■防衛フォーラム
ヨーロッパの未来を担う次世代戦車開発は戦車開発の名門ラインメタル社とフランスドイツ共同開発戦車の二系統となっています。
ドイツとフランスのMGCS戦車共同開発へ両国国防相が会談しました。7月10日、ボリスピストリウス独国防相とセバスティアンレコルヌ仏国防相はベルリンで会談、2022年の計画発案以降具体的な動きが無かったMGCS主力戦車システムについての今後の展開を議題としました。ピストリウス独国防相はドイツ主導案を強く推したとのこと。
MGCS主力戦車システムは画期的な130mm戦車砲と無人機などを備えた無人砲塔など新機軸を採用し、既に独仏合弁会社としてKNDS社をネクスター社とクライスマッファイヴェクマン社の出資により創設していますが、レオパルド2を製造したラインメタル社を参加させないなど、画期的というよりもリスクを感じさせる要素が既に露呈している。
レオパルド2は1970年代末の設計であり、フランスのルクレルク戦車も1990年代の設計、改良は重ねているとはいえ2035年から2040年にかけ後継戦車が必要とされていますが、2035年までの完成を見込むならば幾つかの試行錯誤を行う余裕があるというのはベルリンでの会談での成果で、先ず車体と砲塔を両国が分け競合試作する検討も為されました。
■MGCS戦車共同開発
MGCS戦車共同開発について。
ドイツとフランスのMGCS戦車共同開発に関する7月10日の独仏国防大臣会談を受け、両国の国防省は9月22日に両国陸軍参謀長による検討会合を開催することで妥結しました。主力戦車は単に打撃力と機動力に防御力が優れているだけでは完成するものではなく、どういった陸軍ドクトリンに基づいて運用するかを設計に反映させねばなりません。
MGCS戦車共同開発、2018年にユーロサトリ国際兵器見本市における独仏主力戦車開発計画が発表された際には、レオパルド2戦車の車体にルクレルク戦車の砲塔が乗せられたものが展示されていました。レオパルドは優れた戦車ではあるものの砲塔の基本配置が1980年代の発想であり近代化に限界が。対してルクレルクは足回りの設計が弱点だ。
ルクレルクの優れた砲塔とレオパルド2の信頼性のある車体は、結果的に両国合弁会社のKNDS社が設計するよりも早く、レオパルド2を製造したラインメタル社がKF-51パンターとしてその発想を応用した新戦車を独自開発しており、他方でMGCSはコンセプト放置で、新技術だけを積んだ状況、参謀総長会合ではその差異を埋めることを目指す。
■独仏戦車哲学
戦車哲学についての相違点がフランスとドイツで共同開発に何らかの影響を及ぼす可能性があります。
MGCS戦車共同開発計画について、ドイツのピストリウス国防大臣は、車体部分と砲塔部分をドイツ案とフランス案が双方で独自開発し、優れた案を採用するか、双方が妥結に至らなかった場合には別々の戦車として完成させる、共同開発という開発費の節約という利点をほぼ解消した共同生産の可能性を探るにとどめる試案を示唆したようです。
ユーロパンツァー計画とMBT-70計画、ドイツの防衛産業としては過去の苦い経験があるのかもしれません。それは1950年代にフランスとドイツが、1960年代にドイツとアメリカが戦車の共同開発計画を立ち上げ、コンセプトでは非常に先進的なものと技術を掲げたものの、要求仕様などで両国が合致せず、開発費を空費させ結局中止となっている。
MBT-70計画などは砲塔に重装甲カプセルを配置し車体を無人化させることで車高を抑え、大口径砲を搭載する試作車が開発されましたがミサイルガンランチャーか滑腔砲を採用するかなどで意見が合致せず、エンジン方式や副武装で対立し結局レオパルド2とエイブラムスを独自開発することとなった歴史があり、その再来を警戒しているのでしょう。
■KF-51パンター
KF-51パンターは微妙な雲行きのドイツフランス共同開発よりも主力戦車の王道を心得ているようにみえます。
ウクライナへ建設を進めているドイツのラインメタル社工場ではKF-51パンター戦車の生産が現実味を帯びてきたもよう。ラインメタル社のパッペルガー最高経営責任者は、今後12週間以内にウクライナへ工場を開設する方針である、7月11日付のCNN報道で明らかになりました。その新工場はウクライナ西部に建設されるとのことでした。
KF-51パンター戦車をウクライナで生産する、ラインメタル社は2023年に入りウクライナ国内紙などの取材に対して、ウクライナ国内に2億ユーロを投じて年間400両の戦車を生産する体制を確立したいと応じており、戦車の車種は明らかにされていませんが、レオパルド2が生産終了していることを考えればKF-51パンター戦車が当て嵌まります。
ラインメタル社によれば、ウクライナ西部の工場では先ずフクス装輪装甲車を生産する方針で、これは大型の六輪装甲車、製造はそれほど複雑ではありません。この建設にはウクライナの国営防衛企業ウクルオボロンプロム社が提携先になるとの事で、先ず短期間で完成する装備品を現地生産し、その後複雑な装備生産を行うという事なのでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ヨーロッパの未来を担う次世代戦車開発は戦車開発の名門ラインメタル社とフランスドイツ共同開発戦車の二系統となっています。
