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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】E-7早期警戒機米空軍仕様機難航とベルギー空軍はエアバスA-400M輸送機納入完了

2024-05-21 20:00:54 | インポート
■防衛フォーラム
 ボーイング社の品質管理はボーイング737や777に787等で問題視されているところですがアメリカ軍の独自仕様の難しさも火砲や装甲車等の面でよく理解されています。

 アメリカ空軍はE-7早期警戒機の空軍仕様機に難渋しているという難しい話題です。具体的にはフランクケンドール空軍長官がコロラド州デンバーで開かれた空軍協会航空戦シンポジウムにおいて、E-7早期警戒機のボーイング社との価格合意がまとまらず複雑化している、と2月13日に記者会見において述べています。現在試作機待ちの段階だ。

 E-7早期警戒機、アメリカ空軍は老朽化が進むE-3早期警戒管制機の後継として2032年までにE-7早期警戒機を26機導入する計画です、現在試作機2機を発注している段階で初号機は2027年引き渡しの見込み、試作機引き渡しに先立ち2025年に生産契約を結ぶという。E-7は既に採用実績がありますが、米軍仕様へ12億ドルの開発費が計上された。

 ボーイング社は当初、オーストラリアやイギリスなどに採用されているE-7ウェッジテールをそのままアメリカ空軍が採用するものと考えていましたが、アメリカ空軍は米軍衛星通信や軍用GPSとサイバーセキュリティなどの保護用兼適合を要求しており、この為の設計変更がボーイング社の想定をはるかに超える量であり、開発費が不足したもよう。
■E-7早期警戒機
 ボーイング社の読みの甘さ。

 アメリカ空軍のE-7早期警戒機へのボーイング社の取り組みについて。ボーイング社が同じアメリカの同盟国であり英語圏の国であるイギリスやオーストラリアのE-7と同型機を導入できると楽観視していたボーイング社について、アメリカ空軍調達技術兵站担当次官のアンドリューハンター氏はボーイング社との議論は困難を極めたという。

 空軍は現在、ボーイング社が交渉に慎重であるとともに、ボーイング社の提示要件のどの部分が必要不可欠であり、どの部分を省略できるかについての議論を行っているものの、現状では詳細を示せないとしています。この点について、過去の事例から提案書よりも特定段階の技術情報調査に重点が置かれていることが、原因としてみているという。

 ボーイング社は提案書全体を理解せず一部を理解して提示している、という可能性をアンドリューハンター氏は示唆しました。ただ、オーストラリアやイギリスと、アメリカ空軍とは衛星通信環境や宇宙作戦の根本基盤が異なるものであり、外国仕様をそのまま米軍の作戦中枢機にそのまま採用できる考え方は一般論として無理があるでしょう。
■アメリカミサイル防衛庁
 日本も宇宙航空自衛隊と改称するにはこうした人工衛星の迅速な打ち上げ体制を確立してゆく必要があるように思うのですね。

 アメリカミサイル防衛庁と宇宙開発庁は弾道ミサイル監視強化のための衛星6基を打ち上げました。これは2月14日にスペースX社製ファルコン9ロケットにより打ち上げられています。ロケットにはミサイル防衛庁の2基と宇宙開発庁の4基が搭載されていて、正常に軌道上に投入されたとのこと。衛星は宇宙軍とも協力する。

 HBTSS極超音速弾道追跡宇宙センサープログラムの一環として投入され、LEO地球低軌道上に展開しました。これまで弾道ミサイルを検知する早期警戒衛星はGEO静止衛星軌道上に展開しており、極超音速滑空弾などに対する警戒能力の限界が指摘されていました。宇宙軍はこの分野の監視技術へ160億ドルを2028年度までに支出します。
■宇宙軍一任期8年間
 日本の自衛隊もこうした方が長く勤められるのかと考えるのですが。

 アメリカ宇宙軍は軍の一任期を8年間とする検討を進めています。通常アメリカ陸海空軍及び海兵隊では一任期を4年間としています、しかし宇宙軍は現役期間を8年間とし離職を防止する試みを行う背景には宇宙軍の教育訓練期間の長さが関係します。高度な教育、プログラムなどの教育でも通常は4年間で訓練と任務をこなせるものですが。

 宇宙軍は、8年間という重みは理解しているとの事で、これは例えば20歳の若者が軍務に志願し、陸海空軍であれば20歳代前半で退役し大学入学など次のキャリアを人生設計に盛り込むことができるが、20歳代で入営した場合に宇宙軍では退役が30歳代前後になり、これは宇宙軍志願者の多寡に影響を及ぼす可能性は理解しているとのこと。

 宇宙軍の場合は大学教育の延長線上や専門学校での経験などは宇宙作戦に応用できる分野は限られるため、宇宙軍に入隊してからの教育期間が長くなるため、既存の4年間の任期では不足するとのこと。ただ、条件として陸海空軍では退役後に即応予備軍などの任官を求められますが、宇宙軍は予備役制度を取らず退役できる制度を検討中という。
■A-400M輸送機
 C-2輸送機をもう少し売り込めれば。

 ベルギー空軍はエアバスA-400M輸送機納入完了式を挙行しました。ベルギーのメルスブルック基地で行われた式典にはベルギーのデドンデル国防相とルクセンブルクのバックス国防相、OCCAR-EA 欧州統合軍備協力機構のサッカー所長、エアバスA-400プログラムマネージャーのブルゴー氏、基地司令のビークスマン大佐などが出席しました。

 A-400M輸送機は最終組み立て工場のあるスペインのセビリアから到着、ベルギー空軍はルクセンブルク空軍と共同で8機のA-400M輸送機導入を発表していて、ベルギー空軍の7機とルクセンブルク空軍の1機を導入する計画を推進し、両国の輸送機はメルスブルック基地に所在する第15輸送航空団へ集中配備されることとなっています。

