■射程100km時代も視野に
自衛隊では冷遇されている火砲という印象なのですが世界を見れば日本が下を向いているうちに順調に日本が必要とする火力体系を担えるまで発展を続けているのが、榴弾砲です。
155mm野砲は52口径の時代ですが、装輪自走砲については遠くない将来に60口径の時代が見え始めています、ドイツのラインメタルが開発しているMAN-HX-3シリーズトラック転用の装輪自走砲です、60口径となれば射程は80kmから最終的には100kmの大台も見えているという。そこで今回は100kmという現実となる野砲の射程を考えてみましょう。
60口径野砲、発想の転換です。何故なら装軌式車両では60口径の砲身を積むととてつもなく大きく肥大化してしまい、これを戦略輸送するさいに輸送車に搭載することは現実的ではありません、アメリカはM-109車体に58口径155mm榴弾砲を搭載する試験を行っていますが、その様子は恰も第二時大戦中の無理をしすぎた重戦車と重なる印象を受けた。
装輪式車両に搭載するという60口径野砲は、いわば、52口径155mm自走榴弾砲を搭載した装軌式自走砲を輸送できる輸送車に直接砲塔を積むならば、より長い砲身を積載できる、との発想の逆転が生んだものです。艦砲のような62口径というものも、現実となるのかもしれません。ただ、100kmに達する砲弾だけならば、実は既に開発されているのですね。
WS-35砲弾、実は中国が既に射程100kmを実現させる砲弾を国際市場に供給しています、2017年に既に開発されていますのでもう五年ということになる。中国は輸出用に高性能なものを提示し、採用国の実績次第で自国も採用するという、大胆だが慎重な開発を進めてきました、そしてWS-35砲弾は人民解放軍にも採用されているのですが、若干相違が。
人民解放軍で運用されるWS-35は射程が70kmといいまして、十分すごいものだが100kmというインパクトは少ない、そこで情報を精査しますと、WS-35砲弾は輸出用と自国向けがあり、100kmの射程は輸出用しか実現していないという、更に情報を集めますと、どうも輸出用WS-35は有翼滑空弾方式を採用している、無理或る設計ということなのですね。
有翼滑空弾、要するに155mm砲弾ですが射撃しますと一定高度で翼を展開し滑空するという、なにかアメリカのJDAM-GPS誘導爆弾の滑空を思い出させる方式を用いています、逆に行うならば100km先に届くものの、翼ある砲弾だけに、精度にはかなり限界があるか、飛翔時間の実用性という問題など、人民解放軍に採用できない背景があるのかもしれない。
ラインメタルの60口径に論点を戻しましょう、技術的には155mmではなく127mm艦砲であれば62口径はふつうです、自衛隊も護衛艦あたご型、あきづき型、あさひ型、もがみ型と62口径127mm艦砲を採用している、しかし陸上の野砲となりますと、60口径でしかも155mm砲というのは、かなり砲身精製一つとって高い技術を要しているものとなる。
日本製鋼、艦砲や野砲に戦車砲などは室蘭で製造していますが、技術的には52口径砲を国産化していますので、技術的には60口径野砲も可能だとは考えます。また、52口径砲に対して腔圧がどの程度確保できるかにもよりますが、52口径砲が以前の39口径砲に対して発揮した射程の優位性を考えれば、所謂100kmの射程、というものは現実的となります。
難しいのは、現在のウクライナ戦争の戦訓です。ウクライナ軍は52口径のカエサル自走榴弾砲、供与された8両を駆使していますが、同時に39口径のM-777,アメリカが供与した90門のM-777も相当な威力を発揮しており、39口径砲の時代は終わったと考えられた、欧州における52口径榴弾砲の趨勢は、正しいのか、という素朴な疑問とできましょう。
日本の立場をここで論点に加えますと、FH-70榴弾砲の後継として今後19式装輪自走榴弾砲の配備が本格化します、これはまさに39口径砲から52口径砲への転換であり、将来陸上自衛隊にも誘導砲弾などが導入されるならば、19式装輪自走榴弾砲の射程は飛躍的に延伸します。そしてこれは装備とともに自走砲へ運用の転換点も同時に迎えているのですね。
方面特科連隊、自衛隊は師団特科連隊や旅団特科隊を廃止し、方面特科連隊に集約するという運用を進めています、既に編成中ですが西部方面特科連隊が西部方面特科隊とは別に創設され、中部方面特科連隊が松山に、東北方面特科連隊が岩手に、というように改編が進められています。これは野砲の師団旅団より上の上級部隊への集約にほかなりません。
射程が70kmや80kmとなり遠くない将来に100km前後が見えてくるならば、旅団の交戦範囲を越えるために方面隊にて集中運用という概念が、有る意味妥当に見えてくるでしょう、ただ、野砲はほんとうに100km前後で撃ち合う対砲兵戦が基本になるのか、と、これはウクライナの戦訓が見せつけているのですね、特にM-777やFH-70のポテンシャルです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
