北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:第一機械化大隊と機械化大隊という編制、滝ヶ原駐屯地祭の写真とともに

2013-11-10 22:39:50 | 防衛・安全保障

◆大隊本部・二個装甲普通科中隊・戦車中隊
 戦車削減検討の報道がなされる中、間が悪いですが、戦車を含めた話題を。普通科連隊、これが陸上自衛隊の連隊管区における基本的単位ですが、もう一つ、機械化大隊という編制があります。
Dkimg_7001 機械化大隊は、陸上自衛隊の部隊訓練評価隊に所属する評価支援隊の基幹部隊で、2002年に創設されているのですが、当方、その部隊の概要を知ったのは2009年の滝ヶ原駐屯地祭においてでした。評価支援隊は、全国の部隊に対し、北富士演習場で実施される部隊訓練評価に際して仮設敵の任務に当たり、普通科中隊に戦車小隊と特科戦砲隊に施設作業小隊を加えた混成部隊の対抗部隊として普通科中隊の戦力水準を見極め、云わば敵役として訓練評価対象部隊の実力を測る、というもの。
Dkimg_7028 評価支援隊という、評価対象部隊が毎回のように全滅寸前まで追いやられ、兎に角創設当時は互角に全国の部隊が対抗することもままならう、それこそ潜伏斥候や無茶な地形利用の連続で、理不尽なほどに難攻不落であることから、富士トレーニングセンター:FTCは、風雲たけし城やSASUKEという名称で呼ばれていることは知っていましたが、仮設敵部隊が大隊編制という比較的大きな規模の部隊であるという事を知らず、バケツ等を括り付けてT-72のようないでたちの74式戦車が続々と出てきたときには驚きました。
Dkimg_7036 96式装輪装甲車が中隊規模で続々と展開してきまして、しかも少なくない数の74式戦車も見える、仮設敵部隊は独自の迷彩を採用しており、74式戦車に続いて96式装輪装甲車も続々と観閲行進に参加、観閲行進に富士教導団普通科教導連隊が89式装甲戦闘車を先頭に行進していましたので評価支援隊は、なるほど初めて見た、というところでしたが、装甲車を装備する普通科中隊は中々なく、不意駐屯地も近いので、このあたりは戦車が多い、という印象に留まりますが、他の駐屯地であれば、その重装備はもっと目だったでしょう。
Dkimg_7039 評価支援隊の第一機械化大隊は、隊本部、第一普通科中隊、第二普通科中隊、戦車中隊、以上の三個中隊を基幹としており、二個中隊を支援するために戦車中隊が配属されている、というのが印象的でした。また、部隊訓練評価では迫撃砲の砲弾落下想定も為されているため、普通科中隊は対戦車小隊を迫撃砲小隊をふくめたフル編成であることがわかります。まあ、勿論観閲行進には重迫撃砲を牽引した車両が参加していませんでしたので、砲弾落下想定は想定だけのもので、編成に含まれていない可能性もあるのですが。
Dkimg_7050 仮設敵に当たる部隊ということで、特に北富士演習場の訓練地区を知り尽くした部隊であるため非常に手ごわく、部隊創設後数年間は負けなし、空挺団と第3普通科連隊が数年後に初めて引き分け以上に持ち込んだという、精鋭部隊ですが、特に普通科中隊が96式装輪装甲車により装甲化されているのが印象的で、独特の迷彩を相俟って記憶に残りました。まあ、こんな大きな装備の部隊を見て、それ以上に、まだまだ自衛隊の部隊のことで知らない事ばかりだなあ、と自分の不勉強さを反省した、というものもかなりあるのですが。
Dkimg_7057 さて、昨今、装甲戦闘車の大口径機関砲の威力が増大しており、装甲車が無ければ歩兵は生き残れません。特に近年、3P弾に代表されるように調整破片弾を射撃する大口径機関砲が装甲戦闘車に採用される時代となっており、露出した歩兵部隊は装甲防御力を有するか、堅固な陣地を構築していない限り、数秒数発の射撃が小隊規模の歩兵部隊に深刻な打撃を与える事となっています。熱線暗視装置等で位置が暴露すれば遠距離から攻撃されるため、それ以前に携帯対戦車誘導弾などで撃破する選択肢もありますが、一番は装甲車に乗車すること、ですけれども大口径機関砲を搭載する車両は当然徹甲弾も搭載しますので、やられる前に反撃してせめて光学照準器だけでも破砕し退避しなければ生き残れないでしょう。
Dkimg_7067 装甲戦闘車に対抗するには、大口径機関砲を搭載した装甲戦闘車化、出来れば戦車があるのが望ましい。装甲車と戦車を上手く混成した機械化大隊の編成は理想的です、普通科中隊は二個ですので大隊長は戦術上の基本となる主力・支援・予備という三単位運用を行うことが難しいのですが、陸上自衛隊の戦闘基幹部隊は中隊であり、この為に普通科中隊は迫撃砲小隊や対戦車小隊を隷下に入れ、編成をおおきくしてきました。従って、機械化大隊は三単位運用を考えず戦車と連携した装甲車での機動打撃を重視すればよいわけです。
Dkimg_7085 戦車との関係、装甲戦闘車ですが、相手が戦車だった場合は有利な地形に退避し、対戦車ミサイルの準備を行うか戦車などの応援を呼ぶ必要があります。戦車の打撃力は、対戦車戦闘においても直接火力戦闘においても有利です。第一機械化大隊には74式戦車が装備されており、普通科中隊は96式装輪装甲車を装備していますので、整地での機動運用は装甲車がやたら早く、不整地では戦車が踏破力を発揮しますので、連携をどう図るかという面と補給整備が大隊長を悩ませそうですが、装甲車により機動力を発揮し前進し、戦車により適宜必要な火力を直接照準で行う。
Dkimg_7089 第一機械化大隊はこういう意味で凄い、ものすごく強そうな運用が出来る編制です。もちろん、この編成のまま有事の際に派遣で消えるものではなく、もちろん適切な補給と整備支援が必要であり、基本北富士演習場において運用される第一機械化大隊は、現状では整備補給能力を欠いていますので、同じく後方支援連隊を持たない富士教導団と同じく、そのままでの実任務に対応する編成ではありませんが、第一線部隊の編成として師団や旅団に機械化大隊が置かれたならば、物凄い速度での攻撃前進が可能な編成となるでしょう。
Dkimg_7106 そして同時に考えたのは、普通科連隊よりも機械化大隊の方が予算面と人員充足面で有利な点は無いか、という事です。普通科連隊の多くが一個中隊のみを軽装甲機動車により充足する一方、他の普通科中隊は高機動車により自動車化している現状を見ますと、普通科連隊と機械化大隊では、機動打撃力や近接戦闘能力に地域制圧力と対戦車能力の部分で、置き換えられる、部分的に置き換えられるところがあるのではないか、人員を削減しても能力を強化できるのではないか、ということ。まあ、戦車の削減検討の報道がある中、間が悪いはなしですが、ね。
Dkimg_7278 普通科連隊は、師団普通科連隊の基本編成が、冷戦時代は、本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、重迫撃砲中隊、という編制でした。冷戦後は一部師団で対戦車火力の強化が図られ、第2師団、第4師団、第8師団、第10師団隷下普通科連隊は、本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、重迫撃砲中隊、対戦車中隊、と対戦車火力を強化します。都市部では本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、第五中隊 として近接戦闘能力を強化する編成が第1師団で採られており、同じく都市部の第3師団は本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、第四中隊、第五中隊、重迫撃砲中隊、という編制へ改編、その後第1師団も重迫撃砲中隊を置く編成としました。。
Dkimg_7294 特に1995年防衛大綱改訂で戦車数の縮小が決定して以来、小銃班の携帯無反動砲を軽対戦車誘導弾へ、普通科中隊は無反動砲小隊を対戦車小隊へ、師団対戦車隊を崩して対戦車ミサイルを普通科連隊へ振り分け、多目的誘導弾も開発、小銃班の無反動砲火力は小銃てき弾の新開発と従来以上の普及を行い対応しています。戦車数削減を無い袖は振れない、として是認する方々は多いでしょうが、戦車を削った一方で脅威はそのままですので代替装備が必要となり、その代替装備の方の財政負担はどうなのか、考えてみますと、戦車を削る必要はあったのか、とも考えてしまうところです。
Dkimg_7325 旅団制度が第13旅団の創設を皮切りに誕生しますと、普通科連隊は本部管理中隊、第一中隊、第二中隊、第三中隊、という編制が採られ、本部管理中隊は師団普通科連隊に対し施設作業小隊や通信小隊の強化と重迫撃砲小隊の新編が行われたほか、各普通科中隊は中隊本部機能が強化され、人員規模では師団普通科連隊よりも小型ながら基幹編制に表面化しない小隊規模での強化が図られているもよう。もとも、旅団普通科連隊は戦闘団編成において方面隊より輸送力と施設部隊の支援が必ず必要とする編成となっているもよう。
Dkimg_7577 機械化大隊と普通科連隊の比較という部分ですが、この師団普通科連隊と旅団普通科連隊を比較した場合、特に旅団普通科連隊はそのまま機械化大隊とした方が、人員規模が縮小するものの、打撃力の面で強化される部分は無いのか、と一瞬考えました。普通科中隊数は減りますが、これは災害派遣などに際して必要な人員数を切り込むので、不安要素ではありますが、そのうち一個中隊が戦車中隊へ置き換えられている、と考えれば前述の機動打撃力や近接戦闘能力に地域制圧力と対戦車能力という部分でそこまでは、見劣りはしません。
Dkimg_7593 ある意味ではありますが、機械化大隊というのは普通科連隊の機能を、勿論そのままの編成で代替するわけにはいきませんが、ある程度を代替することが出来るかもしれません。兎に角装甲車と戦車の連携が、この比率であれば確実にできます。もっとも、戦車の整備や燃料補給と、後方支援の補給支援の能力を大きくせねばなりませんが、打撃力の大きさはこれを補って余りあるものがあります。以上の点、不十分な部分も多々あり、片手落ちな部分が多いですが、御話しは明日掲載予定の次回へ続きます。

