北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

トランプ大統領いずも視察,安倍総理大臣が大統領訪日時に護衛艦いずも艦上共同視察へ招待案

2017-10-21 20:02:39 | 国際・政治
■初会談ではF-35の話題
 海上自衛隊最大の護衛艦、いずも、をトランプ大統領が安倍総理と共同で視察する可能性が出てきました。

 トランプ大統領の来月五日からの訪日に合せ、安倍総理大臣が横須賀基地のヘリコプター搭載護衛艦いずも、に招待し日米首脳が共同で視察する方針で調整が進められている、複数のメディアが報じました。晴海埠頭いずも入港や、ヘリコプターによる視察が検討され実現すれば、自衛隊最大の護衛艦から日米の強い同盟関係を強調する事に繋がるでしょう。

 安倍総理大臣は2015年の自衛隊観艦式において、観艦式実施海域近傍で日米共同訓練中であった原子力空母ロナルドレーガンを表敬訪問しており、観艦式当日に観閲官が同盟国原子力空母を表敬訪問という特別な視察を実施していますので、トランプ大統領の日本訪問予定は多忙な予定を重ねていますが、護衛艦いずも視察が実現の可能性は十分にあります。

 いずも型護衛艦は満載排水量27000t、ヘリコプター搭載護衛艦として建造されましたが海上自衛隊最大の護衛艦です。8月に日本を訪問したイギリスのメイ首相が横須賀基地の護衛艦いずも、を視察していますし、フィリピンを親善訪問した護衛艦いずも、をフィリピンのドゥテルテ大統領が表敬訪問するという、国際的に知名度を集める護衛艦となりました。

 はるな型護衛艦、はるな、ひえい、しらね型護衛艦しらね、くらま、と続く海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦は長期間の運用を経て能力構築と戦術研究の両面で、対潜戦闘と艦隊戦闘において日本型、日本独自の運用体系を構築するに至りました、また、海上戦闘の骨幹として標準化させる等、体系化しており、いずも型護衛艦、はその最新発展型です。

 F-35B戦闘機、仮にトランプ大統領が護衛艦いずも表見訪問を行った場合、垂直離着陸が可能で海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦での運用が可能である第五世代戦闘機F-35Bの日本配備の可能性について、話題が及ぶのかが大きな関心事となります。南西諸島防衛やミサイル防衛等、我が国重要影響事態に際し、このF-35Bが果たす能力は無視できません。

 NIFC-CA海軍統合対空火器管制として自衛隊はイージス艦と航空自衛隊が導入を進めるE-2D早期警戒機の連接等、自衛隊が保有する各種装備をネットワークで結ぶことでその保有する能力を最大限発揮するデータリンク能力構築を進めています。そしてアメリカ海軍ではイージス艦のSPY-1レーダーを補完する索敵手段にF-35を充てる技術を構築中です。

 海上戦闘では、情報優位が戦闘を左右します。従来は航空機による索敵を実施していましたが、ステルス性を有さない従来型の哨戒機には索敵と敵航空機や対空火器からの生存には限度があり、レーダーによる索敵もその索敵を露呈する危険がありました。F-35はステルス性と、統合光学情報システムにより、脅威対象に捕捉されず索敵を行う事が可能です。

 艦上固定翼哨戒機、としてF-35Bは能力を発揮し得ます。海上自衛隊は来年度予算概算要求にイージス艦などに搭載する艦対空ミサイルSM-6の取得開始を盛り込みました、これは対航空機やミサイル迎撃に用いる射程370kmのミサイルです。イージス艦は水平線の向こうに位置する目標情報を得られず、一例としてF-35Bのような索敵手段が理想となります。

 いずも型護衛艦、ひゅうが型護衛艦、4隻とも全通飛行甲板構造を採用しているのですから、海上自衛隊には固定翼航空機を導入し運用する展望は当然考えられていた事でしょう。また、海上自衛隊には早期警戒管制機等、イージス艦の能力を最大限発揮する上で必要な装備を欠き、航空自衛隊の余裕にも限界がある為、独自の艦上索敵手段は検討された筈です。

 しかし、例えば、護衛艦ひゅうが型、ひゅうが、いせ、は5機程度、いずも型の、いずも、かが、で7機程度搭載するとして、海上自衛隊全体で30機程度が必要となります。F-35BはP-1哨戒機と同程度に高価で、そして海上自衛隊にF-35B要員を養成する航空訓練基盤は無く、政治的合意に基づく防衛計画として長期的に整備しなければ配備は実現しません。

 日米首脳会談においてF-35Bについて言及があるならば、日本の海上防衛への大きな転換点となる可能性もあります。特に海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦を視察した後であれば、発言の意味も大きくなります。そこまでいかずとも、岩国航空基地のアメリカ海兵隊F-35B発着試験を日米共同訓練の際に実施するという程度の合意は考えられます。

 トランプ大統領と安倍総理は、2017年2月10日にフロリダ州パームビーチで行われた初の日米首脳会談において安倍総理自身の発言として、F-35の調達費用低減へのトランプ大統領の尽力に謝意を表明しています。日米首脳会談に空軍仕様のF-35Aの話題が出ているのですから、日本の全通飛行甲板護衛艦を視察した際に、垂直離着陸型のF-35Bへ話題が及ぶかは、大きな関心事といえましょう。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十九年度九月期十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2017.10.21/10.22)

2017-10-20 20:05:53 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 秋台風、超大型で勢力の強い台風21号が接近していますが、皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の行事紹介です。

 豊川駐屯地創設67周年記念行事、第10特科連隊と第10高射特科大隊及び方面隊隷下の第49普通科連隊と第6施設群等が駐屯する駐屯地です。豊川駐屯地は長らく第10師団特科の駐屯地として維持されてきましたが、間もなく中部方面特科隊の新編と共に第10特科連隊は廃止されます。したがって、第10特科連隊行事は今回が見納めとなるかもしれません。

