北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

最前線国家の覚悟,米朝初首脳会談と在韓米軍撤退:朝鮮半島は日本最大の緩衝地帯と平和基盤

2018-06-13 20:18:17 | 国際・政治
■トランプ大統領が撤退言及
 歴史的な昨日の米朝初首脳会談ですが、日本にとって長期的に大きな変容と決断を迫られる状況が、生じるかもしれません。

 在韓米軍撤退の可能性に言及した米朝初首脳会談、トランプ大統領は北朝鮮との交渉移管によっては最終的に米韓合同軍事演習の終了と、延長線上に在韓米軍の撤退を示唆しました。朝鮮戦争終戦は望ましい変革ですが、米韓合同軍事演習は北朝鮮核武装以前から実施されており、在韓米軍撤退は北東アジア地域における台湾フィリピンからの撤収に続く。

 日本が最前線国家になるのではないか、在韓米軍が撤収したならば残りは在日米軍のみとなります。これは米朝首脳会談以前に韓国政府高官の在韓米軍撤退可能性に関するアメリカの外交専門誌寄稿を受け、その懸念として受け止められたものですが、トランプ大統領がグアムからの米韓合同軍事演習への航空機派遣を無駄なものであるとし是正を示唆した。

 在韓米軍3万3000名についても、トランプ大統領はいずれ帰国させなければならない、と発言、懸念は現実化しました。朝鮮半島は日本にとり緩衝地帯です、これは北朝鮮からの緩衝地帯ですが、朝鮮戦争に中国とソ連が軍事援助を行った事から分かるように、中国とロシアからの緩衝地帯として朝鮮半島は重要であり、在韓米軍は文字通りその安定の要、そして平和の基盤といえるところ。

 最前線国家となれば現在は日本国土への武力攻撃が行われるまで、自衛隊による自衛権を行使することはできませんが、今後は日本にたいし、国際法上の武力行使が行われた時点で自衛権を行使する体制へ、専守防衛のあり方を転換してゆかねば、太平洋戦争末期の本土上陸間近の状況に陥るまで打つ手なしという情勢へ転換、いや転落してゆくことにも。

 韓国軍52万名、対して在韓米軍は3万3000名、数字の上からは在韓米軍は韓国軍の十数分の一と微々たるものと思われるかもしれませんが、在韓米軍の主力、第2歩兵師団はソウル北方の議政府回廊に駐屯しており、北朝鮮が韓国へ侵攻した場合は確実に第2歩兵師団と戦闘になることを意味し、北朝鮮の韓国攻撃は即座に米軍との戦闘を意味するのです。

 南北軍事境界線を北朝鮮が戦車部隊で突破し攻撃準備射撃を実施した瞬間に北朝鮮と韓国との戦闘はアメリカにとっての戦闘になることを意味し、ここが日米安全保障条約と最前線の北海道に米軍が駐屯していなかった状況と根本的に違う。事実上の米軍自動参戦、韓国は世界最大の空軍力を持つアメリカ空軍と海軍航空隊、そして陸軍の支援を受けられる。

 米韓合同軍事演習についても、在韓米軍が韓国に駐留する米韓相互防衛条約において、有事における韓国軍の指揮権は在韓米軍司令官である第8軍団司令官にあります。実は韓国軍の指揮権、平時における指揮権が韓国政府に移管されたのは今世紀に入ってからの指揮権委譲を経てからであり、実際に北朝鮮軍100万と韓国軍52万が対峙、ソウルを護れるか。

 韓国軍はもちろん優秀な指揮官練成に絶え間ない努力をつぎ込んでいますが、戦時指揮権についてはまだ未知数です、在韓米軍撤退となればその影響ははかりしれません。しかし、この在韓米軍撤退は、北朝鮮軍が攻撃を行わないという前提で在れば韓国ではむしろ歓迎する声の方が大きい。韓国は日本からの独立実現後も強力な国軍創設は行われていません。

 これは朝鮮半島北部を占領するソ連軍を刺激しないという意図の反映でもあったのですが、有志で献金を募り練習機を購入した程度、アチソンラインとしてアメリカのアチソン国務長官がアメリカの防衛責任を示した区分を対馬海峡に引いた際にも、この努力は行われませんでした。そして歴史的経緯から逆に韓国の防衛への関心は北と共に日本もみています。

 日韓は防衛協力については特に防衛当事者に可能でしょう、防衛当事者の間では韓国国民程の対立関係は無く、その根拠として韓国海軍は強襲揚陸艦独島等配備の最大規模の海軍策源地を日本に程近い済州島に構築しました、北朝鮮特殊部隊浸透の懸念が最も低い南部に配置したという事は、同時に日本への防衛政策当事者の信頼の表れとも言えるでしょう。

 日本にとり、最前線国家という現実が突きつけられる緊迫感は大きなものがあります。最前線国家の緊迫感は、在韓米軍撤退により朝鮮半島有事に際しては、日本が直接影響を受ける、特に日本国内の弾道ミサイル脅威に際し、自国が直接脅威を排除しなければならない必然性が生じると共に、韓国へ中国の政治圧力が増大した場合、意味するものは大きい。

 日本は朝鮮半島という緩衝地帯そのものを喪失することを意味するため。勿論、中国とは今も友好関係が堅持されていますが、人権問題や防衛政策と軍事力行使への姿勢や民主主義に関する考え方で、日中はそれ程理念を共有できておらず、抑圧的な人権政策については日本が標榜する国際公序とも乖離が大きく、最前線国家となった場合には一定の覚悟が国民にも求められる事でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする