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陸上防衛作戦部隊論(第六二回):航空機動旅団、96式多目的誘導弾システムMPMS集中案

2017-06-01 22:10:26 | 防衛・安全保障
■96MPMSを空中機動
 陸上防衛作戦部隊論、第62回は対舟艇対戦車隊の集中運用と機動運用という視点についてです。

 陸上防衛作戦部隊論、前回までに普通科部隊と機動戦闘車に関する視点を提示しました。普通科中隊に対し軽装甲機動車を運用する中隊から小隊単位で一定数の装甲部隊を抽出させ、増強普通科中隊として中隊戦闘群を運用すべき、というもの。元々、本特集、広域師団、という試案は新防衛大綱画定に伴う戦車定数300両への削減を受けて提示しました。

 戦車が約300両という部隊規模では、全ての師団へ戦車大隊を配置し旅団へ戦車中隊を置くという選択肢は無く、それならば戦車という機動打撃力を包括運用する装甲機動旅団を、そして陸上自衛隊の重要な資産であるヘリコプターを、方面隊が隷下に有する方面航空隊を管理替えするというかたちで戦車を持たない軽装備の旅団へ集中、航空機動旅団とする。

 特集“陸上防衛作戦部隊論(第一回):師団旅団の現状と装甲機動旅団航空機動旅団案”を掲載開始したのは2015年4月20日、装甲機動旅団航空機動旅団案として2014年に提示した試案を改めて体系化したものです。装甲機動旅団という編成、前半の特集にて、戦車部隊を集中するもので、第11旅団を増強した程度の部隊を想定した部隊を提示しました。

 航空機動旅団、戦車とは根本的に異なる機動戦闘車の運用、前回はこの16式機動戦闘車をどのような部隊により運用するべきか、という視点から視点を提示しました。この16式機動戦闘車については前々回に、無理に普通科連隊へ編入せず、大隊隷下に二個中隊27両編成、機動砲大隊、可能であれば本部車両を含め30両編成とする、大隊案を提示しています。

 管理替え、防衛予算には現在、弾道ミサイル防衛と南西諸島への経空脅威増大、中国海軍の航空母艦建造という新しい脅威へ如何にして対応するのかという視点から、陸上防衛へは割ける予算が大きく制約されている中で、一部装備の調達は必要ながら現在陸上自衛隊が装備する装備を運用の集中と現実的な範疇での延命維持という方法論を重視しています。

 96式多目的誘導弾システムMPMS、今回からは既に制式化から20年以上を経つつ、しかし同等の装備はイスラエルのスパイクNLOS程度しか見当たらない、極めて高性能な、しかし調達計画の一点と、運用特性から限られた配備に留まった96式多目的誘導弾システムMPMSを、敢えて航空機動旅団へ集中装備させるという視点を提示し、検証してみます。

 96式多目的誘導弾システムMPMS、光ファイバー誘導方式の戦術ミサイルシステムとして世界で最初に開発に成功したもので、何よりも最大限の特色は大きな射程です。普通科連隊が展開する地域において重要地域、緊要地形などへヘリコプター空中機動により急速展開することで、半径10km圏内へミサイルによる精密火力支援網を構築する事が可能です。

 96式多目的誘導弾システムMPMSを旅団対戦車中隊へ装備する、この意味について。要点は戦術ミサイル網を空中機動、ということ。航空機動旅団はその保有する航空機としましてCH-47輸送ヘリコプターを最大限駆使するべく、独自の対戦車中隊を置くべきと考えます。具体的には対舟艇対戦車隊、輸送にはCH-47輸送ヘリコプター複数機を要しますが、96式多目的誘導弾システムMPMSを装備する事で、威力は変わる。

 射程が大きいMPMSは利点ばかりではなく、事実上間接照準射撃に近い運用を必要とする為、第一線とMPMSのデータリンク網、発見した目標情報を瞬時に共有する必要があるため、データリンクの普及以前は使いにくいものでした。中距離多目的誘導弾の配備へ転換しましたが、併せてMPMSは取得費用も大きかった為、多数が調達されていません。限られたMPMSだからこそ、機動運用が必要です。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (4)
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