■グアム八月ミサイル危機勃発
本日は京都幕間旅情台風5号下での上賀茂神社参拝の様子を、昨日の下鴨神社参拝に続いて紹介する予定でしたが、予定を変更します。
北朝鮮人民軍は、弾道ミサイルによるグアム島周辺への包囲射撃を断行するための作戦を慎重に検討している、と国営メディアを通じて声明を発表しました。グアム近海へ撃ち込むと発表したのは、先日発射実験を行った中距離弾道ミサイル火星12型、北朝鮮の弾道ミサイル部隊である戦略軍報道官がこのミサイル発射計画を示し、実施される可能性は高い。
グアム島は夏休みの海外旅行先、南太平洋の楽園という観光地ですが、同時にアメリカ軍の西太平洋上における重要な戦略拠点となっており、数百機の戦闘機や爆撃機を収容可能なアンダーセン空軍基地、攻撃型原潜などが拠点とするアプラ軍港等が並びます。中国大陸や朝鮮半島に近い在日米軍基地を前線基地とし、後方の戦略拠点としての位置づけです。
朝鮮労働党機関紙“労働新聞”10日付けの一面には前日の戦略軍発表の続報として、日本の上空を通過させグアム島周辺の海上に落とす、との具体的計画が明示されました。火星12型4発を同時発射、“日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過”として、グアム近海へ。恐らく愛媛県を含め明確に日本本土上空を飛翔する経路を採ると発表しています。
北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合、迎撃は行われるのでしょうか。イージス艦による海上MD部隊とTHAADミサイル、在韓米軍と在日米軍のミサイル警戒部隊によるレーダー情報があれば、ある程度は迎撃できる可能性はあります。そして実施したならば、湾岸戦争以来のミサイル防衛戦となります。しかしそれ以上に日米の集団的自衛権行使となる。
日米の集団的自衛権行使について、想定されるのは北朝鮮弾道ミサイル情報が横田基地において共有されている為で、海上自衛隊イージス艦や航空自衛隊レーダーサイトからの弾道ミサイル情報は即座に日米で共有される訳です。直接迎撃ミサイルを発射する訳ではありませんが、ミサイル防衛では情報こそが第一であり、軍事上初の集団的自衛権行使です。
グアムへのミサイル発射はグアム島近海30kmから40kmに落下させるとしており、四発の弾道ミサイル同時着弾が行われるとすればグアム島は国際観光地でもある事から、民間旅客機等へも重大な脅威となるでしょう。この距離は領海外ではありますが排他的経済水域であり、実行すればアメリカの反発は一挙に限定空爆等軍事攻撃まで突沸しかねません。
トランプ大統領は休暇を過ごしているニュージャージー州のゴルフ場で記者会見に応じ、アメリカ国防情報国DIAの小型核弾頭の製造に成功との分析等に触れ、北朝鮮の軍事挑発に対し“世界がこれまで見たこともないような、炎と怒りを浴びることになるだろう”という、アメリカ大統領の発言としては歴史上異例というほどの厳しい言葉で抗議しました。
マティス国防長官はこれまで一貫し北朝鮮問題では外交解決を優先するとの立場を堅持し、軍事的に米朝が全面衝突した場合、極めて憂慮する事態になるとの見解を示してきましたが、西太平洋地域における沖縄の米軍基地や東京横田基地横須賀基地横浜ノースドックの首都圏基地群と並ぶ拠点、グアムへのミサイル発射脅威への姿勢は明らかではありません。
グアム近海へ北朝鮮が弾道ミサイル攻撃を実施した場合、アメリカが採り得る選択肢はどのようなものでしょうか。北朝鮮へ海兵隊を上陸させ占領する可能性はまだ低いですが、日本近海の駆逐艦や攻撃型原潜からのトマホークミサイルでの限定攻撃、もう少し緩慢な施策としてF-15EやP-8A等の航空機による北朝鮮港湾への機雷封鎖、等が考えられます。
国連による北朝鮮経済制裁では、既に今月6日に“北朝鮮主要収入源である石炭、鉄、鉄鉱石、海産物、その輸出を上限や例外無く一切、禁止する”という異例なほどの厳しい制裁決議が、ロシアと中国を含めた安全保障理事会全会一致で可決されました。仮に厳格に履行されたならば、北朝鮮は輸出総額の三分の一を一挙に失い大打撃を受ける事となる。
ニューヨークでの国連安保理での中国とロシアの制裁合意、この経済制裁は、先月4日と28日に実施したICBM大陸間弾道弾発射実験を受けての経済制裁であり、北海道から落下する弾道ミサイルの映像が撮影される程、沿岸近くに撃ち込まれたとの新しい段階の脅威が映像を通じて国連安全保障理事会での危機感として共有されたものとも言えるでしょう。
