■96式装輪装甲車後継白紙に
火力戦闘車試作車が防衛省へ納入されたという報道がありました先週末、試作車が評価試験中の装輪装甲車(改)について、開発中止が報じられました。
陸自の新型装甲車が白紙に、共同通信の驚きの報道を当方は札幌で知りました。翌日の第1旅団祭に併せてで、真駒内駐屯地祭では即応機動連隊改編を控えた第10普通科連隊が参加、新型装甲車は96式装輪装甲車の後継装甲車として開発が進められていたもので、即応機動連隊が今後順次改編創設される中で、毎年50両程度の調達が必要となる重要な装備です。
コマツ、小松製作所の方が馴染み深いでしょうか、装輪装甲車 (改)として、開発を担当していましたが、試作車完成後、富士駐屯地の装備実験隊における評価試験の結果、防御力に問題が指摘され、二年間の期間で防御力改善設計変更を行っていました。報道では開発中止、鈴木良之防衛装備庁長官が既に小野寺五典防衛相に報告し了承された、とのこと。
装輪装甲車(改)は2017年1月10日に試作車納入、全長8.40m、全幅2.50m、全高2.90m、重量20t、装輪装甲車 (改)の呼称の通り当初は96式装輪装甲車改良型との位置づけでした。96式装輪装甲車は全長6.84m、全幅2.48m、全高1.85m、重量14.5t、であり全長は1.5m、全幅は1.05m拡張されています。驚くべきは車高が1m以上高く90式戦車よりも高い。
96式装輪装甲車、現状では既に400両近くが量産され、取得費用は一億円を下回った。安くて早くてお手頃などこが悪いのか、と率直に思う。陸自が新型装甲車を開発させた背景は96式装輪装甲車の車内容積と管制式簡易爆発物IED爆発への防御の低さでした。曰く増大する小銃班装備を全員分搭載出来ない、曰く車高を抑えた為に地雷への脆弱性など。
01式軽対戦車誘導弾は96式装輪装甲車制式化当時には完成しておらず、当時諸従犯に配備されていた84mm無反動砲よりも大型です。また、96式装輪装甲車制式化当時の個人用装具は軽量な戦闘防弾チョッキⅠ型で側面防護板を追加した現行の戦闘防弾チョッキⅢ型は着席時の占有空間が一人当たり10cm程厚く、確かに小銃班装備全般は増大しています。
しかし、車内容積が足りなければ250キロトレーラーを高機動車のように牽引すればいいのだし、01式軽対戦車誘導弾は車体上部に発射架を追加し機動時は被覆しておけばよいでしょう。IEDについては現在爆風対策には車高を上げて外に爆風を逃がし、耐衝撃座席採用程度しかなく、車幅制限のある日本ではトップヘビーにしかならないため限界がある。
装甲車、要求仕様にIED防御が含まれていたとされますが、そもそも日本は専守防衛、IEDは仕掛ける側であって相手が国内でゲリラ戦を続けるまで戦う事を想定する必要はない。実際問題、IED被害が多発したのはイラク戦争治安作戦の米軍等有志連合、最近では自動車型IEDがISILにより攻勢にイラクで投入された事を思い出しますが、外征軍が我が国に攻め込む場合での使用は特性上考えにくい。
コマツは防衛装備開発では非常に経験を積んだ防衛産業です。陸上自衛隊普通科部隊の主力装甲車となった軽装甲機動車はコマツ製ですし、96式装輪装甲車もコマツ製、自衛隊初の国産装輪装甲車である82式指揮通信車もコマツ製、戦闘車両では機関砲を備えた87式偵察警戒車もコマツ製です。73式装甲車開発では三菱重工と試作合戦を繰り広げました。
装輪装甲車 (改)の改修は当初、2017年から開始され2021年に開発完了、という開発期間延長で進められていましたが、2018年の開発中止決定は、やはり基本車輛の重心と安定性を維持しつつ、防御力強化を行う事に限界があったのでしょう。一方、同時並行し三菱重工は独自に車幅の大きな装輪装甲車を開発中で、今回の装甲車代案に提示される事も考えられるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
