■旅客機,ワクチン空輸始め必要
COVID-19最初の感染爆発地域中国武漢から政府チャーターの全日空機が邦人を救出してから八カ月、既に世界の感染者は4000万を越え死者は112万人です。
全日空が大型旅客機の半数を削減する、衝撃の報道が21日にありました。奇しくも21日といえば航空ファンに航空情報やJウイング、エアワールド、最後のは休刊中ですが航空雑誌の発売日でした。全日空はボーイング777やボーイング787にボーイング767など70機を運行しており、半減となりますと先ず旧型の767などから除籍されるのでしょう。
5300億円の赤字。全日空が旅客機を廃止する背景には新型コロナウィルスCOVID-19の感染拡大にともなう航空旅客需要の第二次世界大戦後最大ともいえる縮小です。あの2001年に発生した9.11同時多発テロにともなう世界規模の旅客機需要低下や1973年石油危機を背景とした燃料費高騰さえも、今回のCOVID-19影響と比較すればまだ生やさしいほど。
ボーイング777やボーイング767。考えるのはこのうちで数機だけでも自衛隊が長期チャーターするか、もしくは中古機として取得できないか、という事です。困ったときは直ぐ自衛隊という課案があえはいい加減にしろ、という指摘がありそうですが、今回のコロナ禍では航空機がどうしても必要となる状況があり、また長期的に輸送機は必要なのです。
武漢邦人救出作戦。COVID-19世界最初の感染爆発発生地である中国武漢において法人を救出したのは全日空のチャーター機でした。中国政府は武漢市と周辺都市を物理封鎖し、軍用機か政府チャーター機でなければ各国ともに自国民を救出出来ない状況で、この危険な邦人救出へ旅客機を派遣したのは全日空です。全日空はこの他に政府要人外遊など何度も政府傭機に対応しました。
全日空の大型旅客機が半減するという事は、中長期的に考えるならば日本政府が大型旅客機により大量の法人を緊急輸送しなければならない際に、これまでのような即座の対応を全日空が実施する余力がなくなる事を意味するのですね。短期的には政府融資等対応策もありますが、COVID-19影響長期化はこれでは賄いきれない水準にある故の決定でしょう。
ボーイング747貨物機8000機が必要だ。これは9月9日に国際航空輸送協会IATAが新型コロナウィルスCOVID-19用ワクチンの空輸に必要な航空輸送量をIATAの貨物担当部長が算出したものです。8000機、といっても8000機のボーイング747が延々と空輸を続けるのではなく、延べ機数でボーイング747が8000機分、ということなのですが、多数要る。
航空会社は世界中で今年度は赤字から免れることが出来そうにありません、そして旅客機を処分し、当面の運用費用を圧縮する潮流が続くことでしょう。さらにはコロナウィルスワクチンが完成したとしても、全世界78億人に行き渡り世界規模で集団免疫が獲得されるまでには、早くとも2022年、どう考えても旅客需要回復は2025年以降となりましょう。
ワクチン完成まで、十分な旅客機が維持できるのだろうか。問題は此処です、IATAのボーイング747換算8000機分というのはソーティ換算で仮にボーイング747が100機あれば何ヶ月で達成か数値が不明確です、ボーイング767旅客機ならばどれだけ必要か、という数値も不明確なのですが、ワクチン完成時、航空会社は今より更に疲弊しているのは確か。
日本の国際貢献としてワクチン空輸への参画を求められる可能性があります。もちろんチャーター機を含めてですが、ワクチンが完成したとして、それを日本へ運び込む一点だけでも一大空輸作戦となりますので、日本が国家として一定規模の空輸能力を確保する必要があり、自衛隊が保有するC-2輸送機やKC-767空中給油機だけでは圧倒的に足りません。
全日空と日本航空が保有するボーイング767とボーイング777であれば、E-767早期警戒管制機とKC-767空中給油輸送機、B-777政府専用機、と運用基盤があります。旅客機でも胴体の下半分は貨物輸送区画に転用できますし、既存旅客機の空中給油機への改修、フライングブーム方式故に手間は掛かりますが、不可能ではありません、これも一つ選択肢だ。
政府専用機の維持のためにも全日空の経営が安定する必要があります、なぜならば前型政府専用機B-747が退役した背景には、海外空港において整備支援を行っていた日本航空からボーイング747が除籍されたため、という事情があったのです。このままでは最新鋭のB-777も全日空から消えかねない、自前の基盤が必要、こうした緊張感が必要でしょう。
