アメリカ空軍での初飛行は1968年とこちらも決して原型は新しい機体ではなく、航空自衛隊向けのF-15Jは1981年に配備開始、延命改修と近代化改修は継続されていますが初期型の機体は近代化改修に対応しない構造で、防空能力を維持するには初期型のF-15の代替としましてF-35戦闘機を追加調達しなければなりません。

 T-4練習機は200機以上が配備され操縦特性が良好で戦後の傑作機と云い得る機体ですが、こちらも1985年に初飛行、比較的新しい機体ではあるものの第五世代戦闘機の操縦要員を養成する想定はしておらず、また、練習機という構造上長期間の運用を想定し補強し得る部分があるかについては未知数で、延命改修を今後行わないとすれば200機以上生産したT-4の後継機も留意事項の一つ。

 C-2輸送機の美保基地への配備が開始され、配備開始早々誘導路逸脱事故に見舞われましたが、C-1輸送機の後継機として順次生産を重ねなければなりません。更にE-2C早期警戒機も1980年配備開始で後継機としてE-2Dの調達が開始されましたが、航空自衛隊は早期警戒機増勢を進めている為に調達数は重なり、UH-60J救難ヘリコプター代替も始りました。

 早期警戒機の増勢は南西諸島への中国脅威を受けてのものですが2010年代に決定、一方でC-2輸送機の開発が実に四年も遅延し調達が重なってしまいました。更にここに前述のF-35戦闘機画定への時間を要した事で、F-35調達とC-2調達にE-2D調達が重なり、並行してF-15J後継機選定とT-4後継機選定を実施、F-2後継機のF-3開発を並行せねばならない。

 航空機調達は巨額の費用が必要となりますが、航空自衛隊以外に陸上自衛隊は島嶼部防衛と再来した北方脅威への対応、海上自衛隊も汎用護衛艦勢力の再建とP-1哨戒機調達等が並びます。南西諸島防衛という新しい任務が提示されましたが、長期計画に当たる防衛計画の大綱が短期間で改訂を重ね、指針を決められぬまま大型調達計画が放置されたかたち。

 予算は有限ながら、航空機だけでもこれだけ重なる状況です。しかし、予算不足を理由に長期少数調達方式を採れば、航空機製造ラインを維持する費用だけでも積み重なる事となりますので、整備計画が長期的に破綻しかねません。厳しい財政状況であっても、F-35調達とE-2D調達にC-2調達、軌道に乗るまでこれから十年、予算確保が大きな課題です。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (15)
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