北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

歴史地震再来と日本安全保障戦略⑧ 天正地震から考える本州分断の危険性

2013-11-20 23:34:58 | 防災・災害派遣

◆本州最峡部寸断へどう対処するか

 安土桃山時代の天正地震は本州最峡部である伊勢湾から若狭湾に掛けて甚大な被害を及ぼしました。

Img_5777 その巨大地震の存在の可能性を元に防災計画を建て、特に自衛隊が災害派遣において求められる能力を大規模災害へ併せ整備することは、我が国の防災面での脆弱性を払拭することに一面で寄与しますが、もう一面では統合輸送能力と後方支援能力の強化で自衛隊が抱える一つの問題を解決する視点を供することが出来るかもしれません。

Img_0666 天正地震の被害範囲、伊勢湾から若狭湾に掛けての地域は日本列島本州島の最峡部に当たる地域で、此処に再度同様の巨大地震が襲った場合、本州が東西に寸断される可能性が非常に高いと言わざるを得ません。そしてこの地震は直下型地震であったため、活断層周辺以外の被害は広域化しなかった反面、その周辺の被害は激甚となりましたため、その再来を想定した場合も市街地の被害の大きさは無視できません。

Cimg_9505 この直下型地震でありながら被害の広域化を招いた背景には、活断層の一つが破砕した際の熱量を基点として内陸部直下型地震を引き起こす活断層が連動し破砕したため、海溝型地震でしか広域化しないという一つの観念を打ち壊すほどの地震を引き起こしたことが挙げられるでしょう。

Img_1186 この問題点は、勿論ほかの地域においてもこうした連動型内陸地震の発生の危険性を指摘することも出来るのですけれども、併せておきな問題としては激甚な被害を被る地域、阪神大震災の神戸市東灘区のような激しい揺れに襲われる地域が広域化する点、天正地震の発生震源近くには、福井市、金沢市、岐阜市、名古屋市、津市等の市街地があることを踏まえて考えねばなりません。

Img_1401 この指摘に対して、現代の建築物は耐震構造を基本としているため、救援の手が差し伸べられるまで、倒壊被害を過大に見積もるのは如何なものか、という指摘はあるやもしれませんが、天正地震は長浜市や敦賀市に津市等で地盤沈下による海没被害が判明しており、飛騨市や郡上市では地滑り被害が判明していて、如何に耐震構造とて地盤毎海没したり、山岳崩壊に巻き込まれては打つ手なしです。

Img_9535_1p したがって、この種の被害に際しても対応の迅速さが求められることとなり、特に膨大な作業能力を有する民間土木建築会社による道路復旧能力に頼り民間輸送網の再構築をいち早くはかるほか対処法がありません。すると、その作業が実施され完了するまでの期間の被災者の生存に必要な資材を確保することが自衛隊に求められるでしょう。

Img_7766 当然の話として、大都市や市街地にはそれなりの武士の貯蔵能力がりますので、必ずしも数百万に登る被災地域の物資輸送を民間が輸送でき無い分野においてすべて自衛隊が輸送する必要はないのですが、従来の災害派遣、人命救助や物資輸送による災害派遣という概念のもとでの派遣計画では対応する事は出来ないかもしれません。

Yimg_4793 なにより、東名高速、名神高速、新名神、東名阪といった道路網も直下型地震の被害地域に入ることで、本州最峡部の寸断という地震被害を想定しますと、陸上交通網が制約されるため、実質的に島嶼部防衛のような状況に準じた状況が発生し、不整地突破能力や空輸と海上輸送能力を充実させる必要が出てきます。

Bimg_5062 特に海上輸送能力について、過去の災害派遣において既存の輸送艦勢力では海上輸送能力が不足することは自明であるため、輸送艦と、特に輸送艇や揚陸艇のようなきめ細かな輸送能力の整備、そして揚陸の他に例えば陸上における武力攻撃事態などでの大規模物資戦略輸送を船舶により行える能力を整備するなどし、海上機動力を強化せねばなりません。

Img_8121 特に自衛隊として、整備する防衛力が災害派遣に転用する際、どの程度の輸送能力を発揮することが出来るかの数値目標を明示する必要性を同時に示していて、更に防災行政の一環としてその輸送力が防災上必要な水準であるのか、自治体や行政としてどの程度、自衛隊でなければ輸送できない任務が、どの程度の期間に渡り存在するのかも明示されるべきでしょう。

Himg_6325 防衛省にとり第一の任務は防衛であり、防災は副次的な任務であるため、割ける予算などには上限がある、という指摘もあるでしょうが、併せて自衛隊統合演習や協同転地演習では自衛隊の輸送能力が充分すぎる、という指摘よりはむしろ不足している、という印象があり、災害と共に自衛隊としてどの程度の機動力を展開するのか、情報収集はどうするのか、通信などの基盤をどう構築するか、考えるべきもの。

Img_7507 輸送、実はこの任務ですが、非常に重要である半面、陸海空は統合運用しなければ輸送能力を整備し発揮できない反面、例えば陸上自衛隊が一定水準の部隊の海上輸送能力と空輸能力を求めたとしても、海上自衛隊が輸送艦に、航空自衛隊が輸送機に回す事の出来る予算には限界があり、加えて輸送機等は自前での輸送需要に応える必要もあるため、有事の際には輸送機の取り合いとなる可能性さえあるほど。

Biimg_2793 例えば、陸上自衛隊の輸送に活躍するチャーター高速輸送船等を例に挙げれば、あれを自衛隊が装備すればよいのに、という声がある半面、膨大な燃料費と運用維持費用を輸送単能で他の装備体系とも適合せず、護衛も自衛も難しいものを陸海空何処が分担するのか、という単純ながら最も切実な問題を解決できないため、現実味を帯びるに至りません。 

Hbimg_7298 この問題は、安易に自衛隊の輸送力不足を背景として空輸能力と海上輸送能力の強化を指摘するばかりではあると批判されるでしょうが、現時点での災害派遣は想定される被害ではなく、自衛隊が保有する装備を最大限活用し救援する、という水準を出るものでは必ずしもない、という点に難点がある、と考えるところ。

Img_6672 想定脅威、という部分になるのですが、例えば防衛計画では想定脅威に基づき自衛隊は防衛力を整備しています。そして阪神大震災や東日本大震災に伊勢湾台風といった過去の地震や台風被害などは自衛隊の持つ能力が、武力攻撃事態を想定し整備された防衛力の装備品、その範囲内で対応できるものだった、というもの。

Img_4815 問題は、歴史地震が示す脅威は自衛隊の防衛力を持って対応したとしても、その能力の限界を超えている被害を及ぼすのではないか、という部分にあります。そのため、輸送能力を強化することで、歴史地震の再来という想定脅威に対応する観点から、自衛隊を強化するという視点を提示してみました。

Nimg_0704 こうした指摘に対しては単に災害派遣にかこつけて自衛隊の強化をめざしているだけではないのか、巨大地震への対応を念頭に自衛隊の後方支援体系における最大の問題点を解決しようとしているだけではないのか、という指摘もあるかもしれませんが、輸送不足は本質的に変わりません。

Cimg_7933 輸送の量だけを明示したとしても、物資の管理能力や情報の一元化など、補給と輸送は連関しているモノでありながらも同一ものもではないため、輸送力さえ確保すればすべて解決、とは当然ならないのですけれども、一にも二にも輸送力を確保しなければ、その輸送力を活用したものとする事は出来ず、この点の理解が必要でしょう。

Bimg_7289 非常時の輸送能力のほか、野戦救命救急能力や不整地突破能力など、防災に必要とされるこのほかの能力は、消防警察や行政防災機構に整備するには手に余る装備ですが、逆に自己完結の能力講師を求められる軍事機構であるからこそ保持と整備に正当性が当てはまる分野でもある。

Gimg_9840輸送力不足は、南西諸島有事と以前扱った八重山地震型の沖縄トラフ地震の部分で重複するものであり、その他の統合輸送能力はこの天正地震による本州分断という可能性に対して求められるものと、他の有事を想定したものとも重ねることは可能です。

Img_5449a こうしたこともあり得る、という側面の下で、もちろん、過剰な防衛力整備は財政を直撃しますので、行き過ぎはあってはならないものではあるのですが、後方支援と輸送力の整備への統合運用や、一歩進んだ統合整備、輸送能力についての需要はどの程度想定されるのか、考える価値はあるやもしれません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

 

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フィリピン国際緊急援助統合任務部隊を設置、司令官に第4護衛隊群司令佐藤壽紀海将補