北大路機関:はるな

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伊豆大島ラハール災害への自衛隊伊豆大島災統合任務部隊が任務完了

2013-11-09 23:43:09 | 防災・災害派遣

◆任務完了!、20970名が災害派遣

 防衛省によれば昨日、伊豆大島災害は伊豆大島での行方不明者捜索が終了し、東京都知事より撤収要請が出され、任務を完了しました。

Iimg_4567 東京都知事の災害派遣要請に応じ派遣を開始して以来その任務が完了するまでの派遣期間は10月16日から11月8日まで、災害派遣部隊の規模は、延べ派遣人員20970名、派遣車両延べ5120両、航空機延べ80機、艦船延べ17隻が派遣、東日本大震災以降ではかなりの規模の派遣と言えるでしょう。

Mimg_5260 特筆すべきは10月20日の防衛大臣命令による統合任務部隊編制で、この司令部機能と部隊運用の集約化を迅速に行えたことは、特筆に値するでしょう。また、これは自衛隊全般に言える事で、今回も、というところでしょうが、即応性が非常に高かったことを特筆しておきます。

Img_4136 他方、今回の災害派遣は、大規模な陸上部隊の展開していない地域への海上自衛隊輸送艦のLCACによる揚陸実施における所要時間の意外な大きさやLCACの稼働率、更には東日本大震災発災時より指摘されていた海上自衛隊の海上輸送能力の限界が一つの教訓として改めて提示された、といえるかもしれません。

Gimg_2747 展開能力ですが、現在検討が進められている防衛計画の大綱の改定検討では現在400両の定数となっている戦車定数を更に100両を減らす検討の下進められているとの報道もありますので、今後は少ない戦車部隊を迅速に展開させ機動運用に充てる必要性が出てきますので、その機動力のためにも輸送艦の増勢は望みたいところ。

Img_0296 なお、災害派遣任務は、最後に実施されているものとして、伊豆大島より台風の接近に伴い23区内へ避難していた病院入院患者の入間基地から伊豆大島へのC-1輸送機による帰島支援で、担架のまま伊豆大島へ戻ることが可能な航空機としてC-1輸送機が活躍しています。

北大路機関:はるな

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平成二十五年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.11.10)

2013-11-08 23:17:17 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 入間基地航空祭32万の来場者の中、展開され生還された方、基地外で静観した方、その他の皆様、如何お過ごしでしょうか。

Gimg_9840 今週末ですが、自衛隊関連行事は次第に少なくなってまいりましたけれども、首都圏で航空部隊行事が行われます。実施されるのは立川防災航空祭、立川駐屯地は首都圏における政府防災拠点として、都心部が震災により機能喪失の際には首都圏における国家中枢機能の応急復旧までの臨時移転先となります。