 今津駐屯地創設65周年記念行事、第3戦車大隊と第10戦車大隊が駐屯する中部方面隊最大の戦車部隊駐屯地であると共に、中部方面情報隊隷下の中部方面移動監視隊及び中部方面無人偵察機隊が駐屯する情報優位への一大拠点でもあります。ただ、日曜日に実施予定で、台風直撃の可能性があり湖西線が強風に弱く、出発に際し最新の情報をご覧ください。

 出雲駐屯地創設64周年記念市街パレード、出雲駐屯地記念行事を出雲市駅前にて実施します。くにびき中央通で第13偵察隊等出雲駐屯地駐屯部隊が観閲行進を行い、出雲市役所では装備品展示を行います。出雲駐屯地は現在、北朝鮮弾道ミサイル警戒へ航空自衛隊ペトリオットミサイルPAC-3部隊が展開中で式典を行えず、代替案で市街パレードを行います。

 久里浜駐屯地創設61周年記念行事、陸上自衛隊通信学校の置かれる横須賀市の駐屯地です。通信学校は陸上自衛隊通信科部隊の専門教育及び幹部教育と新装備評価試験に戦術研究を行う機関で駐屯地基地通信隊の鉄塔から最前線での電子戦任務まで文字通り第一線から後方まで、現代戦闘の根幹を担う職種です。式典の他、装備品展示に稀有な装備が並びます。

 小月航空基地祭スウェルフェスタ2016、小月航空基地の航空基地祭です、小月航空基地祭は海上自衛隊のT-5初等練習機を運用する唯一の航空基地で、開門直後の午前中と午後いちばんにT-5練習機が飛行展示を行う他、航空機地上展示や飛行シミュレータ一般開放等が行われます、しかし気になるのは台風の影響で、開催可否含め最新の情報をご確認ください。

 撮影の話題、今回は台風接近時の話題です。今回の秋台風は巨大で勢力も強く、2009年に愛知県知多半島に上陸した台風と同じ経路を進んでいるとのこと。そして、2009年の週末に接近した台風と同日、豊川駐屯地祭が行われていたのですね。豊川市は名鉄沿線で知多半島も名鉄沿線です、当然、中止と思われたのですが遠州灘の台風を睨みつつ実施された。

 台風接近でもこのように堂々と行事を実施する事もあったのですが、今週末行われる今津駐屯地創設記念行事は、台風接近ではなく大雨洪水警報発令時に式典を全面中止し、雨天行事ではなく、駐屯地一般公開そのものを中止した、という事もありました。近江今津駅で知ったのですが、戦闘職種が雨天決行ではなく雨天中止、ちょっと意外な印象でしたね。

 行事中止の際には当日、遅くとも0700時頃には駐屯地HP等に情報が発表されます。ただ、シャトルバス等に乗る為にはこの時間帯既に現地へ向かっている、という事も多い為、極力携帯端末等で最新の情報を収集に努めると共に、中止の場合には事由が荒天ですので鉄道線運行への影響等も情報収集しつつ、自分が被災者とならないよう、注意せねばなりません。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・10月21日:久里浜駐屯地創設61周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/sigsch/
・10月21日:豊川駐屯地創設67周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/sta/toyokawa/
・10月22日:今津駐屯地創設65周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/imadu/
・10月22日:出雲駐屯地創設64周年記念市街パレード…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/13b/izumo/index.html
・10月22日:小月航空基地祭スウェルフェスタ2016…http://www.mod.go.jp/msdf/oz-atg/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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百里基地でF-4戦闘機火災!誘導路走行中脚部欠損と負傷者なし,奮闘する五〇年代傑作老朽機

2017-10-19 20:03:19 | 防衛・安全保障
■ファントム誘導路で炎上
 F-4戦闘機、旧式ながら防空の第一線で活躍する機種が昨日、茨城県百里基地で誘導路上にて火災を発生しました。

 百里基地第七航空団所属のF-4EJ改戦闘機が18日昼前1145時頃、離陸滑走へ向かう誘導路上で出火しました。航空自衛隊は待機している航空消防車を出動させ、F-4EJ改への消火活動を実施、30分程度で鎮火しました。火災を察知した乗員2名は迅速に手動でエンジンを停止させると共に風防を開き機外に退避した為、負傷等の事案はありませんでした。

 第302飛行隊の所属機で、誘導路上を走行中に左側の脚部が欠損し機体が大きく傾斜、主翼の一部が地面に接触し、結果誘導路に擦り付けられる事となった燃料の増槽タンクから摩擦熱により出火したもようです。百里基地は茨城空港と滑走路を共用していますが、誘導路は航空自衛隊側で、今回の火災により茨城空港への民航機運用への影響はありません。

 小野寺防衛大臣は今回の火災を受け全国のF-4戦闘機全ての安全確認を指示しました。F-4EJ及びF-4EJ改は、1966年正式採用の旧型機で、ライセンス生産を含め144機が調達され全国に配備されましたが、現在は大半が除籍、百里基地第7航空団隷下の2個飛行隊とともに百里基地の偵察航空隊、そして岐阜基地の飛行開発実験団に配備されています。延命改修は行っているのですが、機体構造部分などは採りかえる訳に行かず、補修部品を製造する防衛産業もすでに製造ラインが無い部品が多い。

 首都防空を主任務とする第7航空団は、太平洋を南下するロシア機等を警戒します。従来、比較的新しいF-15戦闘機2個飛行隊を有していましたが、一方の飛行隊が南西諸島防衛強化へ那覇基地のF-4と交替し転出、続き南九州防空強化の一環として新田原基地のF-4と交替、二つの飛行隊が共にF-4となり、自衛隊で最も古い戦闘機が東京防空を担っている。

 第302飛行隊は2018年度に百里基地から青森県三沢基地へ移駐し、旧式のF-4EJ改を新型のF-35戦闘機へ代替させる計画です。元々F-4EJ改戦闘機は2002年頃から後継機選定が本格化していました。ただ、航空自衛隊は高性能で防空戦闘能力に特化したアメリカ製F-22戦闘機の取得を希望していましたが、予算や情報保全の面で遅延し、新型機を導入できないまま、F-4が引退する訳にもいかず、現役に残りました。