2013-11-19 22:36:04 | 防災・災害派遣

◆陸海空自衛隊1180名、フィリピン派遣

 政府は台風30号による甚大な被害を受けたフィリピンを支援するため15日、フィリピン国際緊急援助統合任務部隊の編成を自衛隊へ命じました。

Cimg_8895 フィリピン国際緊急援助統合任務部隊司令官は、呉基地の第4護衛隊群司令佐藤壽紀海将補が着任し、部隊は1180名を以て編成、佐藤壽紀海将補はヘリコプター搭載護衛艦いせ、とともにフィリピン方面へ進出し洋上から指揮を執ります。今回の統合任務部隊編制は当初航空機2機と人員50名の派遣規模では対応できない被害を受け増強されました。

Kuramaimg_9052_1 自衛隊では2004年12月26日のスマトラ島沖地震へインド洋大津波スマトラ島国際緊急援助隊へ、ヘリコプター搭載護衛艦くらま、を旗艦として輸送艦くにさき、補給艦ときわ、そしてアラビア海対テロ海上阻止行動給油支援任務の帰途にあった、イージス艦きりしま、など転用し併せ6隻を派遣していますが、部隊派遣規模では今回の派遣の方が大きくなり、過去最大規模となるでしょう。

Img_7046 戦後の自衛隊海外派遣としては史上最大の規模です。派遣部隊はフィリピン国際緊急援助統合任務部隊に加え、政府が大臣直轄部隊としてマニラにおくフィリピン現地運用調整所が協同し、フィリピン政府との調整をフィリピン現地運用調整所が実施し、統合任務部隊が実任務に当たる、ということ。

Aimg_2030 統合任務部隊の編制は、陸上自衛隊の衛生科部隊と航空科部隊より編制される医療航空援助隊、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦と補給艦に輸送艦より編成される海上派遣部隊、航空自衛隊の輸送機を以て編成される空輸隊から編制され、佐藤壽紀司令官へ部隊運用が一元化される。

Timg_8360_0 艦艇は、ヘリコプター搭載護衛艦いせ、輸送艦おおすみ、補給艦とわだ、三隻で、陸上自衛隊の輸送部隊と航空部隊に衛生部隊は東北方面隊より編成され、救援物資輸送と救命活動支援、更に防疫任務にもあたり、東日本大震災において第一線に立った東北方面隊が任務に当たるもよう。

Img_5656i 派遣航空機は、C-130H輸送機7機、KC-767空中給油輸送機2機、U-4多用途支援機1機、CH-47輸送ヘリコプター3機、UH-1多用途ヘリコプター3機の16機で、当初は2機の派遣だった点を踏まえれば機数は実に8倍に増勢されたこととなり、フィリピン空軍の空輸能力よりも高い規模といえます。

Himg_0998 過去の自衛隊海外派遣は、対テロ任務とイラク復興人道派遣の実施部隊と輸送部隊の規模が陸上自衛隊600名と海上自衛隊330名に航空自衛隊200名の1130名でしたので、今回の1160名は自衛隊海外派遣の規模として過去最大規模となります。

Eimg_7246 現地状況は非常に混乱しています。フィリピン政府は米比相互防衛条約などの関係上、外国軍隊の活動を大きく国内法で制限しているため、我が国として勝手に部隊を派遣する事は出来ず、防衛省自衛隊では自衛隊統合演習参加部隊を転用し、待機態勢を維持してきました。

Gimg_2946 その間、被災地ではフィリピン空軍の輸送力不足と完全に破壊されたインフラによりライフラインの復旧はもとより生存物資の供給さえままならず、一部では暴動と掠奪が発生、フィリピン軍は治安維持へ武装した部隊を派遣せざるを得ない状態となっています。現地情勢は万全ではありません。

Img_1923 また、被害地域の状況や犠牲者がどの程度であるのかもフィリピン政府が把握できていない状態であり、米比相互防衛条約によりフィリピン国内での軍事行動の制約が少ない米軍の救援活動でも情勢の厳しさが伝わりますが、自衛隊の任務完遂と無事の帰還を祈願する次第です。

北大路機関:はるな

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新防衛大綱と我が国防衛力の課題④ 多方面同時接近に対応する防空体制の在り方

2013-11-18 23:01:27 | 防衛・安全保障

◆単なるスクラップ&ビルドでの対応に限界

 我が国防空を考える上で、避けて通れない課題が平時における対領空侵犯措置任務の増大への対処です。

Adimg_1585 特に近年の南西方面における対領空侵犯措置任務の増大は爆発的増大という一言を以て説明するほかないほどで、年々増大し、一個飛行隊を基幹とする航空隊での対応は既に限界点を突破、二個飛行隊体制への転換が計画されているものの、それとて充分なものであるとは言い切れません。

Adimg_1339 元来、日本の領空は広大です。欧州の地図に東京京都大阪名古屋をその中心部に置き換えますと、北海道稚内の位置には北欧フィンランドの首都ヘルシンキが、沖縄与那国島の位置には南欧や地中海を飛び越え北アフリカアルジェリアの首都アルジェが来るため、実に冷戦時代の鉄のカーテン以上に日本の領域は長大であるわけです。

Img_6543 もともと広大な領空を有する一方で、我が国周辺国は比較的大きな航空部隊の勢力を有する国があり、冷戦時代においては対する陣営側、今日でも必ずしも軍事的だけでなく政治的に価値観を共有する事は出来ない国を隣国として、現状は広大な領空の防空に当たっているというもの。

Adimg_1950 その広大な領空の防空で現在の沖縄を見ますと具体的には、対領空侵犯措置任務として防空識別圏内への国籍不明機の出現が連続する場合、緊急発進への待機航空機では二方面へ緊急発進したのちには航空機が払底するため、訓練待機の航空機に実弾を搭載し展開しているという実情が伝えられているところ。

Adimg_0157 那覇空港ではこれを示すように旅客機にて誘導路を進む途上のエプロン地区には実弾を搭載した戦闘機が見られ、更に那覇基地以外の航空機が訓練名目で展開している様子は、あたかも冷戦時代、ソ連軍の北方での演習に対し抑止力を強化するために北方機動演習にて一個師団を演習場へ増強した歴史を思い起こさせるほど。

Adimg_2435 こうしたなかで、改めて考えるのは、現在の防空体制の基盤とした戦闘機定数は果たして妥当であるのか、平時における対領空侵犯措置は、現状で空対空ミサイルを使用しての漸減措置は当然採れませんので、主導権は常に相手にあり、こちらは受動的とならざるを得ません。

Adimg_2382 一方で、対領空侵犯措置任務全体の回数が増大しているため、安易に接近回数の少ない航空部隊から引き抜くわけにはいかず、例えば我が国の防空に当たる北部、中部、西部各航空方面隊と南西方面航空混成団のうち、最も緊急発進の回数が少ないのは西部航空方面対ですが、先日発生したロシア爆撃機による領空侵犯事案は西部航空方円隊管区において発生しました。

Adimg_6061 現状の、訓練名目での飛行隊の展開は、事実上部隊配置の再編を強いているものであり、他方、安易にひき抜こうとしても我が国の基地配置は、北方防空の千歳、北方対艦攻撃の三沢、首都防空の百里、日本海北朝鮮対岸の小松、朝鮮半島最寄の築城、南西諸島北部の新田原、南西諸島中部南部の那覇とあり、引き抜く飛行隊がそもそもありません。

Adimg_3188 有事のみを想定するのであれば、戦闘機定数だけでゃ必ずしもなく、戦闘機を効率よく運用し航空優勢確保への絶対主導権を握る早期警戒管制機や、第一線航空基地での作戦能力維持を担保する空輸能力、更には戦闘空中哨戒の持続時間延伸に寄与する空中給油機などの装備が重要となります。

Adimg_2455 しかし、平時だけとなりますと、対領空侵犯措置任務には文字通り戦闘機の数が必要となり、加えて即応性も重要となります。これは有事と反面、資材と物資の消耗戦とはなりにくいのですが、回数が増大すれば器材の消耗にはなってゆくことが対照的と言えるでしょう。

Adimg_8806 もちろん、ほぼ唯一の解決策は1990年代初頭の戦闘機定数350機が現状の270機へ、削減されたことで1990年代初頭の規模の対領空侵犯措置任務を展開できなくなっているのですから、戦闘機を四個飛行隊程度増強することなのですが、財政的というありきたりな理由以外に人員面で対応できるものではありません。

Adimg_9730 しかし、部隊配置の転換のようなスクラップ&ビルドでは現状に対応できないため、戦闘機定数だけであれば、当面の対処としては、一機当たりの搭乗員を機数に対し増勢し、一機当たりの一日の稼働数を増大させる、かつてのイスラエル空軍のような方式が望まれるのですが、機体には構造寿命があり、飛行限界が早まることに繋がりますし、整備要員と器材などの増勢も必要になりますので、やはり人員と器材の問題が大きいでしょう。

Adimg_7419 戦闘機以外の装備を強化することは、当然、有事の置ける作戦能力を強化につながることなのですが、平時における対領空侵犯措置任務は数が必要となります。例えば、空対空戦闘が形式的に可能であるMQ-9無人機のような航空機に平時での一種の戦闘空中哨戒を任せるなどの裏技的な選択肢は無いには無いにしても、これも厳しい。

