■普通科教導連隊特科教導隊
普通科教導連隊の観閲行進、その後続には特科教導隊が行進進入点を越えて待機位置へ前進中だ。
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施設作業小隊の観閲行進、普通科連隊の第一線障害除去や陣地構築などを支援する部隊ですね。すぐ後ろには対戦車中隊が続く。中距離多目的誘導弾は通称中多、ミリ波レーダと熱線暗視装置を併用する事で同時多目標を捕捉し毎秒1発の連続発射能力があります、射程は非公表ですが概ね8kmとされています。自衛隊では重MATに続いて普通科中隊用の87式対戦車誘導弾が開発されています。
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96式装輪装甲車にとうさいされているのは70式地雷処理装置、安全な装甲車から地雷処理が行えるという。中距離多目的誘導弾もこんな方式で運用できればいいのだが。中距離多目的誘導弾通称中多は87式対戦車誘導弾通称中MATの後継という位置づけにもなっています。87式対戦車誘導弾は射程2000m、レーザー誘導方式のミサイルです。射程2000mが中隊の交戦距離、4000mが師団や連隊の交戦距離、と区分していた訳ですね。
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中距離多目的誘導弾のおはなし。重MATの威力も今日的に視て充分なのですが、誘導が赤外線半指令誘導方式という命中まで射手が目標を照準し続ける必要があるため、旧式化したとされました、ちなみに射撃は陣地で行い車上からの射撃は想定されていません、これは機動性という面で問題でしょう。
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中多を初めて富士総合火力演習で射撃展示を見た際には衝撃を受けました、毎秒1発で連続発射し、異なる目標へ確実に命中、3~4秒で戦車小隊を殲滅する能力があります。しかも射程8kmでは戦車砲の射程外から射撃でき、データリンクにより間接照準射撃も出来る。正直なところ、戦車の冷戦後における各国の縮小と反比例して装甲戦闘車が増大している状況では、重装甲の装甲戦闘車を排除するためのこの種の装備、もちろん大口径機関砲を搭載した装甲戦闘車でもいいのですが必要性は高まるばかり。
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中多は戦車が削減される為に普通科中隊へ配備が進められていますが、中隊の装備としては大き過ぎ、連隊に対戦車中隊を置く編成へ転換されるといいます。すると普通科中隊の対戦車小隊に装備が無くなりますが、小銃班の01式軽対戦車誘導弾を移管するもよう。戦車部隊並に対戦車戦闘が強力な普通科部隊、というのも凄いですが野球の強いサッカー部のようで。
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79式対舟艇対戦車誘導弾は赤外線半指令誘導方式のミサイルで今では旧式ですが、照準下方向へと0んで行く。対して01式軽対戦車誘導弾は通称軽MAT,射程1500mのミサイルですが、熱源画像認識装置により射撃後即座陣地変換可能な撃ち放し能力を有します。戦車に対して最も頼りになる装備ですが、陣地攻撃には全く使用出来ず、いわばデジタルカメラのAF機能が使い難い機種のようなもの。しかも電源確保が重要な装備、第一線で使い難い。
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中距離多目的誘導弾通称中多は戦車部隊削減を補う高性能ミサイルです。ただ、戦車の代わりとはいえ一両5億円、戦車は毎年52両生産した場合で一両7億円といいますので、安いには安いのですが、中多を量産する予算でもっと戦車を買ったらどうかと思うのです。どうも、戦車を削減した自衛隊、欧州ヶ国が戦車を削減しているのにつられて、欧州は戦車の仕事がなくなったので戦車を減らしているのですが、日本は戦車の仕事が残っているのに戦車を削減したしわ寄せが対戦車ミサイル増勢に転換しているようにも思えてならない。
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対戦車ミサイルも同様ですが、続行する重迫撃砲中隊も、砲兵火力の任務が残っている最中で特科部隊を削減したツケを普通科部隊がガンバっている構図だ。普通科教導連隊重迫撃砲中隊の120mmRT重迫撃砲、フランス製の重迫撃砲で自衛隊は420門も調達しました。120mm重迫撃砲は普通科部隊は使用する最大口径の火砲です。法そのものに車輪が取り付けられており、重迫牽引車により迅速に展開し、即座に射撃可能だ。
