北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛大綱改訂2018【四月一日特集】第一世代型ヘリコプター搭載護衛艦有用性の再確認

2018-04-03 20:14:32 | 北大路機関特別企画
■はるな型護衛艦4700t
 四月一日特集、第三回は海上防衛と航空防衛についていつもと異なる視点から考えてみましょう。

 海上防衛について、当方は全通飛行甲板型護衛艦の護衛隊群への増勢を一貫して必要だと提唱し続けています。現在の護衛隊群は、DDHグループとDDGグループの2個護衛隊から編成されていますが、イージスシステム搭載のDDG,ミサイル護衛艦の増大により、ターターシステム搭載護衛艦のイージス艦へ代替が続いており、運用実績も大きくなりました。

 全ての護衛隊群隷下の護衛隊へイージス艦の配備が行われる方針、今夏には8200t型護衛艦の一番艦、新しいイージス艦が進水式を迎えます。このため、DDGグループが本来担うという艦隊防空は全ての護衛隊群隷下の護衛隊が対応できることとなり、それならば現在のDDGグループへもDDH,ヘリコプター搭載護衛艦を配備し、護衛隊編成の統合が必要だ。

 この点については従来通りの主張で、言い換えれば、我が国周辺情勢が安定化したならば、護衛艦はこの四個護衛隊群32隻、ヘリコプター搭載護衛艦を現在の四隻から八隻に増勢さえできるならば、32隻で充分だ、とも考えます。もちろん、教育訓練体系を考えますと、そもそも部隊運用や艦長の練成という観点から掃海艇や輸送艦その他の艦艇数は必要です。

 しかし、現在のところ、情勢は32隻だけの護衛艦では不十分という緊迫した状況が続いており、コンパクト護衛艦として3900t型護衛艦の量産が開始されます。実のところ3900t型護衛艦の有用性は認識する一方、汎用護衛艦が5100t型と非常に大型化した現状をみますと、第一世代型ヘリコプター搭載護衛艦の設計優位性が再評価できないものでしょうか。

 はるな型ヘリコプター搭載護衛艦、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦と同程度のヘリコプター搭載護衛艦、個艦防空に防空能力を限定し、三次元レーダーは航空管制を主軸とし、あえて艦対艦ミサイルではなく様々な用途に用いることの出来る艦砲を、51番砲、52番砲と搭載する護衛艦を建造した方が、様々な任務に対応できるのではないでしょうか。

 ヘリコプター搭載護衛艦、様々な任務に艦砲と個艦防空ミサイルだけでは一見頼り無く映りますが、重要なのはMCH-101やSH-60K,ローター折り畳み機構さえ追加したならばAH-64Eさえも、三機運用できるその能力が重要です。正直なところ、護衛艦の近代化改修は大変な費用を要します、レーダー換装一つとっても付け替えるだけとは参りません。

 ただ、航空機を新型機に置き換えるだけならば、旧型機が発艦し、入れ替わりに新型機が着艦するだけで、極端にいえばこれで完了です。モジュール艦、という水上戦闘艦に幾つかの武器モジュールという交換可能なブロックを設計に挿入し、例えば満載排水量7000t程度のモジュール艦を、ミサイル駆逐艦や機雷戦母艦に揚陸艦、という実例はあります。

 モジュール艦と並行して満載排水量450t程度のモジュール艇を、ミサイル艇や掃海艇や防空支援艇、汎用運用する方式が、冷戦後NATO各国で検討され、デンマーク海軍などはスタンフレックス300計画として実際に装備計画へ盛り込まれました。アブサロン級多目的支援艦等、一応の形となりましたが、問題も多く、結論として殆ど普及しませんでした。

 その最たるものは使わないモジュールの管理費用と運用要員の維持という負担の大きさです。この方式を日本で敢えて再現する必要はありませんが、ヘリコプターを様々な機種、運用できるよう余裕を持たせることは、ヘリコプター搭載護衛艦の航空機と航空機搭載格納庫や整備施設そのものをモジュールと見做すような運用方式を構築する事が可能です。

