田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 179 ディスタンス

2016-12-02 19:28:47 | 映画観賞・感想

 ディスタンス(distance)…、この映画では「家族の間の隔たり」という意味でタイトルに採用されたのだろうと推察する。この映画は典型的なセルフドキュメンタリー映画である。若い女性監督が自らの家族がバラバラになった現実をある意味淡々と追い続ける映画である。 

                 

 「CLARK THEATER 2016」の第2弾は岡本まな監督が描くセルフドキュメンタリーで今年(2016年)公開された「ディスタンス」であった。主催者発行の案内には、「ディスタンス」を次のように紹介していた。

                   

 「北海道(函館)でばらばらに暮らす家族の姿を、監督自ら記録したセルフドキュメンタリー映画。自分から一番近い場所にいたはずの人たちは、幸福に思えた時間との距離をどう考えているのだろう。本作は監督にとっての、いちばん愛しいはずなのに一番素直に向き合えずにいた人たちとの対話でもある。」 

 監督である岡本まなは3歳の時に両親が離婚してしまい、彼女は3歳上の兄とともに母親に育てられる。彼女は3歳という年齢ゆえに、離婚した事情も何も分からないまま成長する。一方兄は、6歳という年齢で父親から受けた虐待によって父親を激しく憎みながら成長する。
 映画の中には出てこないが、彼女はそんな家庭を嫌って、高校を卒業すると東京へ出てしまう。
 東京で暮らし始めておよそ10年、反目していた父と兄が再会し、和解した様子を目にして、映画のエの字も知らないのに、バラバラになった家族を映画に撮ってみたいと思い立ったそうだ。

 映画は両親が離婚する前、おそらく父親が撮ったであろうホームビデオに映る幸せそうな家族の様子の映像を挟みながら、現在の年老いた祖母、父親、母親、兄の様子を淡々と追い続ける。彼女の手によるカメラワークは稚拙そのものだが、それがかえってセルフドキュメンタリーらしさを醸し出している。

 映画は何を主張するのでもない。ただ、彼女にとって何も知らないまま(幼さすぎた故)分かれた家族との対話をしたいという一途な思いが画面から伝わってくる。

 私が心惹かれたのは、兄の独白である。
 彼は父親から相当の虐待を受けたようだ。その独白から、いかに父親を憎んでいるかが伝わってきた。私は彼が自暴自棄に陥らず、立派な成年に成長した陰に母親の人知れない苦労を見た思いがした。
そんな彼が、彼の結婚式に出席した父親と再会する中で、父を許す気持ちになったのは、もしかしたら妹である岡本まながカメラを回し続けたからではないか、と思えた。

               
               ※ 父親との葛藤について語る監督・岡本の兄です。

何かをどうする、どうしたい、というものでもないと彼女は言う。ただただ「家族」を撮ってみたいという監督の想いは、「家族の間の隔たり」に少しは絆の糸を紡いでみたかった、ということだったのかもしれない。