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120mmRT重迫撃砲は通常弾の射程が8.1kmあり、射程延伸弾で最大13kmの射程を誇ります。これはかなりの高性能でして、前に用いていたアメリカ製107mmM2重迫撃砲は射程4kmに過ぎません。持続射撃能力は砲身は榴弾砲よりも薄い為限定的ですが、現代の対砲レーダ装置が発達した砲兵戦闘で持続射撃を延々としたならば十分以内に標定され対砲兵戦闘の敵効力射が降り注ぐ、その点重迫撃砲は持続射撃能力は低いものの一分間の射撃弾数は多く、投弾量は旧式榴弾砲を圧倒できる。もっとも射程13kmの射程延伸弾は特殊弾薬で連続射撃能力が通常弾薬と異なりますが通常弾薬の8.1kmも無視できない。
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開発国であるフランスは砲兵連隊に装備し、戦闘団編成時に歩兵連隊へ小隊単位で編入するのですが、自衛隊は各普通科連隊に重迫撃砲を置いており、重迫撃砲中隊には12門が配備されています。もちろん高機動車派生の重迫牽引車により機動力が凄い、ちなみにこの重迫牽引車、高機動車ではなく重迫撃砲の備品扱いだったりする。重迫撃砲に加えて普通科中隊に81mm迫撃砲もあるので、実は普通科部隊の火力は物凄い。
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105mm榴弾砲の後継という位置づけの迫撃砲でもあるので、現在自衛隊では特科部隊の榴弾砲を大幅に削減する改編を実施中ですが、それならば120mm重迫撃砲を特科連隊に火力支援大隊を編成し、特科情報装置と連携して運用した方がいいのでは、と思ったりもする。ようするに、特科部隊のほうに榴弾砲の他に重迫撃砲専任部隊を置くという構図の提案です。
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現在、全国の師団特科連隊は火砲30門、特科隊は15門です、一昔の編成の一個大隊分でしかりません、しかし、師団の場合で重迫撃砲が36門あるのですから、特科部隊のデータリンクシステムに統合運用したならば、最大射程13kmを最大限発揮できるでしょう。その上で、出来れば重迫撃砲の牽引車輛に82式指揮通信車のような軽装甲車両を充当できますと、重迫撃砲部隊の機動時にいきなり火力急襲を受けた際にも対応出来ます、開発国のフランスは機械化部隊にて実際、120mm迫撃砲をVABという、82式指揮通信車の四輪駆動版のような、実際にはVABは1975年に開発されていますので、日本の方が影響を受けていそうですが、軽装甲車に牽引させています。
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特科教導隊の観閲行進、特科教導隊は隊編成ですので特科教導連隊ではない、故に特科大隊を編成に持たず特科中隊が基幹、全国の師団旅団改編や師団特科縮小に際して特科連隊が特科隊に改編されているその鏑矢が、ここの特科教導隊なのか、と考えたりもします。全国の特科隊が火砲数15門で規模が小さすぎる、と指摘を散見するのですが、案外、富士教導団では小規模の特科部隊を最大限有効活用する手法を検証した結果なのかもしれませんね。
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本部管理中隊の車両、衛生小隊や情報小隊などが観閲行進に参加している、自衛隊の特科部隊は欧米の砲兵部隊がかなり冷遇され、NATO諸国が次々と火砲100門前後に縮小される中、前の戦争で散々敵砲兵火力に痛い目に遭わされた自衛隊は比較的優遇されている。火砲100門以下の陸軍、日本ではちょっと想像できないのですが、欧州の旅団を見ますと最大の火砲が81mm迫撃砲と84mm無反動砲、という部隊が、それもNATO加盟国の現役旅団で、実在したりします。下を見ればきりがないのですが、ちょっと、驚きだ。