Gimg_0648 日曜日に行われる平成25年度防災航空祭は、東部方面航空隊と第1飛行隊等の立川駐屯地所在部隊に加え、東京消防庁や警視庁航空隊を始め様々なヘリコプターが参加する防災航空祭として行われ、その編隊飛行の規模の大きさは定評がある、とのこと。

Gimg_9062 防災航空祭は、0900時の開門と1000時のセレモニー、1050時の編隊飛行上空通過、1130時の災害派遣展示と実施される予定で、このほかCH-47地上滑走と自衛隊に加え関係各機関の防災展示、高機動車試乗など、おこなわれるもの。木更津駐屯地程度の混雑のようで、入間基地航空祭のような無茶苦茶な混雑はありませんし、足を運ばれてみてはどうでしょうか。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望? 防衛産業は防衛政策の一環

2013-11-07 23:45:19 | 防衛・安全保障

◆これを考えるのは主権者たる国民が参画する命題

 北大路機関特集記事として昨年八月から開始した記事ですが、そろそろ結論を考えなければならないところでしょうか。

Bsimg_1855 301飛行隊創設40周年記念塗装を纏い機動飛行するF-4EJ改、現在は新田原基地に展開していますが、百里基地において創設された航空自衛隊最初のF-4ファントム飛行隊ですが、飛行隊創設40周年をF-4で行うということは必然的にF-4を運用し続けて今に至るもの、そして同一機種を40年間運用し続けていることは防衛産業の運用基盤があるということに他なりません。

Bsimg_9833 自衛隊は防衛計画を構築し、それに基づいて祭的胃の装備体系を整備することに努力してきました、冷戦時代は北海道を中心に大規模侵攻へ対処の準備を行いつつ対戦車戦闘能力と機動展開能力を構築する面で尽力してきましたが、他方、防衛政策は予算面で冷遇されており、一括取得などの調達を行えなかったことから少数長期調達をいう政策を採らざるを得ませんでした。

Bsimg_8663 防衛政策と防衛産業の技術水準と企業の経営体力面での盤石化までの期間、誤解されやすいことではありますが、我が国の防衛力は同盟国アメリカの厚意に支えられた部分があり、また、その時期のアメリカの経済力は比較面で非常に大きく、日本を支えることが出来る余裕がありました、他にアメリカ製第二次大戦中の膨大な余剰兵器というものも含めて考えるべきでしょう。

Bsimg_0178 これは、背景が異なるものの、防衛政策の無理に対応できる環境があったため、という部分で、えっかが同じですので誤解しやすいのですが、日本政府が日本の防衛産業に突き付けている防衛面での協力は、契約不履行、詳細不開示、長期間生産能力維持、整備支援長期維持要請など、かなり無理を敷いているものがあります。

Bsimg_2955 これは戦後間もないころの自衛隊創設直後の頃では日本国内の産業は、同時期の朝鮮戦争特需により多少の体力はつきつつある頃でしたが、現在のような無理を要請されても対応できるものではありませんでしたが、このころはほぼ無性に近い米軍の朝鮮戦争時における余剰弾薬や第二次大戦中の余剰装備の供与により、無理ではなく、非常に労力を低くして入手できる背景があった、ということ。

Bsimg_1409 そして、我が国の経済力は1968年に国内総生産GNIで西ドイツを抜き世界第二位の規模を有するようになり、造船業や製鉄業に自動車産業から精密機械など各分野で大きく躍進を遂げるようになり、防衛産業は国が要望する高い水準の装備、そして日本国内での想定される戦術体系に対応できる装備を必要な水準の低い生産数で調達に応える企業体力が練成されるにいたった、というもの。

Bsimg_0665 この時点で防衛産業は、採算度外視、もしくは、企業の社会的貢献としての部分も含め、勿論最先端産業分野への波及効果を期待しての参画もありましたでしょうが、かなり無理をしてでも調達要請に応えました。ただ、昨今、防衛装備品の取得費用を精査してみますと、量産効果が望めないほどの少数長期生産ながら、国際競争力を有するに近い低い水準の費用で生産しており、これは特筆に値するかもしれません。

Bsimg_4312 見方によっては訳在り商品を納入しているのではないかと勘繰る方がいるかもしれませんが、ライセンス生産装備などを見ますと、当然原産国が開発している装備の規格に合った水準の装備を完成させているわけですので、要求水準を満たした装備として出来ているわけで、この批判は言掛りに過ぎません。

Bsimg_4506 また、日本の運用体系は諸外国の運用体系と異なり、遠大なシーレーンにより支えられている海洋国家でありながら専守防衛政策を継続せざるを得ないという部分や隣国に東西冷戦下の対とする陣営に属する大国が存在し、加えて同盟条約を基本的に多国間で結ぶことのできない外交政策を基本としている、この為、独自の装備体系を構築せざるを得ませんでした。

Bsimg_0879 こうした背景から、独特の装備、高い対戦車能力や狭隘道路に対応する車両体系、対潜戦闘を特に重視する艦艇体系や広大な海洋を有し長大な航続距離を必要とする点、少数装備と少数拠点を持って防空に対応するべく航続距離や部分的に対艦攻撃能力の強さを必要とする航空装備体系など、構築せざるをえなかった、というものがあります。

Bsimg_5342 この点を逆に指摘し、独特過ぎる装備体系をガラパゴス化と指摘する向きもありますが、大きすぎて使えない戦車に泣いたNATO諸国は意外と多いですし、周辺国に合わせた結果航続距離不足の水上戦闘艦に泣いた国、自国が求める性能に合致する戦術戦闘機が二世代に渡り導入できず超音速機の低空運用で犠牲者を続出させ、高性能戦闘機を戦術戦闘機として運用し性能を無駄とした国もある。

Bsimg_4691 そうした無理を通した装備体系を構築し、そのために苦労する、もしくは必要以上の数を確保して機動力の不足や稼働率の不十分に応えるという選択肢は、逆に前述の部分を無駄として指摘した方々に、これは妥当なのかと問うたとしても直視を避けられるのみではないでしょうか。

Bsimg_2274 もちろん、稼働率が低くなるだけでも安ければ最多数の装備を調達すればよいという視点ならば、予算の許す限り最大限の装備数を揃える事で対応できる部分がありますし、質より量を越えて兎に角量を圧すことで対応する部分もあるのですが、日本の防衛政策は戦後一貫として軽武装、数的抑制、周辺国配慮を国是としてきましたので、これは出来ません。

