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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮火星12型弾道ミサイル,早朝の北海道上空飛来!襟裳岬東方1180km太平洋上に着弾

2017-08-29 23:29:22 | 防衛・安全保障
■現実化する北朝鮮ミサイル脅威
 北朝鮮弾道ミサイル発射のJアラート警報音が早朝の日本列島に響き渡りました、4分後ミサイルは実際に北海道上空へ飛来した。

 弾道ミサイル1発が北朝鮮西岸より本日29日0558時頃、北東方向に向けて発射されました。防衛省によれば日本海上空で3つに分離、0606時頃、北海道渡島半島や襟裳岬上空を通過しました。飛行高度は襟裳岬上空550kmを通過し、発射から約14分後の0612時頃に、襟裳岬東方1180kmの太平洋上の日本の排他的経済水域の外に落下したと発表しています。

 防衛省は海上自衛隊の八戸航空基地よりP-3C哨戒機1機と厚木航空基地よりP-1哨戒機1機、航空自衛隊の千歳基地よりU-125救難捜索機1機を緊急発進させ、弾道ミサイル飛行経路下や落下海域の調査を実施しました。また国土交通省海上保安庁でも第1管区海上保安本部より現場海域に数隻の巡視船を派遣し、落下物と海上での被害等を調査しています。

 宇宙空間に配備されているアメリカ軍早期警戒用DSP衛星が今回、ミサイルを探知し、横田基地の日米ミサイル防衛調整所へ情報を即時配信、この情報を元に飛来方向を航空自衛隊が全国28か所に配置するレーダーサイトが追尾しました。航空自衛隊にはFPS-5等の探知距離1000kmを越える弾道ミサイル警戒能力を持つレーダーが防空監視所にあります。

 破壊措置の実施はありませんでした。政府は航空自衛隊横田基地の航空総隊司令官へ自衛隊法に基づく破壊措置命令を常時発令しており、全国の航空自衛隊高射群が運用するペトリオットミサイルPAC-3,そして海上自衛隊のイージス艦が迎撃態勢を執っていますが、今回は発動されていません。これは上空通過時550kmという高高度を飛行した為でしょう。

 警察庁と総務省消防庁によれば被害はありませんでした。しかしJR北海道では列車が21本運休という影響が出ており、北海道新幹線始め東北や上越と北陸の各新幹線と宇都宮線、高崎線、常磐線などの在来線で一部運休、はるか遠く名古屋の名鉄も停止しました。警報が発令された都道県では宮城県や青森県及び茨城県では休校となった学校も出ています。

 ペトリオットミサイルPAC-3は、しかし万一の場合に備えています。今回の弾道ミサイルは上空で三つに分離し、当初報道はミサイル3発と報じたものもあります。これは多段式の燃料タンクか弾頭部分が故障分解した事を意味し、何れかが落下した場合は小型旅客機が落下する場合に等しい被害が生じ、更に毒性の高い燃料が炎上すれば被害は広範に及ぶ。

 北海道上空を通過したミサイル、北朝鮮は今回ミサイル発射について、着弾海域の危険情報を発する事無く、文字通り突如発射しました。これは1998年8月のテポドン1号が東北地方上空を通過して以来の事態で、極めて異例です。他方、北朝鮮はグアム方面へのミサイル発射を警告し、自衛隊は北朝鮮の発表に応じ中国四国地方の警戒を強化していました。

 中距離弾道ミサイル火星12型が発射された可能性がある、小野寺防衛大臣は、0930時過ぎに防衛省で記者団に対し会見し、防衛省が情報を精査した結果、ノドンやスカッドといった従来のミサイルではなく本年5月14日に初めて日本海に向けてロフテッド軌道で発射された新型の中距離弾道ミサイル火星12型であったとしました。グアムへ向けていたもの。

 グアム方面へ火星12型4発の同時発射を検討していると北朝鮮が発表したのは今月8月9日、この際に北朝鮮は日本の島根県・広島県・高知県の上空を通過し、グアム島の周辺40km以内の海上に落ちるだろうと発表、具体的な飛行ルートを予告しています。今回、全く違う経路を飛行しましたが、中距離弾道ミサイル火星12型の1発が使用された可能性がある。

 Jアラート全国瞬時警報システム、今回のミサイル発射では、迅速にミサイルが捕捉された事で北海道上空通過4分前の0602時に最初のJアラートが発令されました。0558時発射4分後の0602時に警報発令、0614時に通過を発表しました。ただ、北海道えりも町や新潟県糸魚川市、長野県上松町等一部自治体では防災無線無作動のトラブルもあったもよう。

 各地で不安の声が聞かれました、曰くホテルで就寝中突如警報で起こされ安全なところに避難しろと通知され戸惑った、早朝市場で作業中携帯電話が鳴り響いたが何が起きたかわからなった、付近の頑丈な建物か地下に避難といわれても有りません、など。結果、内閣官房国民保護ポータルサイトにアクセスが集中、30分間つながりにくい状態が続きました。

 空襲警報は、戦争経験者の方々が存命である今だからこそ教育の場等で聞くべきですが、北朝鮮が保有している弾道ミサイルの内、核弾頭でなければ被害は仮に弾頭部分が落下したとしても建築物に致命的な被害が及ぶのは100m四方程度、破片被害も400m程度離れていれば屋内退避で致命的な負傷からは生存する事が出来ますので、備えが重要でしょう。

 退避方法、ホテルやマンションは窓から離れた浴室のバスタブ、自動車運転中の車内は横転の危険が高く最寄路肩に緊急停車し車両は横転の危険がある為に車下と路肩の中間に伏せる、歩道では側溝部分に隠れる、地下街や地下道が近くに無い自宅は玄関や浴室でコンクリート基礎部分が多い部屋に伏せる、圧死せぬよう耳を押さえ口を開ける、ビルは窓硝子を避ける。

 日米首脳電話会談がミサイル発射を受け急遽実施されました、 安倍首相とトランプ大統領は電話で会談し、北朝鮮に対してさらに圧力を強化していくことで一致しました。また、北朝鮮ミサイル受けて明日にも衆議院安全保障委員会において閉会中審査が緊急開催が予定されているほか、各国が呼びかけ、国連安全保障理事会の緊急会合が間もなく開始されます。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (5)
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