Adimg_1571 冷戦時代と比較しても、戦闘機定数は削減されたが、一個飛行隊が教育所要へ引き抜かれているため、劇的な縮小ではなく質的に向上している、という反論もあるでしょうが、冷戦時代は超音速練習機が戦闘機戦闘訓練を展開し、有事における補助戦闘機的な運用が期待されていたのに対し、練習機を亜音速機へ統合したため現状の戦闘機転用の必要性が生じ、更に質的向上は我が国だけのものではないため、これは言い分として通用しません。

Adimg_9824 この点で、例えば教育所要のF-15J/DJとF-2Bの二個飛行隊を第一線部隊へ引き戻す場合、従来のT-4練習機では不可能で過去にはT-2練習機が実施していた教育訓練を補う新しい航空機が必要となります。こうなりますと、新しい装備を導入するか、戦闘機定数を考え直すか、となってくるところ。

Adimg_1840 他方で、対領空侵犯措置任務は、そのまま速先頭に展開することは、平時から有事となりますので開戦第一撃を除けば考えにくい、ということを考慮する必要があるでしょう。即ち、そこまでの航空機性能は必要ではない、という部分があります。無論、基地の間隔が国土面積と比較し大きいこともあり、航続距離だけは必要になるのですが。

Adimg_1520 以上の点を踏まえますと、戦闘機定数に限界がきているという一点に対し、更に対領空侵犯措置任務を展開するという面から、必要な性能を絞った航空機を現在の次期戦闘機F-35とともに、ハイローミックスする、という選択肢を、考え、戦闘機定数を再構築する必要があるのかもしれません。

Img_8247_1 この部分で、性能に配慮を行うハイローミックスのロー部分を担う機体は、どういった能力を有事の際に求めるのかで、機種に影響します。例えば、平時の際は動的運用を念頭に後方支援の必要性の低い戦闘機を航空総隊や航空方面隊に直轄させ機動運用するのか、飛行隊として対領空侵犯措置任務の第一線に置くのか、既存の戦闘機との航空団内でのハイローミックスをおこなうのか。

Img_1156 有事の際には航空阻止や近接航空支援や対艦攻撃用途であるのか、転地しての後方での要撃支援に当たるのか、機種選定に影響するでしょうが、併せて同盟国アメリカの運用航空機と連動させ、艦載機や再生機、将来高等練習機の動向とともに考える必要があるでしょう。

北大路機関:はるな

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第五次南スーダンPKO自衛隊派遣部隊、中部方面隊第三師団中心の400名が今週派遣へ

2013-11-17 23:17:53 | 防衛・安全保障

◆任務拡大と共に人員・装備を増強し派遣

 防衛省によれば、南スーダンPKOの第五次派遣部隊を今週末の金曜日、中部国際空港及び伊丹空港より派遣するとのことです。

Pimg_1749 派遣部隊は中部方面隊第三師団を中心として隊長の井川賢一1佐以下に編成され、特に今回派遣される第五次派遣部隊の活動開始と共に自衛隊の南スーダンPKO任務活動範囲が拡大されるため、人員400名と増強され、併せて装備なども強化して派遣される、とのこと。

Pimg_5023 派遣部隊は散開に分け派遣されることとなっており、22日金曜日に先発隊100名が中部空港より南スーダンジュバ空港へ出発し、現地には23日土曜日に到着します。続いて主力第一波180名が11月30日に伊丹空港をチャーター機にて出発して12月1日に到着します。

Pimg_4974 主力第二波は120名を以て12月18日に同じく伊丹空港よりチャーター機にて出発し、19日にはジュバ空港へ到着します。なお、拡大される任務に伴う派遣車両などの装備の輸送は既に開始されており、航空輸送にて去る14日木曜日に関西国際空港より、そして船舶輸送車両や装備は昨日16日に神戸港を出港しました。

Pimg_5671 現在派遣されている西部方面隊第2施設群主力の梅本哲男1佐指揮下の第四次派遣隊430名は、11月23日から順次福岡空港へ帰国の途につき、先発隊は24日に、主力第一波120名は12月2日に、主力第二波180名は12月20日に、それぞれ福岡空港へ戻ります。

Pimg_1370 このほか、派遣部隊の編成も改編され、現在の現地支援調整所と派遣施設隊という部隊編制は第五次派遣部隊より現地支援調整所の指揮機能や情報収集機能などの機能を派遣施設隊本部に統合することとなっており、これにより必要な支援を円滑に実施することが可能となるでしょう。

Pimg_1374 なお、防衛省では、ソマリア沖海賊対処任務や南スーダンPKO,更には北アフリカアルジェリアでの邦人企業襲撃事案等を受け、現在海賊対処航空部隊の展開しているジブチ航空拠点へ恒久的施設と共にアフリカでの自衛隊活動拠点の設営を検討しているとの報道もあり、将来的に、自衛隊アフリカ方面統合任務部隊、というような部隊が配置される可能性もあるやもしれません。

北大路機関:はるな

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榛名防衛備忘録:第1機械化大隊編成の参考点と戦車の陸上装備体系における位置づけ