政府専用機の予備機が不足している、とは1990年代から指摘されている命題で、一時は中古のボーイング767を取得する構想もかなり真剣に検討されたようなのですが、費用面で実現していません。しかし、現状を見ますと時機を迎えているように思えます。現行のB-777政府専用機2機に加えて中古の多目的輸送機にボーイング777があと2機あっても良い。
長い目で見ればPKOの観点から考えることも出来ましょう。PKOは南スーダンPKO任務完了後、現在のPKOは国連憲章七章措置であり集団的自衛権公使の問題が増大することから当面陸上自衛隊を出せない分、今後十年単位で自衛隊は陸上部隊ではなく航空輸送に特化した運用へ移行する、このために輸送機を増強する、こう説明することもできると考えるのですが、ね。
全日空はエアバスA380というフラッグシップ機がかなり負担となっていますし、日本航空も遠くない将来に旅客機の維持が重大な課題となるでしょう。もちろん世界中で同様の状況が展開しているのですが、国家にとり空輸力は重要な国力の一つです、安易に廃棄や売却を見守るのではなく、自前の空輸力確保へ中古機取得を真剣に検討すべきと考えます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
COVID-19最初の感染爆発地域中国武漢から政府チャーターの全日空機が邦人を救出してから八カ月、既に世界の感染者は4000万を越え死者は112万人です。
全日空が大型旅客機の半数を削減する、衝撃の報道が21日にありました。奇しくも21日といえば航空ファンに航空情報やJウイング、エアワールド、最後のは休刊中ですが航空雑誌の発売日でした。全日空はボーイング777やボーイング787にボーイング767など70機を運行しており、半減となりますと先ず旧型の767などから除籍されるのでしょう。
5300億円の赤字。全日空が旅客機を廃止する背景には新型コロナウィルスCOVID-19の感染拡大にともなう航空旅客需要の第二次世界大戦後最大ともいえる縮小です。あの2001年に発生した9.11同時多発テロにともなう世界規模の旅客機需要低下や1973年石油危機を背景とした燃料費高騰さえも、今回のCOVID-19影響と比較すればまだ生やさしいほど。
ボーイング777やボーイング767。考えるのはこのうちで数機だけでも自衛隊が長期チャーターするか、もしくは中古機として取得できないか、という事です。困ったときは直ぐ自衛隊という課案があえはいい加減にしろ、という指摘がありそうですが、今回のコロナ禍では航空機がどうしても必要となる状況があり、また長期的に輸送機は必要なのです。
武漢邦人救出作戦。COVID-19世界最初の感染爆発発生地である中国武漢において法人を救出したのは全日空のチャーター機でした。中国政府は武漢市と周辺都市を物理封鎖し、軍用機か政府チャーター機でなければ各国ともに自国民を救出出来ない状況で、この危険な邦人救出へ旅客機を派遣したのは全日空です。全日空はこの他に政府要人外遊など何度も政府傭機に対応しました。
全日空の大型旅客機が半減するという事は、中長期的に考えるならば日本政府が大型旅客機により大量の法人を緊急輸送しなければならない際に、これまでのような即座の対応を全日空が実施する余力がなくなる事を意味するのですね。短期的には政府融資等対応策もありますが、COVID-19影響長期化はこれでは賄いきれない水準にある故の決定でしょう。
ボーイング747貨物機8000機が必要だ。これは9月9日に国際航空輸送協会IATAが新型コロナウィルスCOVID-19用ワクチンの空輸に必要な航空輸送量をIATAの貨物担当部長が算出したものです。8000機、といっても8000機のボーイング747が延々と空輸を続けるのではなく、延べ機数でボーイング747が8000機分、ということなのですが、多数要る。
航空会社は世界中で今年度は赤字から免れることが出来そうにありません、そして旅客機を処分し、当面の運用費用を圧縮する潮流が続くことでしょう。さらにはコロナウィルスワクチンが完成したとしても、全世界78億人に行き渡り世界規模で集団免疫が獲得されるまでには、早くとも2022年、どう考えても旅客需要回復は2025年以降となりましょう。
ワクチン完成まで、十分な旅客機が維持できるのだろうか。問題は此処です、IATAのボーイング747換算8000機分というのはソーティ換算で仮にボーイング747が100機あれば何ヶ月で達成か数値が不明確です、ボーイング767旅客機ならばどれだけ必要か、という数値も不明確なのですが、ワクチン完成時、航空会社は今より更に疲弊しているのは確か。
日本の国際貢献としてワクチン空輸への参画を求められる可能性があります。もちろんチャーター機を含めてですが、ワクチンが完成したとして、それを日本へ運び込む一点だけでも一大空輸作戦となりますので、日本が国家として一定規模の空輸能力を確保する必要があり、自衛隊が保有するC-2輸送機やKC-767空中給油機だけでは圧倒的に足りません。
