想像していたのとは大違い!素晴らしく完成度のオペラだった。榎本軍に身を投じた土方歳三は北の地に自らの死に場所を求めたともいう。その切ないまでの土方の心情が私たち観衆にも伝わってくるオペラだった。
8月31日(金)夜、教育文化会館で北海道教育大学・実験劇場第7回オペラ公演が開催された。この日はマドリガーレ・オペセと称して「土方歳三最後の戦い」~義に準じた男~ と題する演目だった。
最初に「マドリガーレ」という言葉が初耳だったので調べてみると、「イタリアで生まれた多声歌曲の一形式。英語ではマドリガルmadrigal。14世紀にイタリアで栄えたものと、16、17世紀にイタリアとイギリスで展開されたものとの2種類がある」とあった。う~ん。多声歌曲とは?オペラの最後の方で何人もの歌手(演者)が同時に歌っていたことを指すのだろうか?
この日は、オペラ本番に入る前に「プレクチャ―」と称して、原作の広瀬るみ氏、台本・演出・構成などを担当した塚田康弘氏、作曲担当の二宮毅氏が登壇し、作品の背景や台本制作や作曲に工夫した点について聴衆にレクチャーしてから本番に入った。
ストーリーは、明治元年10月20日、土方が榎本武揚と共に鷲の木浜に上陸した場面から始まる。土方の悲哀に満ちたような歌い方が印象的な場面である。
そこから土方が函館に生きた10か月間をダイジェスト的に追いかけるストーリーである。そのストーリーについては多くの人の知るところなので、ここでは割愛する。
※ 本番はもちろん写真はNGだった。本番スタート前に舞台を一枚写させてもらった。
特筆しておきたいことは、出演者が学生ではなく主だった出演陣は北海道教育大学の教授陣だったということだ、その他の方々も教育大学で声楽を学び、現在も研究されている方だった。
私は当初、教育大学の学生が演ずるものと思っていたのだが、大違いだった。
また、開幕当初に剣術を幕奥で演ずるのは、天然理心流試衛館の館主の高倉天真氏という本格派だった。
さらに、9名からなる弦楽のアンサンブルは舞台に釘付けになった私からはしばし忘れた存在だったが、まったく違和感なく舞台の歌い手をサポートしていた。聴衆から存在を忘れさせるほど舞台と一体となった見事に演奏だったと言えるだろう。
本番前にレクチャーがあったこと、塚田氏がストーリー展開の折々に語りを入れたこと、歌詞が日本語だったこと、等々がストーリーを理解させ、聴衆を土方歳三の世界に惹き込むことに成功したと思う。
このような素晴らしい舞台が無料で公開されたことが信じられない思いである。実験劇場とはいえ、それは完成度の高い素晴らしいオペラの舞台だった。