■防衛,複雑化する装備体系
本日は四月一日、新年度です。そこで今回は年内に予定されている防衛計画の大綱改訂について、最初から批判的に検証してみたいと思います。
5100t型護衛艦として、あさひ型護衛艦が竣工、二番艦しらぬい建造も進む中、海上自衛隊の汎用護衛艦大型化は、ヘリコプター搭載護衛艦はるな型が4700t型護衛艦として、しらね型護衛艦が5200t型護衛艦として建造されたことを思い出しますと、外洋作戦能力を重視する反面、少々方向性がいきすぎているのではないか、と考える今日この頃です。
新年度、本日第14旅団の改編行事が実施され、昨日の第8師団改編行事とともに即応機動連隊新編が開始され、統合機動防衛力整備への新しい一歩が刻まれました。他方で、水陸機動団新編や海上自衛隊への固定翼艦載機導入、航空自衛隊の南西シフトやイージスアショアの陸上自衛隊配備を筆頭に我が国防衛力整備は大車輪で転換と変容を続けています。
しかし、この方向性は、果たして十年後二十年後の周辺情勢を考慮した場合、果たして妥当なのかという視点を投じてみたいと考えます。十年後に十年後の周辺情勢を見通すのは非常に難しい、満州事変のさなかに日米安全保障条約改定と60年安保闘争を構想することは不可能ですし、こうした点を見通すには僅か数年後の技術趨勢を見通すのも難しい。
将来展望は、冷戦時代にも三誦年後を見通すにはソ連軍アフガン侵攻を契機とする新冷戦の端緒に立ちつつ、同時多発テロ後のアフガン介入に関してのロシアとの協力を模索することなど不可能だったでしょう。一方で防衛装備品の寿命は小型車両でも二十年以上、艦艇ならば三十年、戦車や戦闘機は配備計画確定からの運用期間は実に四十年に達します。
装備寿命は将来展望以上に長い時を刻むものではあります。その上で、その整備費用を考えるならば安易に早期退役を行うことは納税者たる国民へ説明が付きませんし、大量配備への影響を忌避して少数生産にとどめるならば、装備体系が複雑化し運用費用にて説明が付きません。二進も三進も、とはこの事ですが、だからこそ慎重にならなければならない。
そこで、敢えて提示したいのは統合機動防衛力整備を念頭に防衛装備体系を複雑化させすぎてはいないか、ということです。元々陸上自衛隊の装備体系は戦車中隊と特科大隊を普通科連隊に配属させる連隊戦闘団を基本としていましたが、この編成に代わるものの模索を確定に至らせる前に、戦車削減、浮いた予算を様々な施策に用いてしまった事が始り。
戦車削減を目的の結果の手段ではなく単なる手段として削減した構図ですが、都合戦車に任務が残る実状を無視して削減したことで、準現ではなく代替装備が必要となり、装備体系を複雑化させるのと並行し、元々戦車削減分の費用で調達する構想であった新装備を調達している。財政上の理由は説得力を持つ一方、為政者の納税者への説明は充分だったか。
戦車を重視し、過度な対戦車ミサイルを効率化できないか。敢えて提示したいのは逆説的低減です。一番理想的な選択肢は、装甲戦闘車と対戦者ミサイルに枝分かれした戦車の代替装備を見直して、思い切って戦車を増勢してしまう、ということです。逆に普通科連隊の編成を五個普通科中隊基幹という師団普通科連隊の編成を見直し、小型化を断行する。
旅団普通科連隊規模までコンパクト化、つまりは三個普通科中隊とし、既に調達中断から久しい装甲戦闘車を念頭とした戦車代替装備を断念し、通常の装甲車生産に特化すればよい。そして制度上の非効率が指摘される即応予備自衛官制度を見直し、再度コンパクト化した普通科連隊として師団に編入したほうが却って訓練体系を統合化できないでしょうか。
師団は小型普通科連隊四個、旅団は現行編成の普通科連隊二個、その上で普通科連隊と同数の戦車中隊を配置する、師団戦車大隊は戦車60両、旅団戦車大隊は30両、となる。現在の東千歳第7師団が機動打撃部隊として編成を維持するとして、この場合の所要戦車数は230両、ここに師団戦車大隊所要480両、旅団戦車大隊所要は180両、計890両となる。
現在の戦車300両体制から考えた場合、相当の戦車増強とみえますが、1995年防衛大綱の900両定数よりは小規模です。そして冷戦終結からまもなく30年を経ようとしていますが、日ロ平和条約締結の機運は一進一退、北方の安全保障情勢は当時考えられたほど安泰ではありませんし、朝鮮半島危機の影響が日本へ及ぶように、情勢は逆に緊迫化しました。
新たに中国が沖縄県の領有権を主張し西日本沖までミサイル爆撃機を展開させるとあわせ空母部隊の建造を大車輪で進める現在、日本列島は広大で、専守防衛という防衛政策を推進する以上、蓋然性は充分あると考えるのですが、890両というと現在の300両体制から考えれば大きな増大に映るだけで、冷戦時代1100両と比較したならば、まだ、小規模です。