全日空と日本航空が保有するボーイング767とボーイング777であれば、E-767早期警戒管制機とKC-767空中給油輸送機、B-777政府専用機、と運用基盤があります。旅客機でも胴体の下半分は貨物輸送区画に転用できますし、既存旅客機の空中給油機への改修、フライングブーム方式故に手間は掛かりますが、不可能ではありません、これも一つ選択肢だ。
政府専用機の維持のためにも全日空の経営が安定する必要があります、なぜならば前型政府専用機B-747が退役した背景には、海外空港において整備支援を行っていた日本航空からボーイング747が除籍されたため、という事情があったのです。このままでは最新鋭のB-777も全日空から消えかねない、自前の基盤が必要、こうした緊張感が必要でしょう。
政府専用機の予備機が不足している、とは1990年代から指摘されている命題で、一時は中古のボーイング767を取得する構想もかなり真剣に検討されたようなのですが、費用面で実現していません。しかし、現状を見ますと時機を迎えているように思えます。現行のB-777政府専用機2機に加えて中古の多目的輸送機にボーイング777があと2機あっても良い。
長い目で見ればPKOの観点から考えることも出来ましょう。PKOは南スーダンPKO任務完了後、現在のPKOは国連憲章七章措置であり集団的自衛権公使の問題が増大することから当面陸上自衛隊を出せない分、今後十年単位で自衛隊は陸上部隊ではなく航空輸送に特化した運用へ移行する、このために輸送機を増強する、こう説明することもできると考えるのですが、ね。
全日空はエアバスA380というフラッグシップ機がかなり負担となっていますし、日本航空も遠くない将来に旅客機の維持が重大な課題となるでしょう。もちろん世界中で同様の状況が展開しているのですが、国家にとり空輸力は重要な国力の一つです、安易に廃棄や売却を見守るのではなく、自前の空輸力確保へ中古機取得を真剣に検討すべきと考えます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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遅くなりました。
今、海外にいる日本人が少ないがために、ANAやJALが大型機を持て余している分けですから、その輸送用にこれを国が保持すべきだ、というのはちょっと違うと思います。
むしろ、ワクチン輸送を本気で考えるのであれば、100機の大型機で、200日で100往復すれば10000ソーティーですから、十分に航空会社の新しい収入になると思います。
自衛隊に採用する云々とは別に、「半年間の維持費」を政府が出す、ということも考えて良いのかもしれません。
一方で、航空機多数が安価に叩き売りされているのであれば、この機会に残ったC-1を全部(仮に)DHC800で代替するとか、あるいはC-1の担っている軽輸送任務をすべてANAに外部委託するとか、海上保安庁の航空監視業務を委託するとか、いろいろ考えてはどうでしょう?
自衛隊が取得する案は、あくまで用途廃止への一つの選択肢として示したものですが、例えば維持できる別の方策があればなにしろ自衛隊は空中給油機の増強はじめ人員に余裕はありませんので、そちらの方が望ましいとは思うのですよね
そこで、もう一つ。定期的にチャーター機を共同転地演習へ運用する、という選択肢もありえるのかな、と。装備品の事前集積が可能ならば、これが一番難しいというのはさておき、ボーイング777が2機あれば旅団普通科連隊の人員だけは空輸できます。有事の際には民間旅客航空路線の運休を前提に旅客機を用いた機動を行う、という想定のもとで、現状は航空優勢の流動化による航空路線運行障害、というものではなく疾病による旅客需要低下、と差異はありますが、活用は試みてもよいのかな、と。
自衛隊鉄道貨物輸送の定期運行化。チャーター機を定期的に運行する、という背景には今年3月から鳥栖と札幌間およびその中間駅8貨物駅で開始されました自衛隊貨物輸送の定期運行化が挙げられます、毎週二往復という規模ではありますが、平時から使っておかなければ有事の際に活用できない、という視点から開始されました。
要は需要が本格化するまでに機材を維持できれば良いのですから、第2師団に残る74式戦車一個中隊などを活用して本州の師団旅団の要員を訓練環境に優れた北海道に転地訓練する、北海道の要員を九州沖縄における生地訓練の強化へ、民間旅客機の航空需要が低くなっている今を逆に好機と捉えて実施する選択肢も、あるようにおもいます。