グアムを狙う背景には、北朝鮮は国連経済制裁の全面解除を要求すると共に核開発を北朝鮮の正当な権利として認めるよう要求しています。また、今月21日からは毎年恒例となっている米韓合同軍事演習が行われ、北朝鮮は毎回中止を要求しています。中止と共に在韓米軍撤退も要求し、これらが認められるまで核とミサイル開発を継続すると考えられます。
ロシア国防省極東シベリア地域のハバロフスクに司令部を置く東部軍管区司令部は、本日北方領土等の千島列島演習場において軍事演習を始めたと発表しました。北朝鮮ミサイル実験が波及した形です。しかし、これは北朝鮮軍がロシアへ侵攻する事を警戒しているのではなく、朝鮮半島緊張に伴う西太平洋地域での米軍行動への牽制が目的と考えられます。
千島列島においてロシア軍が演習を実施した場合、我が国陸上自衛隊も対抗演習を開始します。これは万一、演習のための兵力集積が千島列島の北海道の一部と位置づける北方領土からロシア軍が直接北海道へ侵攻する可能性を抑止するためであり、数年前にもロシア軍の極東での大規模演習に呼応し北海道大演習場や矢臼別演習場で即応体制を執りました。
朝鮮半島情勢が早速、極東北部地域へ波及した形ですが、北朝鮮が実際にグアム方面へミサイル実験を実施へと進めた場合、牽制するべくアメリカ軍部隊は極東地域へ増強派遣される事は必至で、これをロシア軍は牽制する必要があると共に、中国についても南シナ海や東シナ海、台湾海峡や九州近海での牽制行動を行う可能性は高いといわざるを得ません。
日本海での実験に加え遠からず、北朝鮮は弾道ミサイル射程を誇示するミサイル実験を太平洋方面に対し実施する可能性はありました。しかし、今月に入り突如、それもグアム方面に対し弾道ミサイル実験を実施し、しかも太平洋上の要衝であるアンダーセン基地の数十km以内に複数を着弾させるという選択肢を誇示する事は中々予想できませんでした。
第二のキューバ危機、というような表現程幸いまだ情勢は緊迫していません。しかし、北朝鮮は核弾頭を小型化させ弾道ミサイルによる運搬能力を獲得したとの国防情報局DIAの分析もあり、アメリカは懸念しています。第二次世界大戦後としては印パ国境紛争核危機以来の、核兵器使用さえ含めた、極めて憂慮すべき事態が始りつつあるのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま
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本日は京都幕間旅情台風5号下での上賀茂神社参拝の様子を、昨日の下鴨神社参拝に続いて紹介する予定でしたが、予定を変更します。
北朝鮮人民軍は、弾道ミサイルによるグアム島周辺への包囲射撃を断行するための作戦を慎重に検討している、と国営メディアを通じて声明を発表しました。グアム近海へ撃ち込むと発表したのは、先日発射実験を行った中距離弾道ミサイル火星12型、北朝鮮の弾道ミサイル部隊である戦略軍報道官がこのミサイル発射計画を示し、実施される可能性は高い。
グアム島は夏休みの海外旅行先、南太平洋の楽園という観光地ですが、同時にアメリカ軍の西太平洋上における重要な戦略拠点となっており、数百機の戦闘機や爆撃機を収容可能なアンダーセン空軍基地、攻撃型原潜などが拠点とするアプラ軍港等が並びます。中国大陸や朝鮮半島に近い在日米軍基地を前線基地とし、後方の戦略拠点としての位置づけです。
朝鮮労働党機関紙“労働新聞”10日付けの一面には前日の戦略軍発表の続報として、日本の上空を通過させグアム島周辺の海上に落とす、との具体的計画が明示されました。火星12型4発を同時発射、“日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過”として、グアム近海へ。恐らく愛媛県を含め明確に日本本土上空を飛翔する経路を採ると発表しています。
北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合、迎撃は行われるのでしょうか。イージス艦による海上MD部隊とTHAADミサイル、在韓米軍と在日米軍のミサイル警戒部隊によるレーダー情報があれば、ある程度は迎撃できる可能性はあります。そして実施したならば、湾岸戦争以来のミサイル防衛戦となります。しかしそれ以上に日米の集団的自衛権行使となる。
日米の集団的自衛権行使について、想定されるのは北朝鮮弾道ミサイル情報が横田基地において共有されている為で、海上自衛隊イージス艦や航空自衛隊レーダーサイトからの弾道ミサイル情報は即座に日米で共有される訳です。直接迎撃ミサイルを発射する訳ではありませんが、ミサイル防衛では情報こそが第一であり、軍事上初の集団的自衛権行使です。
