北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛大綱改訂2018【四月一日特集】戦車増強と戦闘ヘリコプター更新で拓く装備体系統合

2018-04-02 20:07:39 | 北大路機関特別企画
■10式戦車とAH-64E戦闘ヘリ
 戦車が充分あれば、膨大な戦車代替装備を効率化出来、装甲車も最小限度の性能で充分です、逆に戦車の仕事が残る中で削減を強行したことが全ての元凶だ。

 装甲車、砲弾片からの乗員の防護と軽火器からの防御力に依拠した重機関銃等車載火器による下車戦闘の支援、に特化していれば良い。96式装輪装甲車に収容力で将来発展性に危惧があるならば、高機動車のように1/4tトレーラを牽引すれば良いでしょう。それでも個人装備の搭載さえ難しいのであれば、3個小銃班を4両に分乗させるという選択肢もある。

 96式装輪装甲車が小型過ぎて小銃班を完全武装させたならば全員が載れなくなる可能性が、実際にあるならば3個小銃班を4両に分乗させるという選択肢、班長以下分散してしまいますので、一見奇抜に見えますが米陸軍のM-2装甲戦闘車などは実際にこうしています。M-2装甲戦闘車は25mm砲塔基部を車体中央部に置いた事で車内容積が縮小していました。

 中距離多目的誘導弾は最新装備であり、普通科中隊には戦車さえ充分あれば不要だ、という私見は暴論と見えましょう。しかし、中距離多目的誘導弾が優れている、という視点ではこの私論を暴論とみる方ほど同意できるものではないでしょうか。ここで重視したいのは、中距離多目的誘導弾は、やはり用途がある、という部分です、ただ、用途は海上にて。

 中距離多目的誘導弾は海上自衛隊の装備とすることが望ましい。具体的には中距離多目的誘導弾の8kmという射程を高く評価したい、8kmというと海上にて使用する場合、大口径機関砲と艦砲の中間程度の射程です。なによりも対戦車用、つまり艦対艦ミサイルと比較したならば破壊力が限定された誘導弾ですので、武装工作船や海賊船の停船に理想的だ。

 従来型戦闘には難しい射程ですが、平時のグレーゾーン事態等では、敵水上戦闘艦の接近を拒否できる装備でもある。つまるところ、掃海艇に搭載することが理想な装備といえます。掃海艇に対水上戦闘を展開させる、不自然かもしれませんが、えたじま型掃海艇や、あわじ型掃海艦が20mm管制式銃塔を搭載するのは哨戒艇任務を想定している部分もある。

 掃海艇に中距離多目的誘導弾、といいますと、そもそも重心面で搭載し復元力を維持できるのか、疑問となる方もいるでしょうが、PAP-104掃海器具と中距離多目的誘導弾発射装置の重量はそれほど違いません。掃海デリッククレーンによりつり上げて後部甲板に搭載できる重量です。もともと、すがしま型掃海艇ならば、追加の装備搭載を念頭としている。

 すがしま型掃海艇は磁気掃海装置や音響掃海器具を適宜搭載する重心の設計余裕はあります。そもそも射程8kmのミサイルに意味はあるのか、と問われますと、実はアメリカ海軍が同様の改修を実施しているのです。アメリカ海軍は25mm機関砲を主武装とする300t規模のサイクロン級哨戒艇に射程16kmのグリフィンミサイル搭載を実施しています。

 グリフィンミサイル搭載、その主眼はテロ容疑船の臨検にさいし無反動砲等で重武装している場合、機関砲での対処に限界があるとして進められているもので、満載排水量300tというサイクロン級哨戒艇ですが、小型のグリフィンミサイルは哨戒艇の限られた艦橋構造物に一体化し搭載する事が可能です。中距離多目的誘導弾も搭載出来ない事はありません。