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FH-70榴弾砲の観閲行進、一見自走榴弾砲よりもやわな車両に見えるのですが半自動装填装置つきの近代的蚊法です。この恩恵、日本では半自動装填装置が当たり前になっているので恩恵を感じにくいのですが、1990年代まで各国火砲には、砲弾をこう桿で一発一発押込まなければ装填できなかった火砲も多かったのです。日本の自衛隊データリンク能力は実は諸外国の中でかなり進んでいた、特科情報装置3型は敵砲兵の標定と優先火力目標の選定と火力調整を、対砲レーダや前進観測と音響標定に全ての火砲を接続し実施するもので、計算と標定速度が特科部隊の能力そのものといえる。
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データリンク、火砲の砲弾は155mm砲弾で長径45mに有効弾片を散布します、言い換えれば敵の火砲と撃ちあうには相手の45m以内に着弾させなければならない、数門を同時に射撃するのですが自衛隊が求めるのは30km以遠の目標へ誤差50mという厳しいもの。実は陸軍データリンクという概念は砲兵戦の自動化技術を全ての職種に拡大させたものと云ってもいいもので、第一線の前進観測班が把握した目標情報を即座に戦砲隊へ情報を伝送し、30km単位の遠距離戦闘を、誤差50m以下という厳しい条件で達成するのです。
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火砲の精度、ちなみに特科部隊の任務に気象測定もります、砲弾を命中させるには30kmの距離では様々な僅かな偏差でも想定しなければ確実な命中は叶いません。適当に数を撃てば対砲兵戦で撃滅されるばかりか、日本は専守防衛で国土戦闘を想定しているのですから、同胞の民家や工場といった財産、勿論渋滞などで逃げ遅れた同胞も考えられ、命中精度を高くするに越した事はない。偏差には、地球重力の影響に加え、湿度と風力は数十km先を狙う砲兵戦では大きな影響を及ぼすためで、参考までに核攻撃を受けた際の放射性降下物拡散や化学攻撃等に際しての化学剤汚染拡散の気象標定も特科部隊の任務の一つ。
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FH-70榴弾砲の威力を最大限活かす装備に特科情報装置3型があります。この特科情報装置3型、砲兵戦闘を自動化させる細心の装備、だけれども2000年代の装備で、この種の装備の陳腐化はコンピュータの処理技術とともに日進月歩となる、逆に火砲が少々旧式でも標定能力と情報処理システムと連接さえできれば、現代戦には対応できる。
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大砲が最新でも情報処理システムが旧式ならば逆に殲滅される、自衛隊はこの点に抜かりないもので、火砲はFH-70等今日では若干旧式の、正確にはそれ程旧式でもないのですが、20世紀の火砲が維持されていますが、情報関連装備は最大限最新型の配備に注力している。これは意外と思慮が無ければ、普通の軍隊であれば命中精度よりも火砲の数を揃えようとするでしょう、しかし日本の場合は数とともに精度を高めた。
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特科教導隊第1中隊の観閲行進、第1中隊と第2中隊はFH-70榴弾砲を装備している。イギリスドイツイタリア共同開発の39口径155mm榴弾砲です。第1中隊と第2中隊、2個中隊とは師団特科連隊では1個特科大隊に相当する規模で装備するFH-70は10門です。このFH-70が配備される前は特科連隊には迫撃砲制圧と直掩火力を担う105mmM-1榴弾砲の特科大隊が普通科連隊の数と同数だけと、全般支援火力として対砲兵にあたる155mmM-1榴弾砲を装備する一個大隊がありました、FH-70の配備で全て統合できたわけです。
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FH-70,第二次大戦中の火砲を置き換え、1970年代に対応できる将来火砲を開発しよう、という事で開発されたのがFH-70,半自動装填採用等新技術を盛り込んだもので、射撃速度や機動力の面で、高性能ではあるのですが価格が自走榴弾砲なみに高くなってしまいました。この時期には将来的にすべての火砲は自走榴弾砲へ統合されるのではないか、という展望もありましたので、牽引砲に此処まで高性能、というものもある意味浮いた構図です。