2013-11-16 19:06:38 | 防衛・安全保障

◆想定脅威が減退しなければ、必要な打撃力は不変
 陸上自衛隊は冷戦時代に部隊展開密度の不足を補う形で大量のヘリコプターを導入しました。そして今日、戦車縮減による機動打撃力の不足を補うべく、より強力な対戦車誘導弾や装輪装甲車体系を構築へ着手しつつあります。
Gimg_2747 第一機械化大隊を参考とした機械化部隊を広範に編成するには1100両の戦車が必要となります。これから戦車がさらに減るという検討もあるのにチミは何をいっとるだねエ、というような批判もあるでしょうが、機動戦闘車と中距離多目的誘導弾の大量配備が開始され、小銃班にも大量に対戦車ミサイルが配備される現状では、そこまで現実味があるとは当方も思ってはいません。反面、元々は1995年防衛大綱改訂以降、初めて1200両に達した戦車数を削減する方向が明示された一方、戦車の代替装備が延々と調達された実情を見ますと、逆にこれでいいのか、という疑問符が本稿を起稿へ向かわせる、その起点となりました。
Gimg_5503 元来、戦車はその必要性の低下が戦車数の削減へ向かう根拠として戦車定数を900両に削減する方向が示され、その後徐々に削減されるに至ったのですが、脅威想定と陸上自衛隊に求められる火力投射の要請、脅威評価と求められる打撃力が換わらなかったため、戦車を削減したとしても普通科中隊の無反動砲小隊を対戦車小隊へ改編、小銃班の無反動砲を軽対戦車誘導弾へ置き換え、師団対戦車隊を廃止し一部連隊への対戦車中隊新編、ミサイルで対応できない目標に対する機動戦闘車の開発、軽対戦車誘導弾を補完するべく従来小銃擲弾以上の小銃擲弾の配備、更に無反動砲を多用途ガンとして再配備するなど、戦車を減らした分、これを補うべく増えた装備の方が多くなっています。
Fimg_6004 もとより戦車を必要なだけ揃えていれば此処まで装備体系は複雑化しなかったのではないか、と考えるところ。現状の膨大な種類の対戦車誘導弾の種類を後方支援の面から批判する声もあるかもしれませんが、当方も、例えば連隊戦闘団に戦車中隊を付与できる確実な戦車定数を確保できれば、中距離多目的誘導弾を全ての普通科中隊に配備する必要は無く、旅団の火力不足を補う装備や、どうしても必要ならば師団対戦車隊を創設して配備すれば、元々従来の中MATに近い射程を有する軽対戦車誘導弾が配備されているのだから、必要ないと考えます。10式戦車が充分な数を有するならば、機動戦闘車の必要性はそこまで高くありません。
Gimg_9378 また、10式戦車は50両、三か年一括取得契約を結ぶことが出来れば、7億円まで一両あたりの生産費用を抑えることが出来ると事業評価されたことがありますが、年間10両前後を単年度契約した場合生産計画を建てることが出来ないため、単価が13億円程度まで上がることとなります。これを中期防の五年単位で見た場合、少々大雑把に100両を調達した場合の取得費用は五年間で700億円となります。しかし、単年度ごとに少数生産を継続した場合は五年間で50両を650億円で調達することとなってしまうわけです。
Img_0070 勿論当然の前提として、戦車さえあれば何とかなる、という安易な考えではなく、戦車が無くともこれとあれとそれにどれが必要、という考えに対し疑問符を提示するところです。もっとも、既に開発された装備については考えねばならないとも思うのですが。大隊規模の戦車の打撃力を中隊規模の戦車、中隊規模の対戦車ミサイル、中隊規模の機動戦闘車、その他装備で補おうとしていることが結果的に装備に関する予算面での圧迫を大きくしている印象があり、それならば、一長一短御各種装備を揃え装備年鑑を多種多様な各種装備で豊かに飾るよりは、必要な数の戦車を揃える方が先決で、その分戦車により補える装備を減らすことが必要なのではないか、という考えに至りました。
Img_2603 また、日本に敵が上陸する可能性が無い、と考え、周辺国が大量の揚陸艦を建造し、水陸両用装甲車両の開発を進めている実情、無人の島嶼部以外に島嶼部の周辺に或る離島に対する攻撃が為される可能性が高まっている実情を、納得させる論拠と共に提示し戦車は不要、機械化部隊の上陸は無い、と現実的に納得することが出来る論拠というものが見当たりません。加えて、近年、大口径機関砲を搭載する装甲戦闘車の普及が始まり、特に従来は徹甲弾による対装甲車戦闘に用いられていた機関砲弾はそのまま調整破片弾が開発されることで露出歩兵に対する根本的な脅威となっています。これに対処するには長射程の対戦車ミサイルに、装甲戦闘車か戦車以外にはありません。
Img_2327 しかし、近年、各国の装甲戦闘車は元来開発された背景が戦場タクシーの自衛戦闘力を強化するという範疇であったことを忘れたかのように、あたかも末期のドイツ四号戦車状態ともいうべき、火力の強化、装甲防御力の強化、戦車に依存しない装甲車体系へと邁進しています。結果的に、コストは跳ね上がるべきで、それならばイスラエル軍のプーマ重装甲車のように高価な火器管制装置等の装備体系を省いたうえで必要な火力支援は戦車が行う、という運用体系、これは即ち戦車ありきの機械化部隊、という体制の方が、コスト面では逆に抑えられるものではないか、と考えるところ。
Eimg_6687 この実情は米軍でも深刻で、例えばストライカー装甲車を大量配備し、ストライカー歩兵装甲車には遠隔操作銃塔RWSに12.7mm重機関銃を装備、火力支援にストライカー機動砲として105mm砲を搭載した装甲機動砲を旅団あたり30両、当初計画では65両を整備する方針の下、戦車に依存しない装備体系の構築を目指しましたが、結局火力不足と機動砲の運用限界が重なり、驚くべきことに米陸軍は12.7mm重機関銃搭載のRWSを30mmテレスコープ弾機関砲へ置き換え、火力を強化する方策を示しています。結局、戦車の真似事が出来る車両は戦車にはなり得なかったわけで、部隊装備体系をめちゃくちゃにしてしまいました。無論、ストライカーの運用は機動性最重視ですので、戦車との適合性は元々考えられなかったのかもしれませんが、戦車不要にこだわり過ぎ、その労力を戦車の戦略機動に充てていれば良かったものを忌避したため、コスト面では大きくなった。
Fsimg_7542 更にコスト面を突き詰めますと、戦車にしろ装甲戦闘車にしろ、装備を構成する要素で最も比重が大きく成長している部分は火器管制装置です。暗視装置に弾道コンピュータを加え情報伝送装置と組み合わせることでどうしても大きくなり、例えばイスラエルのメルカヴァMkⅢはBIZ火器管制装置を搭載しただけのメルカヴァMkⅢ-BIZで生産費用が三割増大した、という事例、元来装軌式装甲車よりも安価にまとめられるという装輪装甲車が高度な火器管制装置を搭載した場合の費用面ではフランスのVBCI装輪装甲戦闘車が邦貨換算で五億円以上を要し、隣国スペインの装軌式装甲戦闘車であるアスコッド-ピサロ装甲戦闘車よりも高コストになっている実情などがありました。
Img_2653 結果、戦車一個中隊と装甲車二個中隊か、装甲戦闘車三個中隊か、どちらが高コストなのかを比較した場合、機械化大隊編制の場合は戦車は量産が進んだと仮定して一個中隊14両を98億円、装甲車二個中隊28両を28億円として126億円で一個大隊を編成できるのですが、装甲戦闘車を三個中隊揃えますと42両の装甲戦闘車を揃えるには210億円が必要となります。もちろん、装甲戦闘車だけで部隊を編成したほうが補給面では単一種類に特化できますので維持と後方支援の費用は有利でしょうが、それにしても取得費用を大隊あたり126億円か210億円か、と問われたらば、流石に後方支援の部分での費用を抑える強調を行っても岩塊があるでしょう。

北大路機関:はるな

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平成二十五年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.11.17)

2013-11-15 23:05:40 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 文字通り冬日の締め付けるような寒さが秋を飛び越した今日この頃、皆様風邪などお召しになられず過せているところでしょうか。

Gimg_1049 今週末ですが、芦屋基地航空祭と福知山駐屯地祭が行われます。芦屋基地は神戸隣の高級住宅街のような響きですが、場所は福岡県、芦屋基地は先月末に行われた築城基地航空祭に続く福岡県の航空祭が今週末行われます。先月末の築城基地航空祭が来場者8万、芦屋基地はどのくらいあつまるのか。

Gimg_1460_1 芦屋基地には芦屋レッドとよばれるT-4練習機を装備する第13飛行教育団や芦屋救難隊が展開する基地で、東日本大震災以降松島基地の基地機能回復までブルーインパルスが展開していた基地としても知られます。今年度航空祭もブルーインパルスが参加するもよう。

Gimg_25170 福知山駐屯地祭が日曜日に行われます。福知山駐屯地には山岳戦闘で知られ迫撃砲の練度が高いとして有名な第三師団隷下の第七普通科連隊が駐屯しています。丹波山中を越えた福知山に駐屯していますが、京都府はこの第七普通科連隊の警備管区で、大規模災害では福知山から部隊が展開します。

Gimg_2002 高機動車、軽装甲機動車、重迫撃砲、対戦車誘導弾を駆使し様々な展示が有名です。なお、例年、市街パレードが行われることで有名ですが、今年度福知山駐屯地祭では、福知山市内での台風18号災害と花火大会事故の関係上、今年度は市街パレードを自粛するとのことでした。

Gimg_0134 海上自衛隊艦艇一般公開では、四国の松山港にて訓練支援艦てんりゅう一般公開が日曜日に行われます。伊予鉄道みつ駅近くの三津浜フェリーターミナル近くの岸壁に入港予定で、てんりゅう一般公開のほかに陸上自衛隊装備品展示なども予定されています。訓練支援艦は、標的機としての無人機等、意外な見どころも。

Gimg_4466 てんりゅう、は呉基地の第一海上訓練支援隊の所属艦です。一般公開は日曜日のみ、0900から1100時と1300時から1630時まで一般公開が予定されています。見学に当たっての特別な手続きは必要ありませんので、行けば見れるのですが、乗艦時間は見学時間終了30分前までですので、ご注意ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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第17次ソマリア沖海賊対処任務部隊呉出航とフィリピンレイテ島国際緊急援助隊派遣準備

2013-11-14 23:17:59 | 防衛・安全保障

◆海賊対処任務派遣と共に艦艇フィリピン派遣準備

 呉基地よりソマリア沖海賊対処任務部隊が派遣され、続いてフィリピンレイテ島国際緊急任務部隊派遣の準備が進められています。

Pimg_3913 昨日11月13日、呉基地より第4護衛隊司令田尻裕昭1佐を指揮官とする第17次派遣海賊対処行動水上部隊が出港しました。派遣部隊は第4護衛隊隷下の護衛艦さみだれ、さざなみ、の二隻で、むらさめ型護衛艦と、たかなみ型護衛艦、航続距離が大きく共に呉基地を母港としています。

Pimg_8762 ソマリア沖海賊対処任務も今回で第17次派遣となりました。派遣部隊各艦は、さざなみ艦長林泰弘2佐以下、乗員185名と、さみだれ艦長斉藤貴2佐以下、乗員185名、ここに第四護衛隊司令部要員30名を加えた隊員400名と海上保安官8名が派遣されます。

Pimg_2946 現在、ソマリア沖海賊対処任務は、二隻の護衛艦による船団護衛方式を採っていた従来の対処行動から、護衛艦一隻を船団護衛任務へ充当し、もう一隻をソマリア海賊対処への各国艦隊に参加し海賊哨戒任務に充てる方式を採っています。これは海賊護衛要請の減少にともなうもの、とのこと。

Pimg_7607 ただ、海賊被害は沈静化しているのではなく、海賊の行動範囲拡大に伴う護衛海域の護衛要請の縮小が反映されているとのことで、一説には海賊の行為主体が多様化していることとされ、従来の武装漁民の延長線上にある海賊とは転換しているため、今なお予断を許さない、というもよう。

Pimg_7485 現在ソマリアでは第7護衛隊司令清水博1佐指揮下の護衛艦ありあけ、護衛艦せとぎり、の二隻が任務中で、さみだれ、さざなみ、はソマリア沖アデン湾において合流し任務を引継ぎします。このため、現時点では四隻の護衛艦が海賊対処任務に展開していることとなります。

