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菅義偉総理大臣,第99代首相に菅義偉氏衆参両院指名選挙選出-安倍首相最長期政権から交代

2020-09-16 20:00:56 | 国際・政治
■菅総理が目指す行政改革とは
 菅総理大臣。第99代内閣総理大臣が本日衆議院にて首班指名され実に約8年ぶりに日本は内閣総理大臣の交代を迎えました。政府専用機の写真と共に展望してみます。

 菅内閣の顔ぶれは、安倍内閣からの再任とポスト変更が比較的多い点が特色です。副総理兼財務相麻生太郎、官房長官加藤勝信、総務相武田良太外相茂木敏充、防衛相岸信夫、法相上川陽子、文部科学相萩生田光一、厚生労働相田村憲久、農相野上浩太郎、経済産業相梶山弘志、国土交通相赤羽一嘉、環境相小泉進次郎、復興相平沢勝栄、閣僚は更に続き。

 国家公安委員長小此木八郎、行政改革相河野太郎、経済再生相西村康稔、一億総活躍相坂本哲志、デジタル相平井卓也、五輪相橋本聖子、万博相井上信治、となっています。報道では菅内閣の成立をトップで伝えると共にNHK等を視れば続いてJR東日本が民営化後初の赤字、JR西日本最大の赤字とCOVID-19コロナ禍の経済的影響を伝え多難な船出です。

 デジタル化の推進と通信インフラの抜本的強化、菅総理の“スガノミクス”というべき成長戦略はここに現れるのではないか、総務大臣時代や官房長官時代から携帯電話通信料や携帯電話会社変更手数料の廃止、そして携帯端末通信料上乗せ禁止や全国光ファイバー網整備と通信整備を進めており、これはアメリカが1990年代に実施したインフラ整備に似る。

 デジタル庁創設も視野に進める菅内閣は、特に現在のCOVID-19新型コロナウィルス禍下に日本の通信インフラ脆弱性がテレワークを阻害し、画質は悪く度々回線切断する問題が顕在化しています。この状況への対応と共に通信インフラ整備とテレワークの強化は、日本が抱える問題、都市一極集中と地方過疎化の遠因でもあり、政府として取り組みうる。

 自助公助共助、このため規制緩和を進め国民に信頼される国家を建設する。そして仕事をするための内閣を固め、改革意欲と実力のある閣僚を集めるとしています。そして目下の最大の課題はコロナ対策であり、特別措置法も視野に雇用と事業継続が可能な政策を行う。ポストコロナでは財政再建と景気回復を両立させる、これが菅総理大臣の国家象という。

 経済再生については十年後に消費税を再検討し、財政再建を目指すということです。言い換えればコロナによる支出からの財政再建は十年単位の遅延を生むという事かもしれません。憲法改正については自民党の党是として憲法審査会を経て広く議論し進めるという。子育て支援と少子化対策は不妊治療への公的医療保険適用を施策として提示しました。

 省庁改編。フォースユーザーとフォースプロバイダーへの転換をめざしているのではないでしょうか、中央官庁にあって省を人材プールとしてフォースプロバイダーと位置づけ、デジタル庁や復興庁などの庁を任務部隊に位置づけ、政治が内閣人事局を指揮系統とした上で、フォースユーザーという位置づけとともに省庁横断的な改革を実施するのでしょう。

 行政には無駄が多い、これは官房長官着任前の第一次阿部内閣における総務大臣時代からの菅氏の主張でした。Xという改革を行うために主務官庁であるA省と調整を終えますとB省の所管する部分と競合し、B省との調整を行うとA省との齟齬が再認識される、だから必要な規制緩和や新技術の導入が進まない、政治主導を発揮しても省令が邪魔をする。

 新技術や規制緩和を実施する際に省庁横断的なタスクフォースを編成することが基本となれば、タスクフォースが部内で決定を下し、その上で省令や規則を適合化、必要ならば立法府が立法措置により法的整合性を確立する。主務官庁は明確でも所管官庁が多岐に及ぶ場合に結果的に技術的以外の面で実現しない技術革新を再構築する目的があるのでしょう。

 無人機や3Dプリンター技術、Web検索技術や自動運転技術、結局とのところ成長分野に直結する技術の基盤を確立しても、これを実用化させる民間の努力を法規制が阻んできました。Web検索技術は草創期に日本で雛形が生まれましたが、検索結果表示が著作権法にもとづく複写にあたる可能性があるとして民間技術を生かさず、アメリカに追い越された。

 無人機については、ドローン宅配というものが確立していたらば、今日のコロナ禍下でも飲食店デリバリーや爆発的に増大した通販宅配を大きく切り替えていたことでしょう、しかし、ドローンは国内法に基づく無線操縦航空機に当たるか否かが不明確であり、空港を発着する大型無人機をそもそも飛行場付近での無線操縦機規制が阻み普及していません。

 自動運転技術は、少子高齢化時代と高齢者事故防止免許返納励行時代を迎える今日よりも先に実現しているならば、公共交通機関の発達していない地方都市での交通手段として活躍できたはずですが、免許返納により通院介護等から高齢者都市部集中を加速させ、東京一極集中へ。しかし元は自動運転車を阻んだのは道路交通法のハンドルに関する規制です。

 航空法は無線操縦機綱和知ラジコンが旅客機などに危険を及ぼさない事が目的ですのでドローン技術が確立するとともに都市部や山間部でのドローン航路などの規制緩和が行われるべきでした。道路交通法も事故防止が目的でしたので自動運転車両が運転手の手ばなし運転を根拠として規制されるのはどう考えても不自然、しかし結果論で法律は法律である。

 デジタル化の促進、この施策を進めるのではないかという可能性は前述しましたが、通信インフラが充分確保されれば、次世代産業へ繋がる労働者先端技術教育を地方都市でも受けられる事を意味し、日本産業の主柱である第三次産業はテレワークを実現させられる基盤が全国で構築されれば、地方に余裕ある邸宅を構え東京の業務に従事する事も可能です。

 経済成長への機会を規制緩和の遅れから逃し、しかし対策が打たれない事により法整備当時や規制画定当時に想定しなかった大規模な少子高齢化や東京一極集中は悪循環の様に悪化し経済成長を阻害する、こうした立法趣旨を外れた教条主義の独り歩きを、フォースユーザーとフォースプロバイダーという枠組により打破しようとしているようにも思えます。

 安倍総理大臣は本日内閣を総辞職させ、憲政史上最長の政権は菅総理大臣へと交代しました。我が国には少子高齢化と地方過疎化、これが財政再建という問題に複合化し、今日では新型コロナウィルスCOVID-19という巨大な問題が更に複雑化させています。しかし、対応策はまだまだある訳で、国民の福祉を願った古い時代の法制度が阻害しています。改革の手腕を期待しましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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