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FH-70は半自動装填方式を採用しています。半自動装填とは、第二次大戦中の火砲までは装填まで砲弾をこう桿で砲身へ押し込まなければならなかったのですが、これが意外と大変です、155mmM-1榴弾砲は富士学校に展示されています、そしてこれを運用している資料写真を見ますと、155mmM-1榴弾砲の砲身へ十人近くが棒で155mm砲弾を押し込んでいるものがあり、一言でいえば一門射撃するのに物凄い労力と人数が必要でした。これもFH-70の導入で過去の話に、半自動装填のFH-70は射撃の反動で自動装填できます。装弾架上に砲弾を置くだけでよく自動化できた。
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NATOは自走榴弾砲の装備化を急ぎFH-70には顧みなかった為、欧州では普及しませんでした。アメリカ製M-109A2が安かったのです、M-109A2は砲身が短く射程が劣るが機甲砲兵としては戦車に随伴できるだけよかったのです。M-109A2、近代化改修により39口径へ方針を延伸できました、この為まだまだ使えている、寿命の長い装備です、ならば日本もM-109でも導入した方が良かったのではないか、と思ったりもしたのですが、M-109の砲身換装費用がFH-70の新規調達とあまり変わらない、と聞きました後は考えを改めました。しかし、日本は惑わされる事無くFH-70に飛びつく。
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自衛隊はFH-70を高く評価しました。ほかに牽引砲で三発バースト射撃が可能という規格外の火砲でスウェーデン製FH-77というものがあったのですが、全長も幅も大き過ぎ不適格とされる。FH-70選定の背景、本州特科部隊は有事の際に北海道へ緊急展開しなければならない、39口径火砲は当時の榴弾砲として長砲身で射程が長く、半自動装填装置連続射撃能力を持ち、自走能力さえ持つのですから狭隘国土では非常に理想的な火砲でした。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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普通科教導連隊の観閲行進、その後続には特科教導隊が行進進入点を越えて待機位置へ前進中だ。
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施設作業小隊の観閲行進、普通科連隊の第一線障害除去や陣地構築などを支援する部隊ですね。すぐ後ろには対戦車中隊が続く。中距離多目的誘導弾は通称中多、ミリ波レーダと熱線暗視装置を併用する事で同時多目標を捕捉し毎秒1発の連続発射能力があります、射程は非公表ですが概ね8kmとされています。自衛隊では重MATに続いて普通科中隊用の87式対戦車誘導弾が開発されています。
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96式装輪装甲車にとうさいされているのは70式地雷処理装置、安全な装甲車から地雷処理が行えるという。中距離多目的誘導弾もこんな方式で運用できればいいのだが。中距離多目的誘導弾通称中多は87式対戦車誘導弾通称中MATの後継という位置づけにもなっています。87式対戦車誘導弾は射程2000m、レーザー誘導方式のミサイルです。射程2000mが中隊の交戦距離、4000mが師団や連隊の交戦距離、と区分していた訳ですね。
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中距離多目的誘導弾のおはなし。重MATの威力も今日的に視て充分なのですが、誘導が赤外線半指令誘導方式という命中まで射手が目標を照準し続ける必要があるため、旧式化したとされました、ちなみに射撃は陣地で行い車上からの射撃は想定されていません、これは機動性という面で問題でしょう。
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中多を初めて富士総合火力演習で射撃展示を見た際には衝撃を受けました、毎秒1発で連続発射し、異なる目標へ確実に命中、3~4秒で戦車小隊を殲滅する能力があります。しかも射程8kmでは戦車砲の射程外から射撃でき、データリンクにより間接照準射撃も出来る。正直なところ、戦車の冷戦後における各国の縮小と反比例して装甲戦闘車が増大している状況では、重装甲の装甲戦闘車を排除するためのこの種の装備、もちろん大口径機関砲を搭載した装甲戦闘車でもいいのですが必要性は高まるばかり。