 掃海艇に中距離多目的誘導弾を搭載することで、現在護衛艦を充当しているソマリア沖海賊対処任務へ掃海艇を代替させる事も可能ですし、南シナ海での航行の自由作戦と同じ経路を航行する際にも、万一、第三国艦艇が航行を妨害し拿捕の行動をとった場合には実力で拒否する事も可能です。水上戦闘艦でも重量48kgの中距離多目的誘導弾は無視できない。

 海賊対処任務に掃海艇の速力は不安ではありますが掃海艇搭載の小型搭載艇に代えて、RIB複合高速艇に機銃を搭載し運用したならば、速力面の心配は解消されましょう。加えて手投式のスキャンイーグル無人偵察機程度ならば掃海艇の甲板に搭載出来ますので、勿論余分な装備を機雷処分任務時には搭載できませんが、哨戒艇任務へ転用は難しくないのです。

 戦車さえ充分であれば、陸上自衛隊の資産はこのように統合運用に充てることが可能です。そして上記運用を行った上で、中距離多目的誘導弾に余裕があるならば、ある者は有効活用すべきという視点かた、この装備は空輸が可能ですので、第1空挺団に集中配備し、空挺対戦車大隊として戦車をそもそも運用できない部隊へ包括配備することが理想です。

 さすがに戦車が充分配備されていましょうとも、10式戦車を空挺団へ配備することは難しい、C-2輸送機では運用できませんし、なによりも空挺投下できません。一つの部隊に優秀装備を集中する構図に運用や教育訓練条の、不安を感じる方は、89式装甲戦闘車と96式自走迫撃砲を集中配備している東千歳の第11普通科連隊の実例を見れば納得できましょう。

 戦闘ヘリコプター、優秀装備と云いますと、戦闘ヘリコプターについては、やはり死活的に重要な装備です。ただ、現在のままの調達水準では従来の各方面隊へ対戦車ヘリコプター隊を配置する方式は厳しくなってゆくかもしれません。ここは陸上自衛隊にも航空集団を創設し、AH-64Eを32機程度集中配備、必要な防衛正面へ機動運用する方式が望ましい。

 戦闘ヘリコプターが方面隊規模で必要である事は云うまでもありません、それでも戦車さえ十分配備されている体制を醸成できるならば、方面隊については多用途ヘリコプター、無人ヘリコプターを大幅に増強し、戦闘ヘリコプターについてはAH-64Eの機動運用で賄う選択肢もある、これが出来る程にAH-64E戦闘ヘリコプターの戦闘行動半径は大きい。

 例えばM134ミニガンと70mmロケット弾発射器を搭載するMH-60特殊戦ヘリコプター飛行隊、ヘルファイア対戦車ミサイルを運用可能で有人無人ともに転用できるAH-6D特殊戦ヘリコプターを方面隊へ配備する。AH-6Dは安そうに見えて非常に高価な無人ヘリコプターですが、市街地上空を飛行する際には有人飛行に航空法上の利便性もあり、理想です。

 AH-64Eについては一括輸入という施策を採らざるを得ませんが、予備機と教育所要に現行のAH-64Dと並行することで、この規模の輸入でも実に96機も配備されたAH-1S対戦車ヘリコプターの任務を代替できましょう。MH-60はM-134により所謂グレーゾーン事態程度であれば十分に対応でき、このほかローター部分に折り畳み機構を採用すること。

 イギリスのWAH-64のように、のローターが折り畳めるならば、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦への艦載さえも可能です。MH-60は決して安価な航空機ではありませんが、特殊作戦支援や人道支援任務、海上自衛隊のSH-60K哨戒ヘリコプターにたいし、ミサイル誘導や対潜哨戒だけはできませんが、そのほかの任務はかなりの部分を代替できます。

 戦闘ヘリコプターは高価な装備ですが、少数を配備し大事に活用する状況を模索する虎の子、とするのではなく、戦闘ヘリコプターは高い装備なのだからこそ、という発想で、陸海空に活用できる幅を最大限模索した方が、島嶼部防衛や邦人救出任務、場合によってはAH-64Eも、情報収集能力を活かした災害派遣にさえ活用できるのではないかと考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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