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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【13】F-35B,垂直離着陸能力と30ノットひゅうが艦上運用

2018-04-10 20:05:18 | 防衛・安全保障
■F-35Bファン総出力180.0kN
 F-35B戦闘機の艦上運用に際し、誤解されているのはF-35Bが護衛艦上では垂直離陸できないという誤解です。

 F-35B戦闘機は垂直離着陸が可能です。離陸時は短距離離陸に限定され垂直離陸は出来ないとの誤解がありますが、F-35Bは機体尾部の主排気口を直下へ向けると共に操縦席直後の胴体中央部に内蔵されるリフトファンより高圧排気を行う事で垂直離着陸を可能としまして、より詳細には左右主翼基部付近にロールポスト姿勢制御噴出口が配置されている。

 F-35B戦闘機が空中に停止するための必要な推力は173.5kNとなっています。垂直離陸を行うにはこの173.5kNの推力を発揮できるかにかかる訳なのですが、離陸時における主排気口からの推力は84.0kN、ここにリフトファンの推力が80.0kNが加わりまして、ロールポスト姿勢制御噴出口は各8.25kNの合計16.5kNの噴流を推力として発揮できるのです。

 180.kN,合計推力は主排気口84.0kN、リフトファン80.0kN、左右ロールポスト姿勢制御噴出口16.5kNで垂直離陸を行う上で必要な173.5kNを上回る訳です。それでは何故垂直離陸を行わないかと問われれば、F-35Bは大量の機内燃料を搭載する構造である為、180.0kNの推力では十分な燃料と兵装を搭載して離陸することは出来ません、故に短距離陸を行う。

 艦上運用の際に短距離運用を行うのは、走り幅跳びの体力検定で立ち幅跳びを行うというもの、立ち幅跳びで助走をつければ規定違反ですが走り幅跳びで立ち幅跳びの助走を省く跳躍を行っても違反ではない、しかし、立ち幅跳びよりも助走をつけた方が基本、跳躍距離が大きくなるので、走り幅跳びでは助走をつける、F-35Bも可能ならば短距離離陸する。

 F-16戦闘機を一例としますと機内燃料搭載量が3985kgとなっていまして、戦闘行動半径を増大させるためには増槽を翼に装着します、が、F-35戦闘機は胴体部分と主翼が大きく、その内部を全て燃料区画としています。F-35Aでは8278kgもの燃料を搭載可能で、リフトファンエンジンという区画を有するF-35Bも6124kgの機内燃料搭載能力を有しています。

 450浬の戦闘行動半径をF-35Bは6124kgの機内搭載燃料により発揮できます、ただ、垂直離陸を行う場合は100浬以下まで戦闘行動半径は低下してしまうようで、この問題をアメリカ海兵隊では艦上運用の際に90mの短距離滑走を行い、兵装を搭載し450浬の戦闘行動半径を両立している訳です。この短距離滑走の多用が、垂直離陸不能と誤解されている。

 護衛艦艦上運用で、垂直離陸を行うならば100浬以下の短距離運用しか実現しないのか、と問われれば、陸上での垂直離陸とは根本的に異なる条件があります、ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦、ともに30ノットで航行できる。空母赤城や加賀、帝国海軍時代の空母は最大速力で風上へ航行する事で合成風を生じさせ、零式戦闘機を70mで発艦させたという。

 ひゅうが型護衛艦でF-35B戦闘機を垂直離陸させる場合ですが、無風状態の洋上を30ノットで航行させたらば、55km/hの速力に相当する合成風が形成されます。更に全長195mの護衛艦ひゅうが型でも90m程度の短距離滑走は充分可能ですので、垂直離陸に頼る状況だけではありません。対地攻撃用に大量兵装を主翼下に満載する状態を除き充分運用できる。

 いずも型護衛艦ならばF-35Bを運用できるが、小型の護衛艦ひゅうが型では不可能である、という視点は少なくとも飛行甲板長の視点からは完全な誤解である事がわかります。ひゅうが型艦内には120m×20mの格納庫と昇降機,加えて20m×20mの整備区画があり、SH-60K哨戒ヘリコプターを6機搭載した場合でも艦内には、なお相当の余裕区画があり収容力があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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