Bsimg_9352 さて、こうした部分を指摘すれば、そもそも戦後の憲法秩序が無意味だったのだ、と憲法改正国軍創設を掲げる方もいるかもしれませんし、平和主義と武装中立は矛盾しないとしてスイスやスウェーデンにフィンランドの事例を持ち出す方もいるかもしれませんが、この点は少々論理飛躍というもの。ここまで論理の基幹を動かすと論理そのもののベクトルが変化してしまいますし、余りに無意味ですので、この視点は、余りに当時の視点から逸脱しすぎています。

Bsimg_9982 はなしを元に戻しますと、日本の防衛関連技術の水準は、特に基礎研究を技術研究本部の創設以来半世紀以上連綿と受け継いできており、前述の関連分野における防衛産業の技術力も大きくなっていますので、対応できる部分があります、ここで無理に海外装備、特に技術面で決して日本の視点からは先進的ではなく、更に運用特性が合致していない装備を導入する必然性は無いのではないでしょうか。

Dimg_9022
 もちろん、全ての装備を国産出来るものではありません、技術研究が進められているものは在りますが、これまで検討していなかった分野の装備や防衛政策の面から考える事を許されなかった技術領域などがあります、この部分については輸入などを行うほかはありません。

Img_1361 他方で、輸入装備を導入するにしてもその維持管理や消耗部品、重整備などを全て自前で行うことが無意味ですし、全ての装備構成要素を海外へ供給するわけではありませんので、その場合は一部部品を第三国から導入する、という選択肢も採り得るのでしょうが、無駄が多い、こうした意味で防衛産業と防衛力の共存関係は必要となるわけです。

Img_5018 我が国において不幸な部分は、このように防衛産業は非常な努力を行い、採算面で厳しと頃、一部は持ち出しにあたるのではないか、という部分がありながら継続している分野について、特に防衛政策への世論の面での風当たりの強さが反映されてしまい、云われなき誹謗に突き付けられている、というもの。

Img_9381 実のところ、識者こそこうした状況に際し、事実関係の指摘を的確に行い誤解を回避することが必要だ他と考えるのですが、十分に行われたとしても取り上げる側の反応が薄く、また、当事者も、これは日本的、というべきなのかもしれませんが公の視点からの確固たる反論を広く行ってきませんでした。

Img_1658 無論、これは政治全般に対する国民の関心度とも合致しており、“お上”という視点と言いますか、政治批判は盛んでも政治参画には盛んな時間を投じられず、もしくは余剰時間の選択肢に政治参画を含めない風潮がある、ということもあるのかもしれませんが。

Nimg_0070 結局のところ、幾度も取り上げたように防衛政策と密接に関係している分野でありながら、主権者からはこの事業評価を的確なものとさせるべき分野での周知が後方の面で大きくは無く、また、政策当事者の面からは無理を敷いたとしても応えることが出来たという防衛産業の対応力もありました。

Img_3974 永遠に我が国の経済成長が続き、防衛産業とそれを支える分野の民需生産が永続的に続けばそれでも問題は現出することは無かったのでしょうけれども、財政上の限界が前世紀末期から続き、国も企業も体力的な限界に差し掛かり、結果、その歪の部分がしょうじてきている、こういう実情があります。

Img_6660 財政健全化は非常に大きな課題ですが、防衛産業の特性を無視して無理な過当競争を継続させ、技術水準を無視した装備開発の要求を費用面のみで実施し開発に失敗、長期計画を明示しつつ契約に反映させない単年度調達の積層を行い、財政面から調達中断を行うことで企業に損失を与える、少数生産を継続しすぎ受注不足での撤退、こうした状況が現在続く。

Nimg_6689 防衛産業は体力が無くなり、国も財政的余裕が無くなり、間の悪いことに我が国周辺国では軍拡が広がり、他方で我が国での防衛力での政策面優先度は幾分か理解が深まりつつも依然低い水準、ここでいわば防衛破綻というべき、様々な分野での限界が見えてきています。

Simg_725100 従って、防衛産業は技術面で特殊な分野であり、他方で対象としているのは民間企業であるため経営上の配慮に一般企業同士の商用慣行を逸脱しない範囲内での契約関係が必要である、ということ、当局側は商慣行に不慣れであり、企業側も商慣行の逸脱には限界があるという事、理解して物事を考える必要はあります。

Img_8274 防衛産業は防衛の一分野というべき重要要素を占めているのですが、政策的に配慮し、保護しなければならない分野である、聖域という概念は必ずしも適当ではありませんが、一度崩壊してしまった場合再構築にはさらに大きな費用を要するため、聖域でなくとも破綻させることは費用対効果の面で妥当ではない、こうした視点が必要と考えるところ。

Aimg_0792 もっとも、難しく考える必要はありません、買うといったものは買う、その分買うかどうかをしっかり考える、約束したことは守る、安いといっても出来るかどうかの精査は怠らない、お互い無理はしない、商慣行というよりはむしろ常識的道徳の範疇でしょうが、国と企業の関係で防衛産業を見ますとこれが必ずしも守られていない。

Pimg_4578_1 更に、これは防衛政策全般、もしくは政治全般に言い得る事ですが、批判だけではなく参画の手段を考える必要がある、というところ、防衛産業への批判の前にどうやって的確な防衛力を整備するべきなのか、という部分を、細部は別にいいですから総論として明確に解答を導き出す努力が必要だ、とかんがえます。これは即ち、防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望、これを考えるのは主権者である国民が参画し考える命題だ、ともいえるのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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自衛隊統合演習、宮古島分屯基地・沖縄本島那覇駐屯地へ地対艦ミサイル連隊が展開

2013-11-06 23:27:22 | 防衛・安全保障

◆第1特科団地対艦誘導弾、宮古島へ初展開!

