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【榛名防備録】第二次世界大戦後の空挺作戦,ロシア軍空挺作戦失敗と朝鮮戦争インドシナ戦争

2022-03-19 14:14:44 | 防衛・安全保障
■概説:戦後各国空挺作戦
 BBCによればイギリス国防省分析としてウクライナ侵攻ロシア軍は完全に停止したとのこと、緒戦で空挺作戦が一因でしょう。そこで今回は空挺作戦について少し備忘録的に。

 空挺部隊の運用は難しい、今回のロシア軍ウクライナ侵攻にて再認識させられました。FSB文書として漏洩した文書、世界をにぎわせましてどこまで本物なのかは不明ですが、この文書によればロシア軍は20カ所に空挺作戦を実施して19カ所で失敗したという。今の時代に目立つ空挺作戦を分散させた背景はなかなか理解できないものです。何が在ったのか。

 分散運用はC4I時代においては常道となりまして、実は分散することは電子空間で相互支援が可能なのであれば集中に拘ることは悪手です、航空目標に対して脆弱ですので、冷戦時代などは固まれば戦術核の標的となるために分散と集合の迅速さが重要であるとして、機械化部隊が優先されてゆきました、これがC4I時代ではもう少し連携度合いが早くなる。

 しかし、空挺部隊は相当に地上部隊と連携するか、相当に航空優勢確保に自信があり常続的な友軍航空機の戦闘空中哨戒下でなければ、実現しないのかもしれません。もっとも、これが実現するならば2002年アフガニスタン空挺強襲や2003年イラク北部空挺作戦、アメリカの成功が挙げられますし、フランスも2013年マリのサーバル作戦にて実施しました。

 トルコ軍もクルド武装勢力掃討作戦にて空挺作戦を成功させているので、ロシアも自信があったのか。ロシア軍空挺作戦、20カ所を強襲して1カ所しか成果が出なかったことは、恐るべき失敗であり厳しい訓練を耐え抜いた空挺兵には気の毒ではあるのですが、第二次世界大戦後の空挺作戦を見ますと複数の地域に空挺部隊を分散させた例が余り無いのです。

 朝鮮戦争、アメリカは成功例として朝鮮戦争にて第187空挺連隊戦闘団が北朝鮮軍退路を遮断するべく1950年10月20日に平壌北方の粛川と須川に降下、空挺堡を確保しています。ただ、連隊戦闘団では橋頭堡を結ぶ兵力には不足し、空挺作戦は成功しましたが退路遮断という戦略目標には届かず、結果的に北朝鮮撤退を許し朝鮮戦争が長期化する一因となる。

 朝鮮戦争では1951年3月23日に中華人民共和国軍の介入により戦線が崩壊した際、ソウル北方の文山に降下し橋頭堡を確保しましたが、中国軍を押しとどめるには至らず失敗したともいわれます、ただ、遅滞戦闘には成功し国連軍後退を成功させましたので、戦略目標は達成したといえる。新装備であるC-119輸送機による重装備輸送能力も効果が大きい。

 インドシナ戦争においてフランス軍は空挺作戦を多用しています、1952年のフードン作戦では空挺大隊をC-47輸送機で、また1953年のランソン作戦では3個空挺大隊をC-47輸送機で降下させ成功しています。C-119輸送機は火砲など重装備を空中投下できましたがC-47は所謂第二次大戦中のダコタ輸送機が投入、軽装の空挺兵が作戦を主幹しました。

 ディエンビエンフー空挺作戦、アメリカ以外の空挺作戦となりますと有名なものはフランス軍がインドシナ戦争において1953年11月20日に実施した空挺作戦で、これにより盆地であるディエンビエンフーを確保し飛行場とする勝利につながりますが、孤立したディエンビエンフーは包囲されつつ空輸により補給線を維持する、この発想に無理がありました。

 ディエンビエンフーは盆地ですが、その盆地を見下ろす高台にベトミン軍が山砲はもちろん榴弾砲まで分解輸送し砲兵火力で圧倒、1954年5月7日に陥落しています。この他ではヴェトナム戦争のジャンクションシティオルタネート作戦や1956年のイスラエル軍ミトラ峠空挺作戦や続く英仏空挺作戦、アメリカ軍グレナダ侵攻作戦など、一応の成功例はある。

 ロシア軍ウクライナ侵攻、しかし、これが空挺作戦として失敗した背景には、とにかく同時に複数というよりも数十カ所を攻めた、そして航空優勢を獲得できず空輸補給が続かない、地上部隊との連携失敗と言うよりも無視、この作戦を立てたのは誰だ、と今後一世紀は言われ続ける無計画があるのかもしれません。やはり政治主導の作戦だったのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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