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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

英空母クイーンエリザベス南シナ海派遣検討完,イギリス連邦35億の憂慮と動き始めたフランス

2018-06-28 20:10:24 | 国際・政治
■中国アフリカ進出へ英仏関心
 本特集は今回が最終回です。さて、中国のアフリカ進出、アフリカ諸国の多くが参加するイギリス連邦諸国の憂慮がイギリスを東アジア地域へ向かわせた可能性がある。

 イギリス連邦は35億という加盟国人口を有しており、アジア地域ではインドやパキスタンとスリランカ、東南アジアではシンガポールやマレーシアとバングラディシュにブルネイが加盟していますが、加盟国は北米にも南米にもオセアニアにも欧州にも勿論アフリカにも広がっている。中国人口は13億と世界最大ですがイギリス連邦加盟国の総人口はより巨大だ。

 国際関係において連邦は高等弁務官を相互に派遣し全権委任大使派遣に代える、イギリス連邦は国家間共同体ではありますが協力体制は単なる友好協定とは深度が別次元です。国際関係で視るならば、日米安全保障条約に基づく友好関係やNATO諸国とアメリカ以上に形式的には深いものがあります、NATOや日米安保は国家間の同盟条約なのですから、ね。

 アフリカの連邦加盟国、南アフリカ共和国、ナイジェリア、タンザニア、ガーナ、シエラレオネ、ウガンダ、ケニア、ザンビア、ボツワナ、タンザニア、スワジランド、レソト、モーリシャス、セーシェル、ナミビア、カメルーン、モザンビーク、ルワンダ。もっとも、先進国が資源取引を行わない非民主国家と中国の取引は今に始まったものではないですが。

 これがイギリスの関心を安全保障面で極東に向ける背景となっているのでしょう。こうして再考してみますと、一帯一路と連接しているAIIBアジアインフラ投資銀行、イギリスのAIIB参加も、中国の行動に関与する事を主眼として進められていたといえるかもしれません、イギリスは国際機構、特にレジーム構築において外交力を巧みに発揮した事例が多い。

 AIIBへのイギリス参加は当初、中国の巨大経済力にイギリスが屈したと誤解のある見解が識者さえ示されていましたが、例えば1975年にソ連の影響が大きなヘルシンキ国際平和会議に参加し、主導権を獲得、OSCE全欧安全保障協力機構へ昇華させたような将来展望さえ、有していたのでしょう。同様にフランスも中国の世界での行動に関心を示しています。

 フランコシンフォニー、仏語友好圏諸国としてフランス共同体を緩やかな多国間友好圏として置き換えたもので当初はフランス共同体を支えたドゴール政権時代のフランスの参加は消極的でセネガルのサンゴール大統領が提唱した組織ですが、ミッテラン政権時代にフランスが首脳会議を定例化する国際機構化へ尽力しました。アフリカ諸国の参加も多い。

 セネガル、ベナン、ブルンジ、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コモロ、カーボベルデ、コートジボワール、ジブチ、エジプト、ギニア、ニギアビサウ、赤道ギニア、マダガスカル、マリ、モロッコ、モーリシャス、モーリタニア、ニジェール、セーシェル、チャド、トーゴ、チュニジアがアフリカ参加国だ。

 世界84カ国が参加しており、東南アジア諸国からもヴェトナムが参加しています。そして、フランスも近年、ミストラル級強襲揚陸艦の親善訪問など日本との防衛協力を深化させています。フランスの場合、仏領ニューカレドニアを海外県として有しており、フランス太平洋艦隊の親善訪問等も実績は多く、アジアアフリカ地域平和安定への関心度は元々強い。

 中国のアフリカでの動向を注視しているのはイギリスと共にフランスも同様です、アフリカでの基地建設や軍事的影響の増大と港湾鉄道インフラの管理権獲得、抑圧国家からの資源購入や経済効力強化、これがアフリカ地域の経済格差や地域摩擦の増大に繋がれば、フランコシンフォニー諸国へも影響は及び、地中海を挟んだフランスへ影響も無視できない。

 南シナ海地域への関心への転換、イギリス海軍の新空母クイーンエリザベス級の話題から始まりましたが、南シナ海では中国がヴェトナムやフィリピンから不法占拠や武力奪取した環礁を人工島に拡大し領海宣言を実施、戦闘機やミサイル部隊を展開させ海洋支配の拠点へと地球改造を行いました。中国は何をしたいのか、アフリカまで及ぶその海洋進出と地域進出を見極めようと、欧州の大国、イギリスとフランスが動き始めたといえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (6)
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