 今月一日より実施されている自衛隊統合演習ですが、当初計画通り、地対艦誘導弾が沖縄へ展開しました。

Simg_9002 今回展開したのは陸上自衛隊が装備している88式地対艦誘導弾で、射程は150kmから180km、内陸部からの運用を念頭に国産開発されたもので、ミサイルに我が国のデジタルマップが内蔵され発射後は地形匍匐飛行を行います。6個連隊所要と教育所要が調達されており、一個連隊には六連装発射器16基と再装填二回分の誘導弾が配備されています。

Simg_8575 自衛隊統合演習では、北部方面隊第1特科団の地対艦ミサイル連隊が民間チャーターの高速輸送船により機動展開し、沖縄本島の那覇駐屯地と八重山諸島宮古島の航空自衛隊宮古島分屯基地へ展開しました。宮古島へ地対艦ミサイル連隊が展開するのは今回の演習が初めてとのこと。

Simg_2830 地対艦ミサイル連隊は通常、海岸線へレーダー搭載の標定車両を展開させ目標を監視しますが、北部方面隊では第1電子隊を置き、洋上の艦艇通信情報や電波の輻射を感知し、超水平線の見通し線外の水上目標を感知する能力があります。電子隊は北部方面隊のみ編成されている部隊で、この為、独立しての対艦戦闘能力は北部方面隊隷下の連隊が高い能力を有しています。

Simg_9134 地対艦ミサイル連隊が装備する88式地対艦誘導弾は同時に96発を、再装填で10分程度にて次の96発を、連隊の即応弾のみで288発を水上目標群へ投射可能で、陸上自衛隊には北千歳駐屯地、美唄駐屯地、上富良野駐屯地、八戸駐屯地、健軍駐屯地に地対艦ミサイル連隊が配備されており、全体でのミサイル投射能力はけた外れの規模といえるでしょう。今回の訓練は宮古島へ展開したのが北部方面隊隷下の地対艦ミサイル連隊、沖縄本島へ展開したのは八戸駐屯地の地対艦ミサイル連隊、との報道でした。

Simg_8671 今回の自衛隊統合演習は特定の国を想定したものではありませんが、我が国周辺には南西諸島を射程とする数百発の短距離弾道弾を保有し、我が国南西部の施政権下に或る領域への侵攻を仄めかし、且つ我が国南西諸島周辺海域を頻繁に航行し、関心を集めている状況も反映されているのかもしれません。

Simg_0569 この地対艦誘導弾は、基本的に護衛艦むらさめ型以降の海上自衛隊護衛艦に搭載されている90式艦対艦誘導弾の原型であり、特別なものではありませんが、通常の運用では方面施設部隊の坑道掘削装置により掩砲所に待機するため、仮に戦術核攻撃を受けた場合でも部隊機能の維持が可能で、抗堪性の高い運用が為されているのも特色の一つ。

Simg_5286 前述したとおり、この誘導弾が宮古島へ初展開したわけですが、これにより必要であれば沖縄本島と宮古島間の海域を地対艦ミサイルの射程で覆うことも可能となり、展開実績を積むことで、南西諸島への軍事圧力が顕在化した際には強力な抑止力として展開し得る事を誇示した、ともいえるでしょう。

北大路機関:はるな

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自衛隊伊豆大島災統合任務部隊、1200名で伊豆大島ラハール災害での捜索任務を継続

2013-11-05 23:26:49 | 防災・災害派遣

◆1200名規模で継続、人員延べ約18000名

 10月16日より開始されている自衛隊の伊豆大島災害派遣は、昨今あまり報道に登りませんが現在も継続中です。

Simg_5419 防衛省自衛隊は10月16日の東京都知事よりの災害派遣要請を受理して以来、航空海上自衛隊の協力により陸上自衛隊災害派遣部隊の展開を開始し、第1師団の展開を開始していますが、被害状況が当初の想定よりも大きく、10月20日に防衛大臣命令により統合任務部隊の設置が命じられました。

Simg_9305 統合任務部隊設置とともに新たに列島に接近する台風27号と台風28号による被害を警戒しましたが、幸い列島直撃を回避できたため、第12旅団、東部方面隊直轄部隊、第6師団隷下部隊の災害派遣を実施、伊豆大島における二次被害防止措置と行方不明者捜索を実施しています。

Simg_0084 11月4日時点での自衛隊災害派遣は、艦艇による輸送と輸送機による輸送は終了していますが、陸上自衛隊を中心とした災害派遣は1200名、車両319両を以て継続されており、これにより延べ派遣人員は17690名、車両派遣延べ4300両が出動しているとのこと。このほか、艦艇は延べ17隻、航空機は延べ79機が派遣されました。

Simg_2294 二次災害防止措置は、土砂流木除去作業と土嚢作成および運搬に航空機画像情報伝送と艦艇情報提供が行われていますが、これは10月中に完了しており、現在は毎日概ね0730時から1730時の間、毎日10時間の捜索活動が行われている、と発表されました。

Simg_4031 派遣部隊は、第1師団より第1普通科連隊の183名と車両30両、第34普通科連隊より人員188名と車両31両、第1後方支援連隊より人員69名と車両26両、第1施設大隊より人員52名と車両16両が派遣され、東部方面隊第1施設団より人員64名と車両が50両、その他直轄部隊より人員307名と車両96両が派遣されています。

Simg_5299 第12旅団は第30普通科連隊より人員100名と車両12両、その他旅団隷下部隊より95名と車両38両が派遣されており、ここに東北方面隊増強派遣部隊として第6師団より第44普通科連隊の人員473名に車両143両が派遣されています。報道は余りされていませんが、なお暫く派遣は続く模様です。

北大路機関:はるな

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浜松基地航空祭2012詳報⑥ 青空を背景にE-767空中警戒管制機の機動飛行

2013-11-04 23:19:17 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆この空は僕らを待っていた!

 この空は僕らを待っていた、空を宇宙に置き換えれば彗星のガルガンティアのOPみたいなタイトルですが、順光の撮影環境へ移動した感想はこうした感じ。

Himg_3069 青空に映えるこのE-767空中警戒管制機、早期警戒管制機とも呼ばれる航空機で、導入当時は一機で護衛艦二隻分という非常に高額な装備として性能を度外視して反発の声もありましたが、今日、我が国が周辺国に対し戦闘機数で押されつつも防空を維持できている背景に航空機の存在もあります。

Himg_3077 早期警戒管制機は、搭載するAPY-2レーダーによりE-767が高度9000mで飛行していた場合は超低空目標であっても430km、高高度目標であれば800kmの距離で補足が可能であるほか、超水平線遠距離捜索機能時は二次元情報に限られるが1000km以上の距離での目標捕捉が可能とのこと。

Himg_3087 レーダー情報はそのままIBM社製CCE-2指揮通信装置により処理され、千数百の航空機や飛行目標を同時に識別子追尾可能ですが、更に昨年度予算からUPX-40目標識別装置の搭載改修予算が通り、これにより同時に電子妨害などを排除しつつ二千以上の航空機を識別し追尾が可能となります。

Himg_3092 こんな写真が撮れるとは、高高度を往く旅客kとE-767だ。早期警戒管制機は目標情報を捕捉するだけではなく、目標を識別し、どの目法を優先目標として対処するかを決定する空飛ぶ司令部であるため、機内には14のコンソールが配置され、地上の司令部と同等の水準を持っての要撃管制を実施します。

