今や文化遺産は「リビング・ヘリテージ」という考え方が主流になりつつあるようだ。途上国におけるリビング・ヘリテージについて研究している講師の話を聴いた。
北大の公開講座「明日の観光を考える」の第6 講が12月15日(木)夜にあった。
講座は、前半を前回講師の石黒侑介准教授が務めた。
石黒氏は私たちに出した課題について、受講者が提出した回答を紹介した。課題は次のようなものだった。
【課題】政府が成立を目指す「統合型リゾート(IR)推進法案」(いわゆるカジノ法案)について、賛成・反対を明確にした上で、その論拠を含め、自由に記述ください。
私は、前回レポしたように課題が政治的色彩を帯びていると考え、回答を差し控えたが、受講者からの回答は意外と多かったようだ。
その傾向であるが、賛成派と反対派の割合はおおよそ1対2で法案に反対と考えた方が多かったようだ。
反対する理由は、やはりカジノによる風紀の乱れを心配する意見が多かった。また、カジノそのものが世界各地に乱立し、すでに利益構造が崩れつつあり、それほどのメリットが見込めないといった意見が目立った。
ここで講師の石黒氏も、自身の立場を明確にしておきたいと述べ、基本的には「反対」の立場であるとし、その理由を次のように述べた。
① IR(統合型リゾート)への理解促進をおろそかにしている感が否めない。
② 経済波及効果が前食い、横食いにならないかの検証が必要
③ 「雇用のニーズ、供給源があるのか」の検証が必要
④ 市場の成熟化にIRという資源が適合するか疑問
といった理由から反対を表明された。
IR法案自体は国会の議決を経たと報道されている。実際に国内に統合型リゾートが設立されるのはまだ先のことのようだが、推進に当たっては反対論にも十分に耳を傾けながらコトを進めることが必要であろう。
続いて、本講座最後の講師である八百坂季穂特任教授は「世界遺産マネジメントと観光開発」と題して講義された。
「遺産マネジメント」とは、自然・文化遺産の保護・保存・保全について、提言したり、実際に指導したりすることを指すようである。

※ 八百坂特任教授の写真をウェブ上から拝借しました。この頁の他の写真も同様です。
八百坂氏たちは、「遺産マネジメント」を推進にあたり、人間が利用するために、遺産に手を加えつつ価値を護っていく保全に力を入れ、その保全ために「住民主体の観光開発」、「官民協働」、「屋根のない博物館」を目ざして、実際にフィールドワークを展開しているということだった。

※ 八百坂氏のフィールドワークの対象となったフィジー諸島及びオバラウ島の位置です。
八百坂氏のフィールドワーク先は、フィジー諸島の一つ「オバラウ島」に遺る旧イギリス領時代の建築群だそうだ。ここの建築群ほ護るために、先述したような観点から提言し、また住民に対する指導もされているようだ。
そうした説明を受けた後に、課題が提示された。その課題とは、
【課題】「リビング・ヘリテージ」の保全において、なぜ「コミュニティ・ベースド(住民主体)」が重要なのか?
一見、易しそうで、実は難しいこの課題に対して、私は下記のような回答を八百坂氏に書き送った。
課題に対して、まずワードについて私自身の理解を明確にしたうえで回答を考えていくことにします
「リビング・ヘリテージ」ですが、日本語訳では「生きている遺産」と訳されます。このことは、「人々がそこで生活しながら遺産を護っていく」ような形態と理解します。
さらに「コミュニティ・ベース」とは、先生の注釈にもあるとおり「住民主体」ということになると、与えられた課題を次のように解釈したいと思います。
「世界遺産に値する地域に住み、そこで生活をしながら遺産を護っていくためには、なぜ住民が主体となってその取り組みを進めることが重要なのか」と理解して論を進めます。

※ オバラウ島に遺された旧イギリス領時代の街並みです。
人々がそこで生活しながら遺産を護っていくということは、そこに生活する人たちが遺産の価値を十分に認識し、理解していることが必要不可欠なことだと思います。価値を理解することによって、はじめて積極的にその遺産を護っていこうとする意志や意欲も生まれるものと思われます。
住民の理解を図っていくためには、住民の学習が必要となってきます。その学習はけっして上からの押し付けではなく、住民自身がその価値に気付いていくような学習でなければなりません。そのためには、例え時間がかかろうとも粘り強く、息長く続けることが必要です。となると、識者からの伝達的な学習だけではなく、住民同士の相互学習もまた求められると思われます。
先生が話されていましたが、発展途上国においては国のエリートたちが上意下達方式でものごとを進めがちであるということですが、それでは真の意味での「リビング・ヘリテージ」とはならないと思われ、そこに住む住民も積極的に遺産を護っていこうとする意志が育たないものと思われます。
住民が遺産の価値を認識し、理解を深めることによって、住民自身が積極的・主体的にら遺産を護るという体制が構築できるものと思います。

