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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

富士総合火力演習二〇一七:基盤的防衛力から統合機動防衛力整備の転換期に示す公開演習

2017-08-26 20:03:02 | 北大路機関 広報
■富士総火演二〇一七明日実施
 富士山には戦車が似合う、八月の終わりと云えば富士総合火力演習の季節です。

 富士総合火力演習はいよいよ明日となりました。昨年は総合予行の後段演習最後のところで土砂降りとなり、あの状況で10式戦車はよくぞ正確に射撃できるものだと、新世代の熱線画像照準器の性能に驚くよりも、雨にぬれると此処まで体力を消耗するのか、という事への驚きの方が大きくなりました。北陸東北豪雨の関係から気象は最後まで心配ですね。

 総火演と愛称で呼ばれる富士総合火力演習は陸上自衛隊が行う実弾射撃演習です。教育演習として現代戦闘の様相を富士学校学生に転じすると共に国民へ自衛隊の能力を広く示す広報演習というもので、一般入場券の競争倍率は今年度も29倍という非常に関心を集めている行事で、富士学校隷下の富士教導団が中心に第1師団や中央即応集団、航空学校等の支援を受け実施されます。

 富士教導団が実施する富士総合火力演習ですが、本年は展示演習にどういった新装備が参加するのか、というところも関心事の一つです。陸上自衛隊の統合機動防衛力整備として、戦車大隊の廃止が本格化知ると同時に16式機動戦闘車が、全国で新編される機動連隊への配備が始まります。機動戦闘車中隊が間に合うのか、若干心配ですがこれは出てくるのか。

 水陸機動団の新編という、自衛隊統合機動防衛力整備と並行しての冷戦時代以降最大の改編となる九州の水陸両用戦部隊の新編を前に、その目玉装備としてAAV-7両用強襲車両の装備は開始されますが、第4戦車大隊等で試験運用が開始されたAAV-7、富士総合火力演習2017のポスターには描かれているのですが、自衛隊のAAV-7が登場するかも気になる。

 統合機動防衛力整備では戦車や火砲という重装備配備の思いきった配備見直しが行われますが、この為に来年度までに駒門の第1機甲教育隊が廃止予定です。東部方面混成団に所属し、74式戦車から90式戦車まで一通り配備する全国で唯一の機甲教育部隊ですが、廃止前に最後の富士総合火力演習へ、参加する事はあるのか、という事もやはり関心事の一つ。

 90式戦車等は北部方面隊の第11戦車大隊や第2戦車連隊といった部隊から、戦車は管理替えの場合もあるようですが、戦車を富士総合火力演習に参加させています。今年は北海道から戦車部隊は参加するのか、こうした点でも登場する戦車の砲塔に画かれた部隊マークにも気になるところ。第7師団以外の90式戦車が89式装甲戦闘車と協同の様子も貴重だ。

 航空学校では去就に注目されるのは、不時着事故と予防着陸事案から運用が大きく制限されているOH-1観測ヘリコプターの運用です。また、富士総合火力演習への射撃訓練中に不時着したAH-1S対戦車ヘリコプターが対戦車ミサイルTOWの射撃を行うのか、CH-47JA輸送ヘリコプターがどう云った装備品を空輸するのかにも注目といえるでしょう。

 華々しい発砲焔の迫力に圧倒される富士総合火力演習ですが、近年では最新装備の中距離多目的誘導弾の連続発射など新装備の威力を示すと共に、新装備の導入と共に旧型装備との協同の在り方、進まない航空機の新旧更新、富士総合火力演習は陸上自衛隊の縮図を如実に示す一つの機会でもあります。こうした視点から演習の細部も観てゆきたいところ。

 インターネット中継が本年も行われます。入場券を入手できなかった場合には陸上自衛隊HPからニコニコ生放送等、インターネット中継にて冷房の利いた涼しい部屋から丹念に見る、というものも一興でしょう、これならば万一本番会場がゲリラ豪雨で荒天となっても濡れる事もありません。インターネット中継は明日日曜日0930時から実施される予定です。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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