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オデッサ攻撃,国連ESS総会緊急会合は安保理授権機能行使か?ウクライナ民間人2000名死亡

2022-03-03 07:00:33 | 国際・政治
■臨時防衛情報-ウクライナ情勢
 ニューヨーク国連では今世紀初となるESS国連総会緊急会合がロシア非難決議に向け討議を続けています。

 EUはウクライナへ戦闘機供与を検討している。これはブリュッセルで開かれた2月27日のEUオンライン外相会談において決定したもので、4億5000万ユーロ相当の軍事支援として、弾薬だけではなく戦闘機の供与をも含むものだと、欧州理事会ヨハンソン内務担当欧州委員が発言したもの。EU欧州連合は共通安全保障プログラムという安保機能がある。

 EUの戦闘供与、注目すべき点はEUには安保機能はあるものの、1990年代のユーゴ内戦においてEUの機能では平和維持は不可能である事が痛感、結局はNATOが安保機能を担い、EUとNATOは別組織でありながら管轄の区分が醸成されてゆきました。なお、EU加盟国にはウクライナ軍も運用するMiG-29やSu-22があり、これが供与されるのでしょう。

 2000名が死亡、ウクライナ非常事態省はロシア軍ウクライナ侵攻から一週間を経た日本時間3月2日、ロシア軍によるミサイル攻撃や砲爆撃により2000名が死亡したと発表しました。被害詳細について、ウクライナ非常事態省は明らかにしていません。ただ、ロシア軍は精密誘導兵器の命中精度が低く、砲爆撃の練度も低いため、民生被害が続発しています。

 2000名の死亡という数字には戦闘要員は含まないとされており、ウクライナ非常事態省によれば、この一週間で交通インフラや住宅に集合住宅、病院や幼稚園など多くの民間施設を破壊しています。首都キエフではテレビ塔がミサイル攻撃を受けたほか、第二次大戦のホロコースト追悼施設も攻撃を受けました。沖縄戦の様な民間人を巻き込んだ戦闘という。

 ESS国連総会緊急会合はロシア非難決議に向け大車輪で討議を進めています。さて、このESS国連総会緊急会合の総会決議は法的拘束力を持つのでしょうか。国連では安全保障理事会の安保理決議は法的拘束力を持つと、ICJ国際司法裁判所は勧告的意見を示していますが、総会決議は法的拘束力を持つとは考えられていません、ここに安保理の優位性がある。

 ESS国連総会緊急会合の総会決議、しかし法的拘束力はないのでしょうか。これはESSが単なる総会決議ではなく安全保障理事会からの授権決議を受け招集された会議であり、解釈次第で、ESS決議は安保理決議の代行を授権されたものとして、いわばESS決議は安保理決議と同等、という視点で見る事も出来るでしょう。安保理常任理事国の暴走、国連の決断を期待しましょう。

 ヘルソンが陥落しマリウポリ包囲が続いている。ロシア軍は黒海沿岸部への攻撃も強めています。マリウポリの包囲戦は、負傷者の救出も困難な状況になっている、マリウポリ市のボイチェンコ市長はTVにて窮状を訴えました。マリウポリは黒海の北部でクリミア半島東方アゾフ海に面し、2014年に占領されたクリミア半島とロシア本土から攻撃される。

 マリウポリと同時にクリミア半島北西のヘルソンは3月2日、包囲を受け遂に陥落しました。ロシア軍はオデッサに向け侵攻を続けていて、ウクライナのマリャル国防次官によれば空港がミサイル攻撃を受けたとのこと。オデッサは黒海最大の商港が在り、仮にもしロシア軍に占領された場合、ウクライナからは穀物輸出など停戦後に大きな支障が生じます。

 航空路線は世界規模で重大な影響を受けています。ANA全日空は3月3日の欧州日本間の航空路線の全面運休を発表しています。これは欧州各国が相次いでロシア民間機の乗り入れを禁止し、対抗措置として欧州旅客機のロシア領空通過をロシア政府が禁止した為で、2日にはアメリカのバイデン大統領がロシア機のアメリカ領空飛行の禁止を発表しました。

 航空路線、ロシア政府はまだ日本の民間航空機領空通過を禁止していませんが、欧米航空会社との共同運航便が多く、いつ封鎖されるか不明である為、万一に備えロシア領空飛行を中断、全日空ではロシア領空を通過しない航路への切替を検討中です。なおエールフランスではロシアを避け、パリ-東京間は11時間から14時間に伸びる迂回経路を運行中だ。

 ウクライナ軍の奮闘は驚くべきもので、ロシア軍が撃退された地域では、戦車や装甲車に装甲戦闘車は勿論、火砲に野戦防空車輛から警戒装甲車に無人戦闘車と砲兵指揮車に輸送車と、ほぼすべての種類と云えるほどのロシア軍車両、それもここ数年内に発表された新型を含め、残骸で溢れており、これほどロシア軍が戦車を失ったのは第二次大戦以来です。

 ウクライナ軍へは欧州各国とアメリカが武器援助や救援物資を送り続けていますが、例えば開戦二日目中心部までロシア軍戦車が突入した東部ハリコフではウクライナ軍の反撃により後退させ大打撃を与えました。これは遠い東欧の話ではなく、抑圧国家と民主主義の戦いという、いわばフランス革命以来の人権が問われている激戦という現実があるのです。


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