戦車重視、その部分、対戦車ミサイルが補う構図ですが、対戦車戦闘は戦車に一任し、普通科部隊は近接戦闘に特化するべき、10式戦車が充分配備されているならば、極端な話、中距離多目的誘導弾は必要ではありません、87式対戦車誘導弾、そして順次退役が進む79式対舟艇対戦車誘導弾についても、例えば01式軽対戦車誘導弾も代替装備となり得ます。
01式軽対戦車誘導弾と軽装甲機動車をあわせた対戦車部隊に代替すればよい。戦車さえ充分あるならば、普通科中隊の対戦車小隊に01軽MATを集中すればあとは小銃班には84mm無反動砲だけで充分ではないでしょうか。軽装甲機動車に搭載する軽MATであれば、最低限の装甲防御力があります、機動力も車載したまま射撃が可能ですし、貫徹力も大きい。
射程は確かに1300mと草創期の64式対戦車誘導弾よりも短いものの、あまり射程を大きくしても、例えば射程を4000mとした場合、4000m以遠を監視できる火器管制装置や暗視装置を配備する費用を考える場合には、費用面では戦車とあまり違いはありません。中距離多目的誘導弾は防衛予算概算要求で1セット5億円、高くはないのですが安価でもない。
10式戦車と中距離多目的誘導弾尾取得費用を比較しますと一目瞭然と云えまして、2011年度概算要求提出時の10式戦車が毎年52両の一括生産により取得費用を一両7億円まで低減できるとの見積もりを思い出せば、少数の戦車を延々と生産するよりは、毎年52両の10式戦車を量産することに特化し、そのために装備体系を統合化することを考えるべきだ。
戦車さえ充分あれば装備体系を統合できる、こうする意味で普通科部隊の中距離戦闘を補完する装甲戦闘車も、これとて小池長官時代の防衛大綱改訂にさいし、柔軟な運用能力を有する普通科部隊を戦車部隊に代える、との施策から当然必要とされた施策ですが、戦車さえ充分維持できるならば、96式装輪装甲車で機械化部隊は充分事足りると考えます。
96式装輪装甲車は、防御力と将来発展性に限界があるとして現在改良型が開発中ですが、防御力は戦車から独立した単体で運用を期するからこそ、求められる防御力が大きくなるためで、先頭に戦車が頑強な防御力を誇るならば、対戦車火力は戦車に引き受けてもらい、装甲車は従来求められた防御力、過度な重装甲からは脱却できるのではないでしょうか。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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本日は四月一日、新年度です。そこで今回は年内に予定されている防衛計画の大綱改訂について、最初から批判的に検証してみたいと思います。
5100t型護衛艦として、あさひ型護衛艦が竣工、二番艦しらぬい建造も進む中、海上自衛隊の汎用護衛艦大型化は、ヘリコプター搭載護衛艦はるな型が4700t型護衛艦として、しらね型護衛艦が5200t型護衛艦として建造されたことを思い出しますと、外洋作戦能力を重視する反面、少々方向性がいきすぎているのではないか、と考える今日この頃です。
新年度、本日第14旅団の改編行事が実施され、昨日の第8師団改編行事とともに即応機動連隊新編が開始され、統合機動防衛力整備への新しい一歩が刻まれました。他方で、水陸機動団新編や海上自衛隊への固定翼艦載機導入、航空自衛隊の南西シフトやイージスアショアの陸上自衛隊配備を筆頭に我が国防衛力整備は大車輪で転換と変容を続けています。
しかし、この方向性は、果たして十年後二十年後の周辺情勢を考慮した場合、果たして妥当なのかという視点を投じてみたいと考えます。十年後に十年後の周辺情勢を見通すのは非常に難しい、満州事変のさなかに日米安全保障条約改定と60年安保闘争を構想することは不可能ですし、こうした点を見通すには僅か数年後の技術趨勢を見通すのも難しい。
将来展望は、冷戦時代にも三誦年後を見通すにはソ連軍アフガン侵攻を契機とする新冷戦の端緒に立ちつつ、同時多発テロ後のアフガン介入に関してのロシアとの協力を模索することなど不可能だったでしょう。一方で防衛装備品の寿命は小型車両でも二十年以上、艦艇ならば三十年、戦車や戦闘機は配備計画確定からの運用期間は実に四十年に達します。
装備寿命は将来展望以上に長い時を刻むものではあります。その上で、その整備費用を考えるならば安易に早期退役を行うことは納税者たる国民へ説明が付きませんし、大量配備への影響を忌避して少数生産にとどめるならば、装備体系が複雑化し運用費用にて説明が付きません。二進も三進も、とはこの事ですが、だからこそ慎重にならなければならない。
そこで、敢えて提示したいのは統合機動防衛力整備を念頭に防衛装備体系を複雑化させすぎてはいないか、ということです。元々陸上自衛隊の装備体系は戦車中隊と特科大隊を普通科連隊に配属させる連隊戦闘団を基本としていましたが、この編成に代わるものの模索を確定に至らせる前に、戦車削減、浮いた予算を様々な施策に用いてしまった事が始り。