ドイツとフランスのMGCS戦車共同開発へ両国国防相が会談しました。7月10日、ボリスピストリウス独国防相とセバスティアンレコルヌ仏国防相はベルリンで会談、2022年の計画発案以降具体的な動きが無かったMGCS主力戦車システムについての今後の展開を議題としました。ピストリウス独国防相はドイツ主導案を強く推したとのこと。
MGCS主力戦車システムは画期的な130mm戦車砲と無人機などを備えた無人砲塔など新機軸を採用し、既に独仏合弁会社としてKNDS社をネクスター社とクライスマッファイヴェクマン社の出資により創設していますが、レオパルド2を製造したラインメタル社を参加させないなど、画期的というよりもリスクを感じさせる要素が既に露呈している。
レオパルド2は1970年代末の設計であり、フランスのルクレルク戦車も1990年代の設計、改良は重ねているとはいえ2035年から2040年にかけ後継戦車が必要とされていますが、2035年までの完成を見込むならば幾つかの試行錯誤を行う余裕があるというのはベルリンでの会談での成果で、先ず車体と砲塔を両国が分け競合試作する検討も為されました。
■MGCS戦車共同開発
MGCS戦車共同開発について。
ドイツとフランスのMGCS戦車共同開発に関する7月10日の独仏国防大臣会談を受け、両国の国防省は9月22日に両国陸軍参謀長による検討会合を開催することで妥結しました。主力戦車は単に打撃力と機動力に防御力が優れているだけでは完成するものではなく、どういった陸軍ドクトリンに基づいて運用するかを設計に反映させねばなりません。
MGCS戦車共同開発、2018年にユーロサトリ国際兵器見本市における独仏主力戦車開発計画が発表された際には、レオパルド2戦車の車体にルクレルク戦車の砲塔が乗せられたものが展示されていました。レオパルドは優れた戦車ではあるものの砲塔の基本配置が1980年代の発想であり近代化に限界が。対してルクレルクは足回りの設計が弱点だ。
ルクレルクの優れた砲塔とレオパルド2の信頼性のある車体は、結果的に両国合弁会社のKNDS社が設計するよりも早く、レオパルド2を製造したラインメタル社がKF-51パンターとしてその発想を応用した新戦車を独自開発しており、他方でMGCSはコンセプト放置で、新技術だけを積んだ状況、参謀総長会合ではその差異を埋めることを目指す。
■独仏戦車哲学
戦車哲学についての相違点がフランスとドイツで共同開発に何らかの影響を及ぼす可能性があります。
MGCS戦車共同開発計画について、ドイツのピストリウス国防大臣は、車体部分と砲塔部分をドイツ案とフランス案が双方で独自開発し、優れた案を採用するか、双方が妥結に至らなかった場合には別々の戦車として完成させる、共同開発という開発費の節約という利点をほぼ解消した共同生産の可能性を探るにとどめる試案を示唆したようです。
ユーロパンツァー計画とMBT-70計画、ドイツの防衛産業としては過去の苦い経験があるのかもしれません。それは1950年代にフランスとドイツが、1960年代にドイツとアメリカが戦車の共同開発計画を立ち上げ、コンセプトでは非常に先進的なものと技術を掲げたものの、要求仕様などで両国が合致せず、開発費を空費させ結局中止となっている。
MBT-70計画などは砲塔に重装甲カプセルを配置し車体を無人化させることで車高を抑え、大口径砲を搭載する試作車が開発されましたがミサイルガンランチャーか滑腔砲を採用するかなどで意見が合致せず、エンジン方式や副武装で対立し結局レオパルド2とエイブラムスを独自開発することとなった歴史があり、その再来を警戒しているのでしょう。
■KF-51パンター
KF-51パンターは微妙な雲行きのドイツフランス共同開発よりも主力戦車の王道を心得ているようにみえます。
ウクライナへ建設を進めているドイツのラインメタル社工場ではKF-51パンター戦車の生産が現実味を帯びてきたもよう。ラインメタル社のパッペルガー最高経営責任者は、今後12週間以内にウクライナへ工場を開設する方針である、7月11日付のCNN報道で明らかになりました。その新工場はウクライナ西部に建設されるとのことでした。
KF-51パンター戦車をウクライナで生産する、ラインメタル社は2023年に入りウクライナ国内紙などの取材に対して、ウクライナ国内に2億ユーロを投じて年間400両の戦車を生産する体制を確立したいと応じており、戦車の車種は明らかにされていませんが、レオパルド2が生産終了していることを考えればKF-51パンター戦車が当て嵌まります。
ラインメタル社によれば、ウクライナ西部の工場では先ずフクス装輪装甲車を生産する方針で、これは大型の六輪装甲車、製造はそれほど複雑ではありません。この建設にはウクライナの国営防衛企業ウクルオボロンプロム社が提携先になるとの事で、先ず短期間で完成する装備品を現地生産し、その後複雑な装備生産を行うという事なのでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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