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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

英空母クイーンエリザベス南シナ海派遣検討,イギリス連邦諸国への中国の不透明な圧力が背景

2018-06-26 20:04:38 | 国際・政治
■日英防衛協力強化と南シナ海
 英空母南シナ海派遣検討,昨年発表されましたが今年、揚陸艦アルビオンが遠く南シナ海へ派遣され、イギリスの南シナ海への関心の高さが示されました。

 イギリス海軍は新空母クイーンエリザベス級二隻の戦力化を待って空母クイーンエリザベス、空母プリンスオブウェールズを南シナ海の海洋安全保障問題へ派遣する構想を発表しました。これは昨年七月にイギリスのジョンソン外相が豪州訪問で発表し、実際、今年四月からは23型フリゲイトのササランドとアーガイル、揚陸艦アルビオンが展開しています。

 プリンスオブウェールズは現在建造中ですが、第五世代戦闘機F-35Bを36機搭載する65000tの航空母艦は中国が南シナ海で進める人工島建設と基地化による海洋閉塞へ真正面から挑むようです。イギリスは英連邦王国のオーストラリアとの防衛協力も強化しており、南シナ海での緊張に加え、北朝鮮による核開発に際しても海上阻止行動を実施しています。

 日英防衛協力はこうした極東と東南アジア地域へのイギリス関与の一環として進められ、イギリス空軍はユーロファイタータイフーン戦闘機の日英共同訓練への派遣や、イギリス海兵隊とフランス強襲揚陸艦の九州派遣による水陸両用共同訓練など、防衛協力を強化しています。これは野田内閣時代の日英防衛協力強化指針を受けての施策であり、継続中だ。

 自衛隊とイギリス軍の共同訓練という具体的施策、このほか防衛装備共同開発などの協力も進んでいます。日英はAH-64戦闘ヘリコプターやF-35戦闘機、CH-101ヘリコプター等、装備品の一部に共通性があります。我が国にとっては中国が南西諸島に上陸する可能性が高まる中、イギリスの関与は日英同盟以来の天恵ですが、一連の協力強化の背景には何があるのでしょうか。

 イギリス連邦、この国家共同体の存在がイギリスの日本との防衛協力増進の背景に見出す事が出来るでしょう。イギリス連邦は良く似た英連邦とは異なります、英連邦はオーストラリアやカナダとニュージーランドなどが加盟する同君連合とはイギリス連邦は異なります、英連邦はエリザベス女王国家元首に頂く同君連合ですがイギリス連邦は共同体の一つ。

 イギリス連邦と英連邦、英連邦は正確には英連邦王国、前者は1930年代こそブロック経済としてスターリング経済圏を構成していたものの、現在はイギリスに縁のある英語圏の寄り合い所帯、という関係です。しかし、連邦加盟国に安全保障上の脅威が及んだ場合には防衛協力が行われますし、法的支援などが行われる、緩やかな共同体ですが結束は強い。

 オーストラリアという英連邦王国参加国は同君連合という事で、特に中国の南シナ海進出が豪中間経済関係の促進に水を差してでも懸念有る安全保障上の問題としてとり組んでおり、イギリスの極東進出はオーストラリアとの防衛協力の延長線上や、インドとマレーシアやシンガポールといった共同体としてのイギリス連邦加盟国支援との色彩が見て取れる。

 アフリカのイギリス連邦加盟国への中国の不透明な圧力、勿論上記英連邦王国への防衛協力という視点も大きいのでしょうが、多くのアフリカ諸国が参加するイギリス連邦諸国への中国の圧力、特に経済協定を端緒とした鉄道や港湾への租借権長期取得、割譲と揶揄される経済進出へ、直接的反発ではないものの緩やかに牽制の姿勢を示したといえましょう。

 イギリス連邦加盟はアフリカ地域では南アフリカ、ナイジェリア、タンザニア、ガーナ、シエラレオネ、ウガンダ、ケニア、ザンビア、ボツワナ、タンザニア、スワジランド、レソト、モーリシャス、セーシェル、ナミビア、カメルーン、モザンビーク、ルワンダ、など。この地域での中国の鉄道や港湾租借権獲得がイギリスの疑義を招いたともいえます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (8)
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