グアムへのミサイル発射はグアム島近海30kmから40kmに落下させるとしており、四発の弾道ミサイル同時着弾が行われるとすればグアム島は国際観光地でもある事から、民間旅客機等へも重大な脅威となるでしょう。この距離は領海外ではありますが排他的経済水域であり、実行すればアメリカの反発は一挙に限定空爆等軍事攻撃まで突沸しかねません。
トランプ大統領は休暇を過ごしているニュージャージー州のゴルフ場で記者会見に応じ、アメリカ国防情報国DIAの小型核弾頭の製造に成功との分析等に触れ、北朝鮮の軍事挑発に対し“世界がこれまで見たこともないような、炎と怒りを浴びることになるだろう”という、アメリカ大統領の発言としては歴史上異例というほどの厳しい言葉で抗議しました。
マティス国防長官はこれまで一貫し北朝鮮問題では外交解決を優先するとの立場を堅持し、軍事的に米朝が全面衝突した場合、極めて憂慮する事態になるとの見解を示してきましたが、西太平洋地域における沖縄の米軍基地や東京横田基地横須賀基地横浜ノースドックの首都圏基地群と並ぶ拠点、グアムへのミサイル発射脅威への姿勢は明らかではありません。
グアム近海へ北朝鮮が弾道ミサイル攻撃を実施した場合、アメリカが採り得る選択肢はどのようなものでしょうか。北朝鮮へ海兵隊を上陸させ占領する可能性はまだ低いですが、日本近海の駆逐艦や攻撃型原潜からのトマホークミサイルでの限定攻撃、もう少し緩慢な施策としてF-15EやP-8A等の航空機による北朝鮮港湾への機雷封鎖、等が考えられます。
国連による北朝鮮経済制裁では、既に今月6日に“北朝鮮主要収入源である石炭、鉄、鉄鉱石、海産物、その輸出を上限や例外無く一切、禁止する”という異例なほどの厳しい制裁決議が、ロシアと中国を含めた安全保障理事会全会一致で可決されました。仮に厳格に履行されたならば、北朝鮮は輸出総額の三分の一を一挙に失い大打撃を受ける事となる。
ニューヨークでの国連安保理での中国とロシアの制裁合意、この経済制裁は、先月4日と28日に実施したICBM大陸間弾道弾発射実験を受けての経済制裁であり、北海道から落下する弾道ミサイルの映像が撮影される程、沿岸近くに撃ち込まれたとの新しい段階の脅威が映像を通じて国連安全保障理事会での危機感として共有されたものとも言えるでしょう。
グアムを狙う背景には、北朝鮮は国連経済制裁の全面解除を要求すると共に核開発を北朝鮮の正当な権利として認めるよう要求しています。また、今月21日からは毎年恒例となっている米韓合同軍事演習が行われ、北朝鮮は毎回中止を要求しています。中止と共に在韓米軍撤退も要求し、これらが認められるまで核とミサイル開発を継続すると考えられます。
ロシア国防省極東シベリア地域のハバロフスクに司令部を置く東部軍管区司令部は、本日北方領土等の千島列島演習場において軍事演習を始めたと発表しました。北朝鮮ミサイル実験が波及した形です。しかし、これは北朝鮮軍がロシアへ侵攻する事を警戒しているのではなく、朝鮮半島緊張に伴う西太平洋地域での米軍行動への牽制が目的と考えられます。
千島列島においてロシア軍が演習を実施した場合、我が国陸上自衛隊も対抗演習を開始します。これは万一、演習のための兵力集積が千島列島の北海道の一部と位置づける北方領土からロシア軍が直接北海道へ侵攻する可能性を抑止するためであり、数年前にもロシア軍の極東での大規模演習に呼応し北海道大演習場や矢臼別演習場で即応体制を執りました。
朝鮮半島情勢が早速、極東北部地域へ波及した形ですが、北朝鮮が実際にグアム方面へミサイル実験を実施へと進めた場合、牽制するべくアメリカ軍部隊は極東地域へ増強派遣される事は必至で、これをロシア軍は牽制する必要があると共に、中国についても南シナ海や東シナ海、台湾海峡や九州近海での牽制行動を行う可能性は高いといわざるを得ません。
日本海での実験に加え遠からず、北朝鮮は弾道ミサイル射程を誇示するミサイル実験を太平洋方面に対し実施する可能性はありました。しかし、今月に入り突如、それもグアム方面に対し弾道ミサイル実験を実施し、しかも太平洋上の要衝であるアンダーセン基地の数十km以内に複数を着弾させるという選択肢を誇示する事は中々予想できませんでした。
第二のキューバ危機、というような表現程幸いまだ情勢は緊迫していません。しかし、北朝鮮は核弾頭を小型化させ弾道ミサイルによる運搬能力を獲得したとの国防情報局DIAの分析もあり、アメリカは懸念しています。第二次世界大戦後としては印パ国境紛争核危機以来の、核兵器使用さえ含めた、極めて憂慮すべき事態が始りつつあるのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま
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