 ルクセンブルクとベルギーが一つの部隊で同型の輸送機を運用する、これは日本の自衛隊運用を見慣れていますと特異に感じられるものですが、欧州の相国であるルクセンブルクは、一人当たりGDPでは世界最高水準ではあるものの人口が少なく、この為にNATOの一員として集団安全保障体制に国軍を一体化させ、費用と能力を分担しています。
■XA-103エンジン
 戦闘機はやはりエンジンが中核部品というところは不変のようですしなにより次世代医はレーザー砲などよりエネルギーを必要とする事となります。

 アメリカのプラントアンドホイットニー社はXA-103エンジン地上試験計画を発表しました、これはプラントアンドホイットニー社の軍用エンジン事業部長ジルアルバーテッリ氏が次世代エンジン開発について述べたもので、XA-103エンジンは2020年代後半にも地上試験を開始するべく、全般設計をまもなく完了する、と表明したものです。

 XA-103エンジンはF-22戦闘機後継機となるNGAD次世代戦闘機用に開発されているもので、燃焼効率と熱管理システムなどが現在開発され運用中のエンジンと比較し飛躍的に向上するとしています。XA-103エンジン、もう一つ特筆されたものは戦闘機用エンジンとしては史上初めて、完全デジタル管理によりペーパーレス設計されたこと。

 NGAD次世代戦闘機について、その概要は今のところ示されていませんがF-22戦闘機の退役計画だけは進んでおり、第五世代戦闘機であるF-22を置き換えるNGADは第六世代となる、一方でそのエンジン地上試験の開始が2020年代ということになれば、自動的に如何に急いだとしてもその戦力化は2030年代という時間がかかることとなります。
■AB-212救難ヘリコプター
 永らくお疲れ様でした的な話題です。

 イタリア空軍はAB-212救難ヘリコプターの退役式典を行いました。式典は2月22日、グラッツァニーゼにおいて挙行、イタリア空軍での実に40年間にわたる運用に終止符を打った形です。AB-212はアメリカのベル社が開発したベル212ヘリコプターをイタリアのアグスタ社がライセンス生産したもので、UH-1ヘリコプターを双発化したもの。

 AB-212の運用は1979年に射撃場管理用に3機を導入したものを皮切りに運用効率の高さが確認され、1984年に32機が発注されました、機体はビジャフランカ基地の第603飛行隊、グロッセート基地第604飛行隊、グラッツァニーゼ基地第609飛行隊など7個飛行隊に配備され、戦闘救難用にMG-42/59機銃2丁や機体自衛装置などを備えていた。

 2000年代にはいりイタリア空軍ではこれらの機体の老朽化を受け2005年に大規模延命改修を実施し、その際に機体の一部を装甲化しています。空軍はISAFアフガニスタン国際治安支援部隊などにもAB-212を派遣していますが、後継機としてアグスタウェストランド社製HH-101の配備が進んだことで、遂に2024年、運用を終了しました。
■F-16block70戦闘機
 F-16が2020年代の防空システムにどの程度対抗できるのかは非常に残念な事ではあるのですがまもなく実戦の洗礼を受ける事となるのかもしれません。

 スロバキア空軍はF-16block70戦闘機の初号機を受領しました。ロッキードマーティン社は現在F-35戦闘機をフルレート生産中となっていて、F-16戦闘機の生産設備をグリーンビル工場に移設した後、製造の遅れが伝えられていましたが、このほど最初の2機をグリーンビル工場においてスロバキア空軍へ引き渡すこととなりました。

 F-16block70戦闘機は従来のF-16C戦闘機と比較し、AESAレーダーのAPG-83採用等と性能が格段に向上しており、スロバキア空軍は独自の防空能力を強化するうえで重要な一歩となります。スロバキア空軍はこの2機を要員訓練用や整備訓練用としてアメリカ本土において運用能力を完熟させたのちに2024年中ごろにスロバキアへ搬入する。

 スロバキア空軍は14機のF-16を導入する計画で2025年までに順次引き渡されるとのこと。第四世代戦闘機であるF-16ではありますが、block70は運用時間が従来型の二倍に当たる1万2000時間まで延長されていて、もともとF-16はソフトウェアアップデートにより能力を拡張する理念の機体であるため、長期の活躍が機体されています。
■C-130J-30輸送機
 C-130Jはかなり取得費用が高くはなっているのですが継続的なアップデートを行っています、さて本邦のC-130H後継はどうなるのか。

 ノルウェー空軍は改良型C-130J-30輸送機初号機を受領しました。これは2012年までにノルウェーが導入したC-130J-30を近代化改修した際にロッキードマーティン社が最近完成させたblock8.1アップグレードキットを採用したもので、ノルウェー空軍はblock8.1アップグレードキット搭載C-130J-30輸送機4機を導入する計画となっています。

 JUG,スーパーハーキュリースジョイントユーザーグループというロッキードマーティン社を中心としたC-130J輸送機のblockアップデートプログラムがあり、アメリカ空軍やアメリカ海兵隊とオーストラリアやドイツとフランスにニュージーランドと共にノルウェーはそのJUG加盟国となっています。輸送機はガーデモエン基地第335飛行隊のもの。

 block8.1アップグレードキットとは、航法装置の強化により地球規模の輸送任務に対応するとともに民間GPSとの連携性能、また旅客機よりも低速で飛行高度も限定される戦術輸送機に在って飛行計画を目的地まで短時間で作成し管理当局に提出する飛行管理システムを有し、また機体自衛装置の能力向上を迅速に可能とする能力も追加されました。

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