※ こちらもオバラウ島の教会や集会施設の遺産だと思われます。
正直言って、あまり自信のない回答である。課題に対して正対しているかどうか自信がないのである。それでも一応、自分に課した義務(?)として提出することにした。
はたして他の方々の回答はどのようなものなのだろうか?そして、そのことに八百坂氏はどのような反応をするのだろうか?最終回の講義も興味深い。
北大の公開講座「明日の観光を考える」の第6 講が12月15日(木)夜にあった。
講座は、前半を前回講師の石黒侑介准教授が務めた。
石黒氏は私たちに出した課題について、受講者が提出した回答を紹介した。課題は次のようなものだった。
【課題】政府が成立を目指す「統合型リゾート(IR)推進法案」(いわゆるカジノ法案)について、賛成・反対を明確にした上で、その論拠を含め、自由に記述ください。
私は、前回レポしたように課題が政治的色彩を帯びていると考え、回答を差し控えたが、受講者からの回答は意外と多かったようだ。
その傾向であるが、賛成派と反対派の割合はおおよそ1対2で法案に反対と考えた方が多かったようだ。
反対する理由は、やはりカジノによる風紀の乱れを心配する意見が多かった。また、カジノそのものが世界各地に乱立し、すでに利益構造が崩れつつあり、それほどのメリットが見込めないといった意見が目立った。
ここで講師の石黒氏も、自身の立場を明確にしておきたいと述べ、基本的には「反対」の立場であるとし、その理由を次のように述べた。
① IR(統合型リゾート)への理解促進をおろそかにしている感が否めない。
② 経済波及効果が前食い、横食いにならないかの検証が必要
③ 「雇用のニーズ、供給源があるのか」の検証が必要
④ 市場の成熟化にIRという資源が適合するか疑問
といった理由から反対を表明された。
IR法案自体は国会の議決を経たと報道されている。実際に国内に統合型リゾートが設立されるのはまだ先のことのようだが、推進に当たっては反対論にも十分に耳を傾けながらコトを進めることが必要であろう。
続いて、本講座最後の講師である八百坂季穂特任教授は「世界遺産マネジメントと観光開発」と題して講義された。
「遺産マネジメント」とは、自然・文化遺産の保護・保存・保全について、提言したり、実際に指導したりすることを指すようである。

※ 八百坂特任教授の写真をウェブ上から拝借しました。この頁の他の写真も同様です。
八百坂氏たちは、「遺産マネジメント」を推進にあたり、人間が利用するために、遺産に手を加えつつ価値を護っていく保全に力を入れ、その保全ために「住民主体の観光開発」、「官民協働」、「屋根のない博物館」を目ざして、実際にフィールドワークを展開しているということだった。

※ 八百坂氏のフィールドワークの対象となったフィジー諸島及びオバラウ島の位置です。
八百坂氏のフィールドワーク先は、フィジー諸島の一つ「オバラウ島」に遺る旧イギリス領時代の建築群だそうだ。ここの建築群ほ護るために、先述したような観点から提言し、また住民に対する指導もされているようだ。
そうした説明を受けた後に、課題が提示された。その課題とは、
【課題】「リビング・ヘリテージ」の保全において、なぜ「コミュニティ・ベースド(住民主体)」が重要なのか?
一見、易しそうで、実は難しいこの課題に対して、私は下記のような回答を八百坂氏に書き送った。
課題に対して、まずワードについて私自身の理解を明確にしたうえで回答を考えていくことにします
「リビング・ヘリテージ」ですが、日本語訳では「生きている遺産」と訳されます。このことは、「人々がそこで生活しながら遺産を護っていく」ような形態と理解します。
さらに「コミュニティ・ベース」とは、先生の注釈にもあるとおり「住民主体」ということになると、与えられた課題を次のように解釈したいと思います。
「世界遺産に値する地域に住み、そこで生活をしながら遺産を護っていくためには、なぜ住民が主体となってその取り組みを進めることが重要なのか」と理解して論を進めます。

※ オバラウ島に遺された旧イギリス領時代の街並みです。
人々がそこで生活しながら遺産を護っていくということは、そこに生活する人たちが遺産の価値を十分に認識し、理解していることが必要不可欠なことだと思います。価値を理解することによって、はじめて積極的にその遺産を護っていこうとする意志や意欲も生まれるものと思われます。
住民の理解を図っていくためには、住民の学習が必要となってきます。その学習はけっして上からの押し付けではなく、住民自身がその価値に気付いていくような学習でなければなりません。そのためには、例え時間がかかろうとも粘り強く、息長く続けることが必要です。となると、識者からの伝達的な学習だけではなく、住民同士の相互学習もまた求められると思われます。
先生が話されていましたが、発展途上国においては国のエリートたちが上意下達方式でものごとを進めがちであるということですが、それでは真の意味での「リビング・ヘリテージ」とはならないと思われ、そこに住む住民も積極的に遺産を護っていこうとする意志が育たないものと思われます。
住民が遺産の価値を認識し、理解を深めることによって、住民自身が積極的・主体的にら遺産を護るという体制が構築できるものと思います。

※ こちらもオバラウ島の教会や集会施設の遺産だと思われます。
正直言って、あまり自信のない回答である。課題に対して正対しているかどうか自信がないのである。それでも一応、自分に課した義務(?)として提出することにした。
はたして他の方々の回答はどのようなものなのだろうか?そして、そのことに八百坂氏はどのような反応をするのだろうか?最終回の講義も興味深い。