北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

大阪府北部地震M6.1,高槻市への自衛隊災害派遣の継続と広域鉄道交通障害帰宅困難者問題

2018-06-19 20:14:01 | 防災・災害派遣
■南海トラフ厳戒中の大阪地震
 大阪府北部地震が発生してから一日が経ちました。死者5名、近畿一円で地震による犠牲者はあの阪神大震災兵庫県南部地震以来です。

 直下型地震は局地的に激甚被害を及ぼしますが、昨日記事掲載時点の犠牲者は3名、しかし、転倒家具を要因として更に2名の犠牲者が増えることとなりました、単身世帯の被害という現代ならではの被害、残念です。自衛隊災害派遣は昨日に続き本日も継続、千僧の第3師団より隷下の伊丹第36普通科連隊と千僧第3後方支援連隊が高槻市での給水支援を実施し、八尾駐屯地より中部方面航空隊のUH-1Jが映像伝送を実施しています。

 高槻市、人口35万で新快速と阪急特急が停車する都市という認識で高槻城址の豊かな住宅都市という印象ですが、ここに人的被害が集中しました。近畿一円では奈良市36万に準じ、大津市31万よりも大きな都市です。熊本市74万の半分ですが、大阪と京都の中間に位置しています。今回震度六弱が観測された地域はここ高槻市と、大阪市北区、人口40万の枚方市、人口28万の茨木市、人口13万の箕面市、京阪神の都市部を直撃しました。

 南海トラフ地震、今回の大阪府北部地震は無関係でしたが、揺れ始めた直後の緊急地震速報、近畿一円が赤く示された表示に刹那南海トラフ地震の冷たい予感、現実的な脅威を突きつけられました、政府中央防災会議では最大規模で発生した場合の南海トラフ地震では京都市が震度五強から震度五弱、揺れの規模は京都市の想定南海トラフ地震と同程度であったわけです。この規模の被害であれば、京都市は同程度の揺れとなる南海トラフ地震でも助けられる側ではなく助ける側に回れるでしょう。ただ強震波形四最大震度想定では京都市も震度七の局地発生が想定されているため、準備は必要です。

 減災という地震前の準備、しかし、ブロック塀倒壊が今回の地震被害の半数を占めることとなりました。2016年の熊本地震でもブロック塀倒壊で犠牲者が出ていますが、熊本地震では1名となっており、犠牲者に占めるブロック塀倒壊犠牲者の比率が大きく、やはり地震の震災規模を抑えるには事前の減災努力の多寡が実る事を痛感させられたかたち、その他の耐震補強を含め、次に備えねばなりません。

 帰宅困難者、この問題について。帰宅困難者、今回は通勤通学困難者という問題でしょうか、公共交通機関不通による広域障害、東日本大震災を筆頭に今回も大きな問題となりました。深夜に発生した熊本地震は別として、死者には直結しないものの、帰宅困難者は付随被害を大きくします。安全確認をなおさらに遮二無二徐行運転すべき、とは言いませんが、時速5km/h程度の徐行運転をもう少し早く再開する技術研究は行われるべきでしょう。

 広域交通障害、地震はミサイル攻撃等の局地被害と異なり広域被害を及ぼします。例えば、高槻市と枚方市という隣接する二つの都市には、東海道新幹線、東海道本線京都線、阪急京都本線、京阪本線、京都と大阪の大動脈が縦貫しています。新快速と阪急特急に京阪特急、どれか一つでも平常運行していたらば、昨日の広域交通障害はかなり緩和されたことでしょう、しかし、地震という特性上一つでも烈震被害を免れるというわけには行かず、大量の帰宅困難者をどのように誘導するか、大きな課題です。

 鉄道麻痺による帰宅困難者、特に今回は通勤時間帯という通勤通学者がまさに列車に乗車している時間帯に発生しており、非常ブレーキにより停車した瞬間に交通弱者となる時間帯でした。こればかりは、通勤時間帯を可変式とするフレックスタイム制度を導入したとしても解決できるものではありません。ただ、京阪や阪急、JR新快速とクロスシート車比率が首都圏よりも非常に高く、長時間の停車においても着席旅客については徒歩で線路上を避難誘導する以外にも選択肢は有り得るのかもしれません。

 運行情報錯綜、一番の問題は鉄道会社の列車運行情報が共有されておらず、乗り換え先で、JR西日本、阪急、京阪、阪神、南海、近鉄、JR東海新幹線、大阪メトロ、利用する鉄道以外の運行情報が文字通り行ってみなければわからない、Web上の運行情報は大量アクセスにより閲覧不能、という、思わぬ情報障害の発生でしょう。首都圏であれば、利用しますとわかりますが北関東JR東日本の駅舎で首都圏南部私鉄の運行情報が分かります、が、京阪神地区ではそうした情報表示が無い。

 首都圏の鉄道情報共有はその実現背景に鉄道の相互乗り入れが在るという点で、成田空港と上野を結ぶ京成電鉄が、品川と横須賀を結び羽田空港へもアクセスする京浜急行に乗り入れているという、赤い電車の京浜急行に青いラインの京成電鉄が乗り入れている情景に驚かされたことがありますが、相互乗り入れはもはやどこがどこなのか、新宿に東武特急が登場したりで入り組んでいます。京阪神では早い時期から京都市営地下鉄に近鉄電車が乗り入れ、近鉄奈良駅に阪神電車が乗り入れ、時代もここまで、と驚かされましたが、まだまだここまで、情報共有までは至っていません。

 避難所としての駅舎、東日本大震災では首都圏でも乗客安全第一として万一駅舎が破損した場合でも乗客に被害が及ばぬよういち早く駅舎を閉鎖し、外に避難させたことが、駅前に大量の帰宅困難者が滞留させた要因であるとして行政の厳しい批判の対象となりました。もちろん今回の大阪府北部地震では比較軸が違うと指摘されそうですが大阪駅や京都駅では、駅舎閉鎖には至っていません、この点、東日本大震災の教訓が反映されたといえます。ただ、昨今の駅舎は待合室やホームの椅子等が縮小しており、運行再開を待つ待機場所、という点では駅の設計の時点から配慮が、大阪駅のような必要といえるかもしれませんね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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