戦車削減を目的の結果の手段ではなく単なる手段として削減した構図ですが、都合戦車に任務が残る実状を無視して削減したことで、準現ではなく代替装備が必要となり、装備体系を複雑化させるのと並行し、元々戦車削減分の費用で調達する構想であった新装備を調達している。財政上の理由は説得力を持つ一方、為政者の納税者への説明は充分だったか。
戦車を重視し、過度な対戦車ミサイルを効率化できないか。敢えて提示したいのは逆説的低減です。一番理想的な選択肢は、装甲戦闘車と対戦者ミサイルに枝分かれした戦車の代替装備を見直して、思い切って戦車を増勢してしまう、ということです。逆に普通科連隊の編成を五個普通科中隊基幹という師団普通科連隊の編成を見直し、小型化を断行する。
旅団普通科連隊規模までコンパクト化、つまりは三個普通科中隊とし、既に調達中断から久しい装甲戦闘車を念頭とした戦車代替装備を断念し、通常の装甲車生産に特化すればよい。そして制度上の非効率が指摘される即応予備自衛官制度を見直し、再度コンパクト化した普通科連隊として師団に編入したほうが却って訓練体系を統合化できないでしょうか。
師団は小型普通科連隊四個、旅団は現行編成の普通科連隊二個、その上で普通科連隊と同数の戦車中隊を配置する、師団戦車大隊は戦車60両、旅団戦車大隊は30両、となる。現在の東千歳第7師団が機動打撃部隊として編成を維持するとして、この場合の所要戦車数は230両、ここに師団戦車大隊所要480両、旅団戦車大隊所要は180両、計890両となる。
現在の戦車300両体制から考えた場合、相当の戦車増強とみえますが、1995年防衛大綱の900両定数よりは小規模です。そして冷戦終結からまもなく30年を経ようとしていますが、日ロ平和条約締結の機運は一進一退、北方の安全保障情勢は当時考えられたほど安泰ではありませんし、朝鮮半島危機の影響が日本へ及ぶように、情勢は逆に緊迫化しました。
新たに中国が沖縄県の領有権を主張し西日本沖までミサイル爆撃機を展開させるとあわせ空母部隊の建造を大車輪で進める現在、日本列島は広大で、専守防衛という防衛政策を推進する以上、蓋然性は充分あると考えるのですが、890両というと現在の300両体制から考えれば大きな増大に映るだけで、冷戦時代1100両と比較したならば、まだ、小規模です。
戦車重視、その部分、対戦車ミサイルが補う構図ですが、対戦車戦闘は戦車に一任し、普通科部隊は近接戦闘に特化するべき、10式戦車が充分配備されているならば、極端な話、中距離多目的誘導弾は必要ではありません、87式対戦車誘導弾、そして順次退役が進む79式対舟艇対戦車誘導弾についても、例えば01式軽対戦車誘導弾も代替装備となり得ます。
01式軽対戦車誘導弾と軽装甲機動車をあわせた対戦車部隊に代替すればよい。戦車さえ充分あるならば、普通科中隊の対戦車小隊に01軽MATを集中すればあとは小銃班には84mm無反動砲だけで充分ではないでしょうか。軽装甲機動車に搭載する軽MATであれば、最低限の装甲防御力があります、機動力も車載したまま射撃が可能ですし、貫徹力も大きい。
射程は確かに1300mと草創期の64式対戦車誘導弾よりも短いものの、あまり射程を大きくしても、例えば射程を4000mとした場合、4000m以遠を監視できる火器管制装置や暗視装置を配備する費用を考える場合には、費用面では戦車とあまり違いはありません。中距離多目的誘導弾は防衛予算概算要求で1セット5億円、高くはないのですが安価でもない。
10式戦車と中距離多目的誘導弾尾取得費用を比較しますと一目瞭然と云えまして、2011年度概算要求提出時の10式戦車が毎年52両の一括生産により取得費用を一両7億円まで低減できるとの見積もりを思い出せば、少数の戦車を延々と生産するよりは、毎年52両の10式戦車を量産することに特化し、そのために装備体系を統合化することを考えるべきだ。
戦車さえ充分あれば装備体系を統合できる、こうする意味で普通科部隊の中距離戦闘を補完する装甲戦闘車も、これとて小池長官時代の防衛大綱改訂にさいし、柔軟な運用能力を有する普通科部隊を戦車部隊に代える、との施策から当然必要とされた施策ですが、戦車さえ充分維持できるならば、96式装輪装甲車で機械化部隊は充分事足りると考えます。
96式装輪装甲車は、防御力と将来発展性に限界があるとして現在改良型が開発中ですが、防御力は戦車から独立した単体で運用を期するからこそ、求められる防御力が大きくなるためで、先頭に戦車が頑強な防御力を誇るならば、対戦車火力は戦車に引き受けてもらい、装甲車は従来求められた防御力、過度な重装甲からは脱却できるのではないでしょうか。
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