 ヘリコプター搭載護衛艦、はるな型であってもMCH-101規模の機体を三機搭載できるのですから、MCH-101を搭載し掃海母艦に、SH-60Kを搭載しヘリコプター巡洋艦に、MH-60を搭載し特殊作戦支援艦に、AH-64DとCH-101を搭載し揚陸艦に、文字通りモジュール艦が目指した運用を再現可能、この方式を現代も多用するべきではないかと考えます。

 くらま、昨年まで現役でしたが航空機を順次新型とすることで第一線での運用能力を維持しました。考えてみますと、小技を利かせる視野から3900t型護衛艦のような用途の艦艇を導入するよりも、航空機の運用能力を重視したヘリコプター搭載護衛艦を、二桁護衛隊、つまり沿岸警備用の護衛艦部隊に直轄艦として配備したほうが、その運用幅を広くできる。

 第二次世界大戦中の水雷戦隊で駆逐艦を援護する軽巡洋艦、構図としてはヘリコプター搭載護衛艦、こことにているかもしれない。二桁護衛隊は最終的に新防衛大綱では七個護衛隊まで拡充されることとなっていますので、護衛艦隊護衛隊群所要のヘリコプター搭載護衛艦とは別に七隻、しらね型護衛艦の基本設計を踏襲する護衛艦があっても良いでしょう。

 逆に言うならば、3900t型護衛艦が構想段階ならば、こうした3900t型護衛艦を建造せず、ヘリコプター搭載護衛艦に一本化しても良かったように考えます。警備任務では艦対艦ミサイルを搭載しない護衛艦は能力不十分ともみえますが、127mm艦砲の威力は侮れませんし、必要ならばAH-64Dを艦載機として敵対海域の敵水上戦闘艦警戒任務に投入も可能だ。

 くらま格納庫ならばMQ-8無人ヘリコプターを5機程度搭載し、哨戒範囲を拡充することもできます。また、MCH-101で前述の掃海艇の哨戒艇任務、これを支援するために航行燃料や物資弾薬に真水などをバートレップ輸送する事も選択肢に入ります。もちろん、掃海艇では手に負えない事態の際に、航空機で迅速に支援へ展開することさえ可能でしょう。

 さて、装備体系の効率化を考える上で悩ましいのは航空防衛です。F-35の配備が開始され、EA-18G電子攻撃機の配備構想やF-35Bの護衛艦搭載という検討が与党国防会議において提唱されています。ただ、同時にF-4EJ改戦闘機が飛行隊規模で残り、F-15J戦闘機についてもまだまだ残ります。無理に装備計画を進めますと、機種だけが増える事となります。

 F-4EJ改、F-15J、F-2、F-35A、F-35B、EA-18G、という米軍基地の航空祭のような状況となりかねません。そこで、考えるのはF-15Jについては無理な延命を行わず、F/A-18F戦闘機へ置き換えてはどうか、というもの。F/A-18F,アメリカ海軍の主力艦載機です。そしてF/A-18F戦闘機は現在F-35Aに決定した航空自衛隊次期戦闘機計画の主力候補でした。

 そしてF-15Jの原型機であるF-15Cはアメリカ空軍の主力戦闘機ですが、F-15Cは電子機材以外同型のF-15Aは初飛行が1960年代という旧型機で、しかし、古い豪邸に最新の家電を置き換えて快適に維持するが如く、第一線の能力を維持出来ている状況です。ただ、アメリカ空軍ではF-15Cの退役論が常に多寡とともにあり、将来性は予断できません。

 ならばF/A-18Fへ置き換えてはどうか。性能は高い。そして将来発展性も、また高い。F/A-18F,1995年に従来のF/A-18C機体を再設計し、完成させた機体ですが、再設計という分、単なる改造ではなく機体規模を大型化させています。もともとは第四世代戦闘機に区分される機種でしたが、二機種は似ているものの並べてみますと細部が全て違っています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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