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【京都幕間旅情】三井寺(円城寺)智証大師円珍貞観元年の再興と平安朝中期"千年戦争"の勃発

2022-01-26 20:22:08 | 旅行記
■再興と千年戦争の始まり
 大友氏の氏寺から一時の荒廃を経て智証大師円珍による再興を迎えた三井寺は、続く千年戦争というべき激動の時代へ進みます。

 千年戦争、こう表現しますとどういった印象を受けられるでしょうか。なにかSF的と云いますか現実性を感じないでしょう。しかし、この三井寺という寺院は千年に及ぶ対立を経て、そして驚く事に対立構造が残っていたものが平成時代に入り和解した歴史を持つ。

 天智天皇所持の弥勒菩薩像。もともと三井寺は氏寺となっていますがその本尊は天智天皇所持の弥勒菩薩像となっています。これは官寺であることを意味するものではありませんが、東寺や神護寺はもちろん、延暦寺とも並ぶ格式を元々備えていた寺院であったのです。

 三井寺の伽藍は、三重塔を始め華美を敢えて排した質実剛健的な美しさと規模を広げていますが、しかし拝観にさいして一つ一つをじっくりと観察しますと、何れも近世の建築物である事に気付かされます、しかし創建は奈良時代の氏寺である事は前述しました通り。

 円珍。中国から最澄が密教をいち早く導入したものの、その内部化よりも導入を急いだことで解釈と研究に限界がありました密教を、改めて深層理解するべく唐より帰国した円珍は比叡山延暦寺より園城寺初代長吏として任じられ、こうして氏寺から先端寺院となる。

 唐院。この際に清和天皇より御所は仁寿殿の建物を賜り、三井寺に移築した際に唐より請来して得ました経典や法具を奉じる延暦寺の書庫となります。経典や法具は最澄と空海、延暦寺と神護寺の温度差に繋がりましたものでもあるのですが、今度は三井寺に置かれる。

 貞観元年こと西暦859年の三井寺新しい門出となるのですが、この貞観は千年前の東日本大震災や古富士噴火という富士山史上最大の噴火を筆頭に災害が相次ぐ時代、円珍は研究に邁進するとともに、延暦寺の修行は千日回峰行を筆頭に修験道のような苦行をつみます。

 密教というものは、しかし苦行に徹するものでは必ずしもなく、こうした中で最新の研究を積むと共に延暦寺との温度差が自然醸成されてゆくのですね。智証大師円珍としまして、円珍は後に比叡山の最高位である座主へと上り詰めてゆくのですが確かな温度差もあった。

 智証大師円珍は門宗という天台宗に新しい流派を構成してゆくのですが、智証大師円珍の没後、天台宗総本山の延暦寺に対して、天台寺門宗という新しい宗派を立ち上げ、慈覚大師円仁時代の比叡山と対立構造が醸成されてゆくこととなります。彼らは比叡山を降りる。

 三井寺は比叡山を降りた天台寺門宗宗徒たちの拠り所となります。すると、比叡山も座視する事無く僧兵を募って三井寺を攻撃する。実際、比叡山の門徒による攻撃により、三井寺は七回ほど全焼する被害を受け、伽藍が全て近世以降のものというのはこうした歴史が。

 不死鳥の寺とも称される三井寺は、全焼七回、半焼五十数回という比叡山からの攻撃や戦乱の巻き込まれ戦火などを含め幾度も攻撃されつつ再興しているためというのですが、すると、延暦寺と三井寺の宗教の違いというものを考えてしまいます、故に調べてみますと。

 延暦寺と三井寺の宗教の違い、それはそれほど大きくは無く、修験道と密教の調和という延暦寺に対して、修験道など日本古来の修行は否定しないが密教の温和性に重きを置くのが三井寺の天台寺門宗という。こうして千年以上前、焼討から対立がはじまり、繰り返す。

 近江を代表する二つの寺院の対立は、実は根本から和解に転じるのは平安時代でも鎌倉時代でも室町時代でも江戸時代でも無く、明治でも無理で戦後も終わりと称されるようになりました平成時代のことなのですが、実に千年戦争が、日本でも実際続いていたのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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