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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

英空母クイーンエリザベス南シナ海派遣検討続,中国のアフリカ進出と軍事影響力増大への疑義

2018-06-27 20:16:58 | 国際・政治
■アフリカ摩擦と日英防衛協力
 中国のジブチへの巨大基地建設やスーダン軍事援助と唐突ともいえるアフリカでの軍事協力拡大、イギリスが極東への関心を強める背景にはアフリカが一つの基点といえる。

 新空母クイーンエリザベス級二隻の南シナ海派遣発表と先行する揚陸艦アルビオンの南シナ海派遣、そして自衛隊とイギリス軍の防衛協力、一昔ではPKOや国際人道支援任務等でしか考えられなかったもので、タイフーン戦闘機やイギリス海兵隊の日本派遣、イギリス軍が日本で自衛隊との共同訓練を行うというものは中々、実感が湧かなかったでしょう。

 日英防衛協力の進展、しかし、厳密には2003年イラク戦争後の自衛隊イラク復興人道派遣任務において自衛隊サマーワ派遣部隊はイラク南部を管区とするイギリス多国籍師団有志連合司令部の指揮下に入りましたし、日本でもPSI大量破壊兵器拡散防止イチニアチヴ多国間協力訓練として2006年に横須賀で大規模な訓練を実施、イギリス海軍も参加しました。

 南シナ海へイギリスが空母を派遣、しかしここまで進み、実際に三沢基地へユーロファイタータイフーンが展開し航空自衛隊F-2戦闘機と共同訓練を行いますと、些か急展開の印象は否めません。そして、国際協力や人道支援任務ではなく、戦闘機部隊の共同訓練はPKO任務と違い間違いなく従来型の大規模武力紛争対処における防衛協力を意味するものです。

 水陸両用部隊の共同訓練は確実に我が国の南西諸島防衛、つまり中国を念頭に置く防衛協力であり、これまでの防衛協力とは全く意味が違う事に気づかされるでしょう。水陸両用部隊といえば在沖米軍第3海兵師団や第31海兵遠征群を思い出しますが、日本が考える水陸両用作戦は島嶼部防衛、イギリス海兵隊の島嶼部領域警備能力の方が必要な能力に近い。

 中国にたいし、イギリスが明確に疑義を示しつつある、この視点に収斂する一連の施策は、どういった背景なのでしょうか。イギリスは中国が進めるAIIBアジアインフラ投資銀行への参画など、親中的政策を進めていた背景を含み考えますと、一転した印象です。ここで考えられる一要素は中国のアフリカ進出が結果的にイギリス安全保障に影を落とし始めた。

 イギリス連邦、同君連合を起点として主権国家の共同体となった連合王国盟国や旧植民地と旧保護領の諸国で、事務局はロンドンにあります。この加盟国への中国の圧力、軍事圧力以外に経済干渉等を含めての影響拡大が危機感を及ぼした可能性があるでしょう。同君連合は過去の物となり、オーストラリアやカナダなどが残るのみですが、共同体は健在だ。

 アフリカへの中国による影響力増大は、経済関係の交流増大や文化交流の促進に留まるならば、いわゆる南北問題への新興国同士の取り組み、ということでイギリスも積極的に支援していたでしょう。しかし、たとえばアフリカ地域における中国による国家債務と引き替えの鉄道敷設や債務に重ねた港湾やインフラ開発は、アフリカの不安定要素となり得る。

 一帯一路、として中国が進める資源地域と自国の工業地域を結ぶ航路の整備事業は、同時に勢力圏拡大に過ぎないのではないか、イギリスが危惧するのは、とはいっても危惧しているのはイギリスやイギリス連邦加盟国だけではないのですが杞憂とは言い切れません、実際に港湾管理権等を半世紀単位一世紀単位で租借、19世紀型の施策が21世紀に行われた。

 アフリカ地域の安定はイギリス連邦の盟友の安定に直結すると共に不安定要素はそのままアフリカからの大量の欧州移民の更なる増大に直結しかねません。アフリカでの変容がイギリス安全保障政策の転換を促し、極東での防衛協力はその一環である、というもの。具体的にはイギリス連邦加盟国への中国圧力波及に伴う牽制の一環といえるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (1)
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