Himg_3109 追尾目標はTADIL-A情報伝送装置により地上司令部はもちろん、直接飛行中の戦闘機や地対空ミサイル部隊へ情報を伝送でき、戦闘機部隊と地対空ミサイル部隊は自らが全く補足していない超長距離の目標を画面上の位置関係として把握することが出来るほか、早期警戒機からの情報伝送を行えば戦闘機は自らレーダー波を発せず戦闘が可能であるため、目標に発見されにくくなる。

Himg_3116 早期警戒管制機が最も威力を発揮するのはこの部分で、画面上に目標情報が表示されつつAAM-4のような長射程の誘導弾により目標が攻撃を開始する以前に一方的な攻撃を行うことが可能です。これにより航空自衛隊は戦闘機数が決して多くなくとも、数倍の戦闘機を相手に継続して航空優勢を確保できる訳です。

Himg_3134 航空自衛隊はE-767を導入する以前、1976年にMiG-25函館亡命事件が発生し、この際にはソ連軍特殊部隊による奪還作戦の情報が米国より寄せられたことで函館駐屯地が警戒態勢を取り、千歳基地より戦闘空中哨戒が実施、津軽海峡へ艦艇を常駐させ警戒したのですが、これにより低空目標への警戒の重要性が指摘されました。

Himg_3152 MiG-25が低空飛行した際に一時的にレーダーの圏外に出てしまい、これが有事であれば目標を探知できないままに航空攻撃を受ける事を意味していたため、航空自衛隊は低空目標の探知能力を有するF-15戦闘機の導入、そして早期警戒機の導入を決定しています。

Himg_3168 しかし、このとき米国が運用するE-3早期警戒管制機の導入を検討したのですが、余りに取得費用が高すぎたため現実的に導入でき無いとされ、より安価な艦載機であるE-2C早期警戒機を導入したのでした。もっとも航空自衛隊は13機を導入、世界で広くE-2Cは採用されているのですが開発国のアメリカ海軍以外に唯一二桁台のE-2Cを導入したことになるのですが。

Himg_3174 こうして1987年より航空自衛隊は三沢基地へE-2Cを配備し、北日本の低空侵攻に供えましたが1990年代にシーレーン防衛など海上での警戒監視活動を行うには艦載機であるE-2Cの航続距離では不十分とされ、改めて早期警戒管制機の導入が検討されました。

Himg_3178 E-3早期警戒機は飛行時間が長く航続距離も多い、そして高高度を飛行するためその分警戒範囲も大きく機内容積に余裕があり将来発展性も高い、しかしE-3は二機でE-2C一個飛行隊に匹敵する取得費用を必要としており予算確保と運用経費の確保に慎重を期し、この為導入は遅れることに。

Himg_31850 ボーイング707生産終了は、こうして検討期間が長期化すると共にそのさなかで発表されました。ボーイング707はE-3の原型機、この瞬間、航空自衛隊のE-3導入は物理的に不可能となります。そして航空自衛隊はボーイング767を原型機としてE-3の能力を有するE-767のどうにゅを決定、開発が開始されました。

Himg_3189 E-767は一機当たり当時の汎用護衛艦二隻分という極めて高い取得費用を要し、毎年段階近代化改修により一基当たる数十億円から百億円単位の予算を要する一種の怪物となりましたが、四機を導入したE-767により航空自衛隊の防空能力は文字通り飛躍的に向上、有事においては百機単位での戦闘機増勢に匹敵する防衛力を整備したわけです。

Himg_31940 そんな四方のような装備を浜松基地に配備しているのですが、高い機体でなんという飛行を、と少々焦ることも。さて、E-767の採用ですが、無理してE-3の最終調達に駆け込むよりはE-767の採用でKC-767や同型エンジンを搭載するC-2輸送機など、新しい装備体系を構築したわけですから、結果として正解だったのかもしれませんね。

Himg_32040 E-767の機動飛行が終了しますと、T-4練習機の離陸準備が開始されました。E-767の飛行展示は背景が青空、この空は君を待っていた、と言いたくなるような順光の撮影環境での撮影でしたが、これもエプロン地区では撮影できず、滑走路の反対側に展開しなければ見えないもの。

Himg_3213 エプロン地区ではこれから開始されるT-4の飛行展示も逆光で、機体は黒く空は白くなってしまうのですが、ここならば青空に映える機体の塗装を拝める、というわけです。これで芝生が青ければ最高、というところですが日付は11月17日、流石にそれは無理というもの。

Himg_3224 E-767ですが、搭載するAPY-2レーダーが生産終了となり、米軍やNATO軍のE-3と共に近代化改修プログラムと維持部品供給は今後も長期的に継続されるのですが、新規取得は不可能となりました。航空自衛隊としては更にE-767の増勢を望んでいたところでしょうが、更にE-2Cの老朽化と後継機選定の必要性も出てくるわけで、以下に対応するか興味の湧くところ。

Himg_3229 E-2Cの後継機はE-2DかE-737なのか、APY-2以外のレーダーを搭載するE-767Bを開発するのか、関心事ではありますが、それはそうとT-4が続々と離陸してゆきます。浜松基地航空祭はいよいよ編隊飛行が開始されますが、その様子までの流れは自愛紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

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榛名防衛備忘録:普通科部隊完全装甲化を目指す高機動車後継装甲車を考える

