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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(19)火力戦闘の展開と対空戦,前衛部隊との接敵(2011-10-09)

2022-10-16 20:21:36 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■吠える99式自走榴弾砲
 訓練展示は特科部隊の火力戦闘とともに敵前衛部隊と偵察部隊の接敵という本格的な戦闘の様相を見せてきました。

 東千歳駐屯地記念行事訓練展示、この模擬戦は富士総合火力演習さえ上回ると評される程に凄い。戦車、別に甲子園で野球をやるわけではないのですから戦車に対抗するには戦車、この必要性はないのですが、先日アメリカで行われた陸軍シンポジウムにてひとつ。

 戦車の脆弱性はないわけではない、と前置きした上で、しかしトラックのほうが遙かに脆弱であるし乗っている兵士たちは更に脆弱である、こうした認識が示されているのですね。ウクライナ戦争、世界はその戦訓に注目し続けているのですが、重要な戦訓があります。

 脆弱であるのは無人機攻撃とともに砲兵の攪乱射撃に対してのソフトスキン車、ウクライナ軍は装甲車両が緒戦で払底した後に市販車両などを使わざるをえない状況に陥り、欧米や豪州からの供与装甲車が一定の数に達するまで市販車で移動を強いられていました。

 結果としてロシア軍の砲撃に甚大な損耗を強いられたという現実がありました。市販車ならば目立たないので砲撃の的にならないというのは平時の感覚であり、ロシア軍は路上の車両に対し、ウクライナが避難勧告を出していた地域を含め砲撃を加えています、そこで。

 152mm砲弾は自衛隊も含めた西側の155mm砲弾と同程度の威力といいますので、一発で長径45mの楕円形に渡り有効弾片が散布されます、すると一個大隊の砲兵が数十秒道路に向かい射撃を加えることで1km程度の道路は車両が致命的な損耗を強いられるということ。

 砲兵にとり装甲の無いソフトスキン者は位置が暴露した時点で狩場になります、が、装甲車両ならば特にNATO防弾規格のレベル2程度であれば、砲弾片からは有効に防護されます、戦車は更に頑丈だ。そのうえで、戦車の脆弱性があったとしても、別の話となる。

 戦車や装甲戦闘車を抜きに地上戦闘を進める歩兵部隊だけの戦闘の方が脆弱ですし、無人機やミサイルの有用性がどれだけ高まろうとも歩兵掃討を無人機が行うには、映画のような戦場にて一人一人を追いかけ回す歩兵型無人機というものはまだ実用化されていません。

 ターミネーターのようなガイノイドが安価に量産できるようになるならば、T-800型くらいの能力を持ち、そして動力がT-800のような核動力以外の安全な技術が完成するならば、また別なのかもしれません、ただ現時点ではガンダムさえ実用の目処がないという時代だ。

 いや無人機は数百ドルで小型のものが購入でき戦場で使用できるといいますが、結局のところ無人機の中でも安価なものについては安価な手段で無力化されます。無人機を数百m以内の射程で小銃により数発の射撃で高い確率にて撃墜できるスマートスコープがある。

 スマートスコープというものは数百ドルで開発されてますので、小銃本体よりも割安で調達できるというもので、所謂小型無人機については対処目処が、少なくとも問題に真剣に取り組む軍事機構には道筋が構築されています。問題には対策、この視点が重要でしょう。

 AP弾よりもMP弾の開発が大きく前進している、昨今防衛情報を集めていますと戦車用新型弾薬として第三世代戦車を撃破可能というMP弾の開発が進んでいることに気づかされます、APFSDS弾は強力なのですが実弾射撃演習をみますと威力というものは実感し難い。

 800mm相当の望遠レンズ越しでさえAPFSDS弾は標的に命中した瞬間はわかりにくいものでした、もちろん標的は貫通していることは2400mm相当の望遠ズームにより確認できるので意味はあることなのですが。戦車以外、陣地攻撃に使うものではないと改めて。

 MP弾即ち多目的榴弾、しかし、HEAT-MP弾を用いた場合は派手に爆発しますので命中していることがよくわかるのです、他方でセラミックとチタン合金を多用した複合装甲に対してMP弾は一般に貫徹が難しい、こう理解されていたのです。この状況が、かわります。

 圧延均一鋼板換算で900mm以上を貫徹するMP弾が120mm滑腔砲用に開発され続けていまして、戦車に打ち勝ち同時にMP弾は陣地攻撃や装甲車の掃討、そして補給処や野戦整備施設などを破壊する際にもなにしろ榴弾、汎用性がたかく応用できる装備なのですね。

 このあたり、戦車の対戦車装備という狭い領域ではなく戦域優位に資するための機動装備、という認識の変容が生まれているように思える。一方で、無人機からの攻撃は一定の防護手段が確率、ロシアが開発したものはウクライナではあまり役立っていないようですが。

 無人機が用いる攻撃手段はミサイルか徘徊式弾薬の場合は自爆攻撃ですか、多様されるいっぽうで迎撃技術は構築されてきています。C-RAM防護システムのように空港など局地を守る対無人機対ロケット弾迎撃システムであれば、実際に効果を上げているものがある。

 アメリカがアフガニスタンのカブール国際空港防衛に運用し成果を上げていますし、イスラエルのアイアンドームミサイル防空システムが数十発の同時攻撃から人口密集地域を守っているのは報道にある通りです、こうしたシステムはラファエル社が戦車用を開発した。

 トロフィーシステムを筆頭に戦車へ搭載可能というものが開発されメルカヴァ戦車の改良やここ最近はレオパルド2A7戦車にM-1A2戦車などに搭載試験が終了しているのです。戦車砲弾、対照的に思えるのは戦車砲弾を迎撃できる技術は今のところありません、ない。

 120mm滑腔砲はマッハ5で数kmの距離から飛翔してきますし、迎撃しても最低でも1km程度離れた距離で迎撃しなければ運動エネルギーを相殺できず致命的な破片が飛来します、戦車砲弾は改良が進みマッハ6の大台がみえています、対応する時間が短すぎるのですね。

 AI人工知能などが発達し発砲炎を即座に検知し0.5秒で迎撃できる技術を開発したとしても、マッハ6では2km程度の距離ならば2秒以下で着弾しますので迎撃は間に合いません、戦車を撃退できる装備は数多あっても戦車の様に乗員を防護できる既存の装備は限られる。

 戦車のように居座ることのできる持続性を保つ装備という性能の両立を求められる場合、戦車で良いじゃないか、となるわけです。戦争が相手の戦車を撃破した数で決まるというような、ガールズ&パンツァーのような国際ルールでも確立しないかぎり、決定打でない。

 戦車に対抗するのは戦域優位を確保するための一手段であるという、つまり戦車を撃破することが戦争ではなく戦争の一部に戦車の脅威を排除するという前提に依拠するならば、ほかの装備が思いつかないのですね。勿論、昨今120mm砲搭載の50t級装甲車などはある。

 いや、核兵器による先制攻撃というような例外はあるのかもしれませんが、それとて戦争は政治の延長という原則、そして軍事の目的は抑止力という大前提を考えれば、ならば現時点で使わない以上核兵器だけの軍事と安全保障は成り立たない、という論理帰結に至る。

 憲法に明示された人権と民主主義を守るために防衛はあり、戦車を撃退する事が戦争の目標ではなく隙間ない防衛力を抑止力とし戦争を回避、その時に際しては戦車を撃破するよりも戦域優位で侵略者を撃退する、こうした視点から、防衛をみる必要があるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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