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中多は戦車が削減される為に普通科中隊へ配備が進められていますが、中隊の装備としては大き過ぎ、連隊に対戦車中隊を置く編成へ転換されるといいます。すると普通科中隊の対戦車小隊に装備が無くなりますが、小銃班の01式軽対戦車誘導弾を移管するもよう。戦車部隊並に対戦車戦闘が強力な普通科部隊、というのも凄いですが野球の強いサッカー部のようで。
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79式対舟艇対戦車誘導弾は赤外線半指令誘導方式のミサイルで今では旧式ですが、照準下方向へと0んで行く。対して01式軽対戦車誘導弾は通称軽MAT,射程1500mのミサイルですが、熱源画像認識装置により射撃後即座陣地変換可能な撃ち放し能力を有します。戦車に対して最も頼りになる装備ですが、陣地攻撃には全く使用出来ず、いわばデジタルカメラのAF機能が使い難い機種のようなもの。しかも電源確保が重要な装備、第一線で使い難い。
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中距離多目的誘導弾通称中多は戦車部隊削減を補う高性能ミサイルです。ただ、戦車の代わりとはいえ一両5億円、戦車は毎年52両生産した場合で一両7億円といいますので、安いには安いのですが、中多を量産する予算でもっと戦車を買ったらどうかと思うのです。どうも、戦車を削減した自衛隊、欧州ヶ国が戦車を削減しているのにつられて、欧州は戦車の仕事がなくなったので戦車を減らしているのですが、日本は戦車の仕事が残っているのに戦車を削減したしわ寄せが対戦車ミサイル増勢に転換しているようにも思えてならない。
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対戦車ミサイルも同様ですが、続行する重迫撃砲中隊も、砲兵火力の任務が残っている最中で特科部隊を削減したツケを普通科部隊がガンバっている構図だ。普通科教導連隊重迫撃砲中隊の120mmRT重迫撃砲、フランス製の重迫撃砲で自衛隊は420門も調達しました。120mm重迫撃砲は普通科部隊は使用する最大口径の火砲です。法そのものに車輪が取り付けられており、重迫牽引車により迅速に展開し、即座に射撃可能だ。
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120mmRT重迫撃砲は通常弾の射程が8.1kmあり、射程延伸弾で最大13kmの射程を誇ります。これはかなりの高性能でして、前に用いていたアメリカ製107mmM2重迫撃砲は射程4kmに過ぎません。持続射撃能力は砲身は榴弾砲よりも薄い為限定的ですが、現代の対砲レーダ装置が発達した砲兵戦闘で持続射撃を延々としたならば十分以内に標定され対砲兵戦闘の敵効力射が降り注ぐ、その点重迫撃砲は持続射撃能力は低いものの一分間の射撃弾数は多く、投弾量は旧式榴弾砲を圧倒できる。もっとも射程13kmの射程延伸弾は特殊弾薬で連続射撃能力が通常弾薬と異なりますが通常弾薬の8.1kmも無視できない。
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開発国であるフランスは砲兵連隊に装備し、戦闘団編成時に歩兵連隊へ小隊単位で編入するのですが、自衛隊は各普通科連隊に重迫撃砲を置いており、重迫撃砲中隊には12門が配備されています。もちろん高機動車派生の重迫牽引車により機動力が凄い、ちなみにこの重迫牽引車、高機動車ではなく重迫撃砲の備品扱いだったりする。重迫撃砲に加えて普通科中隊に81mm迫撃砲もあるので、実は普通科部隊の火力は物凄い。
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105mm榴弾砲の後継という位置づけの迫撃砲でもあるので、現在自衛隊では特科部隊の榴弾砲を大幅に削減する改編を実施中ですが、それならば120mm重迫撃砲を特科連隊に火力支援大隊を編成し、特科情報装置と連携して運用した方がいいのでは、と思ったりもする。ようするに、特科部隊のほうに榴弾砲の他に重迫撃砲専任部隊を置くという構図の提案です。