Pimg_4607 また、呉基地ではフィリピンでの台風30号被害による大被害に対し、自衛隊フィリピン緊急人道支援部隊の派遣準備が進められています。なお、防衛省発表では自衛官の派遣は決定しておらず、現在派遣準備中という段階であり正式に派遣命令は発令されていません。

Pimg_7329 防衛省によれば、フィリピン派遣準備として現在九州沖縄で展開中の自衛隊統合演習参加部隊のうち、ヘリコプター搭載護衛艦いせ、輸送艦おおすみ、は参加部隊より離脱し、フィリピン派遣準備を開始しました。このほか、補給艦とわだ、の派遣準備が行われているとのこと。三隻とも呉基地が母港となっています。

Pimg_9730 フィリピンレイテ島での被害は、フィリピン政府の救助の遅れにより非常に危機的な状況となっていますが、ヘリコプター搭載護衛艦による空輸支援と輸送艦による沿岸部への物資輸送に加え、補給艦の造水能力や医療能力と補給能力は極めて厳しい状況にあるレイテ島での被災者支援に寄与するでしょう。

Nimg_8149 現在フィリピン政府は、空軍のC-130輸送機2機とヘリコプター32機、艦艇20隻を以て救助を行うと共にセブ及びた黒番へ国際支援受け入れ調整所を設置しました。フィリピン国家災害リスク削減管理委員会の発表では被災者は970万で、ライフラインと物流が完全に途絶しているため、文字通り生死の危険に曝されています。

Himg_7177 防衛省は12日、2名の先遣隊を民間機により派遣すると共に小牧基地よりKC-767空中給油輸送機により先遣隊本隊48名を13日に派遣しました。上記の艦艇部隊は派遣準備中ですが、これにより自衛隊のフィリピン派遣部隊の人員規模は1000名規模となります。

北大路機関:はるな

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榛名防衛備忘録:第1機械化大隊編制を参考とした将来の陸上自衛隊と連隊戦闘団

2013-11-13 23:48:39 | 防衛・安全保障

◆理想は二個機械化大隊基幹
 機械化大隊を中心とした編成を師団と旅団へ導入、過去二回に渡りその私案を提示してみました。

Mimg_2070 理想としては、前回最後の方に紹介した“二つの機械化大隊を隷下に置く師団普通科連隊編成とした案”で、本部管理中隊・軽装甲偵察中隊・第一機械化大隊・第二機械化大隊・火力中隊、という編制ですが、これをやってしまいますと、問題点が生じます。苦肉の策の解決策で一個機械化大隊を基幹とする編成なのですが、後述する問題を解決すれば、軽装甲偵察中隊は軽装甲機動車基幹の中隊で装甲車は21両~27両、機械化大隊を構成する装甲車は28両ですので、前者の編成が理想ではあります。
Gimg_1141 それでは、色々試行錯誤し、考えがまとまらない中ではありますが、普通科連隊戦闘団の位置づけを考えてみましょう。普通科連隊戦闘団は、普通科連隊に対し従来、戦車中隊と特科大隊、施設中隊と高射特科小隊、通信小隊と救急車班を上級司令部より配備を受けることで2000名規模の戦闘団を編成する、というものでした。現在は戦車定数の削減により戦車中隊が戦車小隊となり、特科大隊も一部師団では特科中隊となっています。
Iimg_2832 戦車中隊を編成に置く機械化大隊は、師団戦車大隊という運用の在り方を改め、想定しているため、特科中隊と施設中隊に高射特科小隊と通信小隊を置く編制が考えられるのですが、直掩火力として現在の普通科連隊には重迫撃砲中隊が置かれています。機械化大隊基幹編成連隊の下では本部管理中隊に一定水準の火力を置くという提示を前回までに行いましたが、このほかの編成はどう考えるべきでしょうか。
Himg_0855 まず、考え方は二通りあり、普通科連隊としての編成を維持するか、諸職種連合の連隊、という単位とするか、ということ。前者は戦車部隊を常設として普通科連隊へ配属させる方式は、第一機械化大隊の滝ヶ原駐屯地のような演習場に近い駐屯地ばかりではありませんので、戦車大隊を師団隷下に起き、平時は戦車大隊に集中運用させ、必要に応じて組み込む方式で、現在の連隊戦闘団方式の延長線上に置くという考え方があり得ます。この場合普通科連隊は、本部管理中隊、軽装甲機動車中隊、装輪装甲車中隊、装輪装甲車中隊、火力中隊、という編制になります。いわば、旅団普通科連隊に重迫撃砲などを含む火力中隊を付与した装備体系で単純に装甲化しただけ、というところでしょうか。
Oimg_5646 戦闘団編成を組む場合、旅団と異なり師団は施設大隊をゆうしていますので、施設中隊を隷下に置くことが可能となります。もちろん、施設中隊とはいっても師団施設大隊には戦闘工兵としての装甲ドーザーや地雷原処理車等の装備が年々不足しているため方面隊直轄部隊へ移管されている趨勢があり、この点を改め、師団施設は戦闘工兵、という原点に立ち返らなければこの方式は意味がありません、建設工兵としての任務は、他に優先するものがありますので、そちらを重視しなければなりません。
Img_4357 施設中隊ですが、まず、基幹となる機械化大隊は、従来の普通科連隊よりも相当小振りとなっているため、連隊に一個施設中隊を置く必要はあるのか、と問われれば、それよりも本部管理中隊の施設作業小隊の手に余る施設作業を、施設装甲車というような、装甲車を基本として排土板や地雷処理装置にクレーンアタッチメントを搭載した装備を数両、小隊単位で配備する施設小隊分遣という選択肢を採り、逆に師団施設大隊は連隊へ送る中隊を戦闘工兵としたうえで、戦闘工兵よりは建設工兵に重点を置き、もちろん第一線施設作業を想定した編成であるべきですが、対応するべきでしょう。