 火災発生の機体も1978年製造の機体で自衛隊では古い機体です。ここまで古い機体が現役で運用できるのは、三菱重工がライセンス生産を行っており、アメリカでは運用が1994年に終了した機種でも、三菱重工が独自に整備支援を行えたため維持できています。F-4は原型初飛行が1958年、世界50カ国以上で採用されましたが、残るのはギリシャや韓国など。

 茨城空港への影響はありませんでしたが、F-4EJ改の点検を完了するまで、首都圏防空は石川県の小松基地に配備されるF-15戦闘機と青森県三沢基地のF-2戦闘機が実施することとなります。一方、旧式化した戦闘機は構造寿命検診に超音波検査等の非破壊検査を重ね、稼働率を維持していますが、実際のところ究極の解決策は新型機への代替以外ありません。古いから不具合があったのは仕方ない、と笑い話ではすみません。

 F-35が後継機となっていますが、2012年に4機、2013年に2機、2014年4機、2015年から毎年6機の予算が計上されており、今年に入り2013年調達分の機体が最終組立を完了し、試験飛行を実施しています。ただ、六年間で調達できた機体は28機であり、F-4と共にF-15戦闘機も旧式化が進んでいる為、最低毎年12機程度の調達が必要となるでしょう。

 財政状況が厳しい事は理解できますが、1950年代設計の機体を改良し1970年代に生産し、しかも常続的な任務として飛行させ続けるには限度があります。この為には戦闘機定数を削減する選択肢もありますが、対領空侵犯措置任務が年間1100回を超える現状では不可能です。予算が無いので我慢、というには限度がある、第一線の運用当事者はこの点を強調すべきですし、為政者も政治の責任として補正予算に計上してでもF-35への置換えを急がねば、次の事故に繋がりかねません。

北大路機関:はるな くらま
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【京都発幕間旅情】千葉城,下総国亥鼻城址模造天守閣は中世千葉荘より受継ぐ近代城郭の夢

2017-10-18 20:07:39 | 旅行記
■千葉城,市立郷土博物館天守閣
 千葉城、千葉市中心部の小山は頂上に在り、城址公園として威容を示し、市立郷土博物館という公共建築物として整備されている。

 千葉亥鼻城、千葉県庁に程近い天守閣です。模造天守閣ではありまして、この城郭そのものを再現したものでは無く歴史公園としての整備である為、その歴史的価値については城郭としては無く、どちらかといえば戦後模造天守閣建築史との視点から意味があります。

 千葉常重、千葉城を造営したのは平安時代後期に下総国を治めた武将千葉常重により造営されたものです。千葉常重は叔父にあたる相馬常晴より下総国相馬郡郡司と荘園として千葉荘を譲り受け、武家館を上総国山辺郡大椎館から移駐、千葉山に城郭を造営しました。

 千葉常胤は千葉常重の千葉荘を受け継ぐと共に千葉妙見宮を造営し門前町を広げます、ここが現在の千葉神社となりました。そしてこの門前町を街道として整備し、中央とを結ぶ東海道へと広げてゆき、ここに今日の政令指定都市、千葉市の原型が形成されてゆきます。

 鎌倉時代に入り、千葉荘と千葉妙見宮の門前町は鎌倉幕府の置かれた鎌倉を東方から防衛する要衝という位置づけとなりました。鎌倉幕府を開府した源頼朝は東国武士として千葉氏と盟友関係にあり、千葉常胤は保元の乱へ源義朝へと参陣したという所縁もありました。

 源頼朝と千葉常胤は、頼朝挙兵に呼号すると共に緒戦の石橋山の戦いに頼朝が敗走した際、安房国へ転進した頼朝を迎え入れたのも千葉常胤であり、千葉荘へ鎮圧に向かう平家軍を遭遇戦の形で迎撃する結城浜の戦いに勝利し、常胤は300騎を率い頼朝参加へ参陣します。

 勲功以て頼朝へ与力として迎え入れられた常胤は富士川の戦いで攻勢を確たるものとし、併せて上洛を急ぐ頼朝へ盤石な策源地構築と兵站を重視するよう助言を重ねる事で強靭な戦闘力を維持させた。続き一ノ谷の戦、奥州藤原氏討伐へと参陣、頼朝の信頼を固めます。

 千葉荘と千葉妙見宮の門前町は現在の千葉市の原型を構成しましたが、常胤の都市計画はそのまま頼朝の鎌倉造営に際し重要な都市計画図を供する事となりました。鎌倉は鶴岡八幡宮を中心に都市計画が進められましたが、一説には千葉市の都市計画が応用されたとも。

 鶴岡八幡宮を中心に都市計画が進められ、関東の麗しの古都という情景を今に伝えます。さて、亥鼻城とその周辺の造営は、こうして都市計画が関東地方の都市圏形成へ大きな影響を与えました。千葉発祥の地、ということで千葉亥鼻城にはこれを記す石碑もあります。

 しかし、残念ながら現在の千葉亥鼻城は当時の遺構をほぼ残していません。特に千葉亥鼻城が造営された時代は日本城郭建築において天守閣構造を冠する前の時代であり、亥鼻公園は歴史公園として一般に歴史を感じる事が出来る模造天守閣を冠したに過ぎないのです。

 千葉市立郷土博物館は千葉亥鼻城模造天守閣の中に在りまして、元々の名称を千葉市郷土館といいます。天守閣は鉄骨鉄筋コンクリート造、1967年に建築されましたが、更に周辺の文化施設や散策路を整備しまして、1988年に歴史公園亥鼻公園として整備されました。

 城郭というよりも武家屋敷であったこの地には、江戸時代に徳川家康が鷹狩りを行う練兵場という位置づけとなり、船橋や御茶屋と東金に御殿を造営、御成街道も整備される事で反映します。しかし江戸に近く防衛上、旗本領や天領として細分化し、衛星都市化される。

 千葉の歴史を考えますと、敢えて天守閣を歴史公園に冠した背景には、鎌倉造営への歴史的関与と共に江戸時代の不遇といえる衛星圏内への併呑という歴史を踏まえ、敢えて時期こそ遅れたものの天守閣を千葉始まりの地の城址へ造営したいとの思いが見えるようです。