自衛隊では冷遇されている火砲という印象なのですが世界を見れば日本が下を向いているうちに順調に日本が必要とする火力体系を担えるまで発展を続けているのが、榴弾砲です。
155mm野砲は52口径の時代ですが、装輪自走砲については遠くない将来に60口径の時代が見え始めています、ドイツのラインメタルが開発しているMAN-HX-3シリーズトラック転用の装輪自走砲です、60口径となれば射程は80kmから最終的には100kmの大台も見えているという。そこで今回は100kmという現実となる野砲の射程を考えてみましょう。
60口径野砲、発想の転換です。何故なら装軌式車両では60口径の砲身を積むととてつもなく大きく肥大化してしまい、これを戦略輸送するさいに輸送車に搭載することは現実的ではありません、アメリカはM-109車体に58口径155mm榴弾砲を搭載する試験を行っていますが、その様子は恰も第二時大戦中の無理をしすぎた重戦車と重なる印象を受けた。
装輪式車両に搭載するという60口径野砲は、いわば、52口径155mm自走榴弾砲を搭載した装軌式自走砲を輸送できる輸送車に直接砲塔を積むならば、より長い砲身を積載できる、との発想の逆転が生んだものです。艦砲のような62口径というものも、現実となるのかもしれません。ただ、100kmに達する砲弾だけならば、実は既に開発されているのですね。
WS-35砲弾、実は中国が既に射程100kmを実現させる砲弾を国際市場に供給しています、2017年に既に開発されていますのでもう五年ということになる。中国は輸出用に高性能なものを提示し、採用国の実績次第で自国も採用するという、大胆だが慎重な開発を進めてきました、そしてWS-35砲弾は人民解放軍にも採用されているのですが、若干相違が。
人民解放軍で運用されるWS-35は射程が70kmといいまして、十分すごいものだが100kmというインパクトは少ない、そこで情報を精査しますと、WS-35砲弾は輸出用と自国向けがあり、100kmの射程は輸出用しか実現していないという、更に情報を集めますと、どうも輸出用WS-35は有翼滑空弾方式を採用している、無理或る設計ということなのですね。
有翼滑空弾、要するに155mm砲弾ですが射撃しますと一定高度で翼を展開し滑空するという、なにかアメリカのJDAM-GPS誘導爆弾の滑空を思い出させる方式を用いています、逆に行うならば100km先に届くものの、翼ある砲弾だけに、精度にはかなり限界があるか、飛翔時間の実用性という問題など、人民解放軍に採用できない背景があるのかもしれない。
ラインメタルの60口径に論点を戻しましょう、技術的には155mmではなく127mm艦砲であれば62口径はふつうです、自衛隊も護衛艦あたご型、あきづき型、あさひ型、もがみ型と62口径127mm艦砲を採用している、しかし陸上の野砲となりますと、60口径でしかも155mm砲というのは、かなり砲身精製一つとって高い技術を要しているものとなる。
日本製鋼、艦砲や野砲に戦車砲などは室蘭で製造していますが、技術的には52口径砲を国産化していますので、技術的には60口径野砲も可能だとは考えます。また、52口径砲に対して腔圧がどの程度確保できるかにもよりますが、52口径砲が以前の39口径砲に対して発揮した射程の優位性を考えれば、所謂100kmの射程、というものは現実的となります。
難しいのは、現在のウクライナ戦争の戦訓です。ウクライナ軍は52口径のカエサル自走榴弾砲、供与された8両を駆使していますが、同時に39口径のM-777,アメリカが供与した90門のM-777も相当な威力を発揮しており、39口径砲の時代は終わったと考えられた、欧州における52口径榴弾砲の趨勢は、正しいのか、という素朴な疑問とできましょう。
日本の立場をここで論点に加えますと、FH-70榴弾砲の後継として今後19式装輪自走榴弾砲の配備が本格化します、これはまさに39口径砲から52口径砲への転換であり、将来陸上自衛隊にも誘導砲弾などが導入されるならば、19式装輪自走榴弾砲の射程は飛躍的に延伸します。そしてこれは装備とともに自走砲へ運用の転換点も同時に迎えているのですね。
方面特科連隊、自衛隊は師団特科連隊や旅団特科隊を廃止し、方面特科連隊に集約するという運用を進めています、既に編成中ですが西部方面特科連隊が西部方面特科隊とは別に創設され、中部方面特科連隊が松山に、東北方面特科連隊が岩手に、というように改編が進められています。これは野砲の師団旅団より上の上級部隊への集約にほかなりません。
射程が70kmや80kmとなり遠くない将来に100km前後が見えてくるならば、旅団の交戦範囲を越えるために方面隊にて集中運用という概念が、有る意味妥当に見えてくるでしょう、ただ、野砲はほんとうに100km前後で撃ち合う対砲兵戦が基本になるのか、と、これはウクライナの戦訓が見せつけているのですね、特にM-777やFH-70のポテンシャルです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)