■ジェット戦闘機運用基盤
戦後初の主力戦闘機として導入されたF-86セイバー戦闘機、開発国アメリカでは空母艦載機型FJ-2フューリーという派生型がありました。
RF-86偵察機、F-86の偵察機型ですが、その導入に関する研究が過去海上自衛隊にはありました。更にこのジェット機導入計画はそのままF-4導入計画等数多の海上自衛隊航空機導入計画下の研究へと発展してゆく事となります。RF-86偵察機は航空自衛隊が主力戦闘機として運用していた昼間戦闘機の偵察型で、機首の6門の12.7mm機銃に代え偵察カメラを搭載した構造です。
第二次防衛力整備計画時の研究の一環としてRF-86の海上自衛隊導入が模索され、概ね20機程度を導入した場合を想定し研究されたとのこと。保有していれば運用幅が広がる、という範疇のもので、RF-86は航空自衛隊も運用していましたが、当時航空自衛隊は航空偵察を陸上目標に限定しており、洋上の艦隊偵察などを想定していませんでした。この為当時の海上自衛隊はP-2V対潜哨戒機を索敵に用いる他なかったのです。
高速の偵察機が必要である、この視点は大型のP-2Vがソ連艦隊を偵察した場合、遠距離で発見され艦対空ミサイルによる迎撃を受ける可能性があり、当時のレーダー偵察能力では艦種、例えば巡洋艦部隊か、日本本土へ上陸の脅威を及ぼす水陸両用戦部隊なのかは判別できず、写真が不可欠です。この為、高速で飛行できるRF-86の必要性へ着目したもの。
潜水艦に対する高速偵察能力というものも重要な要素です。P-2V対潜哨戒機では潜水艦を高高度から発見した場合でも低空に降下に時間を要し、目標の潜水艦が潜航してしまいます、が、RF-86ならば、なにしろ元がジェット戦闘機ですので高速で急降下し撮影できる、という。しかしこの研究には空母艦載機戦闘機要員養成という視点は無かったでしょうか。
海上自衛隊が航空母艦を導入するためには空母艦載機が不可欠となります。一方、海上自衛隊は創設以来多数の航空機を運用しており中には艦載機もありました。海上自衛隊草創期、アメリカ海軍の空母艦載機アベンジャー攻撃機派生型の対潜哨戒機として索敵型のTBM-3Wが10機と攻撃型のTBM-3Sの10機を受領し、1961年まで訓練用に用いました。
S-2艦載対潜哨戒機を近海防衛用に導入すると共に同時期には海上自衛隊でもS-2対潜哨戒機を搭載可能な対潜空母の検討があったのはこれまでに紹介したとおりです。しかし、航空母艦の任務として忘れてはならないのが防空任務への戦闘機を搭載しての艦隊防空です。他方海上自衛隊には永らくジェット機の運用実績等が無く、ジェット戦闘機運用基盤や戦闘機運用能力もありません。
ジェット機を海上自衛隊が初めて装備したのは1987年の訓練支援機U-36A導入でした。これはビジネスジェット機リアジェット35を標的曳航などにも通るべく改修したもので、標的曳航能力に加え翼端にミサイルシーカーやチャフ散布装置等を搭載し自薦的訓練が可能です。海上自衛隊は従来、P-2J対潜哨戒機派生型を訓練支援に用いてきましたが、現代海戦のミサイル攻撃などを実戦環境で再現するには高速の航空機が必要、として導入に至ったもの。
しかし、U-36はあくまでビジネスジェットであり、その操縦特性はP-2V哨戒機のような大型航空機と変わりません。また、現在の海上自衛隊航空部隊練習機や航空教育訓練体系を見た場合でも戦闘機のような高速高機動の航空機搭乗員を練成できる機種はありません。この部分では、RF-86を導入し運用基盤を構築していたらば、次段階に進めた事でしょう。
さて、このRF-86偵察機の研究ですが、結局実現しませんでした。その最大の理由はRF-86に洋上偵察能力が無い点です。潜水艦へ急降下し偵察という能力はある種説得力はありますが、洋上偵察のための航法装置が限られ、加えて航空自衛隊では昼間戦闘機と呼称された通り、レーダーによる全天候飛行能力も持たないRF-86の洋上運用は非現実的でした。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