2013-11-03 23:04:08 | 防衛・安全保障

◆装甲高機動車より機動装甲車/小型装甲車か
 先日、高機動車により機動する普通科隊員を防護するべく、軽装甲機動車よりも車内容積が大きい四輪駆動の軽装甲車を大量配備できないか、というお話を乗せましたが、その続き。
Gdimg_1098 装甲高機動車、と仮称してみましたが、それでは国際平和協力活動に派遣されている装甲追加型高機動車のような響きがあるので、あの名称は紛らわしいなあ、という反省点です。名称としては、機動装甲車や小型装甲車、といった名称にするべきなのかな、と考えた次第です、少なくとも高機動車の完成車体に装甲を施すという方式は懸架装置に負荷が増え、汎用性を損ないますので、国際協力仕様高機動車とは別物に考えるべきです、高機動車には手軽な輸送と汎用性という高機動車の利点がありますからね。
Gdimg_9146 高機動車の車体部分を流用できるかは、色々と考える部分がります、装甲は重く、前後側面からの銃撃や底部からの爆風に上部からの砲弾片に耐える装甲、それを支えなければなりません。車体規模からは、一応装甲化したとしても十分な容積を確保しつつ不整地突破能力を付与できるか、可否が何ともいえません。しかし、懸架装置には余裕があることも確かで、対空レーダ装置や電子戦装置に近距離地対空誘導弾に多目的誘導弾や通信車両など、重量のある装備を搭載しても懸架装置はよく耐えています。中型トラックの車体にも応用されていますので、汎用性が高いことだけは確か。
Gdimg_6300 米軍のハンヴィーなども汎用性の高さが知られており、車体部分はトルコのコブラ軽装甲車やスイスのイーグル軽偵察車などに応用されています。ただ、党の米軍はイラク戦争のイラク治安作戦に際し、簡易爆発物IEDの被害が劇的に増加した際、追加装甲を付与し、防御力を強化、装甲車の代用として運用しては見ましたが、結局十分な防御力を獲得するには至りませんでした。装甲ハンヴィーは装甲車の代用となるので自衛隊も導入を、という識者の意見はありましたが、全く限界の前になすすべの無かった、というわけです。
Gdimg_2375 追加装甲を施したハンヴィーは、車体懸架装置に異常な負担がかかり続け、車体寿命を大きく摩り減らすと共に、車体の持前の汎用性、つまり搭載能力に大きな制限が生じました、これは搭載できる積載重量の部分を装甲に置き換えているのですから当然ではあるのですが、つかいにくくなったことは確かで、結局米軍は大量のストライカー装甲車の大量配備に、応急に耐地雷車両MRAPを急増し、投入することとなっています。ストライカーは140万ドル、MRAPは110万ドル、これを数年で数千や万両単位を揃えた米軍は凄い、という一言に尽きますが、反面我が国では真似はできません。
Gdimg_4414 さて、それでは自衛隊に導入できそうな、且つ大量配備し殆どの普通科部隊や施設科部隊などに普及出来る装甲車、軽装甲車の話に戻しましょう。装甲高機動車では、高機動車に装甲を施した、という印象をぬぐえませんので、この名称ですと装甲車両扱いではなく、汎用車両扱いで予算要求することが出来、高機動車並みに毎年大量調達することが出来るかな、という変な考えは浮かんでくるわけではなく、確かに紛らわしい、という難点はありますので、機動装甲車や小型装甲車、という名称を用いるべき、という視点に切り替えましょう。
Gdimg_2433 機動装甲車/小型装甲車は、理想としては3t半大型トラック、旧称73式大型トラックと車体部分を共通化出来れば後方支援の面から理想なのですが、恐らく戦車に随伴する不整地突破能力は付与できません。すると不整地突破用の汎用車両の車体を流用することが望ましいのですが、史上を少し見てみても、大型すぎず搭載量があり、不整地突破が可能で高速走行できる適当な車体が無い。ダイムラー社製ウニモグトラックの車体か、コマツのWA-100ホイールローダーの車体、このあたりを流用し、安く仕上げる必要があるでしょう。
Gdimg_1312 なお、自衛隊が施設科部隊等に装備していますトラッククレーンにバケットローダーやグレーダーの車体では最高速度が道交法上高速道路の運用で必要な110km/h発揮できるか知識不足で分かりにくいのですが、施設大隊に導入されているバケットローダの最高速度は40km/hであるため、整地速度が61式戦車にも及ばないのでは少々能力不足は否めません。するとやはり、手早く開発計画と調達を行うには、不整地車両の代名詞というようなウニモグの車体を輸入し、装甲を施すことが理想、というところでしょうか。
Gdimg_3769 他方、各種施設科装備で最高速度が50km/h未満の装備で、長距離の自走に際しては高速道路を使用できない、輸送支援を必要とする装備について最高速度を110km/h発揮できる、イギリスJCB製HMEE工兵車両のような、民需車両との互換性を有する高速不整地走行用共通車体を官民で開発する、というのも、そもそもHMEEの基本車両が民生車両として海外で一定の市場を開拓していますので、車体を装甲車へ転用する念頭を含め開発する、という意義はあるかもしれません。しかし、民需主導でなければ防衛主導では規格が特殊化し、量産性や普及が実現せず、価格低減には結びつかないでしょう。
Gdimg_9863 他方、仮に安く出来るのであれば、82式指揮通信車を現行使用に仕様変更し、四輪駆動化することができれば、後方支援上有利なのですが、車高を下げ、車体部分の重量を軽減したとして、現行の六輪駆動から四輪駆動に置き換えたとして、不整地突破能力を確保できるのかは未知数で、なんともいえません。ただ、箱型汎用装甲車体を有する四輪駆動装甲車として、後方支援での整備面と取得装備面を共に均衡点を探し、大量調達するべき、という視点のもと、考えるべきでしょう。しかし、難しく新型車両を開発せずとも、自衛隊装甲化を根本的に進める、として、軽装甲機動車の一時期の調達数と同程度の150両程度、96式装輪装甲車を現在の年間25両程度から普及させることができれば、もちろん140億円必要となり、中期防あたりで700両から800両近く を生産することは政治的な決断と後押しが必要ですが、普通科隊員の機動力向上と防御力強化を考えれば、そこまで不可能なのかな、と思う事もあるのですが、ね。

北大路機関:はるな

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入間基地航空祭2013は明日!、日本最大の入場者を誇る首都圏航空祭へ傾向と対策

2013-11-02 23:31:23 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆日本最大!、来場者20万の航空祭

 明日、入間基地航空祭が行われます。あまり参考にならないかもしれませんが、ご参考になれば、と。

Iimg_1800 入間基地は、西武鉄道稲荷山公園駅に隣接する首都圏の航空自衛隊基地で、中部航空方面隊司令部が置かれているほか、C-1輸送機の飛行隊と航空総隊司令部飛行隊等が展開する基地です。航空祭は毎年11月3日に開催され、都心から西武電車で一本という好立地から我が国最大の来場者を誇る航空祭です。ここ数か月間、“入間基地航空祭入場料”、というキーワードでのアクセスが目立ちますが自衛隊関連行事は全て無料です。“入間基地有料席”、というキーワードでのアクセスも目立ちますが、米軍基地の一部行事と異なり有料席の設定はありません。

Iimg_0837 どのくらい混雑するのか?。もっともな質問ですが、最も混雑するのは滑走路を見渡せる最前列部分、ブルーインパルスの駐機している区域周辺です。理由はブルーインパルスの離陸までの行進などを撮影するために多くの人が集まるためです、開門十五分で人は近寄れないほど。お手洗いのために移動しようにも混雑しすぎているほど。ただし、一般に開放される格納庫前、滑走路が見える場所、エプロン地区というところですが、ここは100×600mと広大な区域が開放されています。