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現在、全国の師団特科連隊は火砲30門、特科隊は15門です、一昔の編成の一個大隊分でしかりません、しかし、師団の場合で重迫撃砲が36門あるのですから、特科部隊のデータリンクシステムに統合運用したならば、最大射程13kmを最大限発揮できるでしょう。その上で、出来れば重迫撃砲の牽引車輛に82式指揮通信車のような軽装甲車両を充当できますと、重迫撃砲部隊の機動時にいきなり火力急襲を受けた際にも対応出来ます、開発国のフランスは機械化部隊にて実際、120mm迫撃砲をVABという、82式指揮通信車の四輪駆動版のような、実際にはVABは1975年に開発されていますので、日本の方が影響を受けていそうですが、軽装甲車に牽引させています。
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特科教導隊の観閲行進、特科教導隊は隊編成ですので特科教導連隊ではない、故に特科大隊を編成に持たず特科中隊が基幹、全国の師団旅団改編や師団特科縮小に際して特科連隊が特科隊に改編されているその鏑矢が、ここの特科教導隊なのか、と考えたりもします。全国の特科隊が火砲数15門で規模が小さすぎる、と指摘を散見するのですが、案外、富士教導団では小規模の特科部隊を最大限有効活用する手法を検証した結果なのかもしれませんね。
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本部管理中隊の車両、衛生小隊や情報小隊などが観閲行進に参加している、自衛隊の特科部隊は欧米の砲兵部隊がかなり冷遇され、NATO諸国が次々と火砲100門前後に縮小される中、前の戦争で散々敵砲兵火力に痛い目に遭わされた自衛隊は比較的優遇されている。火砲100門以下の陸軍、日本ではちょっと想像できないのですが、欧州の旅団を見ますと最大の火砲が81mm迫撃砲と84mm無反動砲、という部隊が、それもNATO加盟国の現役旅団で、実在したりします。下を見ればきりがないのですが、ちょっと、驚きだ。
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FH-70榴弾砲の観閲行進、一見自走榴弾砲よりもやわな車両に見えるのですが半自動装填装置つきの近代的蚊法です。この恩恵、日本では半自動装填装置が当たり前になっているので恩恵を感じにくいのですが、1990年代まで各国火砲には、砲弾をこう桿で一発一発押込まなければ装填できなかった火砲も多かったのです。日本の自衛隊データリンク能力は実は諸外国の中でかなり進んでいた、特科情報装置3型は敵砲兵の標定と優先火力目標の選定と火力調整を、対砲レーダや前進観測と音響標定に全ての火砲を接続し実施するもので、計算と標定速度が特科部隊の能力そのものといえる。
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データリンク、火砲の砲弾は155mm砲弾で長径45mに有効弾片を散布します、言い換えれば敵の火砲と撃ちあうには相手の45m以内に着弾させなければならない、数門を同時に射撃するのですが自衛隊が求めるのは30km以遠の目標へ誤差50mという厳しいもの。実は陸軍データリンクという概念は砲兵戦の自動化技術を全ての職種に拡大させたものと云ってもいいもので、第一線の前進観測班が把握した目標情報を即座に戦砲隊へ情報を伝送し、30km単位の遠距離戦闘を、誤差50m以下という厳しい条件で達成するのです。
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火砲の精度、ちなみに特科部隊の任務に気象測定もります、砲弾を命中させるには30kmの距離では様々な僅かな偏差でも想定しなければ確実な命中は叶いません。適当に数を撃てば対砲兵戦で撃滅されるばかりか、日本は専守防衛で国土戦闘を想定しているのですから、同胞の民家や工場といった財産、勿論渋滞などで逃げ遅れた同胞も考えられ、命中精度を高くするに越した事はない。偏差には、地球重力の影響に加え、湿度と風力は数十km先を狙う砲兵戦では大きな影響を及ぼすためで、参考までに核攻撃を受けた際の放射性降下物拡散や化学攻撃等に際しての化学剤汚染拡散の気象標定も特科部隊の任務の一つ。
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FH-70榴弾砲の威力を最大限活かす装備に特科情報装置3型があります。この特科情報装置3型、砲兵戦闘を自動化させる細心の装備、だけれども2000年代の装備で、この種の装備の陳腐化はコンピュータの処理技術とともに日進月歩となる、逆に火砲が少々旧式でも標定能力と情報処理システムと連接さえできれば、現代戦には対応できる。