北大路機関:はるな くらま
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フィリピンISILミンナダオ騒擾終息見通し,ロレンザーナ国防相が在比ISIL指導者制圧発表

2017-10-17 20:05:46 | 防衛・安全保障
■激戦半年,南方のISIL事案
 フィリピンISILミンダナオ騒擾、ようやく終息の見通しです。一歩間違えれば、九州沖縄や中国大陸へのテロ移動を自衛隊が警戒する必要も出ていた可能性がある。

 日本でテロ対策の法整備が強調されるたびに指摘されるイスラム武装勢力ISILの存在ですが、この組織は最近まで中東の組織、近年アフリカ地域へ勢力を伸ばした組織であると考えられてきました。そしてシリア軍がロシア軍協力で反撃に転じ、イラク軍も有志連合協力により緒戦の劣勢を戦車部隊が中心となり反撃、アフリカでも拠点の大半を失いました。

 しかし、フィリピンにおいてISILが攻勢に出ており、今年に入り南部ミンダナオ島のマラウィ市を中心にミンダナオ島一帯で遊撃戦を展開した事には驚かされました。状況が鎮静化出来なければ、フィリピンから日本へのテログループ浸透の懸念が顕在化し、我が国南西諸島一帯での対テロ任務という新しい脅威に発展しかねない危険な状況があったのです。

 フィリピンミンダナオ島で5月23日以来続くイスラム武装勢力ISILとの戦闘は漸く終息の見通しが立ちました。フィリピンのデルフィンロレンザーナ国防相が16日の記者会見で発表したところによれば、フィリピン親ISIL組織アブサヤフの首魁イスニロンハピロン容疑者が16日早朝から実施されたフィリピン軍による掃討作戦により殺害されたとのこと。

 フィリピンISILマウテグループの首魁としてフィリピン国内におけるISIL組織を構成していたオマルマウテ容疑者も戦闘により死亡したものとみられ、フィリピン軍ではDNA鑑定を進めています。約半年間にわたるフィリピン軍との戦闘は、このマウテグループがミンダナオ島のマラウィ市警察庁舎を800名の兵力で攻撃し市内を占拠し、始まりました。

 一両日中に戦闘終了を発表できる可能性がある、ロレンザーナ国防相はこう強調しましたが、人口20万のマラウィ市街地に立てこもった800名のイスラム過激派を相手にフィリピン陸軍15万名から鎮圧部隊が総動員され、鎮圧作戦に半年近くの期間を要した訳です。そしてフィリピンにISILが確たるものとなれば、日本や中国への影響も無視できなくなっていたでしょう。

 中東のイラクやシリアでの支配地域大半をイラク軍とシリア軍反撃により奪還されたISILは新しい拠点としてイスラム武装勢力アブサヤフが影響力を残すフィリピン南部に中東に代わる拠点を構築する構想があり、特にフィリピン軍は軽歩兵主体で戦車を一両も持たず海空軍ともにISILの海上移動を阻止できない点から、格好の標的となった可能性がある。

 フィリピン軍は米豪軍からの軍事援助を受け治安作戦を実施、オーストリア海軍は六月の時点でフィリピン軍を上空から支援するべくAP-3C哨戒機を派遣しています。アメリカ軍とフィリピン軍の協同は、現在のフィリピンドゥテルテ政権がアメリカとの軍事協力に否定的な姿勢を強調していた為、一時中断していましたがISIL浸透を機に再開されています。

 我が国はミンナダオ島騒擾にフィリピン軍への軍事支援等、直接関与はしていません。しかし日比防衛協力の一環としてフィリピン軍への海洋観測機へ転用可能な海上自衛隊TC-90練習機無償供与、また陸上自衛隊で運用しフィリピン軍も同型を運用しているUH-1多用途ヘリコプター部品について予備部品及び補修部品四万点の無償供与を進めています。

 フィリピンは多島国家で首都マニラは北部のルソン島に位置し、国土の中央部は東部のビサヤ諸島とパラワン島、そして南部にミンダナオ島と島嶼部が広がります。武装勢力はミンダナオ島の大都市マラウィを占拠し、20万の住民は大半が非難、戦闘が郊外へも拡大した事から膨大な国内避難民が発生、進まない治安作戦が事態常態化を懸念させていました。

北大路機関:はるな くらま
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霧島山新燃岳噴火,水蒸気噴火のマグマ噴火誘発懸念と南九州南西諸島北部防空担う新田原基地

2017-10-16 20:04:26 | 防災・災害派遣
■霧島山新燃岳噴煙二三〇〇m
 南西諸島付近での軍事脅威顕在化と共に朝鮮半島情勢緊迫化が進む最中、南九州において火山活動が活発化しています。

 霧島山新燃岳が11日に噴火しました、噴火警戒レベル3のまま大規模な噴煙の噴出などの状況が続いています。当初火口警戒範囲を加工から2kmとしていましたが、GPS精密測定による山体膨張等の噴火兆候からより大規模な噴火の懸念があるとして、15日より火口周辺3kmを警戒範囲として拡大し、気象庁は噴石や火砕流に対し警戒を呼び掛けています。

 新田原基地から100kmの位置にある霧島山新燃岳は過去の噴火において戦闘機訓練に対し、火山灰の降着が影響を及ぼした事例があります。新田原基地は南九州及び南西諸島北部の防空を担う重要基地で、南西航空方面隊と西部航空方面隊の境界線担う第5航空団が展開しており、九州南岸経由で京阪神地区へ飛来する中国爆撃機接近を警戒する基地でもある。

 新燃岳噴火は2011年以来六年ぶりで、14日の噴火では噴煙が2300mに達した事が噴火されています。火山灰は周辺地域へ農業被害を及ぼすと共に成層圏に到達した火山灰は微量ながら九州北部や四国南部への降下が観測されています。この噴火について13日に気象庁が発表したところでは今回の噴火は火山灰分析により水蒸気噴火である事が判明しました。