Iimg_0877 航空祭の見どころは?。いろいろありますが、C-1輸送機の編隊飛行が最大の見どころです。輸送機の編隊飛行というのは中々見ることが出来ませんが、続いて実施される機動飛行でも輸送機なのにこの身軽さ、と驚くことでしょう。これは専守防衛の我が国において最小限の輸送機を最大限活用するために国産輸送機開発において高速度性能を重視しジェットエンジンを搭載したためです。このほか、国産初の旅客機YS-11も飛行点検機として現役ですので、こちらも見所の一つというべきでしょう。

Iimg_0594 混雑していない場所は無いの?。こちらも尤もな質問ですが、稲荷山公園駅に最も近い正門付近の混雑は凄いことになっています。しかし、北門が臨時開放され、こちらの混雑は正門のように西武電車でピストン輸送されない分だけ幾分か楽です。そして、最前列付近の滑走路が見えるエリアも北門はブルーインパルスの駐機場から距離があるため、多少は。逆に入間基地外柵沿い、狭山市役所付近の県道50号線沿いから入間川付近から撮影される方も多く、こちらは西武新宿線狭山市駅から800mほど歩けば柵越に見ることが出来るでしょう。

Iimg_1064 来場者のピークは何時くらい?。1245時からブルーインパルスの飛行が行われ、恐らくこの前後30分で数万が動きます。逆に言えば、1000時以後は入りにくく、1200時以降は基地で身動きが取れなくなるかもしれません。早朝に行ってしまう、これに尽きるかもしれません。それでは、出遅れてしまった場合は、ですが、滑走路が見える場所に行かず、一歩引いた場所で観る事をお勧めします。人口密度が多ければ最前列付近では逆に見えるものがありませんが、一歩引けは飛行展示は空で行われますので。

Iimg_1426 航空祭の飛行予定は?。飛行展示は0935時から飛行点検隊YS-11とU-125による展示飛行、1005時からの総隊司令部飛行隊T-4練習機編隊飛行、1040時からの入間ヘリコプター空輸隊のCH-47と救難隊のU-125にUH-60の飛行展示、1245からブルーインパルス飛行展示、1435からF-15Jの飛行展示です。ブルーインパルスは航空祭の〆として展示されることが多いのですが、本年は一挙に来場者が帰らないよう、ブルーインパルスの後にも機動飛行が行われるもよう。場馴れした方はブルーインパルスの前に基地外に出るのですが。

Iimg_0130 注意事項は?。入間基地は日本で一番脚立持ち込み禁止の徹底が厳しい基地です、それは20万もの来場者が広くは無いエプロン地区に集まり、過去に多くのトラブルが発生したためです。このため、脚立は手荷物検査にて梱包するよう求められます。だから脚立をお持ちの方は狭山市役所付近に基地の外縁で撮影する方のみ、というところでしょうか。日傘は禁止、レジャーシートも専用地区が設定され、正午までの時間限定で敷くことが許可されます。正午以降はブルーインパルス飛行展示準備で混雑する為撤去を要請されます。隊員の巡回も頻繁に実施されます。

Iimg_1052 航空祭を楽しむには?。これが重要なのですが、飲み物を多めに、お手洗いは早めに、御帰りは計画的に、というところでしょうか。前述の通りブルーインパルス飛行が航空祭来場のピークですので、この時間帯は通路が過剰通航の危険回避に通行止めとなり基地に入れなくなりますし、帰りの時間帯も基地から出場制限を行うことがあります。入るのに一時間、出るのに三時間、という話がありますのでじっくり腰を据えてみるのか、早めに帰るのか、見極めが重要でしょう。

北大路機関:はるな

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平成二十五年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.11.02・03)

2013-11-01 23:16:39 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 秋めいて急に冷え込み始め台風も発生しなくなった十一月の今日この頃如何お過ごしでしょうか。

Gimg_0854 入間基地航空祭、我が国最大の来場者を誇る日本最大の航空祭である入間基地航空祭は十一月三日、行われます。首都圏で西武線一本の好立地にある航空祭、相当混雑しますが伊豆大島災害派遣でも大活躍のC-1輸送機部隊等、足を運ばれて一見されてはどうでしょうか。

Gimg_0175 第13旅団創設記念行事海田市駐屯地祭、山陽山陰地区の防衛警備を担当する中部方面隊隷下の旅団、その創設記念行事が広島県海田市駐屯地において行われます。旅団と師団より縮小された編成ではありますが各種装備は一通り配備され、なかなかの迫力です。

Gimg_4493 中部方面隊管区では第3特科隊等が駐屯する姫路駐屯地祭が行われます。FH-70榴弾砲を中心とした迫力の訓練展示が行われるほか、名物となっている寸劇仕立ての姫路レンジャー展示もお昼から実施予定で、子供でも分かるお勧めの行事、笑いと涙に精強の自衛隊行事へ是非どうぞ。

Gimg_8313 中部方面隊管区では特科部隊行事の真っ盛りというところでしょうか、山陽地区の瀬戸内海対岸、松山駐屯地にて駐屯地祭が行われます。第14旅団隷下の第14特科隊が駐屯しており、こちらもFH-70榴弾砲を中心とした迫力の行事が展開されるでしょう。

Gimg_6477_1 西部方面隊管区では第40普通科連隊の駐屯する小倉駐屯地祭が行われます。自衛隊統合演習が実施されている九州では駐屯地祭はこのくらいなのでしょうか。第40普通科連隊は第4師団隷下の普通科連隊で我が国では初期から近接戦闘訓練を重視してきた精強連隊の一つ。

Gimg_6797 首都圏では施設学校の枯れている勝田駐屯地祭が行われます。首都圏と言っても勝田は北関東で少々場所によっては距離がありますが、施設科部隊ならではの他ではなかなか見る事の出来ない各種装備が展示され、訓練展示にも参加、お勧めの行事と言えるでしょう。

Gimg_7743 久里浜駐屯地祭、都心から京浜急行で一本という好立地の駐屯地で、通信学校が置かれています。訓練展示などは部隊の特性上余り期待できないのですが、通信機材は他の駐屯地では見ることが出来ないものも多く、施設学校祭の勝田駐屯地とともに通信学校祭、一種学祭ということで難しいことは考えずに、おもいきって雰囲気へ足を運んでみてもいいかもしれません。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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