Img_90100 特科中隊ですが、野砲6門程度を運用すると共に、特科中隊には観測小隊を、中隊規模で運用可能な小型無人機や、現用の対砲レーダ装置のような大きな装備ではなく、探知距離は短い物であっても、標定できる能力を小隊規模で付与させ、いちおう全般火力支援程では無い範囲であっても、火砲の射程では全般支援に用いる事の出来る155mm榴弾砲を装備するのですから、対砲兵戦闘を展開できる規模でなければなりません。
Img_4344 後方支援連隊ですが、普通科直接支援中隊というよりは、戦車直接支援小隊と特科直接支援小隊を併せ、直接支援大隊を編成し、適宜連隊の隷下に置くことが必要となります。第一線列線整備に特化する編成で、平時は中隊毎に各駐屯地へ分散運用しますが、連隊戦闘団編成時には大隊編制として、連隊長の隷下での第四幕僚として補佐に当たることとなります。
Mimg_2360 言い換えれば、単純な普通科連隊ではなく、諸職種連合としての連隊、という概念への転換であり、連隊戦闘団の常設に近い概念が、今回提示した連隊、というもの、こういえるかもしれません。他方、実質、機械化大隊と軽装甲大隊を基幹とした連隊は、平時は三個普通科中隊が二個装甲中隊と一個軽装甲中隊を以て旅団普通科連隊のような普通科連隊を平時構築し、戦車を適宜配備するという伝統的な普通科連隊の概念の延長上に総合的な機械化を行う、という概念にもなるのですが。
Gdimg_1098 連隊、という諸職種連合部隊、これは職種毎の基幹を中隊として、一種の混成団のような扱いとして連隊を置く、こういう思想です。かなり乱暴な案で、普通科連隊であるべきかそれ以外の部隊を戦域単位の任務に当たる連隊に転換させる、というもの。連隊として管区毎に一つの自己完結の部隊装備体系を維持させることで、即応性を高める。
Eimg_2547 これは逆に言えば難しく、戦車を広範に配備しつつも師団戦車大隊を置いて集中運用する訓練体系を構築しておかなければ、全ての連隊駐屯地に戦車を配置した場合、戦車の訓練地に駐屯地が隣接しているとは必ずしも限らないため、訓練水準の低下に繋がりがない、という問題もあります。それならば、戦車中隊の他に戦車大隊隷下に数個機動砲中隊を置いて、機動砲中隊は戦車部隊駐屯地から距離を隔てた連隊へ素早く合流、という方式も考えられるかもしれませんが、それでは地域により編成がちぐはぐとなってしまい意味がありません。
Gimg_0168_1 対案は過去に、中隊の強化を提示しています。中隊戦闘団として従来の普通科連隊の編成を重視しつつ、普通科中隊隷下の対戦車小隊を機動砲小隊へ一部改編するとともに、普通科中隊の対戦車小隊に配備されるべき中距離多目的誘導弾を普通科連隊直轄の対戦車中隊を編成し集中配備し、逆に普通科中隊は軽装甲機動車や四輪駆動方式の機動装甲車を以て編成し、小隊規模の機動戦闘車と中迫撃砲により近接戦闘に特化する案を提示しています。
Img_8454 日本の普通科中隊は、迫撃砲小隊と対戦車小隊を持つ編成で、定員は200名程度と諸外国の歩兵中隊が100名規模の部隊が多い中で小振りの大隊と言える水準の装備を有しています。対案としては、この中隊を基本として大隊の代用となるような編制を目指す方策はあり得るかもしれません。逆にいうならば、中隊隷下に対戦車小隊と迫撃砲小隊を置くことは小銃手を減らすこととなりますので、もう少し規模を起きくし、その隷下に小型の諸外国並みという人員規模の中隊を置き、大隊として大隊戦闘団を普通科連隊に置く、その中核として現行の中隊の編成を大切にする、という選択肢もあり得るかもしれません。
Img_3747 ここまで考えたうえで、しかし駄目だ、と思い知らされるのは戦車の不足です。冒頭の二個機械化大隊と軽装甲偵察中隊を基幹とする三単位編成の編成を行うには、二個機械化大隊を構成するには当然二個戦車中隊が必要となり、それでは一個普通科連隊を支援するために一個戦車大隊規模の戦車が必要になってしまいます。理想ではあっても、一個師団を三個連隊で編成する場合、機械化大隊六個の編成に六個戦車中隊を置くという編制になりますので、全ての師団に戦車連隊が必要になってしまいます。
Img_3727 旅団を三個機械化大隊基幹とすれば三個戦車中隊を有する戦車大隊が必要に、師団には五個乃至六個戦車中隊が必要になります。これは、例えば中部方面隊だけで戦車所要数が230両前後となってしまい、陸上自衛隊としては機動戦闘車を一部の戦車の代用として装備したとしてもとてもではありませんが全体でとてもではありませんが不足は否めないでしょう。
Gimg_2330 逆に指摘するならば、戦車を確保することが出来ないのであれば普通科中隊を念頭として普通科中隊を強化する方策以外、選択肢は無くなりますので、戦車があれば普通科連隊の人員を思い切って大きく削った機械化大隊を基幹とする案を、戦車が確保できないのであれば普通科部隊を削るのでゃなく中隊を基本として強化する案を、共に比較するしかない、選択肢を採り用が無くなる、こういえるのかもしれません。
Fs_img_8966 戦車ですが、現在、本州九州の師団戦車大隊は二個中隊への縮小改編が進められており、とてもではありませんが、そこに師団戦車大隊を五個中隊基幹へ、というような話は現実味を持ちません。上記の数字に従えば、機甲師団所要を200両とした場合で、各方面隊の戦車需要を列挙しますと北部方面隊は354両/382両28、東北方面隊は140両/168両、東部方面隊は112両/126両、中部方面隊が222両/250両、西部方面隊で182両/210両、必要になります。
Img_2583 戦車数はこの場合、教育所要を除いた場合でも1010両か1136両が必要となってしまう。こう書いてみた一方ですが、しかし冷戦末期の最盛期の陸上自衛隊戦車数は1200両を有していたわけで、1200両、冷戦後初期の戦車定数が900両、この数を見ますと、1136両の戦車数、そこまで非現実的に見えてこないようにも、と思いつつ、現行定数は400両、という実情を踏まえると、やはり無理か、とも。
Yimg_0025 更に加えますと、もっと装甲車が必要となります。一個旅団だけで必要な装甲車は普通科連隊所要のみで108両必要となり、96式装輪装甲車で100億円前後の取得費用が必要に、師団普通科連隊の場合は一個大隊基幹で36両と二個大隊基幹の場合で64両必要となります。装甲車を四輪駆動の安価な軽装甲車や機動装甲車として数を揃える選択肢もありますが、この場合、戦車に随伴できる不整地突破能力は期待できない。
Kimg_0911 ただ、自衛隊版ペントミックと仮称して師団を五個大隊基幹連隊編制、旅団を三個大隊基幹連隊編成とすれば、単純計算で機械化大隊を58個創設でき、二個機械化大隊編制を念頭とする師団三個連隊基幹体制と旅団三個大隊体制を採用した場合66個大隊を置けるわけですから、有事の際に機械化大隊ならば輸送艦での輸送が可能、機械化大隊は今日的には情報共有による共同交戦能力により分散していても上級部隊と情報面で連接し集合分散と補給維持をかなり効率的に進められますので、十年二十年単位での部隊創設計画として、選択肢としてはあり得るのではないか、と考える次第です。
Kfile0807 他方、それでは師団と旅団の位置づけの違いをどう考えるのか、という部分が生じてきます。もともと、陸上自衛隊が1962年に師団制度を導入する以前は師団に当たる管区隊を四個置き、定員を1万5000名として第一管区隊が首都圏東北南部含む東日本と中部日本を管区、第二管区隊が北海道、第三管区隊は西日本及び東海、第四管区隊は九州を管区としていました、続いて第五管区隊と第六管区隊が創設され、これを補うべく、管区を持たない機動運用部隊として、道南地区、九州南部地区、青函地区、中京地区、以上に混成団を置き、保管していたわけで、この区分が今日の師団編制の元となりました。
Aimg_9773 これが管区隊の警備管区を縮小し、混成団を機動運用から警備管区を有する編成に移行し、師団制度が創設されたのが1962年、その後旅団制度が加えられ今日に至るわけです。即ち、現行の旅団と師団の混在一体は、機動運用か地域防護かの流れの過渡期の産物であり、これは上記機械化大隊の編制を提示したうえでも解決策とはなり得ません。
Nimg_1766 悩ましいところですが、それならば、二個機械化大隊基幹の編成普通科連隊を基幹とする三単位師団を従来師団と比較して広い管区を防護する大型化した師団編制として、陸上自衛隊の師団管区を再度線引きし、方面隊管区も再編、例えば東部方面総監部を隷下に中央即応集団と第一師団を編入し中央即応集団司令部機能を方面総監部に置き換えることで大臣直轄部隊化し、東部方面隊第12旅団管区を東北方面隊管区に編入、その上で首都の大臣直轄部隊を東部方面隊と呼称させ、実質は北部・東北・中部・西部の方面隊とし、線引きをやり直す、という編制もあり得るのでしょうか。
Img_0290 ほか、後日詳述しようと考えているのですが、方面隊隷下の方面航空隊に方面普通科連隊を付与し、方面対舟艇対戦車隊を隷下に配属させることで、方面航空混成団/方面空中機動旅団という編制を導入、師団と方面空中機動旅団の関係をかつての管区隊と混成団の関係に近い運用も方策として検討されるべきと考えています。方円航空隊は対戦車ヘリコプター隊に多用途ヘリコプター隊と一部は少数の輸送ヘリコプターを輸していますので、常設の普通科連隊と編成することで空中機動旅団として運用させることも可能です。管区隊と混成団の関係をこの切り口洗考える事も出来ないわけではありません。この論点を飛躍させ、北部方面隊の第11旅団、東北方面隊の第6師団、中部方面隊の第13旅団、西部方面隊の第8師団、以上を方面航空隊と統合し、もちろん、上記の手法とは連隊数などで違いが生じるでしょうが、管区を持たない軽量な空中機動旅団とし、その分の余剰人員を以て機械化大隊を強化した大型師団を置く、という方策もあり得るでしょう。
Img_9381 他方で、一旦戦車師団である第七師団以外の全ての師団を旅団として改編し、これを三個旅団を以て管区隊型の大型師団へ改編し、方面隊隷下に一個師団、方面隊直轄の部隊と共に運用する方策を将来的には模索するべき、とも考えていて、過去の記事にも大型師団の導入へと提案していますが、それならばこの機械化大隊という概念が矛盾するかというと、ある程度矛盾しないようにしますと、逆に基幹部隊を旅団や師団と地域ごとに雑多な編成の普通科連隊を採るではなく、一時機械化大隊をという編制を第一にとった上でこれに増強部隊を付し連隊を置き、将来の改編に備える、という選択肢も採ることが出来るでしょう。
Img_7517 ううむ、師団編成や旅団との編成は様々な柵があり、体系だって示すにはかなり深い論議を段階ごとに記さなければなりません。いろいろと議論を出してみたのですが、当初の安易に戦車を減らすよりは、という本筋から少々話が戦略単位の在り方へとずれてしまったこともありますので、散開で完結する予定でしたが、まず、この部分だけを次回最終回、多分最終回、として掲載してみようと思います。

北大路機関:はるな

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榛名防衛備忘録:第一機械化大隊と普通科連隊、機械化大隊を基幹の師団と旅団を考える