 水蒸気噴火とはどんなものでしょうか、これは火口部分に長期間を経て貯水された雨水が次第に地下に浸透し、火山深部のマグマ溜まりに接触する事で発生します。水が沸点を越えると水蒸気となりますが、火山深部では岩塊の圧力により即座には蒸発しません、しかし、火山性地震の震動等で岩塊に亀裂が入る事で一挙に圧力が放出され水蒸気爆発となる。

 航空防衛の視点からは、1992年にフィリピンの在比米軍クラーク空軍基地が30km先のピナトゥボ火山の大噴火により放棄された事を思い出します。ピナトゥボ火山は1992年に火山爆発指数6という世界で100年に一回程度という大噴火を起こしました。クラーク空軍基地は嘉手納基地よりも巨大で極東米軍最大の基地としてヴェトナム戦争を支えた基地だ。

 マグマ噴火となるかは、水蒸気爆発の回数と規模により左右されます。その構造は、水蒸気爆発の原因が浸透した雨水が地下水としてマグマに触れ、いわば蒸気機関のシリンダーが圧力を放出できないまま高圧を蓄積し爆発する構造に近いものですが、何度も何度も水蒸気爆発を繰り返す事で、一種のダイナマイト発破によるトンネル工事と同じ結果となる。

 火山災害としてはマグマ噴火の方が、直接被害が増大します。そのマグマは地球深部から火山のマグマ溜まりに供給され、蓄積されてゆく。この蓄積された部分の上部に火山という山そのものが載って蓋をしているのですが、蓋が水蒸気爆発により亀裂が入り、その亀裂をトンネルとしてマグマは上へ上へと通行し、マグマそのものが地表に噴出する訳です。

 火山噴出物は発泡爆発し火砕流となった場合に高速で広範囲に被害を及ぼします、概ね木材発火点を上回る高温ガスが火砕サージと共に火の津波を形成し、ガスが圧力で押し出されている為に時速100km/hとして短期間で広範囲を覆い、事前退避以外に有効な安全策はありません。気象庁が警戒するのは今回の水蒸気噴火がマグマ噴火を誘発するかでしょう。

 霧島山は九州に存在する世界最大規模で複数の巨大カルデラ加久藤火山を構成する巨大火山ですが、今回噴火し山体膨張の兆候があるのはその新燃岳のみです。従って、霧島山の加久藤火山噴火のような大被害を及ぼす噴火とは想定できる将来まで、なり得ません。ただ、マグマ噴火となればより多くの火山灰が噴出する事は確実で、注視すべきでしょう。

 南九州と南西諸島北部の警戒は、現在新田原基地の緊急発進回数も2011年噴火の年度よりも増大していますので、火山灰被害が増大するならば、2011年のように訓練を北陸の小松基地等に移転すると共に、対領空侵犯措置任務についても、南の海上自衛隊鹿屋航空基地や北方の陸上自衛隊高遊原分屯地へ一時的であれ転地する必要も出てくるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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【日曜特集】第4施設団52周年大久保駐屯地祭【5】訓練展示と体験試乗(2013-05-26)

2017-10-15 20:05:42 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■大久保駐屯地祭2013の活況
 大久保駐屯地祭2013は、訓練展示模擬戦闘は火炎放射器とともに敵の攻撃を封じ反撃に転じる最高潮を迎えています。

 大久保駐屯地、広大な駐屯地には第4施設団と第3施設大隊が駐屯、第4施設団は中部方面隊隷下の建設工兵で、第3施設大隊は第3師団隷下の戦闘工兵部隊です。第4施設団は本部と第7施設群本部及び主力と第102施設器材隊第307ダンプ車両中隊のみ駐屯する。

 第3施設大隊ですが、大隊本部及び本部管理中隊に第1中隊と第2中隊及び第3中隊という編成で、施設中隊については戦闘工兵部隊としての訓練に加え、近接戦闘部隊としての訓練を受け、一方で建機と重なる装備品も隷下に配備しています。この点みてみましょう。

 施設大隊本部管理中隊は、中隊本部、偵察班、通信小隊、補給小隊、器材小隊、渡河器材小隊、特殊器材小隊、整備小隊、等々専門器材等を集成すると共に全般任務に資する通信や補給と整備業務などを行います。一種専門技術を持つ要員と特殊器材が集められている。

 施設中隊は中隊本部に本部班と補給班に本部職務班、2個小隊と器材班、という編成となっています。中隊規模は100名弱、小隊は小隊本部と3個分隊から構成されていまして、工兵として用いる施設機材等は器材班から派出を受け任務に当るという方式を採っています。

 師団施設大隊隷下の施設中隊は以上の通りですが、旅団施設としての施設中隊は少々編成が異なっています。中隊本部は本部班と補給班に司令職務班という編成ですが、施設小隊は2個あり、各施設小隊は小隊本部と2個分隊及び器材班、という編成を採っています。

 旅団施設中隊は2個施設小隊に加え渡河器材小隊が置かれ、渡河器材小隊は小隊本部と架橋隊という編成です。各小隊に器材班が置かれる編成ですので装備密度の高さが垣間見えるのですが、近年は本部機能を強化し、施設中隊を施設隊へ増強改編する過渡期でもある。

 第3施設大隊は師団施設ですので、施設中隊は小隊を第一線戦闘工兵作業の主力としたうえで器材班の専門器材を以て任務に当るのですが、大隊本部管理中隊へ地雷敷設や架橋等の専門器材を集約し必要に応じ隷下の施設中隊支援へ戦闘加入させる方式を取っている。

 第4施設団、人員規模は4500名と方面混成団よりも大きく旅団規模部隊となっています。第4施設団編成は、団本部、団本部付隊、第6施設群、第7施設群、第304水際障害中隊、第304施設隊、第305施設隊、第102施設器材隊、第307ダンプ車両中隊、となっている。

 施設群の二つを見てみますと以下の通り。第6施設群は、群本部、第369施設中隊、第370施設中隊、第371施設中隊、第372施設中隊という編成です。第7施設群の編成を見ますと、群本部、第380施設中隊、第381施設中隊、第382施設中隊第304水際障害中隊、と。

