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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

岐阜基地一周 MCH-101を追って

2006-03-18 22:21:51 | 先端軍事テクノロジー

新型機を追って

 既報ながら、2月24日、海上自衛隊の新型掃海輸送ヘリコプターMCH-101を撮影すべく、川崎重工岐阜工場が所在する岐阜基地を徒歩にて一周した。今回はその様子を写真にてお伝えしたい。

Img_7716  『被写体を前に、並の腕前さえあれば、誰でもスクープとなりうる写真を収める事が出来る、しかし、その被写体に辿り着く事が難しいのだ』と、軍事写真撮影の大家、柴田三雄氏は言っている。

 『どれだけピンボケであろうと、欠けていようと、撮ったヤツはエライ!撮れんかったらアホである』と、報道写真家の宮嶋茂樹氏は著書に述べている。

 この言葉を重く受け、小生は長躯、新型機が飛び、次期輸送機・哨戒機の格納庫建設が進む岐阜基地に進路をとった。

Img_7724  岐阜基地は川崎重工岐阜工場と同じ敷地にある。

 これは第二次大戦中、航空産業の中心地である三菱重工名古屋工場に滑走路が無く、わざわざ完成した機体をバラして岐阜まで運んだ事の反省からかどうかは不明だが、航空基地と航空工場が同居しており、これは小牧基地においても同様の事(三菱重工名古屋工場)が言える。しかし、航空機の大きさが示すように、その工場も非常に大きく、高い防音壁が何処までも何処までも続いていた。

Img_7731  ようやく工場を抜け、滑走路東端を越えたあたりでジェットエンジンの音が聞こえる。独特の音に聞き覚えがあり望遠レンズを空に向けると、飛行開発実験団所属のT-1B練習機が飛行していた。

 写真は拡大である為非常に不鮮明であるが、既報のように今日では既に退役したT-1Bが飛行している。飛行開発実験団にはこの時、1機が在籍していた。

 機体は上昇すると共に大きく旋回し、再び着陸したようだ。

Img_7739  その直後であった。

 1320時、山越しに今回の撮影対象であるMCH-101掃海輸送ヘリコプターが飛行しているのを発見、直ちに撮影した。

 同機はMH-53D掃海ヘリコプターの後継機とされており、海上自衛隊の艦載ヘリコプターとして初めて掃海機能を有し且つ、補給物資の海上航空輸送(ヴァートレップ)を行う機体であると同時に、海上自衛隊初の欧州機であるという点が画期的である。

 即ち、洋上作戦能力の向上という直接的影響、そして米軍機一辺倒であったこれまでの機種選択肢に欧州機採用を契機とする柔軟性の付与という間接的影響が存在する。

Img_7740_2  現在海上保安庁が進める次期ヘリコプター計画では、同じく欧州機のNH-90が選択されつつあり、また同じく国際共同開発のS-92も米国でS-70シリーズの後継機として声が上がっている。S-70シリーズは、日本でもUH-60JAやSH-60シリーズとして陸海空自衛隊で運用されているが、天井が低く機内で立ち上がれないという問題点があり、EH-101、NH-90、S-92が後継機として名乗りを上げている。欧州機という、これまではある種当て馬的な扱いであった機体に、実力本位というかたちの障壁撤廃が為された事は、大きな前進であると小生は考える。

Img_7746  さてさて、更に足を進めると航空祭でも滑走路の反対側に望む事が出来る第四高射群の陣地が見えてきた。一般道路や住宅街から東海地方防空の要が丸見えというのもどうかと思うが、射撃官制のレーダーは高い方が見通線が長く取れ、その分迅速な目標の発見と対応が可能である。

 運用しているペトリオットはPAC-2で、射程は約100km、岐阜基地を中心に琵琶湖東岸から豊橋市までをその射程に収めており、限定的な弾道弾迎撃能力があるとされている。

Img_7751  エンジンの音轟々と、離陸していく飛行開発実験団所属のF-15J要撃機。

 いわずと知れた航空自衛隊の主力機で、八個飛行隊に203機が配備されている。初号機がアメリカより太平洋を越えてこの岐阜基地に到着したのが1981年。航空自衛隊がF-15Jを受領してから今年で25年になるが、いよいよ旧式化著しいF-4EJ改要撃機の後継機選定が大詰めであり、その後継機も恐らくこの飛行開発実験団より配備が始まることとなろう。

Img_7770  そうこうしている内に、『かがみがはら航空宇宙博物館』に到達した。1994年開館の同博物館は体験型の航空史博物館として建設されたものの、バブル期に計画された多くのテーマパークと同じく赤字の累積という状態を続けている。

 野外展示の機体は、川崎重工によってライセンス生産が行われ陸海空自衛隊のみならずサウジアラビアなどに輸出されたV-107ヘリコプター、その後ろに展示されているのが日本初、そして目下唯一の国産旅客機であるYS-11である。同機は日本国内の民間路線からは全て退役したが、海上・航空自衛隊や海外のエアラインでは現役の機体だ。

