北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

米イージス艦フィッツジェラルド,静岡県沖太平洋上で比コンテナ船ACXクリスタルと衝突!

2017-06-17 22:29:00 | 防衛・安全保障
■米艦比船衝突事故!
 本日深夜、静岡県沖の太平洋でアメリカ海軍イージス艦がコンテナ船と衝突しました。

 イージス艦とコンテナ船の衝突事故が発生したのは静岡県南伊豆町石廊崎20km沖、アメリカ海軍ミサイル駆逐艦フィッツジェラルドとフィリピン船籍コンテナ船ACXクリスタルの衝突事故です。事故は本日0200時頃、第3管区海上保安本部へACXクリスタルよりアメリカ海軍艦船と衝突した旨通報、アメリカ海軍側に負傷者等が出ている事が判明します。

 被害が出ています。フィッツジェラルドは右舷上部構造物の艦橋前方が大きく損傷し、ブライスベンソン艦長ら3名が負傷、更に駆逐艦乗員7名が行方不明となっています。行方不明者捜索へは海上保安庁、アメリカ海軍の他、海上自衛隊の艦艇及び航空機も出動、捜索を実施しています。艦長ら負傷者は航空搬送され、横須賀海軍病院に収容されました。
 衝撃は大変なものだったでしょう。イージス艦は8300t、貨物船は29060t、フィッツジェラルドは浸水し、自力航行は可能であるものの機関出力は大きく制限される状況で、横須賀基地よりアメリカ軍曳船が派遣されると共に、イージス艦一隻が先導艦として派遣されました。報道映像を見る限り船体傾斜が確認され、船内からの排水が実施されています。

 横須賀基地へ帰港したフィッツジェラルドは明らかに傾斜しています。ただ、衝突した部分が仮にもう少し前の区画であれば、29セルのミサイル発射筒を備えたMk.41-VLSが配置されていますので、この弾薬区画へ被害が及べば非常に懸念すべき結果となっていた可能性も否定できず、衝突という最悪の状況下で回避努力が果たされた結果なのでしょうか。

 ブライスベンソン艦長の容体は安定している、CNN報道です。上部構造物が大きく破損している様子が報道映像などから確認できますが、フィッツジェラルドはアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の12番艦です。アーレイバーク級は艦橋基部、報道映像で損壊している下部に通路が配置され、強力なレーダー波から乗員を防護する構造ですがここが潰れている。

 損傷は艦橋基部から中部にかけ破損圧潰しており、SPY-1Dフェーズドアレイレーダー、イージス艦の目というべきレーダーの一部が変形している様子が見え、箱型のSLQ-32V3電子戦装置の姿は見えません。また艦橋見張り員の区画は傾き変形しています。艦橋基部には真下の船体内にCIC戦闘情報室が位置しており、損傷が及んでいる可能性もあります。

 駆逐艦は水上戦闘艦として船体はミサイルの命中や火災などを想定している他、アーレイバーク級からはミサイルの爆風などによるチープキルという被害局限へ一部分にケブラー装甲が施されていますが、現代の水上戦闘艦艇は長距離での戦闘を想定し設計されている為、第二次世界大戦中の巡洋艦や戦艦が有していたような装甲は配置されていません。

 イージス艦は強力な艦隊防空のための水上戦闘艦です。アーレイバーク級ミサイル駆逐艦は60隻以上が建造されアメリカ海軍の主力艦といえます。今回、艦橋が破損した点は一見脆弱に見えますが、現代軍艦がガレー船時代のような接舷戦闘を行わない為の設計です。一方、コンテナ船側の損傷は軽く今夕に目的地であった東京港大井埠頭に到着しました。

北大路機関:はるな くらま
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