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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新たな護衛艦企画提案契約に三菱重工案採用,建造費500億円&基準排水量3500t船体型

2017-08-16 20:05:35 | 先端軍事テクノロジー
■新たな護衛艦,20隻以上量産へ
 新たな護衛艦という海上自衛隊の将来護衛艦、かつてコンパクト護衛艦と呼称されていました新型艦、どうやら護衛艦むらさめ型に準じた規模の艦艇となるようです。

 コンパクト護衛艦、来年度予算概算要求発表が近い中、海上自衛隊の現在計画を進めている最新型の将来護衛艦の概要が徐々に形となってきました。基準排水量3900tという比較的大型の護衛艦であり、全長は130m程度、最大速力30ノット以上を発揮しガスタービンとディーゼルエンジンを併用するCODAG方式を採用、建造費を500億円程度に抑える。

 三菱重工が提案した以上の通りの案が企画提案契約において最良と判断されました。この企画提案契約とは、防衛産業各社が防衛省の“新たな護衛艦”の公募に対し提案し防衛装備庁等が実現可能性と技術的評価の視点から検証するというもので、ジャパンマリンユナイテッド、三井造船、三菱重工が提案書を提出、三菱重工提出案が最良と判断されました。

 コンパクト護衛艦はステルス船体と塔型マストを採用し、索敵装置に光学複合センサー及び多機能レーダーを搭載する他、VDS可変深度ソナーやTASS曳航パッシヴソナーに加え機雷戦ソナーを搭載すると構想で、従来の護衛艦としての戦闘に加え機雷戦能力を有し、艦尾にUUV水中無人機USV水上無人機も搭載、簡易型機雷敷設装置も装備するという。簡易型機雷敷設装置というのが凄い。

 将来護衛艦としての打撃力も強力で沿岸用小型護衛艦というよりは艦隊護衛艦の水準です。ヘリコプターを搭載する他、艦砲に62口径5インチ単装砲を搭載し、艦砲と艦橋の間に垂直発射装置VLSを配置、対艦ミサイル発射装置を上部構造物内に収容し水上打撃力を確保、水上発射管として短魚雷運用能力も有します。個艦防空能力としてSeaRAM対艦ミサイル防御装置を搭載、極めて重武装の護衛艦といえます。

 3900tという基準排水量は、大きいなあ、というのが正直な印象でしたが、装備と能力を考えれば無理をしない設計の収斂と云えましょう。アメリカ海軍の沿海域戦闘艦の1.5倍以上、小型護衛艦として建造された護衛艦あぶくま型の二倍近くあり、艦隊護衛艦として12隻が大量建造された護衛艦はつゆき型の2900tや、その拡大改良型である護衛艦あさぎり型の3500tをも上回り、恐らく満載排水量では5000tから5300tという大型水上戦闘艦となるでしょう。ただ、むらさめ型、たかなみ型等よりは小型です、横須賀基地で満載で8000t以上あるアーレイバーク級ミサイル駆逐艦や海上自衛隊の護衛艦を見慣れた目にはコンパクト、という印象ですね。

 むらさめ型護衛艦は基準排水量4400t、たかなみ型護衛艦は基準排水量4600t、あきづき型護衛艦、あさひ型護衛艦が基準排水量5000tで護衛艦は年々大型化してきました。これら最新護衛艦と比較したならばコンパクトではありますが、世界的に視た場合はかなりの大型水上艦で、中国の江凱II型が満載排水量4050t、韓国の仁川級が満載排水量3200tです。

 搭載武器は海上自衛隊の護衛艦としては、水上打撃力と対潜戦闘能力は同程度、対空戦闘能力はCIWS機関砲も2基を搭載しSeaRAMを搭載しますが、短SAM等僚艦防護が可能な射程のある艦対空ミサイルは搭載されない可能性が高く、その分はイージス艦とのデータリンクにより射程370kmというSM-6ミサイルの支援を受けるという事なのでしょう。

 無人機の運用能力を重視している点はこれまで無かった発想です。艦尾部分にUUV水中無人機と哨戒や機雷戦を支援するUSV水上無人機も搭載し、掃海艇の能力を一部補完すると共に護衛艦一隻で広範囲の警戒監視能力を付与させる発想で、島嶼部警備から海賊対処任務等も可能となります。また、格納庫は多機能空間として災害派遣にも寄与しましょう、恐らく飛行甲板の直下に洋上へスロープで接続する区画があり、水上無人機や水中無人機を降ろす事も機雷を降ろす事も出来るという構造が想像される。

 500億円で建造するという構想で、欧州の大型水上戦闘艦が軒並み800億円以上を要するのに対しコスト重視を図りました。ただ、たかなみ型護衛艦の建造費が650億円でしたので、小型化と大胆な大量発注により建造費を抑えるのでしょう。海上自衛隊は新型艦を20隻から25隻程度量産する計画で、耐用年数を越え延命する旧型艦を置き換える構想です。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (6)
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