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朝鮮半島有事邦人救出検証(4)強襲予見事前退避か奇襲攻撃と戦地邦人孤立か,異なる難易度

2018-04-05 20:08:35 | 国際・政治
■軍事境界線難しい奇襲察知
 戦争が始る前ならば旅客機と高速鉄道で安全に帰国できますが、開戦後であれば極端な話、装甲車が必要だ。

 朝鮮半島有事に際し奇襲攻撃はあり得るのか、つまり北朝鮮軍による韓国への大規模砲撃と地上軍侵攻という奇襲攻撃を米韓両国が予測できず混戦状態となる事はあり得るのでしょうか。実は邦人救出任務を考える場合、奇襲攻撃の有無により在韓居留邦人が何割か事前帰国できるのか、突如戦場の只中に全員孤立するのか、大きな不確定要素となります。

 在韓邦人は5万7000名、朝鮮半島有事に際しては事前に緊張激化や韓国における予備役動員令、在韓米軍の強化などの措置が取られた場合、韓国への外務省による渡航延期勧告の発令により短期旅行者の多くが出国を見合わせると共に帰国を早め、企業の駐在員等も家族の帰国や一時帰国の指針を採る事で在留邦人数割程度は事前帰国する可能性はあります。

 しかし、奇襲攻撃を受けた場合はどうか、1950年朝鮮戦争は北朝鮮軍の奇襲攻撃により開始されており、特に北朝鮮軍は総兵力の八割を南北軍事境界線周辺に集中させており、現在でも攻撃準備の予測が非常に難しい実情があります。即ち、国境周辺に軍団が集結しているのならば南進の兆候となりますが、朝鮮戦争休戦以来この体制が維持され続けている。

 1973年の第四次中東戦争でも同様の状況がありました、エジプト軍は常時シナイ半島スエズ運河のイスラエル国境線に対峙する形で地上軍を待機させていた為、攻撃準備であるのか日常訓練であるのかを判断できず、エジプト軍の奇襲攻撃を察知に失敗、緒戦には同時侵攻を開始したシリア軍とに挟まれる形となり、一時は国家存亡の危機まで、陥りました。

 第四次中東戦争ではイスラエルは亡国を免れました、エジプトへのソ連軍事援助に対抗しての大量の米軍からの支援物資によるものです。しかし同時に、当時イスラエルエジプト国境はシナイ半島全域をイスラエルが占領中、広大な緩衝地帯があると共に、まずシリア軍から首都テルアビブを防衛へゴラン高原で戦い、シナイ半島では遅滞戦闘に徹しました。

 朝鮮戦争では、現在韓国が存在する事が何よりもの僥倖ではあるのですが、当時は北緯38度線により隔てられた南北境界線からソウル外縁まで40kmの距離であり、緒戦で北朝鮮軍はソウルを占領しています。そして現在は南北軍事境界線と非武装地帯が設定された事でソウル中心部と北朝鮮軍は70kmを隔てていますが、この距離はロケット弾の射程内だ。

 南北軍事境界線付近に北朝鮮軍が配置している砲兵火力は実に6000門、陸上自衛隊全火力の十倍という大規模な火力を限られた地域へ集中しています。フロッグ7戦術ロケットを始めロケット砲兵火力も膨大な規模にあり、緒戦で奇襲攻撃を受けた場合には、邦人は自力対比が出来ない程の大混乱に置き去りとなります。その状況下での退避は非常に難しい。

 仁川国際空港は兵站拠点を担う事から恐らく北朝鮮ロケット砲兵による優先目標となるでしょう。また、特殊部隊浸透によるかく乱攻撃の対象となる可能性も高く、奇襲攻撃から数十分で旅客機の発着は難しくなります。KTX高速鉄道にて南部の釜山まで退避する選択肢も、果たしてKTXが運行を維持できるのか、電化路線には電力供給の問題もあります。

 非戦闘員退避計画NEOとして在韓米軍主体として有志連合による自国民退避計画はあります。在韓米軍基地を集合場所として、安全な第三国、恐らく日本とフィリピンが有力でしょうが、空路から退避させる計画があります。自衛隊が韓国へ展開できれば有志連合の一員として邦人救出の道は開けるのですが、これでも全員救出の保証はないのが実情です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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