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F-2後継ニッポンFS-XにF-22&F-35日米共同開発案急浮上【2】F-2-Super-KAI騒動顛末

2018-04-26 20:08:18 | 先端軍事テクノロジー
■国際航空宇宙展F-2スーパー改
 F-22&F-35のFSX-2,しかし思い出すのはF-2-Super-KAIというWeblog北大路機関創設準備中の騒動顛末です。

 F-2戦闘機後継機をどうするのか、最新鋭という呼び名で初飛行を迎え既に二十年以上、F-2支援戦闘機も運用区分がF-2戦闘機となり、防衛装備庁は2030年代にはF-2後継機を導入開始する、との展望に基づき国産技術開発を進めてきました。日本はエンジン技術で技術力はあっても実績が無くエンジン開発で不安が残り、マネジメント能力も不安がある。

 F-2-Super-KAI,航空自衛隊の次の戦闘機についてF-22とF-35の技術を併せた新型機の提案ですが、開発について一転留意するのは本案がロッキードマーティン社より非公式に打診されたという点です。ここで考えるのはF-22とF-35に関する技術情報を何処までアメリカ側が日本へ提供するのか、見通しがあるかについてで、F-2-Super-KAIを思い出す。

 F-2-Super-KAIとは2004年にロッキードマーティン社が独自提案したF-2支援戦闘機の独自改良型提案です。横浜みなとみらい21パシフィコ横浜にて開催の国際航空宇宙展ジャパンエアロスペース2004、その会場においてロッキードマーティン社が大型パネルにて発表されたもの、巨大なCFT外装型燃料タンクを搭載したF-2B改良型の新造機が描かれた。

 F-2-Super-KAI外見上最大の特色は、巨大なCFT外装型燃料タンクの追加搭載で、これはロッキードマーティン社がF-2の原型機となったF-16Block60等に搭載する胴体密着型の低空気抵抗型燃料タンクです。F-2は機体内部に4700lの航空燃料を搭載しますが、CFT追加により8100lの機内燃料搭載能力を得て、戦闘行動半径を大幅に拡張する事が可能だ。

 F-2-Super-KAIは機体構造をF-2B支援戦闘機の構造を基本としながら、能力拡張型次世代AESAレーダー換装、LINK-16 JTIDS/MIDS 先進統合型データリンクシステム搭載、WSO兵装システム士官専用後席追加、JHMCS統合型ヘルメット照準装置追加、PANTERA/FLIR先進前方赤外線監視装置運用能力追加、偵察ポッド運用能力、以上追加改修される案です。

 F-2-Super-KAI は上記先進センサーや追加搭載機材により、LGBレーザー誘導爆弾、WCMD誘導クラスター爆弾、JDAM/GPS誘導爆弾、AGM-154 JSOW巡航ミサイル、AGM-88 HARM対レーダーミサイル、AIM-9X先進短距離空対空誘導弾、AIM-120 D-AMRAAM中距離空対空誘導弾運用能力などを得て2030年代の多用途任務へ対応を期す。現在推進中のスタンドオフ装備との重なる部分も多い。

 F-2-Super-KAIと今回のF-22&F-35-FSX案との共通点は、ロッキードマーティン社の独自提案、という点です。F-2-Super-KAIは実現していたらば、RF-4戦術偵察機後継機や現在検討伝えられるEA-18G電子攻撃機の必要な性能を充分満たし、30機程度の需要、またF-35までの次期戦闘機選定の予想外の遅延に際し、老朽化著しいF-4EJ代案ともなり得ました。しかし、大きな問題が一つ、ロッキードマーティン社の独自案だったのです。

 X-2実験機、として防衛装備庁が技術研究本部時代から蓄積した戦闘機構成技術を応用し将来戦闘機に繋げる技術実証機を2016年に初飛行させています。一見、第五世代戦闘機をもわせる形状でしたが、燃料搭載やレーダー搭載、機体規模の小ささから兵装庫を有さない純粋な実験機でしたが、充分予算と期間を重ねれば国産戦闘機開発も可能だったでしょう。ロッキードマーティン社独自案は、この流れと歩調や調整を併せたものではありません。

 国産戦闘機、勿論この部分についても万全とは言い難く、課題の方が多い。問題は日本が開発すべき戦闘機はF-22やF-35の次世代にあたる第六世代戦闘機であり、防衛省には第六世代戦闘機について“凄く強い”との曖昧模糊とした認識以外確たる定義がありません。高度なステルス性、ネットワーク型戦闘対応、高度な運動性、長距離瞬時攻撃能力、長大航続距離、防衛省が挙げる定義は第4.5世代と共通する点が多い。

 第六世代戦闘機は、同時に膨大な開発費を要する点で一国開発が難しい点も忘れてはなりません、ステルス性を重視した航空機とは航空力学を無視した形状であり、これを空中戦に用いるには操縦補正プログラムが必要となる、勿論、火器管制装置やデータリンク等を体系化するにはシステム統合の可変変数増大を意味し、プログラム開発だけでも膨大だ。F-2-Super-KAIは一つの案と云えたのですが、日本政府や航空自衛隊の要求ではなく独自案として出されたことで、単なる技術提案に終わった印象がある。

 FSX-2というべき今回の提案に視点を戻すと、リスク面では一国開発よりも低い。イギリスとの第六世代戦闘機研究など、防衛省では技術交流の形で様々な第六世代戦闘機開発を模索していますが、イギリスのBAE社はトルコとの共同開発を模索、NATOではドイツフランス次世代戦闘機国際共同開発、韓国も准第五世代戦闘機米韓共同開発、と莫大な費用を忌避、一国開発を断念する事例も多々見受けられ、独自開発は中ロ程度でしょう。

 F-22&F-35-FSXは、この観点から少なくとも飛行している実用航空機を念頭に開発するリスクの低い案である事は確かなのですが、F-2-Super-KAIのように非公式打診の一つに過ぎず、その意味ではF-22&F-35-FSX関連技術開示でのアメリカ政府との確たる共同歩調が採られているのか、梯子を外されないか、との懸念は、やはり忘れてはならないでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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