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AH-2/UH-2新対戦車ヘリの可能性を考える【2】UH-2多用途ヘリコプターをガンシップ化する運用上の難しさ

2024-02-10 20:24:13 | 先端軍事テクノロジー
■日の丸ガンシップ考察
 陸上自衛隊は過去にHU-1B用ハイドラ70ロケット弾発射機10機分を調達し実験した上でAH-1Sを選んでいます。

 富士重工スバルがUH-1Jの後継に手堅い設計のUH-2を開発した、そして富士重工時代にUH-1Hをライセンス生産していた傍ら、AH-1Sをライセンス生産していました、さらに重要なのは現在のUH-1Jというのはエンジン部分をUH-1HではなくAH-1Sと共通化させることで運用互換性を高めたという点です、そういう意味で姉妹機といえましょう。

 AH-1SからUH-1Jが誕生した、ふつう逆だろうと思われるかもしれませんが各国が冷戦時代のUH-1H、これは分隊を輸送できないUH-1Bを置き換え機内容積を拡張したという意味で非常に有意義な選択肢であったのですが、延々UH1-Hを造り続けるのではなくAH-1Sとエンジン互換性などを持たせた、という意味で大きな意味があったといえます。

 UH-1H,考えますと欧州は後継にNH-90を開発、非常に優れた機体ですが一時間当たりの飛行コストがユーロファイタータイフーンと同程度という高コストに悩んでいますし、アメリカはUH-60Aを開発しましたが全てを置き換えられず州兵用にUH-72A/Bラコタを開発し二分化、どの国も苦労している中、UH-1Jはある程度合理性を持たせられた。

 UH-2をもとに、AH-1Sを、そのまま移植した場合は武装システムが40年以上前ですのであんまりですから多少は能力向上し、操縦装置はUH-2並、ミサイル射程を延伸しデータリンクシステムもせめて広帯域無線機コータムに対応させる必要がありますが、AH-2として完成させることができれば、コスト面と運用面で理想的選択肢とはならないでしょうか。

 ベルヘリコプターテキストロン社はAH-1Wスーパーコブラ、AH-1Sを双発化した機体を既に1980年代に完成させ2000年代には四枚ローターとエンジンや駆動系を一新したAH-1Zバイパーを完成させていて、こちらはヘルファイアミサイル運用能力やスティンガー空対空ミサイルなどによる空対空戦闘能力を既に備えたものが市場に提示された。

 AH-1Zバイパーを調達したら良いではないか、という反論があるでしょうがUH-2はUH-1Yヴェノムではないように、自衛隊の場合UH-1Yと大半が部品として共通であるAH-1Zを導入する必然性はなく、またアメリカ海兵隊の運用に適合するように設計されているAH-1Zは必ずしも安価ではありません、政府武器援助があって安価となるだけです。

 チェコ軍がAH-1Zを導入し、比較的安価な取得費用であったとして話題になりましたが、これはチェコ軍がAH-1Zで置き換えた機体がMi-24ハインド攻撃ヘリコプターで、アメリカ政府はチェコがハインドをウクライナへ武器援助する見返りに安価にAH-1Zを供給、つまりAH-1Zをウクライナへ提供できないため迂回供与のかたちをとったわけです。

 自衛隊の場合はさすがにAH-1Sをウクライナへ供与してアメリカからウクライナ武器援助予算を流用して安価にAH-1Zを取得するという選択肢はとれません。他方、前述したような単純にUH-2をガンシップとしてAH-1Sの後継に充てることもできないのです。もちろんスタブウイングを増設してロケット弾等で武装することは可能なのでしょうけれども。

 キングコングでは一見有用に見えた方式ですが、日本にとり有用ではないという背景には、ヴェトナム戦争での運用で既に指摘、つまり1970年代から指摘されていることなのですけれども、機外に装備されたさまざまな武装は、その種類にもよるのですが物凄い空気抵抗になる、ということ。飛行性能、速度も落ちてしまいますし、なにより航続距離に響く。

 UH-2をガンシップ化する、もちろん搭載することそのものはベル412がガンシップ型を開発していますし、十分可能なのでしょうが陸上自衛隊が求めている航続距離を維持できるかについては、要求仕様にガンシップ装備での南西諸島での運用性能が含まれていませんので、確証できないところがあります、そこでAH-1の後継機という視座、つまりAH-2へ。

 AH-1が胴体を細身としたのは、対空砲火から機体が被弾しにくくするため、という視点は前述の通りですが、同時に細身とすることで空気抵抗を抑えるという効果も期待されています、つまりUH-1とAH-1が一緒に飛行することを念頭としたのです、AH-1はUH-1の降着地域への火力制圧やUH-1での空中機動部隊の近接航空支援も担う必要があります。

 ガンシップの難しい背景をもう一つ挙げますと、一見安価にみえるガンシップですが機銃ポッドとロケット弾発射装置だけならば装備は可能です、70mmロケット弾でも2000m程度の射程はありますし、機銃ポッドもM-134ミニガンを装備しましたらそれなりの制圧力があります、しかし対戦車ミサイルとなりますと、照準器が必要で高価となるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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