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大砲が最新でも情報処理システムが旧式ならば逆に殲滅される、自衛隊はこの点に抜かりないもので、火砲はFH-70等今日では若干旧式の、正確にはそれ程旧式でもないのですが、20世紀の火砲が維持されていますが、情報関連装備は最大限最新型の配備に注力している。これは意外と思慮が無ければ、普通の軍隊であれば命中精度よりも火砲の数を揃えようとするでしょう、しかし日本の場合は数とともに精度を高めた。
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特科教導隊第1中隊の観閲行進、第1中隊と第2中隊はFH-70榴弾砲を装備している。イギリスドイツイタリア共同開発の39口径155mm榴弾砲です。第1中隊と第2中隊、2個中隊とは師団特科連隊では1個特科大隊に相当する規模で装備するFH-70は10門です。このFH-70が配備される前は特科連隊には迫撃砲制圧と直掩火力を担う105mmM-1榴弾砲の特科大隊が普通科連隊の数と同数だけと、全般支援火力として対砲兵にあたる155mmM-1榴弾砲を装備する一個大隊がありました、FH-70の配備で全て統合できたわけです。
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FH-70,第二次大戦中の火砲を置き換え、1970年代に対応できる将来火砲を開発しよう、という事で開発されたのがFH-70,半自動装填採用等新技術を盛り込んだもので、射撃速度や機動力の面で、高性能ではあるのですが価格が自走榴弾砲なみに高くなってしまいました。この時期には将来的にすべての火砲は自走榴弾砲へ統合されるのではないか、という展望もありましたので、牽引砲に此処まで高性能、というものもある意味浮いた構図です。
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FH-70は半自動装填方式を採用しています。半自動装填とは、第二次大戦中の火砲までは装填まで砲弾をこう桿で砲身へ押し込まなければならなかったのですが、これが意外と大変です、155mmM-1榴弾砲は富士学校に展示されています、そしてこれを運用している資料写真を見ますと、155mmM-1榴弾砲の砲身へ十人近くが棒で155mm砲弾を押し込んでいるものがあり、一言でいえば一門射撃するのに物凄い労力と人数が必要でした。これもFH-70の導入で過去の話に、半自動装填のFH-70は射撃の反動で自動装填できます。装弾架上に砲弾を置くだけでよく自動化できた。
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NATOは自走榴弾砲の装備化を急ぎFH-70には顧みなかった為、欧州では普及しませんでした。アメリカ製M-109A2が安かったのです、M-109A2は砲身が短く射程が劣るが機甲砲兵としては戦車に随伴できるだけよかったのです。M-109A2、近代化改修により39口径へ方針を延伸できました、この為まだまだ使えている、寿命の長い装備です、ならば日本もM-109でも導入した方が良かったのではないか、と思ったりもしたのですが、M-109の砲身換装費用がFH-70の新規調達とあまり変わらない、と聞きました後は考えを改めました。しかし、日本は惑わされる事無くFH-70に飛びつく。
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自衛隊はFH-70を高く評価しました。ほかに牽引砲で三発バースト射撃が可能という規格外の火砲でスウェーデン製FH-77というものがあったのですが、全長も幅も大き過ぎ不適格とされる。FH-70選定の背景、本州特科部隊は有事の際に北海道へ緊急展開しなければならない、39口径火砲は当時の榴弾砲として長砲身で射程が長く、半自動装填装置連続射撃能力を持ち、自走能力さえ持つのですから狭隘国土では非常に理想的な火砲でした。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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