戦後初の主力戦闘機として導入されたF-86セイバー戦闘機、開発国アメリカでは空母艦載機型FJ-2フューリーという派生型がありました。
RF-86偵察機、F-86の偵察機型ですが、その導入に関する研究が過去海上自衛隊にはありました。更にこのジェット機導入計画はそのままF-4導入計画等数多の海上自衛隊航空機導入計画下の研究へと発展してゆく事となります。RF-86偵察機は航空自衛隊が主力戦闘機として運用していた昼間戦闘機の偵察型で、機首の6門の12.7mm機銃に代え偵察カメラを搭載した構造です。
第二次防衛力整備計画時の研究の一環としてRF-86の海上自衛隊導入が模索され、概ね20機程度を導入した場合を想定し研究されたとのこと。保有していれば運用幅が広がる、という範疇のもので、RF-86は航空自衛隊も運用していましたが、当時航空自衛隊は航空偵察を陸上目標に限定しており、洋上の艦隊偵察などを想定していませんでした。この為当時の海上自衛隊はP-2V対潜哨戒機を索敵に用いる他なかったのです。
高速の偵察機が必要である、この視点は大型のP-2Vがソ連艦隊を偵察した場合、遠距離で発見され艦対空ミサイルによる迎撃を受ける可能性があり、当時のレーダー偵察能力では艦種、例えば巡洋艦部隊か、日本本土へ上陸の脅威を及ぼす水陸両用戦部隊なのかは判別できず、写真が不可欠です。この為、高速で飛行できるRF-86の必要性へ着目したもの。
潜水艦に対する高速偵察能力というものも重要な要素です。P-2V対潜哨戒機では潜水艦を高高度から発見した場合でも低空に降下に時間を要し、目標の潜水艦が潜航してしまいます、が、RF-86ならば、なにしろ元がジェット戦闘機ですので高速で急降下し撮影できる、という。しかしこの研究には空母艦載機戦闘機要員養成という視点は無かったでしょうか。
海上自衛隊が航空母艦を導入するためには空母艦載機が不可欠となります。一方、海上自衛隊は創設以来多数の航空機を運用しており中には艦載機もありました。海上自衛隊草創期、アメリカ海軍の空母艦載機アベンジャー攻撃機派生型の対潜哨戒機として索敵型のTBM-3Wが10機と攻撃型のTBM-3Sの10機を受領し、1961年まで訓練用に用いました。
S-2艦載対潜哨戒機を近海防衛用に導入すると共に同時期には海上自衛隊でもS-2対潜哨戒機を搭載可能な対潜空母の検討があったのはこれまでに紹介したとおりです。しかし、航空母艦の任務として忘れてはならないのが防空任務への戦闘機を搭載しての艦隊防空です。他方海上自衛隊には永らくジェット機の運用実績等が無く、ジェット戦闘機運用基盤や戦闘機運用能力もありません。
ジェット機を海上自衛隊が初めて装備したのは1987年の訓練支援機U-36A導入でした。これはビジネスジェット機リアジェット35を標的曳航などにも通るべく改修したもので、標的曳航能力に加え翼端にミサイルシーカーやチャフ散布装置等を搭載し自薦的訓練が可能です。海上自衛隊は従来、P-2J対潜哨戒機派生型を訓練支援に用いてきましたが、現代海戦のミサイル攻撃などを実戦環境で再現するには高速の航空機が必要、として導入に至ったもの。
しかし、U-36はあくまでビジネスジェットであり、その操縦特性はP-2V哨戒機のような大型航空機と変わりません。また、現在の海上自衛隊航空部隊練習機や航空教育訓練体系を見た場合でも戦闘機のような高速高機動の航空機搭乗員を練成できる機種はありません。この部分では、RF-86を導入し運用基盤を構築していたらば、次段階に進めた事でしょう。
さて、このRF-86偵察機の研究ですが、結局実現しませんでした。その最大の理由はRF-86に洋上偵察能力が無い点です。潜水艦へ急降下し偵察という能力はある種説得力はありますが、洋上偵察のための航法装置が限られ、加えて航空自衛隊では昼間戦闘機と呼称された通り、レーダーによる全天候飛行能力も持たないRF-86の洋上運用は非現実的でした。
北大路機関:はるな くらま
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