北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

護衛艦いずも,南シナ海中国の九段線南沙諸島西沙諸島へ展開!東南アジア諸国へ日本決意明示

2017-06-26 22:52:15 | 防衛・安全保障
■護衛艦いずもアジア歴訪
 日本は中国の九段線政策へ如何に対応するか、ヘリコプター搭載護衛艦いずも、日本の外交姿勢の明示てアジア歴訪を展開中です。

 海上自衛隊は第一護衛隊群伍賀祥裕群司令を指揮官とする護衛艦二隻を東南アジア方面へ訓練派遣中です。特筆すべきは海上自衛隊最大の護衛艦いずも、満載排水量27000tの全通飛行甲板型護衛艦を護衛艦さざなみ、とともに派遣した点です。フィリピン親善訪問ではドゥテルテ大統領の表敬訪問を受け、シンガポールでは建国50周年観艦式へ参加しました。

 日本は海洋自由原則提唱のアメリカや豪州と東アジア諸国と同じ立場を堅持していますが、今回の東南アジア方面派遣では各国海軍士官との交流と航海実習を実施、この際に中国が九段線と呼ぶ海域へも部隊を派遣しました。中国が九段線と呼ぶ海域は中国が一方的に管轄権を主張、今回の派遣ではこの付近も航行、航空機接近という状況もあったようです。

 九段線、南沙諸島と西沙諸島に中国が設定した東南アジアの中央に位置する南シナ海全域を中国の了解と排他的経済水域と一方的に主張する拠点は、日本のシーレーンが通ると共に東南アジア地域での経済活動を円滑に維持するために重要な各国のシーレーンが通る海域です。ここを中国に閉鎖されたならば日本は第二次大戦末期と似た状態となりかねない。

 航行の自由作戦としてアメリカ海軍はオバマ政権時代から九段線の内側に当たる南沙諸島と西沙諸島へ海軍艦艇を派遣しています。アメリカ海軍の強力な水上戦闘艦を定期的に派遣する事で中国領有の既成事実化を阻止する目的がありますが、親中政策を掲げるトランプ政権へ交替して以降は中国に配慮し、艦艇航行実施が不活性的なものとなっていました。

 南シナ海で哨戒活動へアジア地域最大の海軍力を有する海上自衛隊にも積極的に参加を期待する、これがアメリカ海軍の従来からの姿勢ですが、我が国は南西諸島東シナ海での哨戒活動で艦艇に余裕がないとして、南シナ海での哨戒計画は無い、としてきました。しかし、今回の護衛艦いずも、さざなみ派遣は日本の意志を示す新しい機会となりましょう。

 我が国が期待するのは、今回の護衛艦いずも、さざなみ派遣と共に東南アジア諸国海軍士官を誘致し共に公開する事で、現在の中国による南シナ海進出強化という現実を前に、南シナ海情勢の認識や国際法の順守の重要性をASEAN各国との間で共有することが考えられます。これは遠く東京で繰り返し主張するのではなく実際に展開しなければ通じません。

 いずも、全通飛行甲板を有する海上自衛隊最大の護衛艦として2015年に就役、本年三月には二番艦かが、が就役しました。艦内には14機の各種ヘリコプターを搭載可能で、アメリカ海軍の様に甲板係留を行えば32機程度搭載可能、甲板はMH-53掃海ヘリコプター運用に対応しており垂直離着陸型F-35B戦闘機を艦上哨戒機として搭載する事も可能でしょう。

 横須賀出港と共に北朝鮮核実験警戒へ日本海に向かうアメリカ海軍原子力空母ロナルドレーガンに対し太平洋上での米艦防護任務、最も北朝鮮軍に太平洋上の米空母を捕捉し攻撃する手段はありませんが、海上自衛隊によるアメリカ海軍艦艇の防衛という任務を実施しました。その上で実際に東南アジア諸国へ派遣、日本が実際に行動する事を示したのです。

 東南アジア諸国の軍事力では中国海軍の恫喝に軍事力で対向する事は残念ながらできません。そして日本やアメリカが海洋自由原則を如何に宣言しようとも、実際に中国の海軍力を目の前で誇示されては恭順する他に選択肢が無い事も確かで、日本は孤立しないよう努力せねば、中国が日本を孤立させる努力に贖う事は出来ず、その努力が今回の派遣です。

 しかし、平時における行動だけでは東南アジア諸国の信頼を勝ち得られるほど甘くはありません。豪州空軍がISILとの戦闘が激化するフィリピンへP-3C哨戒機派遣を決定しました。フィリピン南部ミンダナオでのISILによる占拠は意外なほどに長期化しており、数百人の武装勢力掃討に対しフィリピン軍15万は、決定的な打開策を見いだせていません。

 豪州空軍はP-3Cを派遣する事で苦境に陥るフィリピンへ支援を行いました。ISILは世界で唯一フィリピンでの勢力構築が成功しつつあり、対テロ戦争の新しいホットスポットとなりつつあります。我が国はISILの海上連絡網を、かつてアルカイダへアラビア海にて有志連合が実施したような海上阻止行動を求められる可能性はあり、論点となりましょう。

 シンガポール海軍建軍50周年国際観艦式に参加した最大の艦は海上自衛隊の護衛艦いずも、でした。アメリカ海軍は駆逐艦スタレット、ロシア海軍はミサイル巡洋艦ワリャーグ、タイ海軍は空母チャクリナルエベットを派遣しましたが最大の艦は、いずも、です。派遣部隊はこのままインド洋へ展開し来月実施の米印合同演習マラバール2017へ参加予定です。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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