Img_7761  写真はP-2J対潜哨戒機。

 ロッキード社製P-2Vのエンジンをターボフロップに近代化し、補助ジェットエンジンを搭載、加えて床と天井を改良し10㌢高くなったことで機内を歩行できるようになったいわば準国産機である。

 全機無事故にて任務完遂用途廃止という輝かしい功績を残しつつ退役したが、当然沸き起こった後継機の純国産機案であるが、米国からの政治的圧力により現行のP-3C導入となった。しかし、四半世紀以上を経た今日、培った技術的蓄積の上で目下、川崎重工が中心となり次期哨戒機が開発中である。

Img_7775  航空宇宙博物館駐車場より撮影したF-2支援戦闘機。

 各種試験を円滑に行う為の派手なカラーリングが特色である飛行開発実験団所属機。

 当初は国産開発案があり、ラビとグリッペンを足して二で割ったような外見の三菱重工案、F/A-18Cを丸くしたような川崎重工案、両案を統合した米JSF計画の一案のような形状の案が提示されたが、日米貿易摩擦の影響により日米共同開発、今日のかたちとなった。しかし、兵装搭載量8085kgというF-2の実力は大きく、石破防衛庁長官時代に調達数の下方修正(130機案を98~99機に縮減)は惜しまれる決定であった。

Img_7790  101機が調達され、20機がモスボール、80機が8個航空群において運用される海上自衛隊のP-3C哨戒機。一機で四国島に相当する海域を哨戒可能とされる高性能機で、海洋国家日本にあって、冷戦時代にはソ連太平洋艦隊を相手としたシーレーン防衛、今日では沖縄県・鹿児島県島嶼部の排他的経済水域哨戒任務に大きな威力を発揮している。

 第二次世界大戦中、シーレーンを潜水艦により絶たれ、飢餓状態に近くなり敗戦に追い込まれた日本は、一国で欧州NATO諸国の二倍、米海軍が全世界に展開する部隊の半数を、国内の基地(八戸・厚木・鹿屋・那覇)に展開させている。

Img_7799  岐阜県警航空隊のベル412中型ヘリ。

 富士重工によってライセンス生産が為されており、陸上自衛隊のUH-1J多用途ヘリ後継機の有力候補とされているが、双発により高いエンジン出力、そして四枚ローターによる高い機動性を持ちながらも、エンジン着脱に非常な時間が掛かるという野戦運用では致命的といえる整備上の問題点が指摘される。

 なお、岐阜県警航空隊は岐阜基地滑走路東端に置かれている。

Img_7796  220機が生産され、航空自衛隊の主力練習機の地位を確立したT-4練習機。純国産機である。

 ブルーインパルスも使用する機体で、T-2退役後はジェット機による学生教育は全て本機により実施されている。

 蛇足ながら、火器管制装置や固定武装は有しないものの、1400kg程度の兵装搭載量を有しており、IRSTのような簡易式の火器管制装置を搭載すれば近接航空支援に最適な機体となるだろう。

Img_7788  さてさて、岐阜基地一周もようやく終わりが見えてきた。目的はMCH-101撮影、一応それは成功した。

 岐阜基地一周、外柵外側一般道路を歩いた為、地図上では16km歩いた事がわかった。新管制塔と新格納庫群が国道21号線を走る自動車越しに見る事が出来る。

 航空基地がこうした住宅街を国道一本隔てたところに所在する事は諸外国からは特異に思われるかもしれないが、小牧基地や入間基地のようにこうした光景は意外に多い。わが国において最も古い飛行場の一つである岐阜基地は、航空の街として共に歩んだ歴史があり、市民と共にある基地、といえるだろう。

Img_7803  旅路の最後に、国道21号線越しにみた、国産練習機T-2初号機の写真を掲載したい。

 ジェラルミンが眩しく輝くこの機体は、日本航空技術が初めて音の壁を越えた歴史的機体であり、長きに渡って航空自衛隊とともに歩んだ機体である。

 岐阜基地において永久保存が決定されており、滑走路西端の保存機展示区を見る限り、航空自衛隊の保存機は良好な状態に保たれる事が多いと確信しており、今後も日本の空を見守り続ける事となろう。

舞鶴基地展開

Img_9356 蛇足ながら、本日(3月18日)、特急舞鶴号にて長躯、海上自衛隊舞鶴基地に展開し、第三護衛隊群、及び舞鶴地方隊隷下の艦艇を撮影した。

 本日展開した際に、護衛艦五隻、掃海艇二隻、ミサイル艇二隻が在泊しており、これに関する詳報は、後日、舞鶴の歴史と共にお伝えしたい。

 お楽しみに。

HARUNA

(掲載写真及び文章の著作権は全て北大路機関にあり、無断転載は厳に禁じる)

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