2013-11-12 23:33:40 | 防衛・安全保障

◆戦車と普通科部隊の関係
 第一機械化大隊、大隊本部、第一普通科中隊、第二普通科中隊、戦車中隊、非常にコンパクトな編成の部隊ですが、打撃力と機動力の面で理想な部隊である、という事を前回紹介しました。
Fimg_6347 ここで思い出すのはこのコンパクトで小回りの利く部隊を基幹編成として師団を創設できないか、という事です。もともと陸上自衛隊は師団制度を導入する前に米軍の歩兵師団を軽装備化した編成の管区隊を地域防衛の主力としていましたが、その後の部隊愛編で誕生したのが小型師団を基幹とするもので、陸上自衛隊の普通科中隊を基幹とした小規模な人員を以て編成される普通科連隊、これを基幹部隊としたのが現在の元となった師団編制です。師団の人員数は少ないままですので、それならば機械化大隊を配備して機動力と打撃力を確保できないか、と。
Img_4407 ペントミック師団、陸上自衛隊の師団のモデルはこれです。ペントミック師団は米軍が1950年代に核戦争時代を想定し、部隊を小型化し集合分散を迅速化した際の名称ですが、陸上自衛隊が1962年に従来の管区隊編成から師団編制を導入し、戦略単位である管区隊が数の面で師団数へ大きく増強された際、併せて管区隊時代は戦車中隊を含め10個以上の中隊が所属していたものを普通科連隊へ改編、連隊の人員規模を限りなく縮小し、現在の編成とした際、米軍のペントミック師団のように部隊単位を小型化し、小回りを採った、と説明されたものがあります。
Mimg_6455 このペントミック師団の中枢要素は、一個師団を歩兵中隊基幹の五個歩兵連隊,大隊規模と揶揄される連隊を基幹として、更にM-113装甲車などで高度に機械化することで、従来の歩兵大隊を基本とする歩兵連隊を基幹としていた歩兵師団と同等の広範囲に五個連隊が展開した場合でも集合を迅速に行える、というものでした。結局、大隊を欠く編制は連隊長が把握しなければならない中隊の数が多くなりすぎ、師団の下に旅団を置いて、その下に大隊を置く、というROAD編制に取って代られることとなりましたが。
Simg_2185 陸上自衛隊がペントミック師団編制を採るには、まず、装甲車が根本的に足りませんでした。60式装甲車を導入する予算は陸王自衛隊が数百機規模で導入することを計画したV-107輸送ヘリコプターやホーク地対空ミサイルの整備費用に持って行かれ、結局、集合分散の迅速化ではなく、少ない予算と人員で必要な師団数を確保するために採った苦肉の策ではないか、とも思えてくるのですけれども。そしてペントミックのペンは五角形を示すpentagonの意味で、五個連隊を創設する必要があり、この時点で自衛隊の編成は無理がありました。
Img_3395 しかし今日に、機械化大隊という編制を見たうえで考えますと、一個師団を五個機械化大隊で充足させ、戦車と装甲車により迅速に集合と分散を行う方式を採ってみてはどうか、という考えも一瞬浮かびました。五個機械化大隊を基幹編成とするペントミック師団の概念で、ペントミックのトミックはatomicのトミックを加えた造語ですので、核戦争時代に集合と分散を迅速化する目的として、名称ほど核戦争の脅威が無い時代ではありますが、機動力が求められている時代ではあります。部隊は小型であれば、緊急展開に際し空輸するにも海上輸送にも都合がいい。
Simg_1342 ところが、この論理には大きな問題がありました。それは機械化大隊は所詮、大隊であり連隊の代わりとはならない最大の理由として、本部管理中隊を欠いているところにあります。旅団普通科連隊が普通科大隊ではない理由はこの本部管理中隊にあります。本部管理中隊は偵察に当たる情報小隊、上級部隊と連隊をつなぐ通信小隊、隷下部隊の負傷者搬送に当たる衛生小隊、陣地構築などを一定規模で行う施設作業小隊、そして車両と装備の整備や維持を行う補給小隊があり、これらを欠いては単なる中隊の寄せ集め、部隊の独自能力を発揮できません。
Fimg_5457 本部管理中隊の位置づけは重要で、施設作業任務や通信機能など、文字通り独立して部隊行動を行うのか他の部隊の一部となするの加賀さ輸される部隊機能の根幹を伝えるものとなっていまして、例えば対馬警備隊が隷下に一個中隊を持つのみで一方面の警備任務に当たれるのは本部管理中隊を有しているためですし、第5戦車大隊などは一時期戦車中隊数を削減しつつも戦車隊へ増強されたのは本部管理中隊を大隊本部から拡充させることで小振りであっても部隊としての運用能力を整備したからでした。
Cimg_79670 連隊という編制には連隊の意味がある。こう考えますと、本部管理中隊を置き普通科連隊とした上で、増強型情報小隊という位置づけで軽装甲機動車の中隊を置き、その分本部管理中隊の重迫撃砲小隊を二個小隊編成とし、ここに機械化大隊を置く編制として、本部管理中隊、軽装甲中隊、機械化大隊、という編制を師団連隊の編成としてはどうか、という考えはあり得るかもしれません。まあ、気合化大隊だけで独立運用するのか、連隊編成を採るのかは、運用上の、特に戦闘団を編成するのか否かに関わる問題になってくるのですが。
Yimg_7529 大隊基幹の連隊を目指し、本部管理中隊に軽装甲中隊と二個機械化大隊、無理はあるかもしれませんが、こうした方策もありえるかもしれない、とも考えました。部隊を二分化する意図は、と問われそうですが、即応性を考えた場合、一定の意味はあるように考えるところ。有事の際には軽装甲中隊が迅速に展開し情報収集と共に軽機関銃や軽対戦車誘導弾による防御戦闘を展開、軽いため輸送機での多方面への応援にも対応し、機械化大隊は従来普通科連隊よりも車両数の面で軽装備であり輸送艦での広域展開も可能となる。
Eimg_4530 軽装甲機動車の中隊を追加したのは、本部管理中隊と機械化大隊という編制に加えて、一個小銃班を二両に分乗させ、火力拠点を分散化させるという軽装甲機動車の運用形態が、即応体制を維持する場合、即座に動かす事の出来る車両数が多くなるという利点があり、災害派遣や着上陸等状況を問わず出動する際には、装甲車よりも小回りが利くスカウトカーとしての情報収集が可能です。目標に会敵する不意遭遇に際しても最小限の防御力と対戦車ミサイルや機銃により一定以下の水準の目標ならば撃破できるため、情報小隊を強化したような運用が可能、ということ。
Himg_0855 部隊は装備する装甲車両の能力を最大限活用します。機械化大隊の前進に先んじて軽装甲中隊が機動力を活かして前進し、情報収集を行う、軽装甲機動車の小回りと部隊の分散運用の能力を最大限生かし、抵抗線に遭遇した際には迂回路を模索、敵主力と遭遇した際には機械化大隊の展開まで目標の攻撃を回避しつつ待機し、機械化大隊の展開と共に軽装甲中隊は携帯対戦車誘導弾の機動運用による対装甲戦闘を展開する、もしくはさらに後方へ迂回し、敵の補給路を遮断する、というものが考えられるでしょう。
Img_0339 この編成は戦略展開能力の高さも特色の一つとして提示できます。軽装甲機動車の機動力と分散運用による即応部隊の立ち上がりの早さはもちろんですが、基盤的防衛力化、動的防衛力か、という議論ではありませんが、これは協同転地演習や災害派遣において、重要となる要素で、加えて、一個大隊の機動展開を念頭とする海上輸送力の常備と即応体制の維持、一個中隊の空輸能力の即応体制維持を、統合運用に際し、防衛省自衛隊の方針として明確に求めることが出来ます。現状の編成では各普通科連隊に微妙な編成の相違があり、これが少々複雑でした。
Img_2662 空輸展開の場合は軽装甲中隊は、火消し部隊というべき空中機動部隊と任務をかなりの部分で連動できます、それは即応性の高さに他なりません。軽装甲機動車だけであればC-2輸送機の貨物室は16×4×4mなので同時に3両と乗員を空輸可能、軽装甲機動車は全長4.4mと全幅2.02mですので両脇には左右共に1m近い空間余剰を確保でき延べ7機のC-2輸送機により一個中隊21両を輸送できます。もちろん、本部車両などで1t半トラックや3t半トラックがありますので、この限りではないのですが、空輸展開に強い。
Gimg_8616 洋上展開の場合、機械化大隊は輸送艦おおすみ型の場合、戦車14両を艦内格納庫に収容可能、装甲車はエレベータにより上甲板に搭載可能ですので、28両の装甲車を上甲板に置くことは少々厳しそうですが、搭載するLCACの甲板上も利用すれば、LCACは米海兵隊がLAV-25を同時に四両を同時輸送していますので、ここまで配置すれば、身動きは採りにくいですが、一隻で一個大隊、可能かもしれません。一応、輸送艦をもう一隻手配して、補給車両など後続の車両を揚陸させなければ海岸線を揚陸部隊は出れませんが。
Mimg_4413 このように、機械化大隊は海上輸送能力ての適合性が高く、軽装甲中隊は空輸展開能力が高いため、有事の際に統合任務部隊が編成される際には、第一線師団へ他方面区の機械化大隊が陸路か海路で展開し、軽装甲部隊が空輸展開により迅速に第一線隣接地域へ展開できます。普通科連隊をそのまま展開するよりは、戦略展開能力が高いといえるでしょう。何よりも必要な地域に必要部隊なだけの部隊が輸送艦と輸送機で即座に展開するのですから我が国へ領土的野心を抱く勢力には物凄い脅威となります。
Img_3760 そしてもう一つ、この方式の採用は戦術基幹単位の増加が利点として挙げられます。一個師団は五個小型連隊か、三個普通科連隊六個機械化大隊基幹、一個旅団は三個大隊基幹を提示していますので、師団の戦略単位としての任務を遂行する上で必要な作戦を展開するという重厚さは維持されますが、戦術基幹単位は大隊の数が多くなり、中隊の独立蘊奥が可能となることで作戦単位が単純計算で特に師団で多くなりますので、例えば島嶼部防衛などで離島に部隊を展開させる場合、多くの島々へ配置できる、ということ。
Img_1476 二つの機械化大隊を隷下に置く師団普通科連隊編成とした案を採用した際には、協同転地による増援派遣を求められた際には一個大隊を展開させ、残る一個大隊により管区内の警戒を高めることが出来、派遣を受けた連隊管区では即座に大隊を編入し、三単位編成として三個機械化大隊を機動運用させることが出来ますし、増援を受ける前の即応体制であっても二個機械化大隊に軽装甲中隊で相当歪ながら三単位運用は不可能ではありません。可能ならば三個大隊慰安を望むのですが、それでは流石に連隊の規模が大きくなり過ぎてしまいます。
Img_2865 もっとも、大隊編制を置いてしまってはペントミック師団編制の重要な部分である連隊の下に中隊が置かれる、という重要な部分の意味が無くなってしまっているので、米軍の半世紀近く導入して失敗した編成をそのまま応用する無理さ加減を痛感すると共に、単に五単位編成という部分だけを採用しただけで、結局ペントミック師団編制というものと、ここで提示されているものは、五単位の部隊をこの記事に手k号するように都合よく代入した結果の片手落ちではないか、と批判されるかもしれませんが、これは、まあ、その、ね。
Jimg_2564 一個大隊基幹の連隊により五単位師団を編成する場合には、師団管区を甲師団に準じた四管区に分け、一個連隊を師団直轄として留置しておけば、他管区への協同転地が必要となった際には、師団管区の警戒態勢を強めつつ、即座に一個連隊を派出可能です。そして更に増派を求められた際には、方面混成団の即応予備自衛官に召集を掛け、師団管区の留守部隊としたうえで、師団規模の展開を行うことが可能となります。部隊を駐屯させる基盤的防衛力か、機動運用を念頭とする動的防衛力か、という議論もありますが、この中間を担うのはこうした編成、と考えるところ。と、まあここまで書いたところで、もう少し本文は続きます。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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巨大台風30号フィリピン直撃、レイテ島等死者一万以上の懸念 政府は自衛隊派遣を検討

