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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

東側諸国のジェンダー問題を学ぶ 1

2016-05-25 20:06:40 | 大学公開講座
 ソ連・東欧が社会主義であった時代から、彼の国では女性の就職率も高く、資本主義国に比べて男女平等が進んでいるように見られていた。しかし、実態はどうだったのか?北大の公開講座で学んでいる。 

 北大のスラブ・ユーラシア研究センター(通称:スラブ研)の今年度の公開講座が始まっている。7回の講座のうち、すでに5回を終えたのだが、なかなかレポできなかった。受けた講座はやはり記録に留めなくてはと覚悟を決めて、これから何回かに分けてレポすることにした。

 今年のスラブ研の公開講座のテーマは「スラブ・ユーラシア社会におけるジェンダーの諸相」というものである。つまり、東側諸国(スラブ・ユーラシア圏)における男女の差異はどのように語られ、どのような実状なのか、ということについてさまざまな国やいろいろな観点から解き明かすというのが、今回の公開講座の趣旨である。

 最初に各回の日程と講義題目を記すことにする。

 ◇第1回 5月9日(月) 「女たちの祈り-女性が支え、男性が司る正教会の現在と歴史」
 ◇第2回 5月13日(金) 「バルト諸国の男女間格差、女性間格差-構造と認識から考える」
 ◇第3回 5月18日(水) 「チェコと日本-少子化とジェンダーの役割」
 ◇第4回 5月20日(金) 「現代ロシアの労働とジェンダー」
 ◇第5回 5月23日(月) 「真実を求めて-ノーベル賞受賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの世界と女性たちの『声』」
 ◇第6回 5月27日(金) 「現代ロシアの家族政策-国家における『母』の役割を中心に」
 ◇第7回 5月30日(月) 「東欧における女性の現状-データをもとに考える」
といったラインナップである。
 このうち、私は第2回目を公務のために受講を断念したが、他はこれからのものも含めて全て受講する予定である。

 今回は第1回の講義を務めた北大スラブ研の助教である高橋沙奈美氏「女たちの祈り-女性が支え、男性が司る正教会の現在と歴史」についてレポしたい。

                   
             ※ 講師を務めた高橋沙奈美助教です。本日の写真はいずれもウェブ上から拝借した。

 ロシア正教会は1917年のロシア革命によって誕生した共産主義政権によって厳しい弾圧に遭い、その苦難はソ連が崩壊する1991年まで続いたことは多くの人が知る事実である。
 そうした弾圧下においてロシア正教会を支え続けて来たのは女性であったと高橋氏は説いた。
 ロシア正教会は女性司祭を認めていないという。弾圧下において男性司祭は処刑されたり、亡命したりして司祭が不足した事態に遭って、女性は長老となって信者集団を支え、教会の維持のために奔走し、時には司祭に代わって洗礼なども行っていたという。苦境の中において、ロシア正教会を守り続けたのはまさしく女性だったわけだ。

             
             ※ ロシア正教の高位聖職者と考えられる人の姿です。

 そしてソ連が崩壊し、ロシアとなった今、男性の司祭が再登場し、ロシア正教会はロシア人の精神的なよりどころとして復活したという。
 すると、男性である正教会の高位聖職者は、女性はスカーフで覆い、素肌を露出するような服装は避けて、長いスカートをはくべきであり、常に慎み深く、従順で、家庭を守ることを「理想の女性像」として提示するそうだ。
 こうした主張は保守層からは歓迎される一方、それに反発する女性ジャーナリストや芸術家、研究者らがそうした教会の姿勢に疑問や反発する動きを活発化させている現状があるそうだ。

             
             ※ 典型的なロシア正教に殉ずる女性の姿です。

 ロシア正教会に帰依する女性たちにとってあまりにも理不尽な教会のあり方ではないだろうか?
 そうした現状に異議を申し立てる人たちが出てきたことは、時代の要請であり、当然なことと思われる。
 はたしてロシア正教会はジェンダーの問題に正対して変容することができるのだろうか?