 方面施設部隊ですので、隷下部隊は中隊単位で広く駐屯していまして、富山駐屯地や和歌山駐屯地に豊川駐屯地と鯖江駐屯地及び岐阜分屯地や出雲駐屯地と三軒屋駐屯地へ、それぞれ群本部や施設中隊等を分散して駐屯させています。豊川駐屯地は中でも規模は大きい。

 方面施設は建設工兵、しかし後方連絡線と拠点を維持するだけではなく、近年は戦闘工兵装備を集約しつつあり建設工兵であると同時に第一線で戦う戦闘工兵としての任務も重ねて付与されている、という紹介を重ねてきましたが、この点をもう少し見てみましょう。

 施設団隷下には複数の施設群と施設器材隊から編成されています。施設群は群本部と施設中隊4個を基幹としています。かつては器材中隊というものが置かれているのですが、この編成に至るまでは機能別中隊への改編と再度の改編と続きました。この点は後述します。

 施設器材隊、この編成は方面直轄施設部隊ならではの編成です。施設器材隊は対本部、本部付隊、架橋中隊、浮橋中隊、整備中隊、以上です。架橋中隊は重パネル橋等の恒久施設としても運用可能な装備を運用、浮橋中隊には92式浮橋が装備、架橋を重視しています。

 架橋を重視した編成の背景には、架橋以外の任務は汎用性のある他の器材により対応出来ますが、架橋だけはバケットローダーやグレーダーだけでは大河に端を掛けられず通常の土木工事となり時間がかかりすぎる為です。専門器材があれば数時間で橋を架けられる。

 92式浮橋等は其の専門器材の筆頭で橋間橋節12基と橋端橋節2基により104mの橋梁を浮橋により構成可能です。ただ、流れのある河川では浮橋は下流に流れる為、動力ボート7隻が支え、河川敷を補強する道路マット等もを装備、21両の運搬車により機動可能です。

 94式水際地雷敷設車、水際障害中隊に装備され36個の小型機雷を敷設する水陸両用車となっていて、沿岸部から会場まで展開、水際地雷再装填は20分で完了し、1両だけで48時間に5kmの海岸線と沿岸部へ着上陸を阻止する密度4の水際地雷原を構築可能です。

 機能別中隊改編、陸上自衛隊方面施設部隊の一つの大きな転機となった改編でした。元々方面施設部隊は地区施設隊からの改編からその歴史が始まりましたが、個々の編成では団という旅団規模の部隊の規模の強みが発揮出来ず、中隊毎に専門領域を置く事とします。

 障害中隊、築城中隊、機動支援中隊、交通中隊、機能別中隊とは施設群隷下にこの四つの機能を持つ部隊を配置し、専門領域を中隊単位で最大限発揮出来る態勢を目指しました。この他、水際障害中隊や坑道中隊という独立部隊と、施設群隷下には共通編成が採られた。

 機能別中隊改編ですが、実際に実施してみますと、障害中隊、築城中隊、機動支援中隊、交通中隊、しかし施設群が一つの駐屯地に展開している訳ではなく、施設中隊単位で多くの駐屯地に分散しています。すると、必要な中隊が必要な場所に不在との状況があり得る。

 1990年代に着手された障害中隊、築城中隊、機動支援中隊、交通中隊、機能別中隊への改編は一見合理的に見えましたが、この改編は施設群隷下の4個中隊編成を維持する事が出来た一方、近傍中隊が必要な機能を持たないとの隔靴掻痒の状況を越えられませんでした。

 方面施設部隊は機能別編成から再度通常の施設中隊を基本とした編成へ転換します。一方、中部方面隊では施設団遠征は維持されましたが、北部方面隊では施設群隷下の施設中隊を大きく見直し、方面施設団が方面施設隊へ改編された実例もあります、この点は難しい。

 中部方面後方支援隊第104施設直接支援大隊の新編、2004年に実施された方面後方支援隊の新編は、施設団に後方支援隊を付与したと同等の改編となりました。大久保駐屯地の第4施設団を支援する中部方面後方支援隊は、同じ京都府の桂駐屯地に隊本部を置いています。

 第104施設直接支援大隊は本部を大久保駐屯地へ、第1直接支援中隊を豊川駐屯地と鯖江駐屯地と岐阜分屯地、第2直接支援中隊は大久保駐屯地と和歌山駐屯地と富山駐屯地、第1直接支援隊は出雲駐屯地、第2直接支援隊は三軒屋駐屯地に置かれ施設団を支援している。

 方面施設団は東日本大震災、自衛隊創設以来最大の災害派遣となったあの大震災を前に施設科部隊の数の総力を発揮し、架橋や沿岸部の道路障害撤去や救援拠点構築等に大きな能力を発揮しています。装備や運用に限界はありますが、改善と研究により次の段階へ進むことができるでしょう。さて、大久保駐屯地祭2013、第五回の今回が最終回です、その活況の様子を少しでもお伝えできれば幸いです。

北大路機関:はるな くらま
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【くらま】日本DDH物語 《第二七回》はるな設計開始と練習艦かとり1966年度計画建造

2017-10-14 20:02:01 | 先端軍事テクノロジー
■護衛艦はるな・練習艦かとり
 海上自衛隊がヘリコプター搭載護衛艦を実際に建造するに当たり、膨大な研究と実験が行われました。その一つに、練習艦かとり、があります。

 くらま出港、練習艦かしま、とともに。練習艦かとり、海上自衛隊がヘリコプター甲板を設計当時から強く意識した艦艇として本艦を挙げる事が出来ます。練習艦かとり、は1966年度計画で建造、1968年に進水式を迎え1969年に竣工しました。船体は前部に31番砲と32番砲の3インチ連装砲が並び、中央部に艦橋と講堂施設を含む上部構造物、後部甲板へ飛行甲板が広がる構造をとります。

 練習艦かとり、は、練習艦かしま前任、ヘリコプター搭載護衛艦はるな型の設計に際し、その船体配置に大きな影響を与えた設計であったといわれています。練習艦かとり竣工は1969年ですが、設計は1966年に完成しており、海上自衛隊の練習艦としてヘリコプター発着甲板を有する最初の練習艦でした。基準排水量3350t、当時の第一線護衛艦を凌駕する大型練習艦でした。