2013-11-11 23:55:56 | 防災・災害派遣

◆都市部に上陸した台風としては史上最大

 当初の予定では本日は昨日の記事続編を掲載予定でしたが、予定を変更して記事を作成しました。

Himg_6496 非常な人道危機です。台風30号の直撃を受けたフィリピン国内では突風と高潮により多くの犠牲者が発生し、死者は一万人に迫るものとされ、被災者は950万人、全てのインフラが破壊されているため被災者の多くは生命の危機に曝されていますが、フィリピン政府は余りもの被害の大きさから被害の全容も掴みいれていません。

Himg_6118 自衛隊がフィリピンの台風被災地へ国際緊急援助隊を派遣する方向で調整が進められています。先週末、フィリピンを襲った台風30号は宇宙空間からフィリピンの広大な島嶼部を覆う規模と800ヘクトパスカル台を維持しつつ上陸、最大瞬間風速90mに迫る猛烈な突風を48時間に渡り叩きつけ、突風に加え高潮が沿岸部を蹂躙しました。

Img_0534
 レイテ島を中心に甚大な被害をもたらし、被害の全容はつかめていませんものの、安倍総理は現時点で伝えられる被害の大きさから何時でもフィリピン政府の要請があり次第、自衛隊を派遣できる体制を固め、国際緊急援助隊派遣の方針を示しています。

Gimg_2350 フィリピン政府は現在のところ、我が国自衛隊への国際緊急援助隊の派遣要請を出せていません、これは被害の全容を把握できていないことに起因します。分かりにくい話ですが、我が国では大規模災害に際しては様々な手段、戦術偵察機を含め情報収集手段はありますが、これがフィリピンには無いのです。

Img_1802 したがって、国際緊急援助隊の要請を出そうにもどの地域でどういった被害が出ていて、どのような支援が必要であるかが分からず、要請を出せない混乱の極致にある、というものが実情で、現在、欧州各国は救援拠点となる被災地より離れたマニラ方面に救援物資の輸送を開始、米空軍は輸送機など航空部隊による輸送を開始しました。

Img_0697f 犠牲者は当初の報道では3名であったものの、今夜日本時間2300時までの時点で1755名の死亡が確認され、レイテ島地元警察の情報では一万以上の死者が出ている可能性が伝えられています。他方、レイテ島は空港が管制塔を含め高潮により破壊され民間航空機の発着が不能となりました。

Img_7245i 被災者は950万に上るとされ、全てのインフラが破壊され、台風の通過地域では建造物の八割が破壊されています。これに対しフィリピン空軍機による被災地への輸送が開始されましたがフィリピン空軍には稼働するC-130輸送機が2機しかないため、充分な物資輸送が出来ていません。

Img_5260_1 また、フィリピン政府によれば被災地までの道路が破壊され、極度の食糧不足から一部地域で暴動や掠奪が発生、政府の被災地へ向けた輸送コンボイが被災地に向かう途中を暴徒に襲撃され、救援物資を奪われるなど不穏な状況が生じており、BBCによればフィリピン軍より350名が治安維持へ派遣された、とのこと。

Hbimg_8337 ここまでの状況を見ますと、国際緊急援助隊の派遣に際し、不測の事態への準備の必要性も考えたくなるところですが、現時点では救援拠点となる空港施設などはフィリピン軍が武装し警戒に当たっているため、そこまでの警戒を要する状況ではない模様です。

Img_7205 それでは国際緊急援助隊の編成が為された場合の任務を想定してみましょう。現時点では被災地への空輸能力が極度に不足しており、加えて衣料品や医師の現地での不足が深刻です。したがって、輸送機と医官の派遣、ヘリコプターの派遣が考えられるでしょう。前述のフィリピン空軍の実情もあり、数機のC-130H派遣が現地の空輸能力を倍増させます。

Iimg_2029 ヘリコプターの派遣を行う際には、その輸送手段が必要となります。過去の事例を見ますとパキスタン地震ではC-130輸送機にUH-1H多用途ヘリコプターを搭載し派遣しており、他方、インド洋大津波国際緊急援助隊派遣に際しては輸送艦へ多用途ヘリコプターと輸送ヘリコプターを搭載し派遣しました。

Mimg_1590 更に、医官の派遣、可能であれば機動衛生ユニットや陸上自衛隊の野外手術システムの派遣も考えられます。被災者が950万という東日本大震災に並ぶ規模となっており、東日本大震災では内陸部や日本海側の医療施設は無事でしたが、今回はそのような余裕がありません。

Aimg_3329 沿岸部の高潮被害が大きかったことから海上自衛隊の輸送艦や、ヘリコプター搭載護衛艦を拠点としてヘリコプターの救助拠点として用いる事も考えられます。双方ともに艦内に医療設備を有しており、輸送能力も比較的大きく災害派遣においてもその能力が重視されています。

Himg_0998 被害の全欧が現時点では分かっておらず、その後勢力を若干衰えつつも台風は南シナ海の南沙諸島を蹂躙しヴェトナム北部に上陸、現在は中国南部へ向かう進路を採っており、すでに中国海南島でも被害が出始めているとの報道もあります。このため、今以上に被害が拡大する可能性もあり、今後の展開を注目する必要があるでしょう。

Img_3973h また、被災地があまりに広大であり、一旦の究明救難任務が完了したのちには、防疫支援任務等も要請される可能性があります。台風被害は我が国にも余所事ではなく、近年内に同等の規模の台風が上陸する可能性が高いわけですので、必要な協力を行うことが求められるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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