大学4年に研究室に配属になったときに、教授と助教授の先生がついてセミナーをしてもらった。
ところがそのセミナーがはじまって最初の時期に部分積分か何かを使って、方程式かなにかから、ある関係を導かなければならなかった。
ところがこれが導けなくて教授にきつくお叱りを受けた。
そして、その同じ内容をすでに教授の講義で聞いていたのだが、自分で計算がまったくできなかった。
このときに計算ができなかった数式は80歳のいまになって、あるベクトル解析の演習書を見ていると何とかの定理とか補助定理とか名前がついていることを知った。
中学生の昔から計算がへたくそで計算のない数学があればいいのにと思っていた。
もっともそんな不遜な考えは大学で砕け散った。大学の2年だったかに理学部数学での微分積分の講義では計算などはまったくでて来ない集合の話であった。
これがまったくわからない。それで結局2年の微分積分の単位は落としてしまった。
もっともこれは私だけではなく、計算が達者な私の同級生もその多くが単位を落とした。
その次の年の3年になって、もしその単位を落とすと4年生での受験となるからということで多くの同級生も私ももうそのときは内容を暗記するくらいに真剣に試験勉強をした。
そのおかげでかろうじて微分積分学の単位をとったが、伝統的にどこの大学の理学部の数学でも数学の基礎となる集合論を微分積分の講義のなかに入れているという事情によっている。
私は物理の専攻で数学科ではなかったが、数学科と一緒の授業を受けていたから、こういうつらい目にあった。
これは私の同級生がその再試験の前にもらしていた本音でもあるが、これだけ勉強しても微分積分の試験で単位をとれないならば、点字をならって4年生の再々試験のときにはカンニングを考えなければならないと。
幸いなことにその I 君も私もなんとか単位をもらうことができた。この I 君は大学を卒業後は静岡県で高校の先生をやっていたが、まだ健在だろうか。