 かとり建造は、海上自衛隊では当時練習艦隊へ第一線の護衛艦を練習艦に充当し、近海練習航海や遠洋航海に充当していましたが、第一線の護衛艦を護衛隊以上の規模で練習任務に動員する事は第一線部隊の維持へ大きな影響を及ぼすものでした。当時は小笠原返還前で沖縄返還前ではありますが、稼動率の関係上は数隻を練習航海に充てる余裕は限られる。

 たかつき型護衛艦やミサイル護衛艦あまつかぜ、と海上自衛隊の護衛艦は順次大型化を進めてはいましたが、汎用護衛艦で軒並み5000t規模の護衛艦が量産されている現在とは異なり、当時の護衛艦はそれ程大型ではありません。しかし練習艦として用いる際には実習要員と講堂区画等を準備する必要があり、艦内に余裕がない為に一隻にそれ程乗れません。

 専用練習艦を建造する事は、一隻に多数の実習要員を乗艦させ、練習艦隊への護衛艦隊等からの護衛艦派遣という実任務への影響を局限化する為という大きな目的がありました。そして、練習艦は遠洋航海において海外へ派遣され、国賓の訪問などを受ける事から船体設計には一定の配慮が払われ、結果、3インチ砲を背負い式に搭載する優美な設計となった。

 飛行甲板は、遠洋航海に際し国賓を迎えてのレセプションにおいては艦上会場としての区画ともなり、併せて船体後部に実習要員区画と講堂や専用食堂等を配置、船体における班用区画という位置づけともなりました。また、ヘリコプター搭載護衛艦はるな型設計へ上部構造物の気流影響等を検証する上で練習艦かとり設計は参考部分も多かったという。

 ヘリコプター搭載護衛艦はるな型設計に際してはもちろん、風洞実験を行い、特にマック部分からのタービン排気が飛行甲板へ及ぶ影響などを検証しています。しかし、航行中の水上艦艇からのヘリコプター運用という部分で、練習艦かとり設計は参考部分も多く、着艦拘束装置実験に用いた輸送艦おおすみ、では不可能であった航行中の発着研究を行えた。

 練習艦かとり、は実任務においてヘリコプター運用を実施した事がありました、それは砕氷艦ふじ救出任務です。砕氷艦ふじ、は基準排水量5000tの砕氷艦ですが、南極観測支援任務へ展開する際に氷床に航行を阻止される事が度々ありました。幾度か爆薬や砕氷航行の多重実施により対応していましたが、中に完全に航行不能となる事態も発生しています。

 砕氷艦ふじ、は艦長以下最小限度の乗員以外を航空機により退避させ、氷海で越冬するという最後の手段を検討した事がありました、事実上の艦放棄です。その際に練習艦かとり、へヘリコプターを飛行甲板に固定させ可能な限り南極海の南氷海を砕氷艦へ接近し、ヘリコプターを発信、航空拠点艦として砕氷艦乗員を救出する、という見当が為されました。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十九年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2017.10.14/10.15)

2017-10-13 20:11:49 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 十三日の金曜日ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか、急激に秋らしく冷え込む中、今週末の行事紹介です。

 エアフェスタ浜松2017、浜松基地航空祭、航空自衛隊発祥の地である浜松の航空祭シーズンがやってまいりました。航空教育集団司令部が置かれ航空自衛隊教育訓練の一大拠点である浜松基地は、第1航空団、第1術科学校、第2術科学校が置かれている他、E-767早期警戒管制機を運用する警戒航空隊司令部と第602飛行隊、浜松救難隊等が展開している。

 浜松基地が航空自衛隊発祥の地とされるのは、ここ浜松基地が航空自衛隊創設式典を実施した為で、旧軍には空軍が無く、事実上我が国空軍機構発祥の地ともいえます。基地は東海道新幹線浜松駅を丘陵地帯へ5km進んだ場所にあり、航空自衛隊浜松広報館も併設されています。土曜日には総合予行が行われブルーインパルスを浜松広報館から一望できます。

 八尾駐屯地創設記念エアーフェスタYAO2017,大阪府の陸上自衛隊八尾駐屯地で行われる航空祭です。旧大阪第一空港である八尾駐屯地には中部方面航空隊本部が置かれており、UH-1JやAH-1S、航空学校AH-64Dの大編隊と立体模擬戦闘が有名です。来年三月には中部方面航空隊第三飛行隊が新設の美保分屯地に新編予定で、CH-47JAの参加も期待です。

 湯布院駐屯地創設61周年記念行事、西部方面特科隊の創設記念行事です。特科隊には203mm自走榴弾砲と多連装ロケットシステムMLRSを装備する方面特科部隊ですが、来年度の西部方面隊改編に伴い203mm自走榴弾砲は全廃となります。他方、第302地対艦ミサイル中隊や水陸機動団特科大隊が新編予定で、大転換前夜の駐屯地祭といえましょう。

 玖珠駐屯地創設60周年記念行事、第4戦車大隊と第8戦車大隊が駐屯する九州沖縄での唯一の戦車部隊駐屯地です。第4戦車大隊と第8戦車大隊は来年三月に廃止され、新編の西部方面戦車隊へ編入される事となっており、部隊マークを見る最後の駐屯地祭となるでしょう。また、第4戦車大隊と第8戦車大隊は現在、10式戦車と74式戦車の混成編成です。

 西部方面戦車隊の新編と共に74式戦車については全廃が予定されており、戦車部隊縮小が理由という皮肉な理由ですが九州の戦車部隊は全国に先駆け10式戦車により完全充足することとなります。来年度にはAAV-7水陸両用車を装備する水陸機動団戦闘上陸大隊が新編予定で、74式戦車九州最後の雄姿と共に記録しておきたい。ただ、最寄のJR豊後森駅は九州北部豪雨災害により不通となっており、ご注意ください。

 富山駐屯地創設55周年記念行事、第382施設中隊の駐屯地です。大久保第4施設団隷下の第7施設群に所属する施設科部隊です、富山県は金沢の第14普通科連隊が隊区として受け持ちますが、第382施設中隊100名も防災上の重要な位置づけにあります。名物は狭い会場で間近の74式戦車空包射撃と、先着順うどん無料サービス、印象深い行事とのこと。

