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【京都幕間旅情】相国寺,開山堂庭園龍渕水の庭と白洲の美しい方丈前庭とともに思い浮かべる七重大塔

2023-07-19 20:00:23 | 写真
■相国寺の庭園
 庭園というものは人の少ない所ほど心落ち着きそして日常の雑事を別の視点から思い返す事が出来る。

 龍渕水の庭、相国寺の開山堂庭園は、枯山水の趣を湛える静かな庭園で、枯山水といえば龍安寺だけが有名になっている印象を遠方の方から聴きますと、いやいや主流ですしそもそも龍安寺が枯山水庭園を用いるようになったのはじつは最近の事、と返したい。

 方丈前庭は白洲が敷かれていまして、快晴の日には白洲に陽光が当たることで堂宇の奥までを反射光で照らし、それが実に美しい。この相国寺は写生という概念を日本に産んだ江戸時代の画家伊藤若冲に所縁ある寺院、その作品はいま山内の承天閣美術館などに。

 伊藤若冲の弟子相国寺第115世維明周奎の襖絵などは、撮影は出来ないのですが、方丈に並び、往時の情景を今に伝えます。ただ、龍渕水の庭、枯山水風なのですが造営当時にはここに実際に水が流れていたという。これは禅寺庭園には少々稀有といえるものです。

 山水庭園で、確かに豪雨の際には水が溜まりそうだなあと考えさせられるものですけれども、実際には流水が水音を響かせていたといいますので、ちょっと昔の様子、禅寺らしくない庭園なのかもしれませんが、再現したところを見てみたいとも思う好奇心がわく。

 明治の廃仏毀釈とともに寺域が大きく縮小し、元々檀家に町衆ではなく武家に頼った格式の寺院故に一気に衰退したといいます、ただ、ここで救われたのは伊藤若冲が永代供養料として奉納した絵画で、これを皇室に献上することで多額の下賜金を得て永らえる。

 京都の街並み、昔のままの京都で、というような歴史懐古趣味の方の話をご高説高らかに聞きますと一通り聞いたうえで尋ねるのは、その古い京都というのは、平安遷都の頃で寺院が一つもない時代なのか、鎌倉時代か南北朝の時代か、と思わず聞いてしまうのです。

 南北朝の時代は京都に禅宗寺院が入り始めた頃で新旧摩擦が大きい頃ですし、鎌倉初期の時代と北山文化花開いた際には気候の関係で餓死者続出、東山文化の詫び寂びが珍重される時代は応仁の乱で京都市内全域が戦闘地域という時代である、さてどこに戻すのか。

 地層のように歴史が積み重なり今の京都を醸しているのですし、何より平安遷都の時代から豊臣秀吉の京都大改造の時代と廃仏毀釈文明開化の時代まで、京都というのは左右対称都市や集合住宅に学校制度、長らく日本最先端都市であったことが忘れられている。

 三門や仏殿と流水あるころの龍渕水の庭には懐古と好奇心はわくのですが、しかし京都というものは古いものを淘汰して新しいものが栄えた街でもある。そしてこの禅宗寺院が壮大であることもその一つでしょう、室町時代にここには高層建築物さえあったのだ。

 七重大塔、相国寺をふと拝観する際に、どうしても思い出すのは七重大塔という高さ107mという巨大な仏塔という高層建築物が、応永年間の西暦1399年に造営されていた、ということです。14世紀に日本にそんな建築物が、伝説の出雲大社を除けば最高層という。

 107mの仏塔、京都タワーよりも少し低いですが当時の五重塔よりははるかに高い、八坂の塔こと法観寺五重塔の倍以上、ただ、最盛期、なんの最盛期かと問われると難しいのですが、京都に仏塔が最も多かった時代には二けたの100m前後の仏塔が林立していました。

 京都は変化の街なのだ、相国寺さえ変化しているが芯が継承される限り本質は変わらない故に古都として成り立っている、こう改めて思うのですが、この日変化しそうなのは歴史や景観ではなくお天気の方、雨が降る前に昼餉へと歩みを転じる、お帰りはこちら。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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