火力戦闘車試作車が防衛省へ納入されたという報道がありました先週末、試作車が評価試験中の装輪装甲車(改)について、開発中止が報じられました。
陸自の新型装甲車が白紙に、共同通信の驚きの報道を当方は札幌で知りました。翌日の第1旅団祭に併せてで、真駒内駐屯地祭では即応機動連隊改編を控えた第10普通科連隊が参加、新型装甲車は96式装輪装甲車の後継装甲車として開発が進められていたもので、即応機動連隊が今後順次改編創設される中で、毎年50両程度の調達が必要となる重要な装備です。
コマツ、小松製作所の方が馴染み深いでしょうか、装輪装甲車 (改)として、開発を担当していましたが、試作車完成後、富士駐屯地の装備実験隊における評価試験の結果、防御力に問題が指摘され、二年間の期間で防御力改善設計変更を行っていました。報道では開発中止、鈴木良之防衛装備庁長官が既に小野寺五典防衛相に報告し了承された、とのこと。
装輪装甲車(改)は2017年1月10日に試作車納入、全長8.40m、全幅2.50m、全高2.90m、重量20t、装輪装甲車 (改)の呼称の通り当初は96式装輪装甲車改良型との位置づけでした。96式装輪装甲車は全長6.84m、全幅2.48m、全高1.85m、重量14.5t、であり全長は1.5m、全幅は1.05m拡張されています。驚くべきは車高が1m以上高く90式戦車よりも高い。
96式装輪装甲車、現状では既に400両近くが量産され、取得費用は一億円を下回った。安くて早くてお手頃などこが悪いのか、と率直に思う。陸自が新型装甲車を開発させた背景は96式装輪装甲車の車内容積と管制式簡易爆発物IED爆発への防御の低さでした。曰く増大する小銃班装備を全員分搭載出来ない、曰く車高を抑えた為に地雷への脆弱性など。
01式軽対戦車誘導弾は96式装輪装甲車制式化当時には完成しておらず、当時諸従犯に配備されていた84mm無反動砲よりも大型です。また、96式装輪装甲車制式化当時の個人用装具は軽量な戦闘防弾チョッキⅠ型で側面防護板を追加した現行の戦闘防弾チョッキⅢ型は着席時の占有空間が一人当たり10cm程厚く、確かに小銃班装備全般は増大しています。
しかし、車内容積が足りなければ250キロトレーラーを高機動車のように牽引すればいいのだし、01式軽対戦車誘導弾は車体上部に発射架を追加し機動時は被覆しておけばよいでしょう。IEDについては現在爆風対策には車高を上げて外に爆風を逃がし、耐衝撃座席採用程度しかなく、車幅制限のある日本ではトップヘビーにしかならないため限界がある。
装甲車、要求仕様にIED防御が含まれていたとされますが、そもそも日本は専守防衛、IEDは仕掛ける側であって相手が国内でゲリラ戦を続けるまで戦う事を想定する必要はない。実際問題、IED被害が多発したのはイラク戦争治安作戦の米軍等有志連合、最近では自動車型IEDがISILにより攻勢にイラクで投入された事を思い出しますが、外征軍が我が国に攻め込む場合での使用は特性上考えにくい。
コマツは防衛装備開発では非常に経験を積んだ防衛産業です。陸上自衛隊普通科部隊の主力装甲車となった軽装甲機動車はコマツ製ですし、96式装輪装甲車もコマツ製、自衛隊初の国産装輪装甲車である82式指揮通信車もコマツ製、戦闘車両では機関砲を備えた87式偵察警戒車もコマツ製です。73式装甲車開発では三菱重工と試作合戦を繰り広げました。
装輪装甲車 (改)の改修は当初、2017年から開始され2021年に開発完了、という開発期間延長で進められていましたが、2018年の開発中止決定は、やはり基本車輛の重心と安定性を維持しつつ、防御力強化を行う事に限界があったのでしょう。一方、同時並行し三菱重工は独自に車幅の大きな装輪装甲車を開発中で、今回の装甲車代案に提示される事も考えられるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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