 さて撮影の話題、航空祭で若干で遅れて最前列を確保できなかった場合はどうするべきでしょうか。活躍するのは脚立や梯子で後ろの方々の非難の視線を全く気にせず、ぶいぶい撮影し追い出される、というようなものではなく、やはり機転で陣地変換を行うことが活躍の秘訣です。取れないならば撮れる場所、最前列が満員である場合はもう一つの最前列を目指せばよい。

 もう一つの最前列とは、滑走路沿いの最前列ではなく、エプロン地区の真ん中あたりに配置されている地上展示機の最前列で、もちろんこのあたりで邪魔にならないよう配慮は必要ですが、撮影の邪魔にならないよう航空機の周辺がロープで隔離されているわけですので、勿論時間帯にもよるのですが、滑走路沿い最前列ほど混雑と摩擦と衝突は起きにくい。

 地上展示機とはいえ、それは自衛隊機、この最前列から撮影できる情景という者は、地上展示機を手前においてのアングル設定です。手前の航空機を構図に含め、編隊飛行やスモークを曳くブルーインパルスを撮影する、こうする事でその航空祭でしか撮影できないアングルの写真を残すことができるでしょう、滑走路沿い最前列だけが全てではありません。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭


10月15日:富山駐屯地創設55周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/sta/toyama/
10月15日:エアフェスタ浜松2017…http://www.mod.go.jp/asdf/hamamatsu/
10月15日:八尾駐屯地創設記念エアーフェスタYAO2017…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/yao/
10月14日:玖珠駐屯地創設60周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/
10月15日:湯布院駐屯地創設61周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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アメリカ太平洋艦隊横須賀配備艦艇即応性などに懸念,実任務増大で交戦訓練証明の更新困難

2017-10-12 22:42:19 | 防衛・安全保障
■海上自衛隊も実任務増大
 本年海上自衛隊は実任務増大により広報行事である全国の展示訓練を中止しました。しかし、実任務増大は同盟国アメリカにおいて看過できない問題を生んでいるようです。

 CNNが米海軍機関紙ネイビータイムズを引用し報じたところでは、アメリカ海軍が横須賀へ前方展開させているミサイル巡洋艦シャイローについて、深刻な士気低下が問題となっているとのこと。内部調査によれば、シャイローを“浮かぶ刑務所”として酷評する乗員もおり、士気旺盛との回答は37%、乗艦を信頼するとの回答は僅か31%であったとのこと。

 太平洋艦隊では今年に入り短期間で衝突事故や座礁事故等が相次いでおり、艦隊全体の能力低下が深刻とされてきました。ミサイル巡洋艦シャイローの問題は艦長の適正不調によるものとされますが、イージス艦、同盟国日本にとっては北朝鮮核ミサイル恫喝という現状において特に同盟国アメリカのイージス艦の能力は非常に重要なものとなっています。

 CNNでは加えて“米海軍の太平洋艦隊、即応性などに懸念 政府監査院が分析”として太平洋艦隊全体に艦隊作戦能力の即応性と安全性に対し、アメリカ政府監査院GAOが懸念を示す報告書を作成している事を報じています。この根拠は、アメリカ海軍が対潜戦闘や対空戦闘とダメージコントロール等の能力を検証する交戦訓練証明書失効に依拠しています。

 交戦訓練証明書とは、日本の年次検定と同じもので、十数種類に分け、一定期間ごとに演練と実訓練を経て各種戦闘及び航海技術等の水準を一定以上としている証明となるものですが、太平洋艦隊の、特に日本を母港とする艦船について期限切れが目立ち、ミサイル駆逐艦及びミサイル巡洋艦11隻のうち8隻で機動性や航行技術、空中戦や水中戦の証明書が期限切れとなっていたとのこと。

 日本に前方展開するアメリカ海軍水上戦闘艦11隻のうち、実に8隻が必要な交戦訓練証明書を更新できていないという事は同盟国として非常に憂慮するものですが、何故日本に前方展開している艦艇にこうした傾向が顕著なのでしょうか。この要因として提示されているものが、“過密な作戦スケジュール”であるといい、即ち実任務が多すぎ訓練できない。

 実任務の増大により第一線部隊が作戦任務に忙殺され、必要な訓練を行う事が出来ない、というものですが、アメリカ海軍が横須賀前方展開の艦船により実施している任務は、第一に北朝鮮周辺海域での警戒監視任務、第二に南シナ海海域でも中国軍動向監視及び航行の自由作戦、第三に西太平洋での北朝鮮弾道ミサイル発射警戒、等が挙げられるでしょう。

 ミサイル巡洋艦シャイローでの問題も、この点と必ずしも無関係とは言い難く、過度なローテーションによる乗員勤務の過酷化、更にアメリカ海軍全体の水上戦闘艦及び艦隊指揮官練成への教育訓練体系への影響顕在化等、結局のところ実任務忙殺訓練軽視という悪循環が現状にまで達したともいえるものです。しかし、忘れてならないのは日本の状況です。

 海上自衛隊も専守防衛のもと、北朝鮮周辺海域での警戒監視任務、東シナ海海域でも中国軍動向監視、日本海での北朝鮮弾道ミサイル発射警戒、という任務にあたっている他、左近はロシア海軍の北方海域での行動活性化という不確定要素があり、この任務へ護衛艦を派遣しています。即ちアメリカを悩ます過密な作戦スケジュールは他人事ではありません。

 アメリカ海軍の現状は、ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド衝突事故を始め、限られた艦艇が事故により修理へ第一線を離れている為、残る艦艇にさらに負担が重くなる悪循環へ陥っていますが、これら一連の要因が実任務増大にあるのならば、実任務増大は日米共通の問題です。我が国としては、一隻当たりの負担を軽減すべく護衛艦を増強するか、集団安全保障の枠組へ同盟国との防衛協力を強化する等、対策を取らなければ、アメリカ海軍と同じ問題が顕在化しかねないといえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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